リサイクル率2%の寝具業界をサステナブルに。業界の慣例に切り込み課題の解決を目指す

寝具のリサイクル率は2%以下。寝具が大量に廃棄される現状を変えようと事業に取り組むのが株式会社yuniだ。回収・再生のプラットフォーム構築、再生素材の開発・販売、パーソナライズドマットレスの開発など、様々な角度から寝具業界の課題に取り組んでいる。代表の内橋堅志に、課題解決のハードルをどのように乗り越えているのかや、今後の展望を聞いた。

【プロフィール】内橋 堅志(うちはし けんし)
株式会社yuni代表取締役。実家が寝具メーカーを営み、高校時代から事業を手伝う。大学進学後は機械学習を専攻し、エンジニアとしてキャリアを積む。寝具メーカーでの経験とエンジニアとしての経験を掛け合わせることで、日本の寝具業界の課題解決を目指し、2020年にyuniを創業。

大量に廃棄される寝具

—現在の事業概要を教えてください。

寝具をはじめ、綿・ウレタン・羽毛製品のリサイクル率を上げることを目指し、3つのサービスを行なっています。1つ目は、寝具を個人、法人、自治体から回収し、再生するプラットフォーム『susteb』です。2つ目は、寝具をはじめ、綿・ウレタン・羽毛製品を再利用するために必要な、再生素材『xRebirth』の開発・販売です。素材としての販売や自社ブランドでの商品開発も行なっています。そして、3つ目は、循環するパーソナライズドマットレス『xSleep』の開発・販売です。オンラインで完結するパーソナライズ診断を用い、何度でもパーソナライズし直すことができるマットレスを開発しています。

 

—どのような経緯で起業されたのですか?

実家が寝具メーカーで、幼少期から寝具工場で遊ぶような環境で育ちました。高校入学後に実家の事業を手伝い始めて、高校卒業後は実家に就職をし、寝具のリサイクルの新規事業を1年間やっていました。その後、大学に進学して機械学習を勉強し、大学卒業後はエンジニアとしてしばらく働いていました。そのエンジニアとしてのキャリアと寝具業界でのキャリアを掛け合わせて、日本の寝具業界の課題解決ができるのではないかと考え、2020年にyuniを設立しました。

創業時は、寝心地がいいマットレスを作りたいと思っていたんですね。そして、実家の寝具メーカーでの経験で業界の廃棄に関する課題を感じたこともあって、当時は自分たちが作った寝具はリサイクルできるようにしようと考えていました。しかし、以前から寝具のリサイクル率を上げる必要があると考えていたため、自分たちが販売するものだけでなく寝具業界全体の構造を変えていけるような今の事業の形に至りました。

 

—寝具業界のどのような点に課題意識を持たれているのでしょうか?

僕らは、寝具をはじめ、綿・ウレタン・羽毛製品の廃棄に関する課題に取り組みたいと考えています。まず、寝具と言ってもさまざまな種類があり、その素材も多様です。例えば、掛け布団には綿や羽毛が使用され、マットレスにはウレタンや綿をはじめ、様々な素材が使用されています。問題となっているのがその廃棄です。例えば僕の実家がある兵庫県西脇市の粗大ごみ組成を見てみると、布団等寝具類が37.5%で最も多く、年間15,000枚程度の寝具が廃棄されていることがわかります。一般的な人口5万人都市でも同様です。これだけの量が廃棄されている布団ですが、1枚の布団を作るのに多くの素材を必要とします。例えば、シングルサイズの羽毛布団1枚を作るのに水鳥200羽以上の羽を使用し、シングルサイズの綿布団1枚を作るのには綿畑100坪以上の綿を使用します。このように大量の素材を用いて作られている布団を含む寝具のリサイクル率が非常に低いというのが現状です。近年アパレルの大量生産・大量廃棄に注目が集まっていますが、実はアパレルのリサイクル率が37%なのに対して、寝具のリサイクル率は2%以下にとどまっています。以上のような現状から、寝具をはじめ、綿・ウレタン・羽毛製品のリサイクル率を上げることは急務だと考えています。

 

様々な企業と連携し、寝具を回収・再生

—『susteb』の再生の流れについて教えてください。

まず、ご家庭や法人、自治体と連携して、使わなくなった寝具を回収します。次に、素材を選別し、洗浄・滅菌、圧縮・チップ化などの過程を経て、再生素材『xRebirth』として再生します。そこから新たに製品化してお客さんに届けていく、この再生プラットフォーム全体が『susteb』です。現在、毎月3万枚程度の寝具を回収しています。

 

—再生素材『xRebrith』はどのような素材なのでしょうか?

回収した素材の洗浄・滅菌を繰り返し行なった後に、そのまま利用する、圧縮する、チップ化するなど、素材に合った様々な方法によって再度利用可能にした素材が『xRebirth』です。例えば、羽毛は特殊な技術を用いて綺麗にすると、羽毛として再利用できます。ウレタンはチップ化したり、熱で固めて高密度の再生ウレタンにしたり、綿は僕たちの再生技術で洗浄・選別をし、発熱綿や再生綿、糸を引くなど、様々な方法で再利用しています。『xRebirth』は綿やウレタン、羽毛など幅広く既存素材の代替素材として利用可能です。『xRebirth』が代替していくことで、素材の新規採取量を減らすことができます。素材によっても異なる再生素材が作れますが、取引先のニーズに応じて細かくデザインすることも可能です。「この素材はチップになる、だからクッションとして販売可能で、クッションならこの販路が考えられる」というように、回収の入り口から再利用の出口までのルートを1つ1つ細かく構築しています。

 

—再生素材の生産の現場はどのようになっているのですか?

寝具の再生をする工場というのが全然存在しないので、再生をするための工場はほぼ全て自分たちで作りました。寝具のリサイクルに取り組む上で、どういう形で労働力を調達し、どのような環境で再生をしているのかはとても重要だと思っています。そこで、僕たちは地域の自治体や障がい者支援をされている事業所と連携し、障がい者を多く雇用して就労支援を行なっています。就労支援という形を取ることによって、地域にうまく溶け込むことも意識しています。

 

—様々な企業と連携しながら寝具の回収、再利用を進められているとのことですが、具体的にどのように連携されているのでしょうか?

まず、寝具メーカーとの連携があります。寝具メーカーの販売先に下取りのニーズがある場合、僕たちが下取りをすることで販売を促進し、下取りした寝具を再生してメーカーの商品をOEM製造します。寝具メーカーなどとの取引では、基本的に回収のニーズがあって、そこに対して「回収するのでよかったら再生素材を使いませんか?」とお伝えして取引するケースが多いですね。他にも、量販店との連携があります。店舗にてお客さんの不要になった寝具やクッションを回収し、お客さんは割引価格で商品を購入することができるという仕組みです。布団って新しいものを買うときに古いものを捨てる必要があるじゃないですか。お客さんにとっては、「廃棄するのは面倒くさいけど、その場で新しいもの買えるし定価より安くなるんだったら店舗に持ち込むか」となるわけです。量販店にとっては、集客や販促に繋がります。リテラシーが高い消費者の方は、多少お金を払ってでもサステナブルな取り組みに積極的に参加してくれるんですよね。でも、僕たちはそのような消費者の方による投資に依存したくないと考えています。なので、寝具を単に廃棄するのではなく再生することによって、消費者の方に直接的なメリットがある仕組み作りを心がけています。

あとは、宿泊施設や不動産など、定期的に寝具の入れ替えが必要なところと連携することも多いです。

 

—回収ニーズのある家庭や、連携ニーズのある企業にはどのようにリーチされているのですか?

この事業をやっていると、多くの方に共感いただいて、応援してもらえるんですよね。それで、こちらからリーチしなくても口コミ的に広がっているのではないかなと思っています。企業も今は問い合わせいただいたところと連携を進めていますが、月100件くらいはお問い合わせいただきます。ただ、現在は工場のキャパシティが足りていないので、新しく工場を作ることが急務です。

 

回収・再生の入り口から出口までのルートを最適化する

—これまで寝具のリサイクルがされてこなかった要因は何だと思いますか?

まず、先ほどもお話したとおり寝具と言っても種類がたくさんありますよね。マットレスにはウレタンを使うし、掛け布団や敷布団は綿だし、羽毛布団は羽毛です。これらの素材を1つ1つ異なる方法で再生する必要があります。そして、基本的にこの中で再利用して一定の利益が得られるのは羽毛だけです。なので実際、羽毛のリサイクルをしている業者は他にもあります。でも、寝具の素材の中で羽毛の割合は全然高くない。加えて、寝具の素材自体の価格が高くないので、リサイクルしてもコストを抑えられるわけではありません。つまり、リサイクルをしても利益が出しづらいことがリサイクル率が低い要因だと思います。

 

—yuniではどのようにこのハードルを乗り越えているのでしょうか?

僕らは、素材がちゃんと世の中に出ていくように、回収の入り口から再生した後の出口までのルートを細かく設計することで、このハードルを乗り越えています。

yuniにはまず、再生素材をそのまま素材として販売するルートと、OEMや自社ブランドの商品として製品化して販売するルートがあります。基本的に、製品化して販売する方が利益が出やすいので、素材としての販売より優先度が高いです。さらにその中でも、自社ブランドの製品として販売したいと思っています。将来的な回収を前提に作っているため、リサイクル率が高くなるからです。つまり、自社ブランド製品としての販売、OEM製造、素材としての販売という優先順位で素材が世の中に出ていくようにしています。

加えて、OEM製造の中でも細かくルートが分かれています。例えば介護用のマットレスのメーカーさんとの連携では、素材の品質が求められます。介護用なので、反発係数など素材の物性が重要なんですね。そのようなニーズに対しては、いろんな種類の素材を混ぜ合わせて再生素材を作るのではなく、同一の素材をたくさん使って再生素材を作ることが大事になります。結局、同一の素材をたくさん集めてくるには、現在介護業界で使われている商品を回収してそこから再生するのがベストなので、介護業界のための回収・再生ルートを構築しています。

他にも、例えば防災グッズのルートがあります。防災毛布などの防災系商品は、何年かに1度変えるなど自治体ごとにルールが決まっていますが、使用されない場合が多いですよね。製品が新しい状態のまま回収されるので、リユースに近い形で再生しています。

このように、一言で寝具の回収・再生と言っても、ルートを細分化していくことで、素材を世の中に出し切ることができ、きちんと利益をあげることもできます。ここが今まで誰もできなかった僕たちの強みだと思っています。

工場の様子

 

パーソナライズドマットレス『xSleep』

—続いて、自社製品である『xSleep』について教えてください。どのような仕組みでパーソナライズが可能になっているのでしょうか?

まず、『xSleep』は上下2段に分かれています。上部(トッパー)が機能性素材で、下部(ボトム)がポケットコイルです。そして、トッパーが頭・腰・足の3箇所でさらに2段構造になっています。つまり、トッパーの6箇所に色々な素材を入れ替え組み合わせることで、パーソナライズできるという仕組みです。

従来のマットレスは『xSleep』のように細かく分かれた構造にはなっていません。ポケットコイルの部分は特に再生が難しいため、一体化したマットレスは再生が難しくなります。しかし、ポケットコイルは10年経ってもほとんど劣化しないし、肌にも直接触れないので、長持ちします。一方で、肌に直接触れるトッパー部分は劣化は早いですが再生はしやすいという性質があります。だから、『xSleep』ではマットレスを上下に分けることによって、上部(トッパー)だけを回収して再生できるようにしています。このように細かい部分ごとに再生可能であることによって、身体の変化やライフスタイルの変化に伴って何度もパーソナライズができるようになっているわけです。

 

—パーソナライズのための診断はオンラインで完結すると伺いました。

『xSleep』のパーソナライズは、問診と体圧分散予測によって行なっています。一般的なオーダーメイドの寝具は、オフラインで問診と体圧分散の測定をします。体圧分散の測定とは、どこにどのくらいの圧力がかかっているのかを測定することです。従来の方法では、体圧分散を測定するために、お店に行く必要があったわけです。でも実は、体圧分散というのはそこまで複雑なデータではないので、身長・体重・体型の情報から予測することが可能なんですよね。そこで、『xSleep』ではオンラインで必要な情報を入力してもらい、体圧分散を予測することでパーソナライズされたマットレスを作っています。他の業界ではこのような予測は頻繁に用いられているのですが、寝具業界はテクノロジーの活用が遅れているため、これまで採用されていませんでした。

 

—『xSleep』の生産においても様々な企業と連携されているのですか?

『xSleep』はパーソナライズの性質上、いろんな素材を使う必要があります。なので、素材ごとにその素材を得意としているメーカーさんに製造を依頼しています。本当は、パーソナライズはロットが小さいのでメーカー側には特にメリットがないんです。それでも引き受けてくれるのは、実家の事業を手伝っていた時や起業してから築いてきた関係値があるからというのが大きいですね。その上で、僕たちの想いに共感して協力してくれるというのもあると思います。

 

—現在『xSleep』は一般販売されていませんが、今後の展開を教えてください。

まだ一般販売していないのは、僕が製品に100%納得できていないからです。そこで一般販売する前に、矛盾するようですが、一度オフラインでの販売をしたいと思っています。そこで、データを集めたりお客さんの課題をもっと細かくヒアリングして、製品にフィードバックして、納得がいくものを作りたいです。

『xSleep』のデータを収集している様子

 

業界全体を巻き込み、寝具が捨てられない社会へ

—寝具業界全体を巻き込んでサステナブルにしていくために、どのようなロードマップを描いていますか?

まず、寝具が廃棄されてしまう前に回収できるようにすることで、廃棄量を減らすというのが最も重要です。これには、百貨店やクリーニング屋さんで回収する、自宅に直接回収に行くなどいろんな方法があると思いますが、様々な企業さんと連携しながら廃棄する前のタッチポイントを増やす必要があると考えています。

また、回収のための接点を増やす一方で、寝具の全種類回収にもこだわりたいと思っています。寝具にはいろんな種類があって、マットレスだけでも1000種類以上あるし、1つ1つ違う素材、違う作り方をされている。ここが再生において1番難しいところではあるんですが、それでも全種類回収することにこだわりたいんです。一部だけ回収という形だと、回収を依頼する側に「これは回収してもらえるのかな?」という迷いが生じてしまいますよね。その迷いをなくして回収のハードルを少しでも下げたいと思っています。そして、全種類回収を掲げたときに、どうしても再生しづらいものが出てきてしまいます。そこで、再生する前提で作られた寝具を増やしていく取り組みが『xSleep』や、『xRebirth』を使ったOEM製造というわけです。加えて、再生素材自体を寝具以外にも活用していく必要があると思います。回収を増やしても素材が余らないようにするには、当然その使用方法を拡大していくことが求められます。回収して再生する量を増やすのと同時に、他の業界への拡大もしていきたいと思っています。

最後に、もう1つ必要だと考えているのが法律の整備です。例えば、ペットボトルのような容器などにはメーカーの再商品化義務があり、業界全体で製品回収が義務付けられています。しかし、寝具にはそのような法律がありません。なので、寝具を廃棄するか再生するかは、消費者のリテラシーに委ねられています。法律によってルールが定められていないため、現状としてはやはり使い終わった寝具は廃棄を前提とした安価な価格設定をされている自治体や廃棄業者さんに流れてしまいがちです。そうなると再生もできません。とはいえ、メーカーにとっても自身で回収するメリットは少ないので、結果として、積極的に廃棄を行なって新規素材を調達する方が効率がいい状態になってしまっています。また、この回収と再生ができない現状に目をつぶり、「再生素材を使用したいが、製品の回収はやりたくない」というフリーライダーも発生してしまっています。このような現状を打破するため、回収とリサイクルの義務付けや、拡大生産者責任の適用による生産価格への上乗せ、寝具に対しても家電リサイクル法のように消費者がリサイクルの費用を多少負担する形を取るなどの、仕組みづくりが必要だと考えています。

 

—今後の展望について教えてください。

今後5〜8年くらいの間に、寝具のリサイクル率を僕らの事業単体で10%引き上げるのが理想です。そして、寝具をリサイクルしたいという想いを持っている方の受け皿になりたいと思っています。日本には寝具を打ち直して使うという文化があります。婚礼布団という言葉にも見られるように、寝具は財産だと考えている方が、特に高齢の方に多いのではないでしょうか。これは日本特有の文化なんですね。僕たちはお客さんから実際にお手紙を頂くことがあって、例えば、「実家で両親が亡くなって両親の寝具を捨てたくない、だけど処分はしないといけなかった」というお客さん。「yuniを通して寝具を再生し、新たな商品として購入できることに、救われた気がしました」と言ってくださいました。このお客さんのように、寝具を捨てたくないという想いを持っている方に対して、搾取の構造を作るのではなく、スマートなビジネスモデルを構築することで、受け皿になり、寝具が捨てられない社会を実現していきたいです。

 

株式会社yuni https://yuni.co.jp

 

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interviewer

掛川悠矢

記事を書いて社会起業家を応援したい大学生。サウナにハマっていて、将来は自宅にサウナを置きたいと思っている。

 

writer

堂前ひいな

心理学を勉強する大学院生。好きなものは音楽とタイ料理と犬。実は創業時からtalikiにいる。