ソーシャルビジネスとは?定義や多様な社会課題解決の事例をまとめて解説
コラム

ソーシャルビジネスとは?定義や多様な社会課題解決の事例をまとめて解説

2024-06-05
#ナレッジシェア #インキュベーション #ファンド

ソーシャルビジネスとは、事業性を備えたアプローチで社会課題の解決に取り組むビジネスのことです。

社会起業家支援に取り組むtalikiが、ソーシャルビジネスの事例を多分野にわたって紹介し、網羅的に解説します。

「CONCEPT」と書かれた紙と美しい自然の風景の写真。

ソーシャルビジネスの定義

ソーシャルビジネスの定義はなんでしょうか?

経済産業省が定義するところによると、ソーシャルビジネスは社会性・事業性・革新性の3点を備えている必要があります。

 

社会性とは、社会課題解決を事業のミッションとすることです。

事業性とは、ミッションをビジネスの形にし、事業を継続的に進めることです。

革新性とは、新しい商品・サービスや、新しい社会的価値を生み出すことです。

 

参照:
ソーシャルビジネス研究会報告書(2008)(経済産業省)
ソーシャルビジネス・トピックス 第1回 ソーシャルビジネスとは(日本政策金融公庫)

 

ソーシャルビジネスが扱う社会課題とは?

ソーシャルビジネスが解決すべき「社会課題」とはなんでしょう? talikiの定義を解説します。

現代では資本主義や技術発展によって社会の多数派のニーズが満たされ、社会発展や経済成長を支えてきました。ですが、多数派のニーズだけを満たす社会には歪みが生じます。

例えば、多数派の「もっと商品が欲しい」ニーズに応えて大量生産すれば、環境問題やごみ問題が発生します。

また、多数派に合わせたビジネスでは、少数派は取り残されて不利益を被ることになります。

工業地域からのガスが大気汚染を引き起こしている写真。

 

資本主義社会で、多数派のニーズを満たすために発生する問題が「社会課題」です。社会課題をビジネスで解決するのがソーシャルビジネスです。社会課題解決のために起業する人たちを「社会起業家」とも言います。

詳しくはこちらもご覧ください。

「全てのビジネスは社会課題解決」は本当か?社会課題解決の定義を考える

 

ソーシャルビジネスと他の社会貢献の違い

NPOとの違い

ソーシャルビジネスとNPOの違いはなんでしょうか? 第一の違いは、組織が営利目的かどうかです。

さらにtalikiの定義では、ソーシャルビジネスとNPOは購入者・出資者にとっての利己的なインセンティブ(動機づけ)があるかどうかで分けられます。

NPOは寄付がメインのモデルです。寄付モデルでは、寄付する人の「社会貢献したい」という意思にNPOの収入が左右されることになります。金銭的・物質的なリターンがあるわけではないため、多くの資本を集めづらく、持続可能性は相対的に低くなります。

ソーシャルビジネスでは、購入者は「素敵な商品だから買う」投資家は「儲かりそうだから投資する」と、出資者がメリットを感じて主体的に行動します。

個々人の利己的な動機づけによって資金を得られるのがソーシャルビジネスのモデルです。社会貢献の度合いに限らずwin-winの取引が成立する分、活動の拡大性や持続可能性が高くなりやすいのです。

ソーシャルビジネスにおける購入者・出資者にとっての利己的なインセンティブについて説明した画像。

 

一般のビジネスとの違い

ソーシャルビジネスと一般のビジネスの違いはなんでしょうか? 

各企業は様々な目的を持って事業を運営しています。「収益」「独自の技術の活用」「課題解決」のように、課題解決が目的に含まれる企業もあるでしょう。しかし、それだけではソーシャルビジネスとは言えません。

ソーシャルビジネスは「課題解決」を第一目的に事業を展開します。そしてソーシャルビジネスが解決しようとする課題は「多数派のニーズを満たすために生じる社会の歪み」なのです。

 

ソーシャルビジネスの事例を幅広く紹介

ソーシャルビジネスの具体例を幅広い分野からご紹介します。

国内の事例

【環境問題】株式会社ユーグレナ

日本のソーシャルビジネスを牽引する株式会社ユーグレナ代表取締役の出雲氏。

「サステナビリティ・ファースト」をフィロソフィーに掲げるソーシャルビジネスです。ユーグレナ(ミドリムシ)の大量培養技術を持ち、バイオ燃料「サステオ」を開発。気候変動問題の解決に取り組んでいます。

参照:
ユーグレナのコーポレート・アイデンティティ
ユーグレナのバイオ燃料事業

日本のソーシャルビジネスの先駆けがユーグレナです。代表の出雲氏の発信は、後進の社会起業家を勇気づけています。

ソーシャルビジネスの先駆者ユーグレナ代表・出雲氏とtaliki代表・中村の対談はこちら

 

【児童福祉】株式会社AiCAN(読み:アイキャン)

AiCANの児童虐待分析サービスのイメージ画面。

子どもの虐待問題に取り組むソーシャルビジネスです。

教育学博士、臨床心理士、公認心理師、司法面接士としての豊富な臨床経験を元に設立されました。児童相談所や市区町村向けに子ども虐待対応の「スピード」と「判断の質」を向上させる、AIを活用した業務支援サービスを提供しています。

AiCANについて詳しくはこちら

AIの力と臨床的知見で見過ごされた児童虐待を“ゼロ”に。AiCANが目指す子どもにとって安全な社会とは

 

【地方創生】株式会社さとゆめ

地方創生プロジェクトに多くの人々が関わった集合写真。

ソーシャルビジネスが地方に活力をもたらした事例です。

「沿線まるごとホテル」という地域全体をホテルに見立てるツーリズムプランを提供しています。「沿線まるごとホテル」は第7回ジャパン・ツーリズム・アワード(2023年)で「国土交通大臣賞」を受賞しました。

「沿線まるごとホテル」はJR東日本との協働プロジェクトです。山梨県小菅村の伴走支援や、滋賀県長浜市の公認事業提供など、自治体とも積極的に連携しています。

企業や自治体との協働で地方活性化に取り組んでいる事例です。

さとゆめについて詳しくはこちら

「地方創生の民主化」が成功のカギ? “沿線まるごとホテル”の仕掛け人、さとゆめ・嶋田氏が語るローカルビジネスの打開策

 

国外の事例

【途上国の貧困】グラミン銀行

ソーシャルビジネスが広く知られたきっかけの1つが、グラミン銀行が2006年にノーベル平和賞を受賞したことです。

グラミン銀行の創設者ムハマド・ユヌス博士がノーベル平和賞のメダルを披露する場面。ノーベル財団公式サイトより

 

グラミン銀行はバングラデシュの貧困層に無担保で融資し、独自のシステムで高い返済率を実現しました。

グラミン銀行公式サイトはこちら(英語)
ソーシャルビジネスを世界に知らしめたグラミン銀行についてはこちら(JICA)

 

【途上国の医療】OUI Inc.(読み:ウイインク)

医療系ソーシャルビジネスOUI Inc.のデバイスで眼科検診を受ける途上国の女の子。

医療分野でソーシャルビジネスに取り組むのが、日本人の眼科医が設立したOUI Inc.です。

スマートフォンに装着して眼科検診ができるデバイスを開発し、眼科医療が途上国に行き届かない問題に取り組んでいます。

OUI Inc.について詳しくはこちら

予防可能な病気による失明を減らしたい。眼科医が開発した医療デバイスとは

ソーシャルビジネスの幅広い領域の一部をご紹介しました。

ソーシャルビジネスに取り組む重要性

個人にとっての重要性

SDGsの取り組みが大切だと聞いたことがあるのではないでしょうか。

ソーシャルビジネスとSDGsには共通点があります。どちらも、多数派を優先して生じた歪みの解決を目標にしている点です。

SDGsの「誰一人取り残さない」というスローガンは、ソーシャルビジネスと共通の精神を持ちます。

SDGsでは、2030年までに17のゴールを達成すべきとされています。今の人間社会や地球環境は、それほど切迫した危機に直面しているのです。今すぐに行動を開始しなければならないフェーズに突入しています。

高潮によって被害を受ける沿岸の車の写真。

 

社会課題は個々人と無関係ではありません。

気候変動が分かりやすい例です。すでに猛暑日は増加傾向にあり、夏季は熱中症と隣り合わせの生活になるかもしれません。気候が変化すれば、農作物の生産にも影響が出ます。

気候変動適応とは?(国立環境研究所 気候変動適応情報プラットフォーム)

気候変動の例を挙げましたが、社会課題は根底で「資本主義社会で多数派のメリットを追求した」という社会の歪みで繋がっています。気候変動問題も最初は少数派だけの問題でした。それが今や地球規模の災害となっているように、「歪み」を放置すると長期的には多数派も含めた社会全体の問題になるのです。

取り残された少数派にアプローチするソーシャルビジネスは、社会の歪みにメスを入れる上で全員がキープレイヤーなのです。

ソーシャルビジネスの重要性をお分かりいただけたでしょうか。では、どうやって個人がソーシャルビジネスに関わればいいのでしょうか?

①購入して応援

ソーシャルビジネスのプロダクトやサービスを購入することが応援の仕方の1つです。

本サイトでは、国内でサービスを展開するソーシャルビジネスを多数紹介しています。応援したい企業を探すとき、参考にしてみてください。

②プロボノでスキルを活かす

ソーシャルビジネスに「プロボノ」という形で関わる方法もあります。プロボノはボランティアと似ていますが、自分のプロフェッショナルな知識を活かして社会課題解決に貢献する取り組みです。

 

一般企業にとっての重要性

ソーシャルビジネスは一般企業にとっても重要です。

地球環境問題や貧困の問題など、様々な社会課題が顕在化してきました。社会の一部として、民間企業も社会課題解決のプレーヤーだという考え方が広まってきています。

SDGsが国連によって制定されたのが2015年です。国連も、SDGs策定にあたり民間企業が社会課題解決のプレーヤーであるとしています。SDGsも民間企業のソーシャルビジネス参入を後押ししているのです。

ソーシャルビジネスとは?特徴や注目の理由、事例、取り組み方を紹介(朝日新聞デジタル SDGs ACTION!)

SDGsのイメージ画像。

 

企業はどのようにソーシャルビジネスに取り組めるのでしょうか? 大きく4つの方法があります。

①新規にソーシャルビジネスを立ち上げ

新規事業としてソーシャルビジネスを始める場合は、社会起業家にノウハウを学ぶといいかもしれません。本サイトでは、実際の知見を事例に即してご紹介しています。

②オープンイノベーション

オープンイノベーションでソーシャルビジネスと協働する方法があります。自社のアセットやリソースを活かして新たな価値を共創し、社会課題解決に寄与することができます。

③インキュベーションを支援

ソーシャルビジネスを育成するインキュベーションを支援するのも方法の1つです。インキュベーションに取り組むには、インキュベーションプログラムに資金提供することが考えられます。

ESGの取り組みの一環として、自らインキュベーションプログラムを運用している企業もあります。

④インパクト投資

ソーシャルビジネスや、社会起業家を支援するファンドに出資するのも企業ができる重要なESGの取り組みです。

talikiはソーシャルビジネス支援に取り組んでいます

株式会社talikiは、社会起業家育成(インキュベーション)とファンドからの出資、そしてオープンイノベーションの促進でソーシャルビジネスを支援しています。

talikiメディアでは様々な分野の事例をインタビュー形式でお届けしています。

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    編集

    張沙英

    ソーシャルビジネスの尊さ、難しさ、奥深さを日々感じて生きています。いろんな社会起業家に出会いたい。

     

    執筆

    泉田ひらく

    ソーシャルビジネスのプロダクトを少しずつ集めているエシカルライター。ごみ問題を解決するためビニール傘をアップサイクルした財布がお気に入り。

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