東京初のヴィーガン寿司専門店「Vegan Sushi Tokyo」をオープンしたブイクック。日本ヴィーガン市場の変革を目指す
インタビュー

東京初のヴィーガン寿司専門店「Vegan Sushi Tokyo」をオープンしたブイクック。日本ヴィーガン市場の変革を目指す

2024-12-12
#食 #環境 #ダイバーシティ

「誰もがヴィーガンを選択できる”Hello Vegan!”な社会をつくる」ことをミッションに、ヴィーガン生活を支えるサービスを運営する株式会社ブイクック。2024年夏、同社が新たな事業として開始したのが、ヴィーガン寿司専門店「Vegan Sushi Tokyo」だ。

これまで取り組んできた事業とは全く異なる飲食店という事業を選択した背景には何があったのだろうか?そして、オープンから半年で数多くのポジティブな評価を得ている同店の強さの秘訣はどこにあるのだろうか?

さらなる拡大に向けて人材募集にも力を入れているブイクック。代表の工藤柊と取締役COOの吉川夕葉に、「Vegan Sushi Tokyo」開店・運営の裏側や、人材募集の背景を教えてもらった。

 

▼プロフィール

株式会社ブイクック代表取締役CEO 

工藤 柊(くどう しゅう) 写真左

株式会社ブイクックCEO。高校3年生で環境問題・動物倫理の観点からヴィーガンを実践開始。大学2年生でNPO法人を起業し、ヴィーガンレシピ投稿サイト「ブイクック」の提供開始。2020年に株式会社ブイクックを起業し、ヴィーガン商品専門EC「ブイクックスーパー」を運営。2024年6月より東京初のヴィーガン寿司専門店「Vegan Sushi Tokyo」をオープン。

工藤さんの過去のインタビュー記事:80年後も変わらず桜を見るために。ヴィーガン実践のビジネス

過去の対談記事:【工藤柊×中村多伽】(前編)talikiファンド設立。資金調達で事業と社会課題解決を加速させる

【唐沢海斗×工藤柊×野村優妃】若手起業家3人が考える、食から始まるインクルージョンとは

株式会社ブイクック取締役COO 

吉川 夕葉(よしかわ ゆうは) 写真右

7歳からヴィーガンな食生活を始める。ヴィーガン食品の面白さを発信すべく、インスタやyoutubeでの発信を2018年より開始。上智大学を卒業後、ブランディング&制作会社揚羽に入社の傍ら、 #日本で唯一の若者向けヴィーガンイベント Green Rabbits Club を設立し、30-100人規模のイベントを定期開催。ヴィーガン内での情報交換の場所として作成したLINEグループには約200名が参加中。2021年よりヴィーガンスタートアップ「(株)ブイクック」に入社し、翌年よりCOO就任。現在はヴィーガン商品専門EC「ブイクックスーパー」、ヴィーガン寿司専門店「Vegan Sushi Tokyo」をはじめ、ヴィーガンを選択するハードルを下げるための事業開発を行う。

 

レシピサイトやECサイトから飲食店へ

ーーそもそも、ブイクックはどんな経緯で創業した会社なのでしょうか?

工藤 柊(以下、工藤)僕自身が高校3年生の頃に、環境保護や動物倫理への問題意識からヴィーガン生活を始めたのですが、「大変だな」と感じることが多かったんですよね。どうしても食べ物の選択肢が少なくなってしまったり、人付き合いがしづらくなったり。

だから、多くの人がヴィーガン生活を簡単に始められて簡単に続けられる社会にしたいと考えて、2020年に会社を創業しました。

 

ーー創業から今まで、どんな事業をしてきましたか?

工藤約5000ものレシピが投稿されているヴィーガンレシピ投稿サイト「ブイクック」、数百商品の品揃えがあるヴィーガン商品専門ECサイト「ブイクックスーパー」、ヴィーガン冷凍弁当の定期宅配サービス「ブイクックデリ」など、いろいろな事業をやってきました。

「ブイクック」と「ブイクックスーパー」は今でも継続して行っている事業です。これらの事業は、少しずつですが日本でヴィーガンを実践される方が増えるなかで草の根的に必要な取り組みだと考えています。

 

ーーそんなブイクックが、2024年6月にオープンしたのがヴィーガン寿司専門店「Vegan Sushi Tokyo」ですよね。なぜ、このお店をオープンしたのでしょうか?

工藤もともと僕たちは、ヴィーガン生活を簡単にするという目標を達成するためならなんでもやろうと思っていました。だから、レシピ投稿サイトのようなインターネット事業もやってきたし、ECサイトや宅配弁当の事業もやってきていて、そこに飲食事業が入ってくる可能性も大いにありました。

でも、なぜ今になって飲食事業に軸を移したのかというと、より早く自分たちが成長することで、より目標の達成に近づくと思ったから。より確実にヴィーガンを続けやすい環境を作ったり、ヴィーガンを増やしたりするためには、自分たちがお金や人、情報や技術といったものを身につけなければならなくて、そのためには会社の急成長が必要だと考えました。

今までの事業でももちろん、それぞれのお客様に向き合ってきましたが、数十万人が利用するサービスにはできていなかったんですよね。そこで、向き合う課題は変えずに、より大きな市場はどこかということを考えたときにインバウンド市場に辿り着き、調査や検証を経て「Vegan Sushi Tokyo」のオープンに至りました。

 

ヴィーガン寿司専門店を選んだ理由

ーー調査や検証の結果、ヴィーガン寿司を選んだとのことでしたが、具体的にどんな風にリサーチされていたのでしょうか?

工藤2024年の3月から5月中旬頃まで、世界から日本に来ているヴィーガンやベジタリアンの観光客100人にチームでヒアリングをしました。そんなに知り合いがいたわけではないので、ヴィーガンメニューのあるお店に行って、いきなり話しかけて、どんなことに困っているのかを聞きました。僕は英語が得意ではないので、録音させてもらって、あとで翻訳して確認したりもしました。

今までは、日本に住んでいる日本人のヴィーガンの方々が対象だったので僕自身の感覚と近いところもあったのですが、今回はそうでもなくて。「自販機って珍しい」とか「ポケモンセンターはすごく魅力的」とかそんな話もあって、一からヒアリングさせてもらいインサイトを集めるのに苦労しました。

ヒアリングさせてもらった方々との写真

 

ーー今までは日本に住む人々が主な顧客だったと思うのですが、少し広く「日本のヴィーガン市場にいる人」が対象になったんですね。

吉川誰もがヴィーガンを選択できる社会を目指しているので、もともと国籍や居住地は問わず、できることはしたいと考えていました。今は、自分たちがサービスを提供できる範囲が日本であり、世界中から日本に来る観光客の方々がいるので、そこがマッチした状態です。

でも、「Vegan Sushi Tokyo」の拡大を皮切りに、他の飲食店やホテルなどもヴィーガンメニューを出してくれるようになったら、観光客の方はもちろん、私たちも含む日本在住のヴィーガンの選択肢も広がるんですよね。

 

ーー「Vegan Sushi Tokyo」は東京初のヴィーガン寿司専門店と謳っていますが、東京以外の場所では日本国内にヴィーガン寿司専門店はあるのでしょうか?

吉川京都などにはヴィーガン寿司の専門店があります。他にも、専門ではなくても、京都や大阪でメニューにヴィーガンネタを加えているお店もあります。

とはいえ、ヴィーガン料理を専門とする飲食店自体少ないですし、その中でもお寿司屋さんはとりわけ少ないと思います。そもそもお寿司自体、専門性が高い料理ですし、盛り付けなど見た目の部分でもハードルの高さがありますよね。

 

ーーそんな中で、「Vegan Sushi Tokyo」ではどのようにレシピを考えましたか?

工藤先ほどお話しした通り、事前にヒアリングをたくさんしていたので、お客さんが求めているものはわかっていたんですよね。だから、それをどうやって実現するのか、という点で工夫しました。

レシピのクオリティを上げるために、野菜寿司職人の谷水晃さんからアドバイスもいただきました。食材の切り方、味付けなど、一個一個フィードバックをいただいて、どんどん改善していきました。

ただ、自分たちは飲食事業が初なので、そもそもどこから食材を仕入れるのか、植物性の代替食品を使うとなったときにどうしたら美味しくなるか、など考える点はたくさんあって難しかったです。

植物性原料で作られた卵といくらのお寿司

 

ーー初めての挑戦が多かったと思いますが、逆に今まで他の事業で培ってきたことが、今回の事業でも活かされていると感じる場面はありますか?

工藤最初に思いついたアイデアに固執しないことが全てだなと思います。「絶対にこれだ!」と最初からアイデアありきで取り組むのではなくて、仮説検証をしてダメだったら、そのアイデアは捨てて、別のアイデアを出す。前はこれが頭ではわかっていてもなかなかできなかったのですが、だんだんできるようになってきたと感じています。

たとえば、今回新しい事業を考えるにあたって、今までECサイトをやってきたことを活かして、その商品をカフェやレストランなどに卸すというアイデアもあったんですよ。でも実際に、飲食店にヒアリングするとそんなものは求められていなくて。

そこでフラットに考え直して、飲食店を自分たちでやるというアイデアが出てきたのは、今までの積み重ねがあったからかなと思います。近道しようとして上手いことやろうとしてもしょうがない。急がば回れですね。

 

オープンから半年でGoogleマップで270以上のレビュー、星4.9を獲得

ーー店舗運営の面でも、これまでと異なるノウハウが必要だと思うのですが、どのようにオペレーションを確立してきましたか?

吉川最初はアルバイトスタッフも雇わず、新規事業開発のコアメンバー3人がオープンからほぼ毎日お店に立って、仕込みからクローズまでやってきました。私たちの中には、飲食店の経験者がほぼいないので、毎日手探りでやっと整ってきたところです。

改善の繰り返しで、作業の導線や、お客様への声掛けなど細かい部分まで毎日調整しています。営業後には日報を書いて、よかった点・改善点の両方をみんなで意見して、すぐに実践するようにしています。

飲食事業をやる前には、週単位とか月単位での分析・改善になることが多かったのですが、今は1日ごとに改善が考えられるので、より前に進めている感覚があって楽しいです。

 

ーー実際、お店を訪れるお客様からはどんな反応がありますか?

吉川嬉しい反応をたくさんいただいています。オープンからまだ半年も経っていない(*)のですが、Googleマップでは270以上のレビュー・星4.9をいただいています。

お店でも、お寿司のプレートを持って行ったらお客様が拍手してくれたり、食べた後に「今まで食べたヴィーガン料理の中で一番美味しかった」って言ってくれたり。今までの事業では直接商品を手渡しする場面はほとんどなかったので、こういった感情・表情を目の前で見れることは飲食店ならではのやりがいであり楽しさだなと思います。

(*)11月下旬時点

 

ーーここまで「Vegan Sushi Tokyo」を運営してきて、お店の強みや勝ち筋は見えてきましたか?

工藤インサイトドリブンなチームで運営していることは、僕たちの強みだと思います。お客さんの行動や反応を見て、何を求められているのか考えて、毎日改善していたら、絶対に良いお店になると思うんですよ。

でも、それをきちんと実践できているお店って意外と少ないなと思っています。もちろん、決まったオペレーション、決まったメニューで効率よく回すのも良いと思います。でも、毎日改善点を見つけて、すぐに変えることができるのは、僕たちのチームの良いところだし、それ自体が勝ち筋だと思います。

お客さんが求めていることを軸に細かくPDCAを回せるのはスタートアップだからこその強みだなと思っています。

 

さらなる拡大を目指して、熱意ある仲間を募集中

ーー今後、さらに力を入れたい点や、課題に感じている点はありますか?

工藤これから、採用と組織づくりにもっと力を入れていきたいですね。2024年3月から、とにかく事業を成立させることに重点を置いていたのですが、少しずつスケールさせるフェーズにやってきたので、2店舗目、3店舗目も視野に入れてスタッフを採用したいんです。

具体的には2つのポジションで募集しています。1つは、アルバイトスタッフとして開店前の準備、営業中のオペレーション、閉店後の片付けなどを担うポジション。もう1つは店長候補として、お店を安定して回すことはもちろん、お店の成長まで考えていろいろな施策を考え実行してもらうポジション。そういった仲間を増やして会社を拡大していきたいです。

 

ーーどんな人が、「Vegan Sushi Tokyo」で働くのに向いていますか?

吉川1番は「誰もがヴィーガンを選択できる社会をつくる」というブイクックのミッションに共感してくれる人ですね。もっと、日本でヴィーガンの選択肢を増やしたいと思っている人にはぜひ来てほしいです。

少し話は逸れますが、今の日本は他の先進諸国よりもヴィーガン・ベジタリアンの人数が少ないんですよ。だから供給も少ない。それもあって、ヴィーガンに興味を持ってもなかなか始められなかったり、途中で辞める人も多いんですよね。

そんな中で、たまたま今、インバウンド需要が増していて、世界中のヴィーガン・ベジタリアンの人が日本にたくさんやってくる。ヴィーガン業界的には変革の貴重なチャンスなんです。だから、日本でヴィーガンの選択肢を増やしたいという熱量のある人はぜひ!

スキル面では、アルバイトスタッフの方は料理も英語も最初はできなくても大丈夫です。熱意をもって働いてくださる方なら、一緒に働いているうちに自然と能力が向上すると思います。店長候補の方は、飲食店での勤務経験は必須です。でも、英語は得意でなくとも、苦手意識なくやってみようと思ってくださる方なら大丈夫だと思います。

店内は和洋折衷な雰囲気を醸し出している

 

ーー最後に、改めて、ブイクックという会社として今後の目標を教えてください。

工藤2020年の創業以来、事業は変わってきましたが、実現したい社会像はずっと変わっていないんですよね。誰もがヴィーガンを選択できる社会に向けて、手段や順序を模索しながら進んできたのがこの4年半でした。

そして、その中で今やっと日本のヴィーガン業界が盛り上がるタイミングがやってきたので、このチャンスをしっかり掴みたいです。うまくいくことばかりではなくて、4年くらいずっと土の中で根を張り続けてきて、やっと今年、芽が出たところです。ここからは、大木になることを目指して成長していく時期なのかなと思います。

そして、日本のヴィーガン環境が整うきっかけをつくりたいです。僕らがヴィーガン寿司店を日本で20店舗つくったとて、それだけでは日本のヴィーガンの人の困り事全ては解決できません。だから、自分たちのお店だけがうまくいっていれば良いとは思っていなくて、自分たちが成功事例をつくって、そこで得たノウハウを共有して、どのお店でもヴィーガンメニューを選択できる社会を目指してます。

それによって日本でもヴィーガン料理を選択する人が増え、結果的に環境問題や動物倫理の問題の改善・解決にも繋げていきます。

 

Vegan Sushi Tokyoでは一緒に働く仲間を募集中です。詳細はこちらをご覧ください。

https://doc.vcook.co.jp/recruit_vegansushitokyo

 

株式会社ブイクック https://vcook.co.jp/

Vegan Sushi Tokyo https://vcook.co.jp/vegansushitokyo/jp

 

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    企画・取材・編集

    張沙英

    餃子と抹茶大好き人間。気づけばけっこうな音量で歌ってる。3人の甥っ子をこよなく愛する叔母ばか。

     

    執筆

    白鳥菜都

    ライター・エディター。好きな食べ物はえび、みかん、辛いもの。

     

     

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