【イベントレポート】京都からはじまる社会起業家の挑戦の輪。「KYOTO SOCIAL IMPACT PROGRAM」デモデイ

本メディア運営の㈱talikiが開催する、京都インパクトスタートアップ起業家支援プログラム『KYOTO SOCIAL IMPACT PROGRAM』の最終デモデイが2024年2月16日(金)に行われました。

本プログラムには、京都府内で活動し、幅広い社会課題に対してチャレンジするU30の若手社会起業家が参加。2024年11月21日(火)〜2024年2月16日(金)の約3ヶ月間、豪華ゲストによる実践講義から、個別の1on1支援などの幅広いサポートを通して、何を課題と捉え、どのような社会を目指して進んでいくのか、それぞれに熟考してきました。

最終デモデイでは審査員からのフィードバックやtalikiがこれまで支援してきた社会起業家のプレゼンも行われ、深い学びの場となりました。

本イベントレポートでは、登壇した9名の最終発表の様子をお届けします。

 

起業家ピッチ

中野雅司さん 株式会社Startup B(スタートアップビー)

「スタートアップが法律で減速しない社会を」というミッションのもと、スタートアップの法務支援サービス『Startup B』を展開する中野さん。現役法科大学院生として、弁護士の出向が運任せ/縁任せになってしまっている現状や、スタートアップが法律問題を看過してしまっているケースを目の当たりにしたことから、弁護士がスタートアップに週1日からの部分出向という形で参画するための仲介プラットフォーム事業を構想したとのこと。つい先日、司法試験に合格したばかりだという報告に、会場から拍手が集まる場面も。審査員からは、顧問契約との違いをどう見せるのかについて提案の声があがりました。

 

速水瑠奈さん 立命館大学政策科学部

「ウラカタの晴れ舞台」をコンセプトに電子廃材を輝かせるブランド『potential』。電気機器が製作・廃棄される過程で出る電子廃材を活用し、アクセサリーなどの制作販売、ワークショップやイベントの企画運営を行っています。代表の速水さんは、ピッチの冒頭で「サスティナブルファッションとは」という問いを会場に投げかけます。実際に販売しているアクセサリーを審査員のもとに届けながら、「SDGsではなくファッションの文脈からブランドに興味を持ってもらい、知らないうちに社会貢献していたという人を増やしていきたい」と話しました。ピッチ当日は、会場でもpotentialのアクセサリーを展示しました。

 

野口のどかさん 一般社団法人アソボロジー

「あそび」×「まなび」をテーマにゲーム開発などを行う一般社団法人アソボロジー。今回のピッチでは、狼煙から着想を得たちょっと不便なコミュニケーションツール「のろしー」を事業化するために、現在の進捗状況と抱える課題について話しました。野口さんは「情報過多な今の時代だからこそ、見える範囲に制限を設けることで今ここにある情報から新しいコミュニケーションが生まれるきっかけをつくりたい」と語ります。審査員からはユニークな着想に対して、アイデアドリブンでのプロセスの進め方やユーザーになりうる層について意見が集まりました。

 

中村有希さん Milda Ponto(ミルダポント)

看護師として働いていた中村さんは、外国人妊婦と医療スタッフとの間にある言語の壁を日々痛感してきたと語ります。翻訳機だけでは医療用語が正しく翻訳されないなど、自身が見てきた医療現場の状況から、妊婦と医療スタッフが安心してコミュニケーションができるアプリ『LumoMama:)』を考えました。現在は搭載する言語数を拡大しながら、すでに2回のプロトタイプを実施し、検証を進めています。審査員からは、訴訟リスクの高さから産科医不足が深刻化している点にも着目し、クリニック側のサポートにもニーズがあるのではという意見も挙がりました。

※登記前(2/16時点)

 

酒井雄飛さん UNIFUND

大学部活動と企業など外部組織との関わりをテーマに、スポンサーマッチングやオンラインコミュニティの運営を行う『UNIFUND(ユニファンド)』。大学部活動OBから生まれた学生団体です。酒井さん自身が小学3年生〜大学4年生まで部活動に励んできた中で、大学部活動が抱える深刻な資金不足を目の当たりにしてきた経験が団体立ち上げのきっかけになったと話します。審査員の中には同じく部活動に打ち込んでいた過去の経験から、当事者の気持ちがよくわかると共感の声があがりました。フィードバックでは、なぜ学生チームに資金を集める必要があるのか、共感ポイントをどう生み出すのかについてアドバイスがありました。

 

久田愛理さん 京都女子大学家政学部生活造形学科

ベジタリアンでも安心して食べたい日本食を探せるグルメサイト『Vegtrip Kyoto』を提案する久田さん。食の制約のフィルタリング機能をつけたデモサイトや訪日客からのフィードバック、想定しているビジネスモデルなど、現在の進捗状況について紹介されました。ピッチ中には「さまざまな食の制約を持つクラスメイトたちと1つのテーブルを囲むことは難しくなかった」という留学先ロンドンでの経験と日本の現状を比較し、食の多様性への熱い想いを語りました。審査員からは、飲食店へのヒアリングや観光客のネットワークの活用について議論がなされました。

 

南遥夏さん  慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科

幼いころから持病と共に生きてきた南さん。健康=ウェルビーイングであり、持病があっても自分らしい健康は実現できると語ります。今回のピッチでは、「働く」に焦点を当てたウェルビーイング「ワーク・エンゲイジメント」の共同研究による効果検証について発表されました。社内コミュニケーションが活性化される要因や、どのような場面で人とのつながりが生まれるのかなど、引き続き研究を進めています。最後には、人と人とのつながりを生み出してくれたKSIPへの感謝の言葉も述べられました。

 

村中杏哉さん 株式会社SigNavis(シグナビス)

中小企業特化の採用プラットフォーム『シグナビ』。村中さんは、中小企業経営との出会いをきっかけに企業の魅力を知った一方で、深刻な人手不足問題を知ったと話します。適切な情報を求職者のもとに届け、大企業との間にある情報格差を解消すべく、プラットフォームの機能拡充に向けて取り組んでいます。ピッチ終盤では、今後よりニーズに沿った機能を搭載するために、中小企業へのヒアリング機会を増やしていきたいと会場に呼びかけました。

※登記予定(2/16時点)

 

久保とくみさん MiaLuce Inc.

元看護師であり、がん闘病者でもあった久保さん。当事者として味わった孤独感や「闘病のロールモデルを見つけたい」という思いから、がん患者と医療専門家、闘病アドバイザーをマッチングさせるアプリ『Cure Mind』を開発。2月にリリースしたβ版の内容やビジネスモデルについて報告しました。京都リサーチパーク㈱と㈱talikiが共催する社会起業家支援プログラム『COM-PJ』(コンプロジェクト)にも参加していた久保さんからは、約3ヶ月間伴走してきたtalikiメンバーや審査員、社会起業家メンバーへ感謝の気持ちが伝えられ、会場は温かい空気に包まれました。

 

今回は、合同会社SARR 代表執行社員 松田一敬氏、株式会社ABAKAM 代表取締役 松本直人氏、京都信用金庫 企業成長推進部 課長 満島孝文氏、株式会社taliki 代表取締役CEO/talikiファンド代表パートナー 中村多伽の4名が審査員として参加。総評では、「それぞれの社会課題に対する意識と分析の解像度の高さが想像を上回るものだった」と賞賛する声があがり、ソリューションをより具体的にしていくようアドバイスがありました。

また、社会課題を扱うからこそ、社会にとってのインパクトを考える前に、まずは「目の前の人にとってGOODなプロダクトか」を考えてほしいとのメッセージも。

 

㈱taliki代表の中村からは「talikiと出会ってくれてありがとうございます。今後関わる機会が少なくなったとしても、いつでも相談や雑談をしに会いにきてくれると嬉しいです。みなさまの活躍を応援しています」と熱いエールが送られました。

そして、ピッチ終了後は、talikiがこれまで支援してきた社会起業家3名によるアルムナイピッチも行われました。

 

写真① 株式会社モクジヤ 代表取締役 鈴木粋さん

 

写真② 株式会社EduCrew 代表取締役 / 一般社団法人merry attic 副代表 石原悠太さん

 

写真③ 株式会社オトギボックス 代表取締役 梶本大雅さん

過去に伴走してきた起業家の皆さんと久々の再会を果たしたtalikiのメンバーからは、「より一層進化している姿を見ることができて嬉しい」とのコメントも。経験の量が圧倒的な安心感を生み出していました。

 

各賞の授与式

最後に、登壇者の中から審査員の評価が最も高かった方に贈られる「最優秀賞」、京都信用金庫様より、最も応援したいと思った方に贈られる「コミュニティ・バンク賞」の授与式がありました。

 

最優秀賞 中野雅司さん(株式会社Startup B)

 

コミュニティ・バンク賞 久保とくみさん(MiaLuce Inc.)

受賞した皆さま、おめでとうございました!

 

KSIP運営より

今回は、taliki初となる京都を拠点とした起業家支援プログラムの開催となりました。京都の支援機関の皆さまにも支えられ、とてもアットホームな雰囲気でイベントを終了することができました。プログラムでは多様な課題解決に取り組む参加者と3ヶ月間伴走し、事業の方針に悩んだりユーザーインタビューに苦戦したりと、うまく進まない悔しさを感じている姿も間近で見てきました。しかし、デモデイの発表ではとても堂々としたプレゼンをされており、これから一人一人がさらに躍進していくためのスタート地点だなと感じる一日でした。

これを機に京都の「つながり」を生かし、挑戦の輪が広がる場になれていましたら幸いです。KSIPは社会起業家の皆さまの更なる活躍を応援しています!

 


 

ライター:おのまり

写真:寺島 諒

 

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