アンダーウェアブランドone novaがリニューアル。包括的な気持ちよさを追求

最高の穿き心地に加え、臭わない・ムレないといった機能性を追求してきたアンダーウェアブランド、one nova。「透明なパンツ」や「冒険する人のひみつ道具」など、象徴的なコンセプトを掲げ、創業以来多くの人に愛されてきた。そのone novaが今夏、クリエイティブの刷新やジェンダーレスブランドへの転換など、大きなリニューアルに踏み切る。「穿き心地はもちろん、あらゆる要素で包括的な気持ちよさを追求するブランドになりたい」と語る、代表取締役副社長の金丸百合花。リニューアルの背景やone novaが考える「気持ちいい」の定義、ジェンダーレス展開にかける想いについて詳しく聞いた。

※情報開示:ONE NOVAはtalikiファンドの出資先企業です。

【プロフィール】金丸 百合花(かねまる りりあん)

株式会社ONE NOVAの代表取締役副社長。慶應義塾大学総合政策学部出身。高校まではフェアトレードの活動に取り組み、高山に誘われたことがきっかけで株式会社ONE NOVA共同創業。高校時代に琴の部活動に入っており、現在はTRiECHOES(トライエコーズ)というチームで箏のパフォーマンスをすることも。

金丸さんの過去のインタビュー記事はこちら:3日穿いても臭わないパンツ。穿き心地へのこだわりや丁寧なコミュニケーションで、愛されるブランドづくりを

代表取締役社長 高山さんの過去の対談記事はこちら:【D2Cブランドが語る】大切な人と地球に贈る優しいプロダクト

 

ヒアリングで見えてきた、実際の購入層とブランドの乖離

ー今回ブランドのリニューアルに至った背景を教えてください。

創業当初は「透明なパンツ」を掲げ、途中で「冒険する人のひみつ道具」へとコンセプトを変えてブランドを続けてきました。だんだんと買ってくださるお客さんが増えてきた中で、お客さんのことをもっと知りたいという想いでヒアリングをすることも増えました。そこで、私たちが想定していたお客さんと実際に購入してくださっているお客さんの層にズレがあることに気がついたんです。

もともと今のパンツは少しポップで可愛いらしい印象が強いという課題感を持っていたことと、女性も楽しめるアイテムを出したいとずっと思っていたこともあり、ブランドコンセプトや商品を刷新してリニューアルすることにしました。

 

ー想定していた顧客層と実際の顧客層は、具体的にどのように違っていたのですか?

年齢の乖離が1番大きかったですね。パンツを作った当初、ターゲット設定をあまりしていなかったんです。穿き心地が最高なパンツが先にできて、そこからなんとなく、自分たちと接点の多い20代後半〜30代のミレニアル世代の方が買ってくれていると思っていました。

でも蓋を開けてみると30代後半〜50代の方が多くて、職業も例えば会社役員や大学教授、医者など経済的にかなり自立している方が多かったんです。その方々から「ブランド自体に“若い”イメージがある」といったフィードバックを頂きました。ブランド全体にポップさ、可愛らしさ、若々しさのあるデザインだと、実際に買ってくださっている方々が日常的に使うようなブランドとは乖離があることに気づきました。

そもそも、1枚5,000円のパンツは業界的にも珍しいですし、男性が下着に5,000円使うってすごいことなんですよね。特に私たちがお客さんとして想定していた20代後半〜30代の方々は、下着のような周りから見えないところにお金をかける方はまだ少ないように思います。だから、今のお客さんにもっと好きになってもらうために、彼らが好きなブランド像に近づけることにしました。

 

one novaが考える「気持ちいい」とは

ー具体的にどのようなリニューアルをされたのでしょうか?また、特にこだわったところを教えてください。

1つは、クリエイティブの刷新です。これまではone novaの下着を身につけることで楽しい気持ちになってほしいとか、唯一無二を目指したいという想いが強かったので、クリエイティブは印象に残るような可愛いデザインになっていました。一方で、これまでone novaのパンツを「穿いていないと思うぐらいそっとそばに寄り添ってくれる感覚」と表現してくださるお客さんが多かったんです。だから本当に私たちがするべきことは、その人の生活におけるパフォーマンスが最大限発揮されるように、下着という1番身体に接する部分を常に「気持ちいい」状態で整えてあげることなんじゃないかと思うようになりました。

下着における違和感や存在感などのノイズをできる限りゼロにしてあげたい。そう考えると、楽しい印象や唯一無二を目指して作ったものよりも、もう少し余白感のあるシンプルなクリエイティブのほうが良いと思い刷新することにしました。

加えて、今回ジェンダーレスアイテムも発売することになり、メンズアンダーウェアブランドからジェンダーレスブランドに変化していくのも大きな転換点です。女性用の下着だけでなく、男女とも穿けるボクサーパンツも作ったことがこだわりです。

 

ーone novaが考える「気持ちいい」の定義についてお伺いしたいです

今回リニューアルにあたり、気持ちよさってなんだろうとすごく考えました。穿いたときの気持ちよさは商品として絶対に外せない部分ですが、それ以外にも気持ちよさに繋がる要素はたくさんあると思っています。例えば、体の特徴で選択肢を遮らない商品展開、購入体験におけるコミュニケーションの安心感や信頼感、無駄のない美しいデザイン、環境負荷の少ないものづくりなどです。履き心地としての気持ちよさだけでなく、感情部分でも不快感を取り除いた気持ちいい体験を届けたいです。

 

ーそもそも「気持ちいい」にこだわったのはどうしてでしょうか?

創業当初はサステナブルやSDGsに注目が集まってきている中で、製造過程における環境負荷が少ないというストーリーを押し出して売っていたのですが、お客さんがあまりついてこなくなったり自分たちも疲弊してしまったりした経験がありました。

そこから考え方を変えて、環境負荷の少ないものづくりという姿勢を守りつつ、プロダクトやサービスの本質的な良さでお客さんに好きになってもらわないとブランドが続かないと思うようになりました。いかに身につけていて気持ちいいかが自分たちの商品の本質だと気づき、商品自体の良さを磨いたら好きになってくれるお客さんがまた増えたんです。

そんな経緯から、one novaの本質として気持ちよさを意識するようになりました。リニューアルにあたって気持ちよさについて考え直して、商品を取り巻くすべての要素で気持ちいい体験を提供できると思ったので、「気持ちいい」という概念を包括的に追い求めていこうとなりました。

ー気持ちよさをプロダクトやコミュニケーションで提供した先に、どんな価値を感じてもらいたいですか?

今回のリニューアルにあたって、「素晴らしいものはその人の人生の中にある」という理念を据えました。それぞれの人生の中で、one novaのアイテムを身につけることで不快感やさまざまなノイズが取り除かれて、その人がその人のままで、伸びやかに活動できる状態を後押しできたらいいなと思っています。

その結果、自分の人生における素晴らしいもの、本当に大事なものを見つけてもらえたら嬉しいです。私たちはその素晴らしい瞬間を提供するのではなく、その瞬間を見つけてもらうために1番身体に接している部分である下着からサポートしていきたいと思います。

 

身体的な特徴で商品の選択を遮りたくない

ージェンダーレスアイテムを作ろうと思った背景を教えてください。

私たちはリニューアル以前から、パンツをSサイズからXXXLサイズまで幅広く用意していたんですけど、それは身体的な特徴を理由に商品の選択を遮るようなことはしたくないという想いからなんです。

これまでのボクサーパンツはフロント部分が立体的でした。そのデザインだと女性の身体的な特徴に合わないため、one novaのパンツを身につけるのは難しい状況でした。そんな中で、パートナーへのプレゼントで買ってくれた女性のお客さんから「自分も穿いてみたいです」とお声を頂いたり、知り合いからも「女性が穿けるボクサーパンツはあるけど理想的なデザインがないからone novaに作ってほしい」と言ってもらえることが多かったんですよね。

体の特徴で選択肢を遮りたくないという想いがある中で、ジェンダーにおいても特徴が違うから商品を選べないという状態にしたくなかったので、ジェンダーレスアイテムを作ることにしました。

 

ージェンダーレスアイテムの詳細について教えてください。

ブラジャーとショーツ、ジェンダーレスボクサーパンツの3つを作りました。もともとのone novaで使っている生地と同じものを使用しているので、臭わない、ムレないといった特徴は変わりません。

それぞれの特徴を説明すると、ブラジャーはノンワイヤーではあるのですが、3Dのカップになっているので、楽でありながらホールド力にも長ける仕上がりになっています。ショーツは、お尻を綺麗に包み込んで食い込まないようなデザインになっています。フラットタイプのボクサーパンツは、フロント部分が男性の身体的特徴・女性の身体的特徴両方にフィットするように設計しているので、ジェンダーという枠組みを超えて楽しめるデザインになっています。

他にもフックの調整が可能になっていたり、紐が肩に食い込まないような優しい素材になっていたりと、自然体で気持ちよく身につけられるように細部までこだわっています。

商品開発のプロセスでそれぞれのアイテムにどんな不快感が潜んでいるのか、見えない気持ち悪さはどこにあるのかを追求し改善することを大事にしています。

 

ーこれまで男性用の下着を作っていたところから、ジェンダーレスアイテムを作るにあたって難しかったことはありますか?

男女どちらも使えるようにしているので、サイズ表記をどちらに合わせるかは悩ましかったです。メンズサイズに合わせた表記にすると、レディース基準ではワンサイズ大きくなってしまうという気づきがありました。パッケージデザインも男性用なのか、女性用なのか、ユニセックスなのかがわかるようにしないといけませんでした。

あとブラジャーは最初S〜XXLというサイズ表記にしていたんですけど、それだとただ胸のサイズが大きいだけなのに普段とは異なるサイズを選ばなければいけなくて、人によっては抵抗感があると思ったので、one novaではブラジャーのサイズは数字で表記することにしました。

ジャストサイズというのは本当に人によって異なると思うんです。身体的特徴や穿き心地、体型などを考えると、「これがあなたにぴったりなサイズです」と私たちが充てがうような訴求はできないなと思います。だから、できるだけ妥協がないように一人ひとりが選びたいものを選べるように選択肢を用意しておきたいです。

 

ーリニューアルを決めてから具体的にどのように進めましたか?

これまではデザインも全部自分たちでやっていましたが、今回はもう少し洗練させたかったので外部のデザイナーさんに入ってもらいました。まずその方に、「なぜブランドをやっているのか」「気持ちよさとは何か」など、自分たちの想いを引き出してもらい、一緒に思考整理と言語化をしてもらいました。

そこから、思考に合うデザインを提案してもらって、あらゆるクリエィティブは自分たちが手を動かして作るという感じで進めていきました。あと、今まではパンツのデザインも自分たちで行なってきたんですけど、ブラジャーはいろいろなパーツがあってけっこう精密なので、今回はランジェリーデザイナーの方にも入っていただきました。

 

将来は衣食住における気持ちよさを再構築

ー今回のリニューアルについて、お客さんにはどのようなことを伝えたいですか?

今まで選択肢が無くて身に着けることができなかった方に、「より多くの人がone novaの気持ちよさを体験できるようになった」と伝えたいです。one novaに興味を持ってくれた人が商品を選べるように選択肢を用意しておくという目標の第一歩が今回のジェンダーレス展開となりました。もともとの幅広いサイズ展開においても、私たちは何よりも、より多くの人に商品を楽しんでもらいたいという前提があります。

 

ーリニューアルをして、改めて今後目指したいことを教えてください。

人々が生活の中で当たり前に身につけているあらゆるアイテムの「気持ちよさ」を根本から見直し続けるブランドでありたいです。また、気持ちよさは衣食住すべてで見直す余地があると思っています。今は下着ブランドだけですが、将来的には衣食住という“暮らし”の分野でいろんな気持ちよさを再構築・提案していける会社になりたいですね。

そしてこれから先、数十年と続けていく中できっといろんな環境的な変化や社会的な変化が起こると思います。そんな中で私たちは、その時代に合った気持ちよさを作り続けることを大事にしていきたいです。いつの時代にも、「one novaは気持ちいい」と思い続けてもらえるブランドでありたいです。

one nova https://onenova.jp/

リニューアルに関するプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000035915.html

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