【工藤柊×中村多伽】(前編)talikiファンド設立。資金調達で事業と社会課題解決を加速させる

2020年12月、株式会社talikiは社会起業家へ出資する投資ファンドを設立した。その出資先第1号となったのが、株式会社ブイクックだ。起業家と投資家という関係になった工藤柊と中村多伽による今回の対談では、ブイクックが出資を受けることにした理由や、それぞれが出資先・出資元としてお互いを選んだ理由を語る。

【プロフィール】
・工藤 柊(くどう しゅう)
株式会社ブイクック代表取締役。ヴィーガン料理のレシピ投稿サイトやヴィーガン惣菜の定期宅配サービス「ブイクックデリ」を運営する。自身も高校3年生の時から、環境問題と動物倫理の観点からヴィーガンを実践。1999年生まれ。
株式会社ブイクック代表取締役・工藤さんのインタビュー記事はこちら

80年後も変わらず桜を見るために。ヴィーガン実践のビジネス

 

・中村 多伽(なかむら たか)
2017年に京都で起業家を支援する仕組みを作るため、talikiを立ち上げる。創業当時から実施しているU30の社会課題を解決する事業の立ち上げ支援を行うプログラム提供の他に、現在は上場企業のオープンイノベーション案件や、地域の金融機関やベンチャーキャピタルと連携して起業家に対する出資のサポートも行なっている。
株式会社taliki代表取締役・中村のインタビュー記事はこちら

経済的成功はgiveの精神から【前編】

ヴィーガン惣菜の定期宅配サービスを開始

―お二人の出会いについて教えてください。

中村多伽(以下、中村):talikiが2019年の11月から3ヶ月間運営していた社会課題を解決する起業家のアクセラレーションプログラム「アトマンプロジェクト」に工藤くんが参加してくれたのが出会いです。もともとコミュニティは近くて、なんとなく存在は知っていたけれど、初めてちゃんと話したのはその時かな。

 

工藤柊(以下、工藤):アトマンプロジェクトの時は、自分はまだ法人化もしていなくて。一方、サービスはすでにあったので、その方向性を一緒に考えてくれていました。前回のインタビュー(2020年4月)でもお話ししたヴィーガンレシピ本などは、まさにこのプログラムで相談していたものです。

 

―昨年のインタビュー以降は、どのようなことに取り組まれてきたのでしょうか?

工藤:インタビューでは既存のレストランや宿泊業者といった外食サービスに、ヴィーガンコンサルとして関わっていきたいと話したと思います。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で飲食店自体が大変な状況であることや、ヴィーガン需要の高まりが予想されるオリンピックが延期になったことを考慮して、事業の方向性を転換しました。ずっと行っていたヴィーガンレシピの投稿サイトと並行して、すでにサービスを使っていただいている方に新たに使ってもらえるサービスや商品を作っていこうとなったんです。

 

―そういった背景もあり、ヴィーガン惣菜の定期宅配サービス「ブイクックデリ」を始められたのですね。

工藤:そうですね。昨年の6月頃にシェフの方にお声がけいただいたのが始まりでした。「ヴィーガンのお弁当って良さそうだな」というところから始まって、ヴィーガン惣菜を冷凍で定期宅配するアイデアが生まれたんです。そこからは社内にチームを作って、ヒアリングなどを進めながら同時に製造パートナーを探して一気に進めましたね。クラウドファンディングを実施し、支援者の方々にブイクックデリをお試しいただいてアンケートやヒアリングを重ねました。そして2月に100名限定で事前予約を受け付け、3月1日から本格的にサービスをスタートさせた段階です。

 

社会起業家を支援するファンドの設立

―一方で、talikiでは投資ファンドを組成しましたね。

中村:社会課題をビジネスで解決することを目的にしている成長企業への出資を行うファンドを作りました。(プレスリリースはこちら

投資方針としては、(1)社会課題の解決を目的にビジネスをしていること(2)拡大志向を持っていること(3)事業をやめないこと という3つの軸を置いています。

事業で利益を上げてから社会貢献にお金を使うという考えの企業もあるし、それ自体は素敵なことだと思うんですが、社会課題解決が目的になってない以上、社会課題を解決しなくても事業が存続するということですよね。talikiは、社会課題を解決する人を増やし応援することをビジョンに掲げているので、そういう意味で社会課題の解決が目的かどうかというのが1つ目です。

2つ目の拡大志向を持っているかどうかは、事業の持続性という観点から挙げました。スモールビジネスや非営利団体を否定しているわけではありません。ただ、私自身が非営利団体で活動したり報道局で働いたりして、様々な社会課題を目の当たりにする中で、売上や関与人数に対して拡大志向がないと活動を持続すること自体が難しいなって感じたんです。例えば、月30万円の売上があれば生きていけるという考えもあると思います。でも飲食店向けのサービスだったとすると、今回のコロナ禍で一気に事業が手詰まりになる。かつ、月に30万円だときっとサービスの改善にも手が回せていない状況だと思うんです。それって実は持続可能性が低いギリギリの状態だなって。事業を成長させることによって、事業の改善や新しい事業への投資ができ、それに伴って売り上げだけじゃなくユーザーや社会に与えるインパクトも拡大する。そう考えると、拡大志向がある方が組織として強くなるし課題解決能力も高くなっていくという意味で設定した軸です。

最後は、やめないこと。これは私自身が3年間事業を続けてきて感じていることですが、同じ理念を持ち、同じ領域に挑戦していても、1年目と3年目では集まってくるリソースが全然違うんです。たとえ計画通りに行っていなくても、愚直に続けていれば結果的に成果が出るというのを肌で感じていて。だからこそ、やめないって大事だなと思っています。

 

工藤:1つ目の「社会課題の解決を目的にビジネスをしていること」に対しては、同じ想いがあって。僕も個人やNPOとしてヴィーガンの発信をしてきた時期もあったけど、情報発信をして誰かの行動に影響を与えられた先に、自分たちにも経済合理性がないとやり続けられないと感じたことがあります。活動家の発信を見て課題意識を持った人が、実際に買うものって、発信している人のプロダクトじゃないんです。それがすごく嫌で。情報を発信して人の価値観や行動に影響を与えるってすごいことだと思うんです。そんな人たちが、自分の休日や給料を割いて頑張っているけど、結局影響を受けた人がお金を払うのは既存の商品で、活動家ではなくメーカーや業者にお金が流れる。そうなると情報発信も続けられなくなるよなと。だからこそ、発信を見た方がヴィーガンに取り組みたいと思ったときに、僕たちの提供するサービスやプロダクトを使ってもらえる仕組みにしたいです。その土台を作った上で、社会課題の発信を行うことで、持続的により良い社会にするために取り組んでいけると思っています。

 

持続可能性の大切さ

中村:「社会課題の解決って儲からないじゃないですか」って言われることも多いのですが、実は経済合理性に対して普通の起業家より綿密に考えている社会起業家はたくさんいると思っています。彼らの多くは、ボランティアでの活動を経験していて、その中で成し遂げたい目標に対する経済的な制約を感じているんですね。ボランティアや非営利団体にしかできないこともたくさんあるので、そこは役割分担だと思っていますが、ビジネスだからこそできることを模索し取り組むようになった人も多いです。

非営利団体と営利団体、つまりNPOと株式会社の違いって、事業内容ではなく配当の仕方なんです。全く同じ事業を工藤くんがNPOでやっていたとしても、株式で資金調達ができないので、どうしても調達の額面が小さくなりがちになる。どうしてかというと、団体から配当ができないからです。要は、出資してくれた分の経済的なリターンを返せないという法律的な決まりがあるので、そういう意味で事業の拡大の難しさがあるんです。

 

工藤:僕はもともとNPOでも売り上げを立てて持続できると証明したかったのですが、力及ばず株式会社に転換しました。今は社会課題解決を目的に、株式会社として挑んでいるので、社会課題の解決をしつつ事業もうまくいくということを示したいですし、社会課題に取り組もうとしている人たちの事例の1つになれたらいいなって思っています。

 

―3軸を満たすのが工藤さんだったのですね。

中村:工藤くんは非営利で活動することの難しさを実感した上でビジネスに転換しているので、社会課題の解決を目的にビジネスをするということに大きな意義を感じていると思っています。やめないというのも同じで、いつでもやめられる雰囲気の中、高校3年生からずっとヴィーガンを続けている。きっとこの子は、この課題に取り組み続けないと死んじゃうんだろうな、応援したいなと。拡大志向についてはこのあと話に出てくると思いますが、3軸においてダントツだなと思ったのと、関係値も深いことから、出資の1号案件にさせていただきました。

talikiファンド設立発表記者会見での1枚

 

事業を加速させるために資金調達を決めた

―工藤さんは、どうしてこのタイミングで出資を受けることを決められたのですか?

工藤:本当は、できるところまでは自己資金や融資でいいと思っていたんです。ただ最近思うところが2つあって、1つはヴィーガンが日本社会に浸透し始めていると感じたことです。僕たちと同じスタートアップが生まれたり、大手企業が取り組み始めたりと、ヴィーガンに取り組む他のプレイヤーが増えてきました。また、インフルエンサーがヴィーガンの発信を始めるなど、僕が想定していたよりも早く社会が進み始めたなと思います。今まではヴィーガンの広まりに合わせて少しずつ事業も育てていこうと思っていましたが、のんびりしていられないと思ったのが大きな理由です。

2つ目は、社内の話になるのですが、一緒に働きたい人やフルタイムで働いて欲しい人がいる一方、お金の問題で叶わないという状況にあったことですね。この2点を踏まえて、今回出資していただく流れになりました。

 

中村:エンジェル投資家からだけ出資してもらって、イグジット(ここではIPOやM&Aなどの株式の流動化を指す)の責任を背負わないやり方もあったと思うし、実際にいろんな方のお話を聞いていたと思うけど、どうしてtalikiファンドに決めてくれたの?

 

工藤:事業を拡大させるという志向が2020年に育まれました。というのも友人が、自分の価値観と完全には一致しない企業に就職する話を聞いたからです。彼女は、ヴィーガンを実践しているのですが、会社は動物性の食品を扱っていて、そこにもやもやを抱えているらしくて。こういった話はヴィーガンの中だと割とあるんです。例えば、デザイナーの方は動物倫理の観点からヴィーガンを実践しているのに、お肉のパッケージを作るために生産過程を見に行かなくちゃいけないみたいな。こういう話を聞いて、こういう人たちがもっと気持ちよく働ける場所を作りたいなという想いも生まれ、そのために会社を大きくしたいと思うようになりました。そもそも会社を大きくしてIPOを目指すつもりだったから出資を受けること自体はあまり悩まなかったです。

期限が決められていて、そこに向かってサポートしてくださるならVCでもエンジェルでも問題なかったのですが、色んな方とお話ししてみて一番理解があるのがtalikiだなと思ってtalikiに決めました。もともと関係があって応援してくれていたのも理由の1つですが、何よりtalikiの「生まれてきてよかったと思える世界に」というビジョンを僕自身が大事にしていることが一番の理由かもしれません。僕も生まれてきて良かったと思える瞬間や人に出会えたことで頑張って生きてこられているなって感じているので、自分もそういうプロダクトやサービスを作りたいという想いで事業に取り組んでいます。

 

中村:VCのビジョンに共感して出資を受けるって、ありそうで意外とない例かもしれないね。

 

工藤:出資してもらう立場ではあるけれど、talikiがやっている”社会課題に取り組む起業家を応援すること”は僕も応援したいし、一緒にやっていきたいと思っているので。僕が今ヴィーガンに取り組んでるのって、自分が当事者で、一番役に立てるだろうなって領域だったからなんです。だから、課題意識としては、動物倫理や環境問題だけじゃなくて他にもたくさんあるんですよね。教育や貧困といった他の課題にもいつか取り組めたらいいなと思っています。

 

中村:ぜひ会社が大きくなったら、talikiファンドに出資してください(笑)。

 

工藤:あとは、多伽さん自身が起業家だからですかね。多伽さんが起業家として経験していることもあるから、同じ立場として意見をくれたり、起業家の気持ちを理解した上での言動があるところがすごくいいなと思ったポイントです。

 

中村:そう言ってもらえると嬉しいですね。私も投資家や支援者としてだけではなく、起業家としてももっと頑張っていきたいな。

 

株式会社ブイクック https://www.vcook.co.jp/
talikiファンド https://taliki.vc/

後編では、出資を受けることでブイクックの事業がどう進んでいくのかを聞く。また、社会課題に事業で取り組むということについて、当事者であるお二人に考えを語ってもらった。

 

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writer

細川ひかり

生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。