【環境問題に挑む起業家が語る】大切な人と地球に贈る優しいプロダクト

2022年3月、マルイ有楽町にて丸井グループ×talikiプレゼンツのインクルージョンフェスが開催されることが決定した。今回で3度目となるこちらのポップアップ。プロダクトを通じて、環境問題や国際協力に取り組む若手起業家たちを招き、それぞれのプロダクト設計や課題へのアプローチ方法について対談を行った。また今回はホワイトデー期間の出店ということもあり、贈り物としてのプロダクトという観点からもお話を伺っている。

【プロフィール】
・唐沢 海斗(からさわ かいと)
ラヴィストトーキョー株式会社代表取締役。廃棄リンゴ由来の「アップルレザー」をはじめとする植物由来のレザーアイテムを企画、販売するライフスタイルブランドを展開。果物や野菜のアップサイクリングから始まる、巡りの良い暮らし」を届けることを目指している。

唐沢さんの過去インタビュー記事はこちら:

廃棄リンゴを使ったヴィーガンレザーバッグから、価値観が共存できる世界を目指して。

 

・池田 航介(いけだ こうすけ)
株式会社Perma Future代表取締役。明治大学農学部在学中。子ども食堂の運営や、全国の農家・エコビレッジを巡る旅を通じて、農や環境分野の知見を高めてきた。2021年から、現在の健康茶事業に取り組む。

池田さんの個別インタビュー記事は近日公開!

 

・中村 多伽(なかむら たか)
株式会社taliki代表取締役CEO。本対談のモデレーターを務める。

環境に配慮したバッグと健康茶

中村多伽(以下、タカ):まず簡単にそれぞれのプロダクトや事業について教えてください。

 

唐沢海斗(以下、唐沢):僕たちはヴィーガンファッションという入口から事業を始めました。動物性のものを用いずに、ファッションで何ができるかを考えたブランドです。主に廃棄されるりんごをアップサイクルしてできるアップルレザーを使ったバッグなどを製造・販売しています。

 

池田航介(以下、池田):僕たちは『EARTH MIND』という健康茶のブランドを展開しています。お茶の材料に使っている葉っぱは、静岡県にあるエコビレッジで作られています。元々日本の農業を強くしたいという想いがあって、全国で農家などを巡っていたのですが、やはり汚い・きつい・儲からないという3点から抜け出せなかったり、効率を上げて無駄を無くし利益を追求することが良しとされていたりする現状に疑問を感じていました。そんな時に出会ったのがエコビレッジです。エコビレッジでは「生業としての農」ではなく「暮らしとしての農」を追求していて、自然環境と消費者の両方を考えられた農業モデルが成り立っていました。この考え方に共感して、一緒にお茶を作り、価値観を広める活動をしています。

 

タカ:提携先はどのくらいの規模のエコビレッジなのですか?

 

池田:100名程度の方が生活されている場所です。日本国内にも色々なところにエコビレッジがありますが、僕たちの提携先がすごいのは、その自給率です。なんと850%を自給自足しており、余剰分は直売店で販売したり、直営レストランで材料として使用したりしています。EARTH MINDも、余剰分をおすそ分けする形で、製造・販売を行っています。

Perma Futerの健康茶『EARTH MIND』

 

タカ:お互いのプロダクトをギフトとして贈るなら、どんな人に贈りたいですか?

 

唐沢:EARTH MINDは誰に送っても喜ばれるんじゃないかと思います。環境に優しいとか、エコビレッジで作っているだけじゃなくて、単純に身体に良いじゃないですか。人間って、やっぱり自分が満たされて初めて誰かに還元していけると思うので、まずは自分が健康になるというところがポイントかなと感じました。落ち込んでいる人とか、今の働き方・エコシステムに疑問を持ち始めた人にとって、お茶を飲みながらゆっくり考えてもらう機会ができるんじゃないかと思います。身近な人だと、両親や姉に日頃の感謝を込めて贈りたいです。

 

池田:EARTH MINDにはまさに「地球視点を持つ」という想いが込められているので、ほっと一息ついて、身近な繋がりに気づいてほしいですね。商品を作った背景や環境への取り組みについてのリーフレットを同梱しようと思っているので、そちらを読んでくださるとさらに嬉しいです。

LOVST TOKYOのバッグも、誰に対して贈っても喜ばれるだろうなと思いました。丈夫で機能性も高く、デザインもおしゃれなので、環境に興味がない人でも気軽に使えますよね。ホワイトデーという時期や、ターゲットが女性であることを考えると、恋人に贈るのもいいかもしれないですね。僕も恋人ができたらぜひプレゼントしたいと思います(笑)。

 

唐沢:銀座のショールームで販売していると、カップルや夫婦でいらっしゃって、女性が商品を選び、男性がお支払いされるパターンも多いですね。

LOVST TOKYOの『apple Multi wallet』

 

商品の良さからブランドを知ってもらう

タカ:お二人とも環境問題へのアプローチとしてブランドを展開されていますが、プロダクトを通じてご自身の想いや新しい消費の在り方をどのように提示していますか?

 

唐沢:僕たちは「ライフスタイルのきっかけを届ける」というコンセプトが最初からあったので、とにかく知ってもらわないと意味がないというところで、デザインのブラッシュアップには力を入れました。機能面だけじゃダメで、情緒的な価値訴求というか、ブランドの世界観に興味を持ってもらわないと本質的なメッセージは届かないと思うので、プロダクトに強いこだわりを持っています。

あとは、生産の過程でどうしても出てしまうCO2の量を可視化して公にし、事業の中でそれを相殺していくことに今年は力を入れようと思っています。既存ブランドはどうしてもまだ大量生産、大量消費に頼っている。僕たちはそうではなくて、環境負荷を減らすことと、販売促進を両立していきたいと思っています。例えば、ポイントを使って植樹する仕組みを導入しています。このような取り組みによって、どのくらいのCO2を相殺できたのかも定期的にレポーティングしたいです。

 

タカ:お客さんが手に取ってから実際に商品を使う中で、想いであったり背景が伝わるために、どんな工夫をされているのですか?

 

唐沢:ユーザーヒアリングをしてみると、環境への取り組みは最初の入口ではないんです。商品そのものを見て選んでくださる方が多い。でも、環境への取り組みも知ってもらえれば、もっとファンになるとか、誰かに伝えたくなると思うんです。ブランドとして、取り組みを続けることはマストですし、取り組みを発信していく必要もあると思います。

 

タカ:可愛さや機能面というモノとしてのクオリティから手に取ってもらい、商品を通じて課題について知ってもらったり、商品を使うことで課題解決に貢献していることを知ってほしいということですね。池田さんはいかがですか?

 

池田:唐沢さんのお話を共感しながら聞いていました。僕もクラウドファンディングをやってみて、改めてブランディングについて考えました。想いは強いけれど、それを打ち出しすぎるのも違う。買ってもらって商品が広まらないと意味がない。自分の想いと、マーケティングのバランスが難しいことを実感しました。でも、健康茶である以上、美味しさと健康さは外せないと思うんです。EARTH MINDは特に美味しさで選んでもらえると嬉しいですね。エコビレッジの人たちと色々な配合を試し、何度も試飲して作っているので、味には自信を持っています。まずは一度飲んでもらって美味しさを実感した上で、誰かにプレゼントするとか、自分の健康促進のために飲み続けてもらうとか、商品の後ろにあるストーリーを知ってもらえると良いなと思います。

僕たちは現在もこれからも、大量生産しないと言い切っています。僕たちがお茶を売ることで、エコビレッジの暮らしを変化させてはいけないと思っているからです。「暮らしとしての農」を「生業としての農」に変えないように、売れるからといって売りすぎないよう意識しています。

Perma Futureの『女神茶』

 

成長と環境負荷の狭間で

タカ:先ほど唐沢さんのお話にもありましたが、環境問題に取り組みつつも、ものを生産しているとどうしてもCO2を排出してしまう。こういったジレンマに対してどのような考えを持たれているか、また具体的にどのようなことに取り組まれているか知りたいです。

 

池田:まだしっかりとは取り組めていないのですが、ゆくゆくはカーボンオフセットという形で、生産過程で出ているCO2を相殺できればと考えています。今はD2Cで、確かに生産から消費までの距離は短くできている。でもまだまだ効率が悪い部分もあるので、生産過程や流通過程も環境に良いものにしていきたいです。

今、日本人の暮らしって地球2.8個分の資源やエネルギーを使っていると言われているのですが、僕らが提携しているエコビレッジは0.8個分の暮らしをしています。そのエコビレッジから余剰分を「おすそ分け」してもらっているという価値観をまずは広げていきたいです。

 

タカ:商品を作るにしても売るにしてもお金がかかります。大量生産・大量消費では、資本を投入して大量に売ることで経済性を担保していますが、EARTH MINDではそうではない。経済性とのバランスはどのように捉えていますか?

 

池田:事業をめちゃくちゃ大きくする必要はないと思っています。ただ、現代の価値観を変えていくためにはある程度成長しなければいけない。じゃあどこまで成長すれば良いのかというと、今後考えていかなければいけない部分だと感じています。まずはエコビレッジが生産できる範囲できちんと売っていく。そしてEC販売と卸しを強化していくことを目標にしています。

 

タカ:ちゃんと知られる仕組みができるように、一定の経済合理性を求めていくということですね。LOVST TOKYOではどのように捉えていますか?

 

唐沢:僕も、どこまで成長するのか悩んだ時期がありました。そんな時に教えてもらったのがディカップリング*という考え方で。結論を言うと、僕たちは脱成長は目指していません。経済成長はしつつも、環境負荷は並走させない。経済成長と環境負荷をいかに切り離していくかを重視しています。僕らが使っている素材が、従来のレザーと比べてどれだけ環境負荷が低いかというのを指標の1つにしていて、環境への影響を緩やかなカーブに変えていく取り組みをしています。これが出来れば、成長にも大きな意味があると思うんです。

消費者の中にも、モノを買うこと自体が環境に悪いという価値観の方もいらっしゃいますが、僕たちはそういう人をターゲットにするというより、たくさんは要らないけれど、ストーリーのあるものや自分のこだわりのもので周りを囲っておきたいというモノマリスト*の方々に訴求できればと思っています。

*ディカップリング:エネルギー消費と経済成長の相関を切り離すこと
https://j-net21.smrj.go.jp/development/energyeff/Q1194.html
*モノマリスト:「1つの」を意味するギリシャ語形の接頭辞(mono)から来ている。同じ機能を持つものを複数持たず、こだわりある一品を所有する人などを指す。

 

タカ:抑制的にならずに消費変革をしていく方法って、きっと自分が心から好きだと思えるものを購入して、好きだから使い続けるみたいなところなんでしょうね。

さて、環境に配慮されているお二人は、商品の梱包材などにもこだわられています。経済性のみを考えるのであれば安いプラスチックを使えばいいけれど、コンポストできる(土と混ぜて堆肥化できる)ものを使用していますね。このあたりの判断基準についても教えてください。

 

唐沢:コンポストは、自分が実際にやってみて面白いと思ったから取り入れました。商品を届ける以外に、新しい体験価値を提供できると思ったんです。単なる包装ではなくて、体験を届けるのであれば、1パック100円でも値段以上の価値を届けられるだろうなと。これから導入しようと思っているシードペーパー*も同じです。各家庭で、パッケージをコンポストしてもらい、できた土でシードペーパーの植物を育ててもらえると嬉しいです。

*シードペーパー:植物の種が含まれた紙。土に植えて水を与えると発芽する。

 

池田:僕たちは土に還るティーバッグを使っていますが、プラスチック製のものと比べるとやはり高いです。また、包装している銀のパックは植物由来の選択肢がありましたが、まだプラスチック製のものを使っています。業者さんに連絡したら「そんな小ロットじゃ無理だ」と言われて。お茶がもう少し売れ始めたら替えようと思っていますが、今使っているものの3倍の費用がかかってきます。そう考えると、僕の場合は忍耐に近いのかもしれないですね。

 

タカ:でもやるべきだと思うから、多少高くても環境に配慮した素材にしていくということですね。

 

池田:僕自身、まだプラスチック製を使っていることにモヤモヤしていて。買ってくれている方に申し訳ないという感覚が強いです。原点となった環境への想いがある以上、徹底してこだわるべきだと思っているけれど、折り合いをつけた時に実現しきれない部分もある。とにかく頑張って販売を伸ばしていくしかないですね。

 

唐沢:そう考えると、単価の高い弊社は取り組みやすいのかなと思いました。池田さんたちの場合、商品あたりのパッケージに占める割合が結構大きいと思うので。

 

タカ:単価による取り組みやすさの差も確かにありそうですね。

 

マーケットの中で共存していく

タカ:お茶もバッグも、マーケット全体で見るとレッドオーシャンだと思います。それぞれの市場の中で、例えば既存商品と競争するのか共存するのかといった目指す立ち位置があればお聞きしたいです。

 

唐沢:僕は、共生・共存のスタンスです。従来のレザー好きの人は一定数いますし、レザー生産におけるCO2の排出も見方によって計算が変わってきて、合成合皮とCO2排出量は大差がないという捉え方もできるんです。最近は、消費者の嗜好もマイクロインタレスト化していると思うので、ブランドに共感してくれる人を増やしていきたいなと思っています。ブランドとしてファッション業界の課題を伝える義務はあるかなと思っていますが、アンチテーゼとしてではなく、ロジカルに伝えていけると良いですね。

 

池田:EARTH MINDも同じく、既存商品との共存を考えています。市場規模的にお茶って広いですし、完全に取って代わるのは生産量的にも無理だなと思っているので、好きになってくれた人がコアなファンになってくれると嬉しいです。

 

タカ:確かにバッグもお茶も1人に1つという商品じゃないですもんね。シーンや気分によって選んでもらえるといいですね。

 

 

気軽に来て、体験してほしい

タカ:今回のポップアップは『インクルージョンフェス』の一環として実施されます。どんな方にきて欲しいですか?またどんなことを伝えたいですか?

 

池田:今回のポップアップに参加するブランドは、社会課題に取り組んでいるところばかりですが、インクルージョンフェスの魅力として、気軽に来れるところがあると思います。しかも、ホワイトデーは、誰かへのプレゼントを考える1年の中でもめちゃくちゃいい時間だからこそ、ハードルを乗り越えやすいタイミングなのかなと感じました。普段はあまり社会課題について考えないというような方にも気軽に来てほしいです。

 

唐沢:池田さんの言う通りいろんな方に来てほしいですね。最近はSDGsや社会課題に関心があり、自分にも何かできないかなと考えている方も結構いるのではないでしょうか。そういった方に対しては、何かヒントを持ち帰っていただくことができると思います。僕は今回の出店者で最年長ですが、Z世代の若い起業家も多いので、同世代の人たちが想いを形にしているのは刺激にもなるだろうし、まずは自分で体験してみて、発信だったり自分にできることだったりを考えてもらえると嬉しいです。

LOVST TOKYO株式会社 https://lovst-tokyo.com/
Perma Future https://permafuture2050.wixsite.com/official

【未来の変化のために「今」を耕す将来世代たちが、有楽町マルイの“インクルージョンフェス2022春”に出店!】

有楽町マルイ 1F カレンダリウム
3月8日(火)~3月14日(月)
11:00~20:30 ※最終日は19:30まで

さまざまな社会課題解決に取り組む企業6社が期間限定POPUPを開催いたします。起業家たちが紡ぐ「未来のスタンダード」を、商品を通してのぞいてみませんか?ぜひこの期間に、有楽町マルイへお立ち寄りください!

詳しくはこちら:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002854.000003860.html

 

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    writer

    細川ひかり

    生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。

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