あなたの健康・美から始めるサステナブルな選択。ブイクック × オリゼ × ラヴィステラ対談
2023年3月、丸井グループと当メディアを運営するtalikiが共創するインクルージョンフェス『インクルージョン×将来世代を紡ぐ起業家feat.taliki〜地球とあなたへ 春の優しいギフト〜』が開催される。5回目の開催となる今回は、6社の社会起業家が有楽町マルイに集う。本対談では、「健康・美 × サステナブル」をテーマに、消費者の実感をどう作るのか、経営判断における葛藤などについて聞いた。
【プロフィール】
・工藤 柊(くどう しゅう)写真、右上。
株式会社ブイクックCEO。ヴィーガン料理のレシピ投稿サイト『ブイクック』やヴィーガン商品専門ネットスーパー『ブイクックスーパー』を運営する。自身も高校3年生のときから、環境問題と動物倫理の観点からヴィーガンを実践。
工藤さんの過去のインタビュー記事はこちら:80年後も変わらず桜を見るために。ヴィーガン実践のビジネス
・小泉 泰英(こいずみ やすひで)写真、下。
宇都宮大学農学部在学中に米農家で働いたことをきっかけに、食と農をつなげる発酵の可能性に注目する。在学中の2018年5月に株式会社アグクル(現、株式会社オリゼ)を創業し、発酵を次世代に伝えることを目指して発酵食品の製造・販売を行う。
小泉さんの過去のインタビュー記事はこちら:発酵と美容、それぞれの文脈で麹を伝えたい。新たなブランド立ち上げの経緯に迫る
・野田 聡美(のだ さとみ)写真、左上。
株式会社ラヴィステラ代表取締役。小学生の時に動物愛護や環境問題に関心を持ち、ボランティアに携わる。
2019年に会社設立後、「7世代先も持続可能なビジネス」をモットーに、日本におけるサスティナブルな消費文化の普及と、人、動物、環境に優しいライフスタイルの普及に努める。
・中村 多伽(なかむら たか)
株式会社taliki代表取締役CEO。本対談のモデレーターを務める。
もくじ
大切な人へのギフトに
中村多伽(以下、中村):まず最初に、自己紹介をお願いします。
野田聡美(以下、野田):株式会社ラヴィステラ代表の野田聡美です。ヴィーガン、オーガニックのスキンケア商品を自社ブランドとして販売しています。よろしくお願いします。
小泉泰英(以下、小泉):株式会社オリゼ代表の小泉泰英です。私たちは、砂糖やはちみつなどの代わりとなる甘味料を米麹からつくっていて、その甘味料を使ってグラノーラなどいろんな商品を開発しています。よろしくお願いします。
工藤柊(以下、工藤):株式会社ブイクック代表の工藤柊です。ヴィーガン生活を支えることを目的に、現在はヴィーガンのレシピ投稿サイトや、ヴィーガン専門のECサイトを運営しています。みなさんのブランドを日頃から見ているので、今日はお話しできるのを楽しみにしていました。
中村:みなさん、よろしくお願いします!今回のPOPUPのテーマが「地球とあなたへ 春の優しいギフト」で、さらにちょうどホワイトデーの時期でもあります。そこで、みなさんの商品の中でギフトとしておすすめしたいものを教えてください。
野田:私たちのブランドの中で1番新しい商品である、「水を使わないスキンケアシリーズ」がおすすめです。このスキンケアは、長野県駒ヶ根の厳しい自然の中で育まれたオーガニックのハーブと果実を使ってつくられています。また、他の商品と同様、アブラヤシ由来のグリセリンを使用していません。熱帯雨林減少の原因の1つとして、アブラヤシ栽培のための大規模開拓があげられます。そこで、私たちはアブラヤシ以外のものからグリセリンを調達し、高い保湿感はそのままで環境にも配慮したスキンケアを開発しています。他にも、容器にバイオプラスチックを使用し、環境配慮を徹底しています。
このスキンケアシリーズは、子どもが生まれて健康や環境問題に意識が向いたお母さん世代に喜んでいただけるのではないかなと思っています。普段は自分自身にお金をかけづらいという子育て世代の方は多いと思うので、自分をいたわるご褒美スキンケアとしてプレゼントするのはいかがでしょうか。
中村:素敵ですね。私もぜひ試してみたいなと思いました。
工藤:私たちの今回のPOPUPにおけるメイン商品は代替肉です。最近はメディアに取り上げられることも多いので見たことがあるという方や、ヴィーガンの方でもまだ買ったことはないという方は多いと思います。POPUPでは実際に手に取ってみたり試食したりしてから買うことができるので、初めての方にもおすすめしやすいかなと思っています。
実は、代替肉は調理がすごく簡単なんです。冷凍されていて湯煎するだけで完成するとか、味が付いているから袋を開けて焼くだけとか。だから、新しく1人暮らしを始める方や新生活を始める方に、簡単で美味しく食べられるということで代替肉をプレゼントするのは良いんじゃないかなと思いますね。
中村:商品自体がヴィーガンというだけでなく調理も気軽っていうのが、新生活で忙しい人にぴったりですね。
小泉:オリゼではやっぱりグラノーラがギフトにおすすめです。グラノーラは味が8種類もあるので、相手のことを考えて「あの人だったらアールグレイが良いんじゃないかな」とか、「私が好きなこの味をプレゼントしよう」とか、ギフトを選ぶ側も楽しめるというのがおすすめポイントです。
今回のPOPUPでは、通常サイズのグラノーラだけでなく、いろんな味を1食分ずつまとめたギフトセットを用意する予定です。まだ私たちのグラノーラを食べたことない方でも気軽に試すことができるので、ギフトとして特におすすめしたいなと思いますね。
サステナビリティを実感してもらうために
中村:みなさんの共通点として、環境配慮やサステナビリティがあげられると思うのですが、環境に良いということを消費者が実感することや、その良さを可視化するのは難しいと感じます。お客さんが商品を手に取ったときに、まずは商品の良さを感じてもらって、その上で、地球環境に貢献した、より良い未来のためにアクションしたと実感できるような工夫があればぜひお聞きしたいです。
工藤:ヴィーガン商品を買ったり食べたりするときに、「より良い選択をしている」と実感してもらうことは、正直私たちもまだ十分には工夫できていないなと感じています。例えば、環境への意識がそこまで高くない方に、気軽にヴィーガンの商品を購入してもらい、それが実は環境問題へのアクションだと知ってもらうためにもっとできることがあると思います。
一方で、ヴィーガンの商品をが環境問題へのアクションになるとすでに知っている方に、「やっぱりこれを選んで良かったな」と思っていただけるような工夫はいくつかしています。例えば、商品が届くダンボールや同封するパンフレットの中に、「より良い選択のお手伝いをさせていただけて嬉しいです」などのメッセージを記載しています。こうすることで、やってて良かったなとか、理解してくれている人がいるんだという、ポジティブな気持ちを少しでも感じてもらえたらいいなと思っています。
中村:「一緒により良い未来を目指してくれてありがとう」、「そのためにブイクックを使ってくれてありがとう」というようなメッセージを伝えるということですね。仲間感が味わえて素敵だなと思いました。
小泉:私たちは昨年12月に、社名変更に伴い、FIVE WINの経営方針を掲げました。今後は、自社・生活者・生産者・地球環境・伝統文化の「五方良し」な経営を目指していきます。その中でも例えば、規格外米や古米を使うことでお米の食品ロスを削減するという取り組みは、サステナビリティにつながる点でお客さんにも実感してもらえたら嬉しいです。
一方で、私たちはサステナビリティをしっかりとブランドに落とし込んで取り組み始めたばかりなので、お客さんと一緒に勉強しながらブランドを成長させていきたいと思っています。ただ、将来的にはインパクト投資の文脈での資金調達や、B-corp(社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度)の取得も検討しているので、自分たちの取り組みの解像度が上がっていくにつれて定量的な可視化にも取り組んでいきたいです。
特に、私たちのバリューである「自己中心的利他」はぶらさずに持ち続けたいです。まずは、自分自身の美しさ、健康を大事にする。そして、自分が満たされたからこそ、そのポジティブな感情が他人や社会、地球の幸せにつながっていくというメッセージをお客さんにも伝えていけたらと思っています。
野田:私も「自己中心的利他」の考えにすごく共感します。まずは自分の健康に良いものを取り入れて、その先に環境問題などにも意識が向いていくのかなと思うので、長期的な目線で考えていく必要があると感じています。
私たちの取り組みとしては、まずオーガニックの配合率をパッケージに記載しています。また、ECサイトから商品をご購入いただいた場合、配送元からお客様のご自宅までの配送に関わったCO2を計算し、同量のCO2を削減できるよう森林保護活動をしている団体に寄付しています。
実際にお客様からは、この取り組みをしているから選んでいるとか、いろんなブランドの中でも1番環境に配慮しているから選んでいるというようなお声をいただくことがあります。
中村:ラヴィステラで買えば環境配慮がきちんとなされているはずだという安心感があるんですね。経営との両立もすごく難しいはずですが、サステナビリティを徹底されているのはさすがだなと思っています。
利益とサステナビリティの両方を追求
中村:みなさんのお話を聞く中で感じたのですが、消費者にとって便益を提供することと、サステナビリティを追求することの2つを両立するのが経営判断として難しいタイミングもあると思うんですよね。お三方がどうやって消費者の方にも社会にとっても良いものを作り続けられているのかお聞きしたいです。
小泉:普段はスタートアップとして事業を急速に成長させていくことを考えているんですが、事業の成長に全振りしてしまうのが怖いという感覚もあるんですよね。短期的な未来ではなく10年以上先の未来を考えたときに、そもそも会社が生き残り続けるためには持続可能性を追求する必要がある。基本的にはサステナビリティをそこまで意識せずに足し算の経営をしていくことも多いんですが、中長期で経営計画を考えるときにサステナビリティの観点が出てくるというイメージですね。
例えば、古米を有効活用しようと考えたのは、原価改善しないといけないけれど「五方良し」の軸を曲げずにやりたいという考えからでした。フードロスになりうる古米を伝統技術を使って良いものに仕上げながら、利益率も上げつつ商品としても持続可能なものにしようと考えたんです。それで今は、古米を仕入れれば仕入れるほどフードロスの削減につながるということを明確に信じることができているので、事業を進めるのみという感じです。
中村:なるほど。社会も経営も持続可能であるためには、経営判断の基本的な軸にサステナビリティの観点がないといけないということですね。
工藤:私たちとしては、環境負荷の高い動物性食品から、植物性の食品に変えることでCO2の排出量を下げることができるので、事業が成長しヴィーガン食を提供すればするほど環境にも良いと考えています。だからコアの事業成長と環境配慮の観点が相反することはあまりないと今は考えています。
ただ、ヴィーガンを選択することが当たり前になってきた場合は、製造や配送の過程などをさらにこだわっていく必要は出てくるかなと思っています。「社会に良い」ということがその商品が選ばれる理由にはならないないと思いますが、「社会に悪い」ということが選ばれない理由にはなると思うんです。例えば、過剰包装がされていたり、ここまで安いということは劣悪な労働環境で生産されているのかもと思ってしまったり。美味しい、便利、お得といった部分は人が感じる魅力として変わらないと思うのでその価値は高めつつ、「良いけど選ばれない」とならないようにサステナビリティの観点を入れていくのが大切だと考えています。
中村:みなさんのお話を伺って、事業成長とサステナビリティの追求が相反するタイミングの多くは商品のコアバリューに関してではなく、その周辺で生じるんだなと思いました。例えば、配送や包装などのサプライチェーン上の問題や、もっと利益率を高くしないといけないという圧力が外部からあった場合とか。
野田:私たちは最初パッケージも環境ファーストで、ガラス瓶を使ったりリサイクル率が高いものにこだわったりしていたんですが、どうしても利益率が低く、会社として売り上げが伸びてもなかなか手元に残らないという悪循環に陥っていました。そこからバランスを考え直すようになり、今はバイオプラスチックを使用しています。
日本では、以前は大きいロットからしか仕入れられなかったバイオプラスチックも、需要が高まるにつれて小さいロットでも発注できるようになりました。自社だけでこだわり続けるのではなく周囲のことも考えて、いろんな企業が取り組んでいくことで社会全体として変わっていくのかなと思うようになりましたね。
また、最近はカーボンオフセットなどの形で環境に還元していくところに注力していたり、動物愛護などのNPOさんと協力して紹介で買っていただくことで、売上の一部をNPOさんの活動にあてていただけるような仕組みも行なっています。
中村:すごく素敵な取り組みです。利益と環境配慮が相反するときに、その選択肢を捨てるのではなく、若干効果は落ちるかもしれないけれど、自分たちの理念を通せるような類似のオプションを常に探しているんですね。
事業を通して包摂したいものは?
中村:今回のPOPUPは、丸井グループが半年ごとに開催している「インクルージョンフェス」の一環として実施されます。このインクルージョンフェスには、社会のいろんな人や物事を包括して、多様な人の幸せに寄与するという想いが込められています。そこで最後に、みなさんが事業を通して取りこぼしたくないもの、排他したくないものは何か教えてください。
工藤:ブイクックが提供するプロダクトで、「自分はこのサービスを使えないんだ」と思う人をできるだけ少なくしたいと思っています。例えば、クレジットカードを持っていないから買えない、小麦アレルギーだから美味しそうなのに買えないとか。私が普通のスーパーに行ったときにヴィーガンだから感じてしまうような排他感をできるだけなくしたいと思っています。
あとは、アクセシビリティも高めていきたいです。視覚障害があってもサービスを利用できるように、それぞれの画像に音声説明を付けるなどの取り組みを始めています。気づいたところから努力していきたいです。
中村:なるほど。自分がヴィーガンとして「選べない」という体験をしたときと同じような想いをしてほしくないということですね。
小泉:ちょっと具体的に思いつかなかったんですけど、私が普段から思っているのは、正直で優しい人が傷つかない世の中になってほしいということです。正直者でやさしい人が取り残されないようにまずはメンバーやお客さん、自分たちの周りの人が報われる社会を事業を通して作っていきたいと思っています。
中村:素敵です。
野田:化粧品って見た目を美しくするものだと思われがちですが、私たちは目に見えない心の美しさを提供していきたいと思っています。日々の選択の中でどのような商品を選ぶのか。そしてそれがどのような社会問題につながっていくかといった、見えないところに配慮できるような、内側から輝く人を増やしていきたいです。
中村:見た目の良さを追求するコスメブランドが多い中で、考え方から美しい人を排他せずエンパワーしていきたいということですね。
本日はみなさん素敵なお話をありがとうございました。POPUPがとても楽しみです!
株式会社ブイクック https://vcook.co.jp/
株式会社オリゼ https://oryzae.shop/
株式会社ラヴィステラ https://laviestella.co.jp/
【インクルージョン×将来世代を紡ぐ起業家feat.taliki 〜地球とあなたへ 春の優しいギフト〜】
場所:有楽町マルイ 1F カレンダリウム
期間:3月6日(月)~3月12日(日)
営業時間:11:00~20:00
※最終日のみ19:00閉店
さまざまな社会課題解決に取り組む企業6社が期間限定POPUPを開催いたします。起業家たちが紡ぐ「未来のスタンダード」を、商品を通してのぞいてみませんか?ぜひこの期間に、有楽町マルイへお立ち寄りください!
詳しくはこちら:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003122.000003860.html
writer
堂前ひいな
心理学を勉強する大学院生。好きなものは音楽とタイ料理と犬。実は創業時からtalikiにいる。
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