家出少女を保護した話

娘の気持ち

・自分が知らないものを子供がやろうとすると不快感を示す

例)「インターン?大学生は勉強だけしてればいいの!」など

・自分の思い通りにいかないと怒る

例)「私が育ててやったのに反抗するな」など

・それでも子供が言うことを聞かないとライフラインを断つなどして脅す

例)「もう生活費を払わないぞ」など

 

世の中では、こういう親のことを”毒親”というらしい。

一昔前までは「親の言うことを聞かないなんて恩知らず」というような、親の神格化が当たり前であったが、今は精神的・肉体的虐待や体罰などが社会問題として取り上げられてから久しく、その社会的立場は相対的に弱まってきた印象がある。

さらに、たとえば今の40代後半~の大人たちの常識は「作れば売れる、勝ちパターンにのれ」だけれども、その子供世代の常識は「未来なんてどうなるか分からないからこそ、自分らしく生きよう」であるために、余計親の思う通りに生きることが子供にとって幸せなのか?と、世間は懐疑的になっている。

親は子供が計り知れない苦労を乗り越え、神格化に値するというのは首がもげるほど頷けるのだが、子供だって人間なのだ。

 

子供からしたら「気付いたらなんか生まれてた」のだ。

産んでくれとお願いしたわけではないのに、いつのまにか存在しはじめてしまった。

この世は、地獄だ。

生きるという選択肢を自主的に選んでないにも関わらず、生きるために頑張らなきゃいけない。

「どう生きたらいいのか」と小さな脳みそをフル回転して、日々必死に生きている。

だからインターンにも行くし、海外旅行もする。たまによく分からなくなって悪いことに手を出してみたりもする。

 

ただ、そうやっていくうちに、様々な美しいものに出会い、様々な愛に触れ、

「ああ、なんて幸せなんだ、生きててよかったな」

と思う。

「こんな幸せを感じて生きていきたいなあ」

と学んでいく。

 

その過程で、初めて、

「頼んでないけど、それでも産んでくれて、ここまで大切に育ててくれて、本当にありがとう」

と、親の存在そのものに対して、心からの感謝に満ち溢れるのだ。

 

なんて恩知らず、と思うかもしれない。でもそれが人間なのだ。

人間は、自分の人生の為にしか生きられない。

だからこそ、「どう生きたらいいか」は自分にしかわからないし、母親がいくら「あなたの幸せを思ってるのに」と干渉してきても、「あなたは私じゃないでしょ」と反発するのだ。

*

さて、前提が共有できたところで、話に戻ろう。

「母親は、私を理解できないんです」

と彼女は言った。

 

表面的には「インターンとかわかってくれない」「私のやりたいこととかを理解するための心の準備が出来てない」という意味なのだろうが、私には、痛烈な彼女の叫びが聞こえた気がした。

 

それは、とてもシンプルで、

「私のこと、ちゃんと愛してよ」

である。

 

たとえば20年間、子供の意思決定に対してネガティブな言葉を投げかけ続けると、子供はどうなるか。

自分にとって絶対的である親が、自分の意思決定を否定している。

すなわち、意思決定をした自分を否定している。

 

「お母さんの思う通りに頑張らないとお母さんは私を認めてくれない」

「やっぱり私は何もできない」

「こんなに頑張ってるのに、なんでわかってくれないの」

「私のこと本当に愛してる?なんで応援してくれないの?」

「私が反抗すると、すぐ悲しそうにする。私は親を悲しませるダメな娘だ」

 

子供はだんだんと「ああ、私って、存在しているだけではマイナスなんだな」という感情をある種この世の真理として抱いていく。

いくら客観的に「まあ、親も色々あるからね」と理解していたところで、幼少期に形成された「親は私を否定している」という強迫観念にも似た意識はなかなか拭えない。

 

それを自覚し始める青年期くらいに子供は”自立”という概念に片足を突っ込みはじめ、対立は表面化するのだが、その時に子供が至る結論は悲しいことに、

「生まれてこなければよかった」

なのだ。

 

親は私をダメな子だと思ってる。自分のことを否定してくる。でも私にだってワクワクすることはあるし、やってみたい。でも、私が私らしくいようとすると親は不幸そうにする。「私を不幸にするな」と怒る。

ああ、私のことなんて、産まなきゃよかったのに。

となるのだ。

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