誰でも参加できる、政策共創プラットフォームへ。使いやすさを追求した短期間でのサービス開発
インタビュー

誰でも参加できる、政策共創プラットフォームへ。使いやすさを追求した短期間でのサービス開発

2022-03-03
#政治 #テクノロジー

政治家が分かりやすく書いた政策から共感するものを見つけて、コメントなど様々な手段で政策を実現するための応援ができるプラットフォーム『PoliPoli』を運営する株式会社PoliPoli。2021年10月にデジタル庁の実証実験の一環として、新たに行政向けのサービス『PoliPoli Gov』をリリースした。CXOの山田仁太、CTOの倉田隆成にPoliPoli Gov開発のこだわりや組織の変化について聞いた。

【プロフィール】
・山田 仁太(やまだ じんた)写真左
株式会社PoliPoli CXO。大学1年生の時にPoliPoliを共同創業。慶應義塾大学商学部卒業。

 

・倉田 隆成(くらた りゅうせい)写真右
株式会社PoliPoli CTO。大学1年生の時にPoliPoliを共同創業。慶應義塾大学商学部卒業。

 

株式会社PoliPoli代表 伊藤和真さんの記事はこちら:国会議員に直接声が届く。社会の意思決定をつくる政治プラットフォームとは 

起業の選択肢の1つが政治だった

—まず、お二人の経歴や現在の業務について教えてください。

山田仁太(以下、山田):代表の伊藤と同じ大学で友達だったことがきっかけとなり、大学1年生の時にPoliPoliを起業し、去年大学を卒業しました。現在は主に、PoliPoliとPoliPoli GovのUI・UXのデザイン、PoliPoli Govのプロダクトマネージャーをしています。加えて、採用の設計なども行っています。会社自体も社会全体も大きく変化しているので、変化に応じて必要なことを幅広く担っています。

 

倉田隆成(以下、倉田):僕も代表の伊藤と同じ大学で同じクラスだったことがきっかけとなり一緒にPoliPoliを立ち上げ、その後ずっと関わっています。現在は、PoliPoli Govの事業の全体統括、プロダクトマネジメント、開発のディレクション、そしてPoliPoliと合わせた会社全体の開発の統括CTO業務をやっています。

 

—お二人はもともと政治に興味があってPoliPoliに参画されたのですか?

山田:僕は政治に対して強い原体験があるわけではなかったんですが、漠然とした不信感や苛立ちを感じていました。1回の選挙で政策の方針ががらっと変わることやその結果政策に一貫性がなくなることなどによって、国民がコミットしづらい、正しい評価をしづらいということを問題視していました。さらに、日本が経済成長や人口減少という観点で”沈んでいっている”ということにも危機感を抱いていましたね。当時同じクラスだった代表の伊藤が政治に関する事業をしたいという強い想いを持っていたので、その想いに共感して、一緒に起業することになりました。

 

倉田:僕は高校生のときから政治に関心があって、大学入学後、伊藤と政治について度々議論していました。その後、大学在学中に何か事業を始めてみたいと思ったときに、政治も1つの選択肢としてあるよねという話になり、その流れでPoliPoliを立ち上げることになりました。

 

短期間でリリースに至るまで

—2021年10月にリリースされたPoliPoli Govの概要を教えてください。

倉田:PoliPoli Govは、行政向けの政策共創プラットフォームです。まず、行政のユーザーさんが住民ユーザーさんに対して、「この課題に対して意見をください」、「こういうことをしようと考えているのですが意見をください」というように、相談を投稿します。その相談を受けて、住民ユーザーさんは自分の意見をコメントすることができます。この仕組みによって、行政の方は住民の方の意見を実際の政策に反映することが可能になります。

 

—既存のサービスPoliPoliとはどのような点が違うのでしょうか?

倉田:PoliPoliとPoliPoli Govが異なるのは、アプローチだけですね。PoliPoliでは政治家さんが相談を投稿し、PoliPoli Govでは行政の方が相談を投稿するという点が異なっています。アプローチは違えど、どちらのサービスも新しい政治の仕組みを作ることや、人々の幸せな暮らしにコミットするという目的は同じです。他にも共通する部分はたくさんあって、どちらのサービスも政治や世の中に対して何か変えたいと強く思っている方に利用いただくことが多いですね。

 

—どうしてこのタイミングで新規事業としてPoliPoli Govを作ることになったのですか?

倉田:実はPoliPoli Govの着想は、PoliPoli立ち上げのタイミングからありました。政策(社会の仕組み)が国民1人1人に適用されるには、政策プロセスに携わるより多くの人たちへアプローチする必要があると考えていたからです。政策プロセスでは、政策方針を定める政治家さんはもちろん、具体的な内容を定めていく行政も重要な役割を担っています。しかし、政治家さんに直接アプローチしやすいのに対して、行政の方にサービスを導入していただくのはどうしてもハードルが高かったんですよね。公募のようなプロセスを経る必要があるなど、そもそも参入するのが難しい。いつかはやりたいと思い描いていたところ、2021年8月に、国民との共創プラットフォームを作るという公募がデジタル庁から発表されました。デジタル庁は以前より、デジタル社会のかたちやデジタル改革の進め方について、国民から意見やアイデアを募集し、オープンに共有・議論することを目的として『デジタル改革アイデアボックス』を運営していました。今回の公募は、このデジタル庁アイデアボックスをより使いやすいUIUXにアップデートした『国民との共創による政策実現のためのコミュニティプラットフォーム』の形成・運営を目指して行われたものでした。* この公募を受けて、これは確実に僕らがやるべきものだと心を決め、PoliPoli Govの開発に踏み切りました。その後、2021年10月に無事にPoliPoli Govが採択され、実証実験が開始されています。

*「新しいデジタル庁アイデアボックスが始まります」, デジタル庁(2021/10/5)https://www.digital.go.jp/posts/4vlrFBy3 

 

—リリースに至るまでに大変だったことはありましたか?

倉田:公募を見つけてからすぐにリリースしないといけなかったところが大変でしたね。特にどこまでをMVP*として置くかなどをチームでたくさん議論しました。本当はやりたかったけれど限られた時間の中では難しいと判断し実装できなかったことも結構あって、機能を最小限まで削ぎ落としながらリリースにこぎつけるのは苦労しました。

*MVP:顧客に価値を提供できる最小限のプロダクト(参考:https://www.sansokan.jp/akinai/faq/detail.san?H_FAQ_CL=0&H_FAQ_NO=1468

  

—どのようなことを意識しながら開発を進められたのでしょうか?

倉田:”使いやすさ”を一番意識しました。PoliPoli Gov以外にも行政の方に住民の方の声を届けるツールというのはいくつかあるんですよ。例えば、パブリックコメントという制度があり、行政機関が政策を実施するにあたって事前に公開し国民が意見できるようにしなければならないと法律で決まっています。パブリックコメントのようなツールが他にも存在する中で、僕らのサービスの存在意義は、行政の方、国民の方双方にとってより使いやすいものであることだと思っています。だから、”使いやすさ”は絶対に最低限守るように開発を進めました。

具体的な機能の例として、コメント機能があげられます。行政ユーザーさんが掲載した相談に対して、住民ユーザーさんがコメントができるんですが、コメントをするにはそのトピックに関するある程度の情報が必要ですね。より多くの方にコメントいただくために、ページ上でわかりやすく情報提供をすることが重要になります。しかし、複雑な政治の情報を誰にとってもわかりやすく自分ごと化できるように整理するというのは結構難しい。そこで、スライドを使って情報をビジュアル化したものを載せることで、ユーザーの方にわかりやすい情報をお届けし、コメントをしやすくしています。この機能はPoliPoliにもあるのですが、PoliPoli Govではスライドデザインを縦から横に変更し、より情報を見やすいように工夫しました。

 

山田:他に工夫した機能として、コメント受付終了を明記することもあげられます。コメントを募集する期間が政治家さんと違って限られているので、募集期間が終了した相談だということをユーザーさんに示す必要がありました。そこで、SNSからの流入も多いことを踏まえ、コメント欄にて「相談へのコメント受付は終了しました」と表示するようにしました。細かい工夫ですが、ユーザーさんに使いやすいと思ってもらうには重要なデザインだと思っています。

PoliPoli Govの機能

 

使いやすさを意識した様々なこだわり

—プロダクト改善をする中で、開発の意思決定はどのように行っているのですか?

山田:改善の優先順位は、ユーザーにとってその課題がどれだけクリティカルかで判断しています。ヒアリングをしたりリサーチしたりする中で、まず課題を洗い出します。それらの課題は改善しないと使えないレベルのものなのか、それとも改善されたら嬉しいなという程度のものなのかなど、課題を修正することで出るインパクトの大きさによって課題の重要度が決まります。また、課題の優先順位をつける時にもう1つ重要なのが、ユーザーの対象を広げすぎないことです。僕らが現時点で設定しているターゲットにとってその課題がどれだけクリティカルなのかを考えるようにしています。

 

—PoliPoliを2年間運営してきた知見はどのように活かされていますか?

倉田:PoliPoliもPoliPoli Govも、やるべきことはユーザーの方に使いやすいと感じてもらうことなので、そこに関する知見はどちらのサービスにも通じていると思います。使いやすいと思ってもらうための重要な要素の1つとして、コメント欄に、課題に対して本質的な意見が集まるということがあります。やはり政治に関するトピックはコメント欄が荒れるリスクがあるんですよね。でも、2年間PoliPoliを運営する中で、荒れるコメントっていうのがわかってきました。コメント公開基準を最初から設けてはいるんですが、その精度が高くなってきたなと思います。また、どうしたら良いコメントが増えるか、どういう人にコメントしてもらうと良いのかみたいなことについてもナレッジが溜まってきたので、PoliPoli Govの運営に活かしていきたいです。僕らは1つ1つのコメントを大事にしたいので、コメント欄が荒れてしまうことによって本質的な意見が見過ごされてしまうということを避けたいと思っています。

 

—今後どのように展開していく予定ですか?

倉田:現在はデジタル庁に使っていただいていますが、今後他の行政の方にもどんどん使っていただきたいと思っています。僕たちからアプローチもしたいと思っていますが、すでにたくさん導入したいというお問い合わせもいただいています。一方で、サービスの運営をしながらサービスを拡大していくということを同時に進めるためには、人手が足りていないのも事実です。ミッションをより早く達成するためにも、事業拡大に一緒にアクセル踏める方を現在探している状況です。

 

ミッション達成に向けてバリューを一新

—ミッションとバリューを変更されたそうですね。

山田:ミッションに関しては、PoliPoli Govで行政に向けたアプローチを始めたことや海外展開も視野に入れているため、政治に加えて”行政”や”世界中の人々”という言葉も加えました。バリューについては、「オープンでいこう」、「日進月歩」、「幸せに鬼コミット」の3つを新たなバリューとして設定しました。バリューは会社全体の意思決定の基準や行動指針になるべきものですが、長期的な視野で会社の今後を考えたときに、以前のバリューでは実態とそぐわなくなる可能性があって。ミッション達成に向けて事業をよりブーストさせるためにも今回バリューを変更しました。

 

—3つのバリューそれぞれにはどのような意味が込められているのでしょうか?

山田:1つ目の「オープンでいこう」には、昨今政治や行政の透明化が目指されている中で、自分たちとしても社外・社内両方に対して透明性を意識していきたいという想いが込められています。社内でも常に情報をオープンにし、メンバー1人1人が自律的に動ける状態を目指します。2つ目の「日進月歩」は、日々変わり続ける政治や行政の市場の不確実性を恐れずに、一歩一歩冷静に対応していこうという意味が込められています。そして、3つ目の「幸せに鬼コミット」には、僕たちに関わってくださる全員の幸せを追求していくという意味があります。ユーザー、メンバー、ステークホルダーなど、利害が対立することもあるかもしれませんが、妥協せず全員の幸せを最大化するために動いていきたいです。

 

—現在、採用を強化されているとのことですが、どのような方と一緒に働きたいですか?

山田:現在ほぼ全てのポジションが空いているというような状態です。PoliPoliとPoliPoli Gov両方を運営しつつ拡大していくために、複数チームが必要になっています。

それぞれの役割ごとに必要なスキルなどはありますが、共通することとして3つのバリューを高いレベルで体現できる方と一緒に働きたいです。これが最も重要で、その次にミッション共感を重視しています。行政や政治の領域に関心があり、課題を解決したいと思っている方ですね。特に、PoliPoliの会社の強みとして、政治家さんや自治体、省庁など幅広いセクターにアプローチしていることがあげられます。自分が政治家になる、政治家さんの秘書になるなどのアプローチと比較すると、より短時間で広範囲に影響を及ぼせるのではないでしょうか。その分難しさもありますが、強いインパクトを残したいと思っている方には合っていると思います。

 

—お二人はPoliPoliで働く中で、どのようなことが面白いと感じますか?

倉田:前例の少ない分野を開拓していくことに面白さを感じています。PoliPoliを通してだからこそ発見できるお客様の課題感やニーズがたくさんあり、今後いくらでものびしろがあるのではないかと思っています。また、バリューである「オーブンでいこう」の通り、組織内の風通しが良いことも魅力的ですね。雇用形態や年齢に関わらず、部署間やメンバー間で意見が飛び交い、その意見が会社や事業の基盤になっていくということがよくあります。

 

山田:様々な分野で、実際に社会や国民の方の生活をより良いものにしていっている手触り感があること、政治家・行政という複雑かつ特殊な業態に対して取り組んでいることが、面白いと感じています。行政分野では特に、あらゆる方々の利用を想定する必要があり、求められる水準はとても高いです。とてもチャレンジングな日々ではありますが、「日進月歩」に1つ1つ課題を見つけて解決をしています。

左から山田さん、倉田さん

 

多様なセクターに導入してもらうサービスを目指す

—今後の事業展開を教えてください。

山田:PoliPoliでは、使ってくださる政治家さんの数を増やすのはもちろんですが、政策を作る以外の面でのサポートも充実させたいと思っています。特に、政治家さんにとっては選挙が非常に重要なので、選挙に関するアプローチもしたいと思い描いています。PoliPoli Govについては、導入後に行政の方の業務がそれまでよりも増えすぎることなく価値を感じていただけるサービスにするために、まだまだ改善が必要だと感じています。また、地方自治体の方からも導入したいという声をいただいていて、中央省庁向けとは異なった地方自治体向けのサービスを作りたいと思っています。地方自治体向けのサービスはその地域に住んでいる人にカスタマイズする必要があるので、それは新たな挑戦になりそうです。この3軸で事業を進めていきつつ、シナジーのありそうな領域で新規事業も展開できたらと考えています。

 

株式会社PoliPoliでは現在、様々なポジションにてご活躍いただける方を募集しています。詳細はこちら。https://polipoli.notion.site/polipoli/PoliPoli-97249831893141dc968440811591fbe3

株式会社PoliPoli https://www.polipoli.work/

 

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    interviewer

    掛川悠矢

    記事を書いて社会起業家を応援したい大学生。サウナにハマっていて、将来は自宅にサウナを置きたいと思っている。

     

    writer

    堂前ひいな

    幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。

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