【前編】経済的成功はgiveの精神から

より多くの人に「生まれてきてよかった」と思って欲しい。そんな思いを持って、京都でtalikiを立ち上げた起業家、中村多伽。目の前の人が必要としているものは何か。地域をも巻き込んでその問いに向き合い続けていく、彼女のこだわりに迫る。

【プロフィール】中村多伽(なかむら たか)

大学4年の時に周りの起業家志望の友人が京都では起業できないと言っているのを聞き、それではもったいないという思いから、2017年に京都にも起業家を支援する仕組みを作るため、talikiを立ち上げる。創業当時から実施している、U30の社会課題を解決する事業の立ち上げ支援を行うプログラム提供に止まらず、現在は上場企業のオープンイノベーション案件や、地域の金融機関やベンチャーキャピタルと連携して起業家に対する出資のサポートも行なっている。

 

京都でしか生まれないものがある

—プロフィールを拝見すると、起業家支援だけでなく、上場企業やVCの方々とも連携した取り組みをされているのですね。さらに、今年中村さんは関西財界セミナー(※関西の企業経営者が年に一度、一堂に会し、国、地域、企業経営のあり方を議論する場)にて「輝く女性賞」を受賞されたそうですが、やはりこれは京都や関西の地域との関係性を重視されてきたからの受賞ではないでしょうか。どのような思いで地域との関係性を築いてこられたのですか?

私は、京都とか関西に特別な思い入れがあったわけではなく、東京生まれ東京育ちで大学から京都に来て、今に至ります。関西は圧倒的に東京より手段や情報が少ないとはよく言われますが、ここでしか生まれないものがあるという特殊な環境だと思っています。例えば、京都は学生密度日本一なんですよね。こんなに狭いところに本当にたくさん大学がある。それに加え、大手メーカーのような一部上場企業をはじめ、例えばその部品を作る高い技術を持った中小企業や、もちろん大学に付随した研究機関もあります。色々な面白いものを作るための要素が揃っているからこそ、この要素を生かして、東京と比べてでも世界と比べてでもなく、今ここでしかできないものを作ろうと思ってやっていたら、結果的に地域に貢献することになったという感じですね。

 

相手の5年後、10年後の未来を一緒に定義する

—様々なセクターと、どのようなきっかけで連携されてきたのでしょうか?

もともと、特にコネもないしお金もない若い起業家が、社会にいいことをしているのに支援されないのはおかしいなって思っていました。彼らが前進するためには私たち単体の力だけではなく、お金を出してくれる方、新しい顧客を紹介してくれる方、一緒に商品を作ってくれる方など、いろんな人が大事になってくるので、その人たちが起業家を応援したいと思えるような環境を作ろうと連携をしていきました。結局、私がそのような関係性構築の中で大事にしてるものは、ダサいものを作りたくない、意味のないものやそれっぽいだけで終わるものを作りたくないという思いです。そうなると相手が起業家じゃなくても目の前の人が何を求めていて、かつ、5年後10年後どうなっているべきなのかを一緒に定義していく必要があって。自分のこと将来まで考えてやるべきことを一緒にやってくれる人なんて世の中になかなかいないじゃないですか(笑)。だからたくさんの方から目をかけてもらったり期待もしてもらったりしているのかなというのは思います。

 

—実際に、地域の方々と協業してみて、全く想像していなかった新しい気づきや発見はありましたか?

たぶん毎日ですね(笑)。例えば、そうは言ってもやっぱり5年後10年後のことを真剣に考えることが、そこまで優先順位が高くないこともあるんですよね。本質的で10年後の社会にとっても自分の会社にとっても一番良い影響を与えることがあったとしても、会社では半期の数字を追っていかなければならない立場だったり、ジョブローテが多い公的機関では3年後同じポジションと同じ責任を負っているわけではなかったり。だから、「将来的にこっちの方が絶対いい」が当たり前じゃないという驚きはありました(笑)。ポジティブなこととしては、京都や関西は関係性をとても大事にするんですよね。誰から紹介されたかとか誰がお願いしてきたかというのが、東京と比べると重視されているように思います。なので、一度中に入れば本当にいろんな方が総出で応援してくれる。昨日もとある金融機関の方から「生きてるか?」ってメッセージが来て、「生きてます。金融機関も大変ですよね」とかって言ったら、「まあなるようになるよ。ちゃんとご飯食べて手洗いうがいしてな」って、お父さん?みたいな(笑)。東京や以前働いていてたニューヨークでは”Business is business(=ビジネスに個人的感情は不要)”が比較的強かったのに対して、京都ではビジネスの関係から始まったのに、ビジネス以上の関係の深さや温かさを感じられます。関係性とは、オンオフや一時的な損得ではなく、「様々な色や繋がりを重ねて時間と共に紡いでいくもの」ということを京都の方々から学びました

 

言葉で伝わらないなら、結果で見せる

—半期のビジネスの成果だけではなく、5年後10年後を一緒に定義する提案に賛同を得るというのは一筋縄では行かないと思うのですが、相手に納得してもらうためにどのような伝え方をしているのですか?

結果でみせるしかないです。言葉では伝わらないんですよ。このままいったら今はいいけど、5年後10年後のためにこうした方がいいですよって突然外部の小娘に言われても、「じゃあ切り替えます」ってならないですよね。組織が大きいと余計なりづらいと思います。それに、京都という土地柄もあるかもしれないですが、最初は様子見されるんですよね。だから言葉で説得するのってほぼ無理で、最初は納得してもらえないならもう自分でやるわ、みたいな感じが多かったかも。心の中でそう思いながらやっていく中で、たまたまお会いした方が見返りを求めずに応援してくださったり、一緒に進めてくださったりして。やっとここ半年くらいで2年間の結果が出てきて、いろんな方が取り組みを認めてくれ始めたのを感じます

後編では、地域にも起業家にも愛されている背景にある、創業から変わらない一貫した思いを聞きました。

後編記事はこちら 経済的成功はgiveの精神から【後編】

株式会社taliki  https://www.taliki.co.jp/

撮影:原田透

 

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    interviewer

    河嶋可歩

    インドネシアを愛する大学生。子ども全般無償の愛が湧きます。人生ポジティバーなので毎日何かしら幸せ。

     

    writer

    堂前ひいな

    幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。

     
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