キャリア支援事業を譲渡。そして虐待問題をビジネスで解決
インタビュー

キャリア支援事業を譲渡。そして虐待問題をビジネスで解決

2020-05-23
#子育て・家族

高校生から起業家を目指し、ビジネスの視点で虐待問題を解決するべく奮闘する岡本翔。何度か事業を転換させながらも、虐待を受けた人が幸せに生きる道を、当事者とともに模索している。事業を通じた虐待問題解決への展望を聞いた。

【プロフィール】岡本翔(おかもと しょう)

株式会社RASHISA代表。虐待問題をビジネスの力で解決することを目指し、虐待を受けた人の教育事業やライター育成を行っている。企業のコンテンツマーケティング支援、オウンドメディアの立ち上げ、運用にあたり、記事執筆を虐待サバイバー*に依頼する仕組みを作る。

*虐待サバイバー…虐待を受けた過去を持ち、なんとか生き延びて大人になった人のこと。親から自立できても、過去のトラウマや後遺症に苦しむ人も多い。

 

小さな声を拾い上げるためのSNS発信

―虐待を受けた人の声は、どのように拾っているのでしょうか?

個人のTwitterをはじめとするSNSを活用しています。2019年9月に事業として虐待問題に取り組むと決め、自分自身が虐待を受けていたことをSNSで初めて公表しました。それ以来、虐待に関する定量的なデータや自分の考えを発信するようになりました。

以前は虐待を受けた人に特化した人材紹介サービスを運営していたのですが、36名の登録者のうち、約95%が僕個人のTwitterから登録してくれた方でした。当事者がやっているサービスだから使ってみよう、というきっかけを生んでいるのかもしれません。

 

―発信において意識していることはありますか?

2つあります。1つは、定量的なデータを示す際に、引用箇所や出典元を明記すること。社会性の高いビジネスに取り組んでいる以上、その責任は大きいと感じています。間違った情報を発信して社会起業家全体のイメージを損なうことがないよう、自分の発言には責任を持つようにしています。もう1つは、自分の意見を他者に押し付けないこと。あくまで「自分はこう思う」と伝えるのみで、自分が共感したものを押し付けることがないように注意しています。

 

―新型コロナウイルスの影響で家にいる時間が増えており、DVや虐待の増加が懸念されています。会社として何か取り組まれていることはありますか?

家にいることがつらい人や、家庭内でストレスを感じてしまう保護者に向けて、LINEのオープンチャットを立ち上げました。「コロナ虐待」という言葉が生まれていますが、そんな状況に対して弊社としても何かしたいと考えてオープンチャットを始めました。

外出自粛の風潮の中で、家にいることがつらい人はたくさんいます。「家にいたくない」という声は実際に聞いていますし、過去の自分もそうでした。家にいたくてもいられない人が一定数いることを、多くの人に理解してもらいたいです。

オンラインチャット「虐待・DVシェルター」、「at HOME 〜家庭の悩み相談サロン〜」についてはこちらのnoteをご覧ください。
「コロナ虐待」への対策をはじめました。

 

2020年2月に、RASHISAのオフィスにて映画鑑賞会をした際の様子

 

虐待サバイバーが働けるようになるための事業

―虐待サバイバーの方にとって、一般的な就職が難しいのはなぜでしょうか?

弊社が元々運営していた人材紹介サービスの利用者のうち80%の方は、中途採用にあたります。虐待によって後遺症を抱え、5〜10年間社会に出て働くことができなかった方々です。履歴書に空白ができてしまい、一般的な会社では選考を通りづらかったり、就職エージェントに助けてもらえない人が多いです。

また、虐待によって対人恐怖症になり、人とコミュニケーションを取りづらくなる人や、感覚が過敏になって外へ出るのがつらい人もいます。完全在宅なら働けるのですが、就業経験やスキルがない人にとって、いきなり在宅でできる仕事を探すのは難しいという問題があります。

 

―虐待サバイバーの方にライターという職業が向いていると考える理由を教えてください。

自分のペースで仕事ができることと、当事者の方が希望している職業であるということが主な理由です。弊社としても、在宅でできる仕事として、エンジニアやデザイナーといった選択肢を考えた上で、最終的にライターという結論にたどり着きました。
弊社にWebライター経験があるスタッフがいますが、過去に家庭環境でつらい経験をしていました。ライターという職業に出会ってから仕事が楽しくなり、自分と向き合いながら仕事を続けられる職業だと感じたそうです。

また、当事者の声として、以前人材紹介の事業に取り組んでいた際に、20〜30%のユーザーがライターを希望していました。その結果を見て、自分たちの仮説だけでなく、当事者の希望としてもライターは合っていると判断しました。

 

複数の事業で、虐待問題の課題を一つずつ解決する

―先日、虐待問題に取り組む以前に運営されていた、キャリア支援事業を他社に譲渡したそうですが、譲渡を決めた経緯を聞かせてください。

事業譲渡については、迷いはありませんでした。高校生の頃から、虐待問題の解決に携わりたいと考えていたのですが、なかなか会社としても踏み切れずにいました。そんなときに背中を押してくれる方が現れたので、何も迷うことはなく決断することができました。
現在は人材教育事業を始めたばかりなので、まずは立ち上げ期として力を入れていきたいです。

事業譲渡について書かれたnoteはこちら。
キャリアアドバイザードットコムを事業譲渡しました。

 

―NPOなどではなく、株式会社という営利組織として虐待問題を解決することにこだわるのはなぜですか?

人材とお金の自由度が主な理由です。

人材では、資本主義の原理の下で課題解決に取り組む人から大きな刺激を受けたためです。事業を始めるにあたって、虐待問題の分野で活動するNPOや法人にヒアリングを行いました。株式会社で働く優秀な人に多く出会い、自分も同じフィールドに飛び込みたいと思ったんです。虐待という大きな問題を早く解決するには、優秀な人が多くいる場が必要だと考え、株式会社という形態を選びました。

お金の自由度という点では、複数の事業間でお金が巡りやすい仕組みが必要でした。虐待問題が引き起こす課題は複雑に絡み合っています。僕たちは、それぞれの課題に対して最適な事業を立ち上げ、一つの事業で出た利益を別の事業に回すといったお金の循環を目指しています。使用用途の報告義務がある補助金に頼るのではなく、自由度の高いお金を扱えるという点で株式会社を選びました。

 

―会社の意思決定の際に大切にしていることを教えてください。

当事者第一という考え方です。虐待を受けた人たちが幸せになれるかどうか。ただそれだけを考えて事業に取り組んでいます。代表である自分はもちろんですが、一緒に働く仲間も同じ価値観で仕事をしています。

虐待を受けた人の話を聞く際には、「その人が歩んできた人生を否定も肯定もしない」ことを大切にしています。それはつらいよね、強みに変えられるよといった同調をするのではなく、ただ受け止めるスタンスで対話をします。その上で、「虐待を受けた人生は最終的に振り返れば肯定することもできる」ことを伝えています。

僕の場合は、虐待を受けたことをある人に話した際、自分を丸ごと肯定してもらい、それ以来他の人に虐待の経験をカミングアウトすることが怖くなくなりました。自分たちも自己開示をした上で、自分の経験談を押し付けるのではなく、あくまで自分の場合はこうだったという話をするだけにしています。

 

虐待を未然に防ぐための仕組みづくりを

―RASHISAが目指す社会と、今後事業を通じてどのように取り組むか教えてください。

現在、虐待相談件数は年間16万件を超え、毎年増え続けています。その右肩上がりの数字を少しでも下げていきたい、上昇を止めたいと考えています。
会社としては、社会における虐待を減らすための仕組みを作っていきます。現在は、過去に虐待を受けた人向けの事業を行っていますが、将来的には虐待を未然に防ぐ事業に取り組みたいです。3年後には、虐待を未然に防ぐための事業に着手することを目標としています。

 

株式会社RASHISAでは、学生インターンを募集しています。(※募集は終了しました。6/26追記)
虐待問題を解決したい学生集まれ!!

 

株式会社RASHISA https://rashisa123.com/

撮影:吉野かぁこ

 

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interviewer

河嶋可歩

インドネシアを愛する大学生。子ども全般無償の愛が湧きます。人生ポジティバーなので毎日何かしら幸せ。

 

writer
田坂日菜子

島根を愛する大学生。幼い頃から書くことと読むことが好き。最近のマイテーマは愛されるコミュニティづくりです。

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