固定観念に囚われない仲間たちと障害者の「環境」を変えていく。事業拡大に向け求める人物とは

デジタルアートとセンサーを活用したリハビリツール「デジリハ」を提供している株式会社デジリハ。ゼネラルマネージャーを務める仲村佳奈子さんと広報の加藤さくらさんは「リハビリは苦しいもの」という固定観念を壊し、子どものリハビリをより主体的で、効果的なものにしたいと語る。お二人に事業や組織のリアルと併せて、会社が求める人物像について聞いた。

デジリハでは現在採用活動を行っています。詳しくはこちら。https://www.wantedly.com/projects/1252870

※情報開示:デジリハはtalikiファンドの出資先企業です。

【プロフィール】
・仲村 佳奈子(なかむら かなこ)写真・右から2番目
株式会社デジリハ ゼネラルマネージャー、英国在住。理学療法士として障害のある子ども達と関わり続ける中で「子どもらしく生きられる世の中とは?」という疑問を持つ。海外青年協力隊に参加するなどして自分の道を模索中にデジリハと出会い、今に至る。

 

・加藤 さくら(かとう さくら)写真・右から5番目
株式会社デジリハ広報担当。医療的ケア児を育てる当事者の立場から「リハビリ=辛い」という概念に違和感を持つように。旧友であったデジリハの代表、岡勇樹氏と共にデジリハを創案。

 

リハビリの現場で感じた無力感と違和感

ーー以前代表の岡さんにインタビューをさせていただきました。1年ほど経過しましたので現在の状況を教えていただけますか?

仲村佳奈子(以下、仲村):2年前にサービスインしたデジリハも、今では子ども医療福祉施設をはじめ、18歳以上の成人年齢を迎えた方が入る障害者施設、リハビリ専門病院など全国33施設で導入されています。株式会社デジリハとしては従業員8名でここまで来ましたが、さらなる事業拡大を目指して現在CS(カスタマーサクセス)、営業のポジションで人員募集をしています。

 

ーーありがとうございます。それではお二人についても教えてください。まず担当業務を教えていただけますか?

仲村:現在はゼネラルマネージャーとして全体の統括をしています。業務内容は幅広く、人員が足りていない部署をカバーしている状況です。最近では医療福祉施設のユーザーさんや専門家の方々にヒアリングを重ねながら、各施設に適したデジリハ活用法をご提案させていただくことが多いですね。

加藤さくら(以下、加藤):私はデジリハの内部と外部両軸で活動しています。内部としてはデジリハの広報以外に、2023年から「デジリハの保健室」を担当することになりました。要はスタッフのメンタルヘルスを保つための母の役割です。デジリハとは関わりのない外部案件も医療的ケア児を持つ親として積極的に引き受けています。それらすべての活動が結局はデジリハに還元されていて広い意味での広報を担っているという感じです。たとえば当事者としてメディアからの依頼を受けることがあるのですが、メディア運営をする人達とのつながりがデジリハの広報に活かせることも。

普段から福祉以外の業界の人ともつながるように意識しているんです。ひとつの業界にだけどっぷり浸かっていると固定観念に囚われてしまいそうで。特に「福祉」や「障害」というと特別なものになりすぎて、それがバリアを作ってしまっている気がします。バリアをなくしていくためにも幅広く活動しているんです。

仲村:加藤は「生きるデジリハの看板」なんですよ!(笑)

 

ーーどのような経緯でデジリハで働くようになったのですか?

仲村:私は元々、理学療法士として大学病院に勤務していました。NICU(新生児集中治療室)や小児施設での勤務を経ての担当を経て、1人のお子さんに一専門職がリハビリを提供できる時間はとても限られていると感じました。多くのリハビリ時間が必要な子にも関わらず、例えば月に2回40分程度の機会しかないことが多いです。「月の数十分で私に何か変えられるのだろうか」と無力感に苛まれました。

具体的な解決策は見つからないものの、何もせず立ち止まってもいられずJICA海外協力隊へ参加することに。2年間理学療法士としてグアテマラに赴任したのですが、現地で出会った首が座らない5歳児の子に対して、何のアドバイスも提示できませんでした。ここでも専門家としての限界を感じてしまったんですよね。

視点を変えてもっと社会の側からアプローチできないかと模索している中で、今から5年前デジリハに出会いました。当時、別でフルタイムの仕事をしていたこともあり、週1回だけでも関わってもらえないかと岡から依頼されました。それが今ではゼネラルマネージャーです。

 

ーーどうなるかわからないものですね。加藤さんのストーリーも教えていただけますか?

加藤:子どもが生まれる前の話に遡りますが、私は学生時代の留学経験を活かして英会話教室に勤めていました。しかし次女を出産し、介護をする生活が始まると、組織に勤めることの難しさを痛感するようになりました。娘の入退院に立ち会う場合、休みの見通しが立てづらくていつも「すみません、すみません」と謝っていました。楽しいはずの子育てが辛くなっていて……。誰も悪くない、でもこの状況からは抜け出さないとダメだと思い、10年間の会社員生活に終止符を打ちました。それからはフリーランスで講師業、心理カウンセラーなど保有していた資格を活かして活動。

転機が訪れたのは2017年、当時NPO法人Ubdobe(ウブドべ)の代表を務めていた岡に再会したときですね。Ubdobeの広報をやらないかと誘われたんです。広報経験なんてなかったので手探りの状態が続きました。岡に悩みを吐露していた会話の中で、たまたま娘のリハビリの様子を話しました。

私の娘は楽しく生きたい子なのに、日々辛そうなリハビリの様子を見ていると「なぜ障害があるだけで毎日修行のような日々を過ごさないといけないのだろう」と思えてきました。「頑張れ、頑張れ」と言われるけど別に頑張らなくてもいいじゃないですか!生きているだけで。でもリハビリをしないと身体が固まってしまうし、リハビリ自体が大切なことはわかっているんです。だから楽しくリハビリするためにはエンタメ性が必要だ。そんな話を岡としていたところ、同時期にデジタル空間を創作していた岡に火がついてしまって。この会話をきっかけにどんどん話が進んで、流れと勢いとノリでここまで来ました。だからデジリハの母は私、父は岡なんて言われるんですよ。

 

人々を幸福にするカスタマイズ性

ーー福祉への関わり方はいろいろあると思いますが、デジリハで働く意義は何だと思いますか?

仲村:デジタルにはリハビリに大きなインパクトを与える可能性を感じます。障害がある子の個性・特性は多種多様。すべての人にぴったり合わせられるリハビリはアナログ環境では再現できないと思います。しかしデジタルであれば、いろんな特性に合わせて、色や大きさ、感度を変えたりカスタマイズできます。無限の可能性を秘めたデジタルツールの開発・普及に携わることで現場で感じた無力感を払拭できています。

また、医療福祉施設の方にとっても試せる範囲は広いので、「この方にはこの刺激がよかった、こういう使い方がワークした」など調整しながらご利用いただいています。さまざまな事例を他の事業所さんにも共有していくことで、ユーザーの皆さんと一緒にデジリハを発展させてもらっているんです。

加藤:カスタマイズできるという点に私もとても意義を感じています。例えばうちの子は握力がなくてボタンも押せない、手も上げられない。障害があるから遊べないと言われてしまうんですが、おもちゃ側のデザインが固定されていることに問題を感じるんです。センサーであれば子どもの動きに合わせられる。だから誰でも遊べるし、誰でも何かを表現できるんですよね。

皆が「できた」という成功体験を積めるツールを広めていくことは本当に意義深いことです。リハビリで失敗経験があると子どもも親も挫けてしまい、「できない」の積み重ねで家族ごと自己肯定感が下がってしまうケースは多いんです。でもツールや周りの環境さえ改善していけば皆がハッピーに過ごせると思いませんか。

 

ーー岡さんも「障害とはその本人の状態にあるのではなく、本人を取り巻く環境にある」と言っていましたね。

加藤:本当にそう思います。デジリハに感じている魅力としてもう1つ言わせていただくと、デジリハは身体制限自体をアドバンテージにできるようなツールだと思っています。たとえ障害があって身体の制限が生じてきてもデジリハを使えば楽しく解決できる。そうした姿を見た周りの人は楽しそうと感じるかもしれないし、「いいだろう」と見せつける日がやってくるかもしれません。私はデジリハを使って、障害のある子も、その親も誰一人絶望しなくていい世の中を作れると信じています

 

「大人」という環境に変化を与える

ーーデジリハ創業時から関わり続けているお二人ですが、苦労したことは何ですか?

仲村:常に大変です(苦笑)。誰かが決めてくれたルーティンワークがないので、全部自分で考えて決めなくてはいけない。わからないことも多いのですが、ひとまず自分で調べて整理しながら行動してみるという日々です。そのサイクルを続けていく中で少しずつ最適解が見えてくるんですよね。大変ですが、それが楽しさでもあり、きついところでもあり、やりがいなのかなと思っています。

加藤:私の場合あまり苦しいことは覚えていませんが、まだデジリハの製品すらできあがっていないときのことは印象に残っています。協力者を集めるため、医療従事者の方に話をしに行くと全然理解してもらえなくて。当時は辛かったですが今は私の考え方が変わり、理解できない人を無理して引き込まなくてもいいかなと思っています。

 

ーー逆に一番嬉しかったことは何ですか?

仲村:ユーザーさんから喜びの声を聞けたときが一番嬉しいです!事業者さんが教えてくれた忘れられないエピソードがありまして。力が入らず手を上に挙げられない子がいて、どんなに頑張っても胸の下くらいまで挙げるのが限界だったんです。デジリハを使って頭上くらいの高さにクジラの映像を映し出したところ、その子が自分の頭の高さくらいまで手を挙げてピョンっとクジラを触ったと言うのです!

当然、突然筋力が向上したわけではなく、その子がやりたいと思ったから、パワーが発揮された事例です。子どもは何も変わっていなくて、環境を変えることでパフォーマンスが変わったんです。

職員一同驚いたのと同時に「私たち大人の方が無理だろうと、その子の限界を決めつけていた」ことに気づかれたとおっしゃっていました。大人は子どもにとって「環境」であり、その「環境」がデジリハを通して変わった最高のエピソードだなと思っています。

加藤:本当に子ども達が楽しく使ってくれている様子を見られるのはこの仕事のやりがいですよね。娘も実はデジリハを使い始めたころは筋力低下の傾向にあり、本人もどうせ無理だしという感じで、自分で手を動かさなくなっていたんです。それがデジリハを使って遊んでいたら自分でご飯を食べるようになったり、顎で弾いていたピアノを指で弾くようになったり、少しずつ自ら動かすようになって。動かし始めたら絵具を使ったアートにも新たに挑戦していて……。スパルタではなく、楽しく動かしながら本人のやる気を引き出せたのはデジリハのおかげだし、とても嬉しかったです。

 

ーーデジリハで働き始めてご自身の変化もありましたか?

仲村:そうですね。元々子どもに関わる医療福祉の世界を変えたいという想いはあるものの、何をどうしたらいいかわからない状態でした。自分一人では新しいアイディアを発想するのが苦手なタイプでして。でもデジリハのメンバーは岡を筆頭にアイディアを次から次へと考えてくれます。加えてこれまでお伝えしたとおりデジタルの力で福祉の世界を変えていける確信を持てました。デジリハに出会い当時抱えていたモヤモヤはなくなり、全力投球する場所が見つかったのは私にとって大きな変化です。

加藤:私の場合はデジリハが自分の人生に当たり前すぎて変化を語るのは難しいんですよね。何か特別なことをしている感覚はないですし、ツールとしてのデジリハも同様に特別なすごいモノではないと思っています。あえて言うのであれば「人々が元の姿に戻るためのツール」かなと。

 

ーー「人々が元の姿に戻るためのツール」と言いますと?

加藤:「楽しく生きる」、「みんながそのままでいい」、「重度障害のある子も自分の動きに合わせて遊べる」とか、すべての人間の本来あるべき姿じゃないですか。子ども達の動きの変化は目に見えるので注目されがちですが、本当は大人のマインドが変わることがデジリハの醍醐味なんですよね。

 

同じ想いを持ち集まるチームが求める人物像

ーー最後に今回募集中のポジションと求める人物像を教えていただけますか?

仲村:現在募集しているCSには2種類のポジションを設けています。1つがデジリハを導入してくれている医療福祉施設から現場の声をまとめるポジションで、専門知識を必要とします。リハビリ専門でなくても大丈夫ですが、福祉や介護業界での経験がある方にご応募いただきたいと思っています。

もう1つのCSポジションでは専門知識は不要です。ユーザー同士をつなぎ、お互い情報交換ができるようなコミュニティづくりを担っていただきたいと思っています。コミュニティマネージャーの経験やチームビルディングのスキルは大歓迎です。

また、営業では私たちのプロダクトであるデジリハを共に広めていってくれる仲間を探しています。医療福祉の経験はなくても大丈夫ですが、フットワーク軽くお客様とコミュニケーションをとれる方をお待ちしています。

リモートワークや業務委託など働き方はフレキシブルに対応しています。何より「想い」のある方をお待ちしています!私たちデジリハスタッフは一人ひとり、全然キャラクターが違い、個性豊かです。でもユーザーさんはもちろん、その先の社会全体を良くしていきたいという想いを全員が共通して持っているからこそ、チームとして結束されているんです。想いに溢れ、デジリハを通してご自身のミッションを成し遂げたいと思う方はぜひご応募ください。

デジリハでは現在採用活動を行っています。詳しくはこちら。https://www.wantedly.com/projects/1252870

株式会社デジリハ https://www.digireha.com/

 

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interviewer
張沙英
餃子と抹茶大好き人間。気づけばけっこうな音量で歌ってる。3人の甥っ子をこよなく愛する叔母ばか。

 

writer
河野照美
スラッシュワーカー。養育里親。「楽しく笑顔で社会課題と寄り添う」がモットーです。

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