プラントベースフードとは?注目される背景やプラントベースに取り組む重要性を解説
プラントベースフードという言葉を聞いたことはあるけれど、どんな食べ物で、なぜ注目されているの?
そう思う方は多いと思います。
プラントベースフードは、植物由来でありながら動物性の食品の代わりになる食品です。
近年プラントベースフードが注目を集めていますが、その背景にはどのような社会課題があるのでしょうか。この記事では、プラントベースフードの現状の課題や、生活に取り入れる方法も合わせてご紹介します。
プラントベースフードのメリットや課題をお伝えしますので、プラントベースフードの展望を把握するのにお役立てください。
もくじ
プラントベースフードとは?
プラントベースフードとは、植物性の原料で動物性の食品を再現し、代替となる食品のことです。
数あるプラントベースフードのなかで私たちに身近な種類として、主に代替肉と代替ミルクが挙げられます。
代替肉は、大豆やエンドウ豆などを主な原料として肉の味や食感を再現した食品です。従来の食肉と同様、タンパク質がしっかり補給できる食品でありつつ、カロリーや脂質が抑えられています。
一方で代替ミルクは、牛乳の代わりに豆乳・アーモンドミルク・オーツミルクなど植物から搾ったミルクを利用するのが一般的です。どの代替ミルクも、牛乳とは違う原料由来の味わいがあります。メニューに合わせて使い分けると、それぞれの風味を生かせます。
他にも、プラントベースフードには代替卵や代替シーフードなど、さまざまな種類があります。プラントベースフードは、日に日に私たちの身近な食材の1つとして浸透しつつあると言っていいでしょう。
プラントベースフードが注目される背景とは?
近年、プラントベースフードが注目されているのをご存知でしょうか。
2022年の調査によると、コロナ前よりコロナ環境下の方がプラントベースフードを購入する人が増えたことが判明しました。コロナ前はプラントベースフードを購入する人が9.9%だったのが、コロナ環境下では21.6%に増加しています。
研究によると、コロナ禍以前はエシカル消費の重要性を意識しつつも、実践はしない人が多かったようです。コロナ禍をきっかけに、具体的に自分の行動を変える意識が芽生え、プラントベースフードを選ぶ人が増加しました(※1)。
なぜ、プラントベースフードの購入者の割合が増加しているのでしょうか。ここでは、その背景にある社会課題や社会変化を詳しく解説していきます。
動物性食品の環境負荷
動物性食品は、植物性食品に比べて環境負荷が非常に大きいことが問題視されています。
600平方メートルあたりの食材の生産量を比較すると、植物性の食品が17トン収穫できるのに対して、食肉は170キログラム程度しか生産できません。
植物性の食品はそのまま食べられますが、牛などの動物を育てるには土地で収穫した穀物などを与え、育てる必要があるためです。放牧する場合には、そのための土地も必要になります。
アマゾン川流域では、1秒間にサッカーコート1.5面分の熱帯雨林が伐採されています。木が必要だからではなく、家畜を飼育する土地や飼料を生産する土地を拡大するためです(※1)。
また、畜産が消費するのは土地だけではありません。全世界の淡水の27%が畜産に利用されます。仮に動物性食品を食べない生活に切り替えた場合、35%〜55%もの淡水資源を節約できます。動物性食品は、地球の資源に大きな負荷をかけているのです(※2)。
このように、食肉生産が地球環境に大きな負担をかけている問題が認知されたことで、プラントベースフードに関心を持つ人が増えています。
※1:植物性食品だけを使用した食品サービス。環境への貢献だけでなく利便性や健康も追求
※2:良質な食事は地球のために、水節約で 欧州委調査(BBC JAPAN)
食のダイバーシティへの対応
食品アレルギーを持つ人や、宗教上の事情やライフスタイルを理由に、特定の食品を食べない人がいます。ただ、一般的な人と異なる食生活を送ることになり、食事の楽しさや時間を共有することが難しくなってしまいます。
そこでプラントベースフードで動物性の食品を代替すれば、全員が同じ食事メニューでテーブルを囲むことが可能になります。プラントベースフードなら、様々な食習慣の人たちの壁を取り払う役割を果たせるのです。
多様な食習慣への対応は、近年ますます求められています。特に日本では、アフターコロナで海外からの観光客が増えており、その中には様々な理由で動物性の食品を食べない人もいます。
どのような人でも日本での食事を楽しめるよう、食のダイバーシティに対応することが重要視されているのです。
Z世代・ミレニアル世代のエシカル消費傾向
現在の10〜20代に相当する「Z世代」や20代後半から40代前半に相当する「ミレニアル世代」は、社会課題を自分ごととしてエシカル消費に関心を持つ傾向にあると言われています。
実際に、大手食品企業もZ世代・ミレニアル世代のエシカル消費の傾向に関心を示しています。
例えばバーガーキング・インドネシアは、バーガーのパテをプラントベースミートに代替した「プラントベースワッパー」を2021年5月に発売しました。通常のパテの「ワッパー」よりも価格を抑えて提供しており、手軽にプラントベースフードを食べることが可能です(※1)。
パテはユニリーバ傘下企業が提供しており、ユニリーバは「フレキシタリアンな生活や、環境の持続可能性に対する意識の高まりが、Z世代(1997~2012年生まれ)やミレニアル世代(1981年~1996年生まれ)の間で高まっている」とインドネシアにプラントベースワッパーを展開する理由を説明しています。
ユニリーバのような世界的企業が、エシカル消費傾向にあるZ世代・ミレニアル世代へのアプローチの一環として、プラントベースフードに参入しています。これからメインの購買層となるZ世代・ミレニアル世代へのアピールとしても、プラントベースフードが注目されているのです。
※1:バーガーキング、代替肉を利用したハンバーガーを販売(JETRO)
※2:
プラントベースフードの事例は?
現在では多くの食品企業がプラントベースフードを展開しています。その一例をご紹介します。
プラントベースエッグで「ONE TABLE」を実現――UMAMI EGG
1つ目の事例は、植物性の食材で卵を再現したUMAMI EGGです。
UMAMI EGGはUMAMI UNITED JAPAN株式会社が開発しており、日本由来の「うま味」をヒントに、卵の特性を再現する研究を重ねた成果です。
代表の山崎氏は学生時代、訪日外国人向けの観光ガイドボランティアをしていました。そのときヴィーガンやアレルギーを持っている方、宗教的に食べられないものがある方の食の選択肢がとても限られていることを実感したとのこと。食のニーズが多様化した現代で、みんなが一緒にテーブルを囲める「ONE TABLE」を実現したいと思ったのが、代替食品開発に取り組んだきっかけです。
現在、UMAMI EGGは幼稚園や保育園の給食にも採用されており、アレルギーを持つ子も同じメニューが食べられると喜ばれています。
健康と環境への配慮を両立した宅食サービス――Grino
プラントベースの宅食を利用したい。そんなときに役立つのがRed Yellow And Green 株式会社のGrinoというサービスです。
Grinoの宅配弁当は、100%植物原料の食材のみで作られています。
創業者の細井氏は前職の同僚が病気を発症したのをきっかけに、健康の重要性を意識し始めました。普段の食事による環境負荷にも問題意識を感じ、健康とプラントベースの両方に軸足を置いてサービスを提供しています。
タンパク質をプラントベースに移行する――IKEA
北欧家具ブランドのIKEAでもプラントベースフードを提供しており、そのアイコン的な商品がプラントベースソフトクリームです。
IKEAは家具ブランドのイメージがあるかもしれませんが、店舗にレストランが併設されているため世界有数のレストランチェーンでもあります。IKEAは全社を挙げたサステナビリティ実現のために「プラントベースフードの選択肢を増やす」という目標を掲げています。
ちなみに、IKEAのレストランでは、2025年までに50%をプラントベースにすると宣言しています。
プラントベースフードの課題とは?
プラントベースフードには多くのメリットがあり注目を集めていますが、課題も残されています。プラントベースフードの課題を2点解説します。
課題1:味や食品としての機能性
プラントベースフードによっては、元々の動物性食品の味や食感、栄養バランスを完全に再現できない場合があります。例えば、卵の「加熱すると固まる」「卵白を泡立てるとメレンゲになる」という性質を再現することも、代替食品として普及を目指す上での課題です。
実際にUMAMI EGGの開発では、卵の加熱で固まる性質の再現に苦労したとのこと。日本由来の「うま味」や「こんにゃく粉」を活用することで、より卵の味や性質を再現してきました。2023年現在、卵白が泡立ってメレンゲになる性質の再現に取り組み、さらなる改良を進めています。
またGrinoでは、メニュー開発の面からプラントベースフードの「おいしさ」にアプローチしています。
プラントベースフードそのもののおいしさを高めるとともに、シェフと議論を重ねて野菜そのものの風味や食感を味わってもらえるメニューの開発に力を入れています。「8種のゴロゴロ野菜カレー」や「かぼちゃとトマトのもちもちペンネグラタン」が特に野菜のおいしさを生かしたメニューだそうです。
課題2:価格の高さ
プラントベースフードは、一般的な動物性食品よりも価格が高いことが多くあります。2022年5月時点では、食肉のハンバーグよりプラントベースのハンバーグの方が100グラムあたり49円高いという調査があります。
※伸長するプラントベースフード、買われている理由と狙い目のメニューは?(ダイヤモンド・チェーンストアオンライン)https://diamond-rm.net/sales-promotion/219867/2/
しかし、先ほどご紹介したバーガーキングやIKEAなど、プラントベースの食品を動物性の食品よりも低価格で提供できている企業があります。
バーガーキング・インドネシアでは、「プラントベースワッパー」の価格は4万5,455ルピアで、肉のパテを使用した「ワッパー」(4万9,090ルピア)よりも低価格です。また、IKEAの日本でのプラントボールの販売価格は、ミートボールと価格を比較して、500gの袋詰めでは200円安く、レストランでは同じ8個入りのメニューでも200円安く設定されています(2022年11月時点)。
特に、IKEAがプラントベースフードを低価格で提供しているのは、徹底してサステナビリティを追求するためです。IKEAは、2030年までに地球温暖化ガスの吸収量が排出量を上回る「クライメート・ポジティブ」の達成を掲げています。
IKEAのミートボールの代わりにプラントボールを食べると、CO2排出量が96%削減可能です。プラントベースフードが既存のメニューより高ければ手に取られないだろうと考え、家具生産で培ったノウハウによる大量生産によって、低価格を実現しています。IKEAは高い目標を達成するために、自社のプラントベースフードの普及に力を入れているのです。
※[新連載]イケア、執念のサステナブル経営 代替肉に本気のワケ(日経ビジネス)https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00523/120900002/
プラントベースフードを生活に取り入れるには?
ここまで、プラントベースフードのメリットや課題をご紹介しました。次にプラントベースフードを生活に取り入れてみたい方向けに、食べられる場所や購入できる場所をご紹介します。
ヴィーガンやベジタリアンとの違いも解説しますので、実践できるか不安な方もぜひお読みください。
ヴィーガンやベジタリアンより気軽な選択
人によっては、プラントベースフードを取り入れることは、ベジタリアンやヴィーガンと同じ食生活を行うことと思っているかもしれません。
ベジタリアンやヴィーガンは、特定の食べ物を避けるライフスタイルです。
ベジタリアンは、植物性食品を中心に食べる人を指します。肉食のみ避けて、卵・乳製品は食べる場合があります。
一方、ヴィーガンはより厳格に動物を搾取するのを避ける人を指します。肉食に加えて、卵・乳製品・蜂蜜・ゼラチンも食べません。場合によっては、動物性の衣類を身に着けない人もいます。
※日本ベジタリアン協会 https://www.jpvs.org/menu-info/index.html
プラントベースフードは、食生活のスタイルではなく、植物性原料で作られた食品のことです。ベジタリアンやヴィーガンのようにルールを設けなくても、1週間に1食はプラントベースにしてみたり飲み物は牛乳ではなく豆乳に変えてみたりして、気軽に食生活に取り入れることが可能です。
プラントベースフードはスーパーでも買える
近年では、大手スーパーがプラントベースフードを取り扱うようになり、身近な店舗でプラントベースフードを購入できるようになりました。
例えばイオン系列のトップバリュブランドでは、「Vegetive(ベジティブ)」というラインを打ち出し、プラントベースフードの幅広いラインナップを揃えています。
※もっと”植物由来” Vegetive(イオントップバリュ株式会社) https://www.topvalu.net/vegetive/
プラントベースフードは食肉コーナーの近くに陳列されていることが多いです。お近くのスーパーで探してみてはいかがでしょうか。
スタバやモスバーガーなど大手フードチェーンでも提供されている
スーパーだけでなく大手フードチェーンでも、プラントベースフードのメニューを提供する店が増えています。どのようなメニューがあるか、その一部をご紹介します。
※以下で紹介するメニューには、調味料などの形で動物性原料が含まれる場合があります。
スターバックス:植物性ミルクを使ったドリンクを提供
スターバックスでは、プラントベースフードの選択肢が豊富に用意されています。
まずドリンクでは、豆乳・オーツミルク・アーモンドミルクの3種類の植物性ミルクにカスタムできます。「もうカスタムしてみた!」という方もおられるのではないでしょうか。
その中でも、スターバックスが力を入れているメニューは「スターバックス ブロンド ラテ with オーツミルク」です。
SNSにはこのような口コミが投稿されています。
・浅煎りでスッキリ
・オーツミルクがほんのり甘い
筆者も飲んでみたところ、スッキリと喉を通る香ばしさがあり、カフェラテでありながらお茶のように軽い口当たりでした。オーツミルクのためにブレンドされた、軽やかなテイストの豆を使用しているそうです。
さらにスターバックスでは、「セミドライトマトのピザトースト」や「バナナの米粉マフィン」など、プラントベースのフードメニューも提供されています。
※スターバックス「ブロンド ラテ with オーツミルク」
モスバーガー:植物性原料のパテを使ったバーガーを開発
モスバーガーでは、植物性原料のパテを使用した「グリーンバーガー」が食べられます。バンズにも野菜を使用し、パテと一緒にたっぷりの野菜がサンドされています。テリヤキ味のグリーンテリマヨソースを好みの分量でかけて食べるスタイルです。
SNSではこのような口コミが見られました。
・テリヤキソースがおいしい
・バンズもほんのり野菜の香り
筆者が試食したところ、パテは肉のものよりもふわふわとした食感で、テリヤキ味のソースがよくマッチしていました。
※株式会社モスフードサービス「グリーンバーガー<テリヤキ> GREEN BURGER TERIYAKI」
タリーズ:プラントベースフードを期間限定で販売
タリーズではプラントベースのメニューが代わる代わる提供されています。2024年6月現在は「高野豆腐フリッターの坦々風ピタサンド」がメニューに掲載されています。過去のプラントベースメニューは、「畑の恵みのタコライス」や「野菜仕立てのラザニアプレート」などがあります。
SNSではこのような口コミが寄せられています。
・ピリ辛でおいしい
・高野豆腐がジューシー
※タリーズコーヒージャパン株式会社「プラントベースフードメニュー」
プラントベースフードの冷凍宅食サービスも利用できる
もし自宅でプラントベースフードを手軽に取り入れたい方は、先ほどご紹介したGrinoのような、プラントベースフードの食事が冷凍で届くサービスを利用するのがおすすめです。
ほかにも以下のような宅食サービスがあります。
レンジ5分で食べられる冷食弁当のセットが届くサービスです。栄養バランスはもちろん、元大使公邸料理人が監修し味にもこだわっています。
「プラントベース月替わりBOX」では、さまざまなプラントベースフードを取り扱うGood Good Martが選んだプラントベースフードの詰め合わせが届きます。
旬の食材を使ったコース料理が月に1回届く「時々ヴィーガンコース定期便」を提供しています。
調理済みの宅食を利用すると、プラントベースな食生活を続けやすいかもしれません。
まとめ
プラントベースフードは、サステナビリティへの関心や、食のダイバーシティなどの観点から注目を集めています。
プラントベースな食生活は、自分にルールを課すライフスタイルではありません。プラントベースフードを見かけたら、気軽に生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
サステナビリティにもっと関心のある方へ
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taliki.orgを運営する株式会社talikiは、ファンド事業、インキュベーション事業、オープンイノベーション事業、メディア事業の4つの軸で社会起業家の育成に取り組んでいます。
執筆
泉田ひらく
プラントベースフードを食べて回っている。オーツミルクの香ばしさが好き。
企画
亀井郁人
生まれと育ちは京都、心は大阪。talikiがきっかけでソーシャルビジネスに興味を持ち、現在ディレクターとして関わる。運は強い方と思ってる。