うま味×日本食材=プラントベースの卵「UMAMI EGG」。より卵らしさを追求し、社会で当たり前の存在に

こんにゃく粉やにがりなどの日本食材で作られた日本発のプラントベースエッグ「UMAMI EGG」。開発したUMAMI UNITED JAPAN株式会社の代表・山﨑 寛斗は、ヴィーガンやアレルギーがあるかに関わらず、誰しもONE TABLEで一緒に食べられる社会を目指したいと話す。プラントベースと日本発祥の味覚であるうま味や日本食材をかけ合わせた理由や、開発までの苦労などについて聞いた。

【プロフィール】山﨑 寛斗(やまざき ひろと)

学生時代より一貫して「食」と「多様性」をテーマにしており、大学卒業後は食の多様性をテーマにメディア・コンサルティング事業を展開するフードダイバーシティ(株)にジョイン。在職中、世界のプラントベース業界とのネットワークを構築し、海外企業の日本誘致や日本企業の海外進出などの事業立ち上げを行う。2022年3月、新たにUMAMI UNITED JAPAN(株)を設立し、植物性卵「UMAMI EGG」をリリース。

 

日本の強み×プラントベースを実現

ーー現在販売されている「UMAMI EGG」とはどのような商品ですか?

「UMAMI EGG」は、100%植物性原料からできたパウダー状のプラントベースエッグです。原料には、日本食材であるこんにゃく粉やにがりを使用しています。豆乳と混ぜて加熱することで、卵のようなおいしさや食感を感じることができ、調理にもお菓子づくりにも使うことができます。

学生時代、訪日外国人向けの観光ガイドをボランティアでやっていたとき、日本は食のダイバーシティが追いついておらず、ヴィーガンやアレルギーを持っている方、宗教的に食べられないものがある方の食の選択肢がとても限られていることを実感しました。日本ではまだまだプラントベースは特別食であり、物足りない、おいしくないといったイメージが強いと思います。そこを乗り越えられない限り、食のニーズが多様化した現代でみんなが一緒にテーブルを囲めるようにはならないと思いました。

そこで、日本発祥の味覚であるうま味に着目し、「UMAMIパウダー」を自社開発しました。酵素技術によりきくらげからうま味を引き出したもので、生産過多になっているきくらげを使用することでフードロスの削減にも貢献しています。UMAMI EGGの原料としても使用しているため、UMAMI EGGはしっかりとうま味を感じることができます。

 

ーーうま味を活かしたプラントベース、斬新です。肉や乳製品に比べて、卵をプラントベースで再現することはかなり難しい印象ですが、なぜ卵に着目したのでしょうか?

もともと、日本の強みとプラントベースをかけ合わせて世の中に貢献できないかという構想があって、現在の開発責任者が関心を示してくれたんです。彼は私が会社を立ち上げる前から知り合いではあったのですが、改めて私の構想と彼の研究者魂がマッチして、一緒に事業を進めていくことになりました。

そこからいろいろなアイデアを検討して、日本発祥の味覚であり、世界中で注目されているうま味と日本食材を使って何かできたら良いよねということに。プラントベースといえば肉や乳製品などありますが、誰もやっていない新しいことにチャレンジしたいという気持ちがあり、たどり着いたのが卵でした。

 

ーー開発で1番ハードルが高かったことを教えてください。

加熱で固まるという卵特有の性質にはとても苦労しました。いろいろな食材で試行錯誤したのですが、フライパンの加熱で固まるまですごく時間がかかってしまい、なかなかうまくいきませんでした。模索した結果、こんにゃく粉なら卵特有の性質に対応できそうということがわかりました。

うま味や卵に着目したことも含め、構想段階から具体的な手段があったわけではなく、いろいろな試行錯誤を繰り返して、すべてが線としてつながった結果できたのがUMAMI EGGです。社内のバリューでも「まずやる、すぐやる」というのを掲げているのですが、ずっと頭でっかちで考えていても何も始まらないので、少しでも仮説を立てたらすぐ行動することを意識しています。課題が生まれる、仮説を立てる、すぐ行動するを繰り返して生まれた偶然の産物が、オリジナリティとなり差別化につながっているなと思います。

 

日本の強みを活かし、味と機能面で差別化を

ーー現在の販売チャネルを教えてください。

今は国内中心に、幼稚園や保育園の給食、飲食店、食品メーカーが主な販売先です。個人のお客様にも購入していただけるように自社ECやヴィーガン商品専門ネットスーパーでも販売しています。卵アレルギーやヴィーガンのお客様に対応したいという企業や、健康意識やサステナブル意識が高いお客様が多いということで導入される企業もいます。特に卵アレルギーに関しては子どもにも多くて、幼稚園や保育園では給食メニューが制限されることも多いそうです。UMAMI EGGを使うことでみんなで一緒に食べられたり、メニューの幅も増えたりするのですごく喜んでもらえます。

UMAMI EGGで作ったオムライス

 

ーーより多くの企業や学校に導入してもらうために課題となっていることはありますか?

1つは、国内はまだまだプラントベースの需要喚起フェーズであるというところです。実際にアメリカで市場調査も行いましたが、プラントベースは当たり前にやっていかなければいけないという認識が浸透していると感じました。日本ではプラントベースの必要性や、売上への影響といった議論に時間がかかることも多々あります。

もう1つは、機能や価格という面ではまだまだアップデートする余地があるという点です。私たちもまだアーリーフェーズのスタートアップであり、限られたリソースで試行錯誤を繰り返しているので、卵とまったく同じ機能や価格を求められると今のソリューションでは提案が限られてしまうのが現状です。従来の卵により近づけるよう、プロダクトの改善と新商品の開発は継続して取り組んでいきます。

 

ーーそもそも、世界的に見ても卵は他の動物性食品と比べると代替速度が遅いように感じます。

そうですね。同じプラントベースでも、肉や乳製品に比べると代替速度は遅いです。環境負荷の大きさで見ると、肉や乳製品の生産が圧倒的に大きいので、まずはそこから代替していく流れになっていて、それはごく自然なことだなと思います。ただ、近年鳥インフルエンザが流行しており、卵の供給不安定や価格高騰が続いています。その影響で、これまでと比べると代替意識は世界的にもより高まってきていると言えます。日本も、プラントベースの需要喚起フェーズでありながら、こういった背景から卵の代替ニーズが以前より高まりつつあります。

 

ーーでは、現在のプラントベースエッグ市場はどのような状況なのでしょうか?

加速度が遅いとはいえ、欧米だけでなくアジアでもプラントベースエッグに取り組む企業が出てきています。日本も、大手食品メーカーやプラントベースブランドが参入しています。今後も、資本力のある大手企業が参入してくる可能性は十分にあると思います。ただ、技術力で圧倒的に抜きん出ているところがまだないような状態です。

卵っていろいろな機能があってとても複雑なんですよね。加熱して固まる性質、非常に高い栄養価。そして単体でも食べられる一方、料理にもお菓子にも使える。これらの機能をオールインワンでまったく同じものをつくるのは、かなり難しいことです。大手だからといってすぐにできるわけではないと思うので、私たちスタートアップはいかにスピード勝負で市場を取れるかがチャレンジになると考えています。

 

ーースピード勝負の中でも、UMAMI UNITEDとしてどのように差別化をしていきたいとお考えですか?

1つは味です。アメリカへ市場調査に行ったとき、すごく良いプラントベースエッグ商品がたくさんあったんですけど、卵の味そのものにたどり着いているものはない印象でした。それはアメリカに限らず世界的に見ても同じです。私たちはうま味を活かしつつ、より卵らしさが感じられるように味の面で価値を提供していきたいです。

もう1つは、機能面のところです。原材料の1つであるこんにゃくは、保水力に長けています。水を吸うことで膨れ上がって、その状態で形をキープしてくれます。そういった機能は、お菓子を作るときなどに卵と同様の働きをしてくれるので、そこが強みにつながっていると思います。現時点で難しいのはメレンゲが立つような気泡性の再現で、そこは今後の開発でクリアして、より卵白と同じ機能に近づけていきたいです。

UMAMI EGG で作ったパンケーキ

 

みんなでONE TABLEになれる社会を目指して

ーー今後の事業展開について教えてください。

UMAMI EGGでは卵の風味を再現しているので、今後は卵黄や卵白そのものを再現できるように開発に取り組んでいきます。味や機能面を強化していき、複合的に卵と同じであると感じてもらえるようにしたいです。

また、今持っているソリューションを必要としているところにより多く届けて、実績を積んでいくという意味でも、よりニーズの高い海外への展開に軸足を置こうと考えています。海外を主軸に事業を成長させつつ、既存商品の改善、新商品の開発というところに注力していきます。

 

ーーありがとうございます。最後に、UMAMI UNITEDが目指す理想の社会像をお聞かせください。

私たちは「​​​​​​ONE TABLEで未来を創る」をミッションに掲げてるんですけど、ONE TABLEになるためには、ベジタリアンやヴィーガン、アレルギーを持っている人と、そうじゃない人との間にある壁がすごく高いんですよね。プラントベースはまだ特別食だと思われていますが、社会で当たり前の存在になっていかないと持続的ではありません。かつ、姿は見えないけど食品の原材料として入っている場合もたくさんあります。そういった「見えない卵」も含め、食の選択肢を阻む壁を取り払って、全員がONE TABLEになれるような社会を実現したいです。そのために、特別だと感じさせない、“卵そのもの”なプラントベースエッグを提供できるようにしていきます。

 

UMAMI UNITED JAPAN株式会社 https://www.umamiunited.com/jp/home

 

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    interviewer

    梅田郁美

    和を以って貴しと爲し忤ふこと無きを宗と爲す。
    猫になりたい。

     

    writer

    張沙英

    餃子と抹茶大好き人間。気づけばけっこうな音量で歌ってる。3人の甥っ子をこよなく愛する叔母ばか。

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