学童保育で興味関心を広げ、スタートアップ支援でチャレンジする人を増やす。2つの事業に共通する想いとは

さまざまな社会問題の根底にある教育の課題にアプローチするため、学童保育事業を運営している株式会社Next Edge代表取締役の松葉琉我。現在はスタートアップ支援も行っている。一見まったく異なる2つの事業だが、最終的な会社の使命は変わらないと語る。組織が大きくなり役割が変わったことによる葛藤や、関西のスタートアップ事情への課題感についても聞いた。

【プロフィール】松葉 琉我(まつば りゅうが)

株式会社Next Edge代表取締役。Next Edgeでは問題解決型学習の学童保育や、関西の起業家向けにスタートアップ支援などを実施。2019年4月に、大阪府茨木市水尾にて民間学童・アフタースクール「Kids Lab.」を開校。2020年9月より、関西の若手起業家を対象にした、創業からシード調達までを支援するアクセラレータープログラムを開始。

松葉さんの過去のインタビュー記事はこちら:小学生の他者性を育む。口座残高61円でも諦めずに挑戦を続ける理由

毎日違うコンテンツで、子どもの興味関心が広がるきっかけ作り

ー前回のインタビューから約1年半が過ぎましたが、会社全体でどんな変化がありましたか?

大きな変化が3つありました。1つ目が、Kids Lab.の校舎が増えたことです。もともと茨木の1校舎のみだったんですけど、2022年度から高槻に2校開校することが決まりました。

2つ目は組織の規模が大きくなったことです。前回のインタビューでは正社員が僕以外いませんでしたが、その後5名の方に入社していただき、アルバイトの方も30〜40名ほどに増えました。今では校舎の運営は社員とアルバイトの方々にお任せしていて、僕は経営に集中できるようになりました。

3つ目はRe:Viveという新規事業を始めたことです。関西の起業家の​創業からシード調達までを支援する4ヶ月のアクセラレータープログラムで、これまで2期開催しました。計15社ほど採択していて、プログラムの中で計2億円近い資金調達が行われています。

 

ーたくさん変化があったのですね。コロナの影響もあったかと思いますが、なぜこのタイミングで高槻に2校増やす決断をされたのですか?

茨木校舎の定員が埋まりつつあったからです。高槻にした理由は2つありました。1つは茨木と高槻で地域性が似ているという点です。もう1つは、高槻は待機児童が出ていて学童保育のニーズが高く、開校にあたって市から補助金を出していただけることになったからです。

 

ー教室の中でやることや教えることにも変化がありましたか?

組織が大きくなったことで現場にも良い変化がありました。まず、社員が増えたことで現場業務の役割分担ができるようになりました。経営、現場運営、子どもなどの各方面に対して同時に注力できるようになって、濃密な1年だったなと感じています。

あとはアルバイトの方が増えたことで毎日違うコンテンツを生み出せるようになりました。Kids Lab.のテーマが「興味関心を広げる学童保育」なので、興味関心が広がりそうなコンテンツを考えてもらって年間300種類くらいやっています。例えば、ベネズエラ人のスタッフが、ベネズエラの料理やダンスを教えたことがきっかけで南米マニアになった子がいたり、他にも「午後の紅茶」で有名なキリンの工場をリモート見学させていただいて、教えてもらったレモンティーの作り方を教室で実践してみたりしたこともありました。

子どもたちにいつか、「Kids Lab.での経験があったから好きなことや夢中になれるものが見つかった」と思ってもらえるように、常にきっかけ作りをしているという感じですね。

 

ーいろいろなコンテンツを経験された生徒さんや親御さんからは、どういった声がありますか?

親御さんからは特に、お子さんの変化についてお声を頂くことが多いですね。例えば、「物事にすごく前向きに取り組むようになって、何でもとりあえず1回やってみることができるようになった」であったり、「ただ取り組むだけではなく、自分が作ったものに対して人に意見を聞くようになった」というものです。あとは、教室で子ども同士の役割分担やお願いごとが日常的に起きるので、お友達とのコミュニケーションが上手くなった子もいるようです。

子どもたちが、英会話やプログラミングなどの授業で積極的に手を挙げて学ぼうとしている様子を見ていると、「楽しいから来ている」という感覚なのかなと思います。ただ、楽しいだけでは学びに繋がらないので、「楽しさ」と「人間的な成長」が両立できるように現場の方を中心にいろいろと工夫してもらっています。

 

ー具体的にどんな工夫をされているのでしょうか?

興味関心を広げる体験型のコンテンツでは、一見遊びのようなものでもスタッフ側に狙いや意図を持ってもらい、子どもたちに学んでもらうために自分たちは何を知っておかないといけないのか、どういう声かけをすればいいのかを考えて準備してもらっています。逆に、子どもが自分の興味を深く掘り下げて探究するプロジェクト型のコンテンツでは、子どもたちに大人が知らないことを自分はやっているという感覚を持ってもらうようにしています。そうすることで、主体的かつ夢中で取り組むようになるんです。だからスタッフが用意することはほとんどなく、子どもたちに教えてもらう、学ばせてもらう姿勢を大事にしています。

 

現場を離れて生まれた葛藤

ーもともと1人で経営と現場を担っていたところから、経営に集中するようになって大変だったことや葛藤はありましたか?

現場の意思決定が、経営的な視点で見るとグッドとは言えないことがあります。もちろん現場の方は経営者ではないですし、逆の立場で言うと現場の方が「経営者は現場のことをわかっていない」と思うのと同じことで、それは避けようのないコンフリクトだと思っています。お互いに、「そういうことはよくあるからこそ、しっかり話をしてすり合わせよう」という認識はあるのですが、けっこう大変だなと思ったことの1つです。「人に任せるのであれば口出しをしない」ということも意識しているのですが、やっぱりいろいろ言ってしまう時もあり、難しい部分ですね。

 

ー現場の方と話し合いをする時に伝え方などで何か気をつけていることはありますか?

意図がちゃんと伝わるようにまっすぐ伝えることですね。変に気を遣って遠回しに言ってもお互いのためにならないと思うので。でもリスペクトを忘れないことも大事にしています。やってもらった仕事内容に意見を言う時も、リスペクトは欠かさずに伝えるのが結果的に1番うまくいくと思っています。

 

関西から、世の中を大きく変えるスタートアップを生み出す

ー Re:Viveの事業概要や目的を教えてください

関西のU29を対象に、スタートアップ創業からシードの資金調達までを支援する4か月間のプログラムを運営しています。1社に1人のメンターがついて、週1回のメンタリングを行うのですが、東京に活動拠点があるVCのパートナークラスの方がメンターとしてついてくださるので、4ヶ月で大きく成長していくプログラムになっています。

事業目的は、関西でスタートアップとしてエクイティ調達をして、10年以内くらいで大型Exitを目指すような起業家を増やすことです。関西は東京の次に経済規模が大きいですし、人口も多く、中でも学生の多さが特徴だと思うのですが、大型Exitを目指す起業家が東京と比べるととても少ないという課題感をもともと持っていました。

 

ー松葉さんご自身も関西で起業されていますが、関西で大型Exitを目指すスタートアップが少ないといった課題感は、関西の起業家コミュニティと関わる中で感じられたのでしょうか?

僕も含めスモールビジネスで起業する人はたくさんいるなと思っていて、もちろんそれも素晴らしくて尊いチャレンジですし、そういう人達を支援するセクターや人もたくさんいると感じています。一方で、世の中を大きく変えるのは、大型Exitを目指すようなスタートアップ企業だと思うんです。でも世界と比べて日本にはそういう企業が少ないですし、国内で見ても、東京と比べると関西は大型Exitを目指すスタートアップも、シード期に資金を1000万円くらい出してくれるVCもいないと感じていました。Next Edgeはもともと、「チャレンジする人を増やす」というのが会社でやりたいことだったので、感じていた課題を解決するためにRe:Viveを作りました。

 

ー1期目と2期目でどのような方が参加されたのですか?

1期目は、プレシードからシードくらいの10社を採択させていただきました。プロダクトの有無に関わらず採択したので、プロダクトがある人とない人でステージ感にバラつきが出てしまい、支援が少し難しかったという反省がありました。だから2期目では、すでにプロダクトがあるけどまだ調達はしたことがないフェーズの6社を採択させていただきました。

 

ー参加者からはどんな声がありましたか?また、印象的だった参加者のエピソードを教えてください。

参加者の方からは、東京でもなかなか登壇されないような方のお話を聴けることや、VCのパートナークラスの方に週1回メンタリングしてもらえることが、貴重な機会としてすごく好評でした。

エピソードで言うと、2期目のある参加者が特に印象的でした。大手企業を辞めてスタートアップ起業した方で、年齢がU29ギリギリ、さらにご家族を養わなきゃいけない状況だったんです。他の参加者も大きな覚悟を決めて参加されていたのですが、中でも人一倍あとがない状況だったので覚悟が違うように感じました。最初に作っていたtoCのプロダクトが、ある程度伸びつつもマネタイズに困ったので途中でtoBにピボットする状況になったのですが、最終的に短期間でプロダクトリリースまで漕ぎ着けていました。その方は誰よりもメンターに貪欲にアドバイスを求めたり、毎週のトークセッションでもしっかり質問を用意してきていたり、本当に退路を断って腹が決まっている人はここまでの気合いでやるんだなというのは僕自身すごく学びになりました。

 

気合いで集めた豪華な協力者

ー全国でさまざまなアクセラレータープログラムがあると思うのですが、その中でもRe:Viveの特徴や強みはどんなところだと思いますか?

最近はオンラインが主流になって、割と地方開催の優位性は無くなってると思うんですよ。そんな中でも、地場のコミュニティで泥臭く起業家に会いに行って、これからすごいチャレンジをしそうな起業家を見つけて、不足している機会を提供できていることは強みになるんじゃないかなと思います。

あとは、国内で結果を出しているVCのパートナークラスの方にメンターを務めていただいているところや、毎週のトークセッションでも豪華な先輩起業家の方々をパネリストにお呼びできているところは、他のアクセラではなかなかない機会だと思っています。

 

ー松葉さんのおっしゃる通り、メンターやパネリスト、協賛企業がすごく豪華ですが、どのようにして集められたのでしょうか?

どうやって集めたかと言うと、気合いですね。これは誇張ではなくて、本当に気合いで集めています。もちろん全員に対して出てほしいとは思っているのですが、普通にメッセージを送って必ず返信をもらえるような方々ではないので、いろいろな方にたくさんメッセージを送りました。紹介などはほとんどなく、ほぼ直接メッセージを送っていたので本当に気合いという感じでしたね。

そんな中でも承諾してくださる方がいたのは2つの理由があるかなと思っていて。まず関西でやっていることが1つで、やっぱり東京の中でも、「関西もっと頑張らなきゃいけないよね」であったり、「関西出身は優秀な人が多いよね」といった共通認識があるように感じました。もう1つは、運営者自身が学生で若手というところも協力していただけるポイントだったのかなと思います。

 

毎日ワクワクして生きられる人を増やしたい

ーチャレンジする人を増やしたいという想いで2つの事業を展開されていると思いますが、Kids Lab.とRe:Viveで繋がっている部分や、会社としての核は何ですか?

根幹の部分でやりたいことは繋がっていますが、2つの事業を通して何か面白い試みができる段階にはまだ至っていないのが現状です。ただ理想として、チャレンジしている大人の姿を見て「自分たちもこういうことをやってみたい」と言ってくれる子が増えるといいなという思いはあって、そこをどうやって繋げるかはこれからの課題という感じですね。

会社としての核は、「毎日が新しいと感じられ、明日も生きたいと思える社会を創造する」というビジョンがあります。スタートアップで起業するにしても、学童保育でいろいろなコンテンツを体験してもらうにしても、最終的には、毎日ワクワクして生きられる人をいかに多く生み出していくかという使命が会社としての核ですね。

 

株式会社Next Edge https://www.next-edge.jp/

 

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interviewer

堂前ひいな

幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。

 

writer

張沙英

餃子と抹茶大好き人間。気づけばけっこうな音量で歌ってる。3人の甥っ子をこよなく愛する叔母ばか。