【2人目社員インタビュー】大手企業からソーシャルビジネスのキャピタリストに。選択肢が多く意図的ではないキャリアを歩む

taliki.orgでは多くの社会起業家の活動を紹介しているが、起業以外でもソーシャルビジネスに取り組む方法はたくさんある。そのヒントを届けるため、この企画ではさまざまなソーシャルビジネスの2人目社員にインタビューしていく。初回は、talikiの2人目社員でファンド事業責任者の増田隆秀。キラキラな経歴を持つ一方、世界一周したり、大手企業からスタートアップに飛び込んだりと、ユニークな経験もしてきた。talikiに入社したきっかけや、どんな想いで仕事をしているかなどについて詳しく聞いた。

【プロフィール】増田 隆秀(ますだ たかひで) 通称:おとめさん/辺境さん

株式会社talikiのファンド事業責任者。京都大学総合人間学部卒業。大学在籍中に公認会計士試験に合格。新卒入社したリクルートで国内外の経営企画や経営管理として従事。2019年4月に退職後、 世界一周の旅に出て100ヵ国以上を回る。2020年4月株式会社talikiに入社。代表の中村とともにtalikiファンドを立ち上げる。

 

talikiとの出会い

ー代表の中村との出会いについて教えてください。

たかちゃん(中村)との最初の出会いは2017年です。当時はたかちゃんがリクルート内定者で、大学の友人が「面白い子がいるから引き合わせたい」と言って紹介してくれました。たかちゃんとは大学・学部・学科・専攻すべてが同じだったんです。僕たちが専攻していた文化人類学は、京大で1学年約3,000人いる中でも10人程しかおらず、とてもレアな接点なので面白いなぁと思いました。当時はまだtalikiを作る前で、活動内容も知らずに楽しくお酒を飲んだという印象でしたね。

今となっては論理的で建設的な会話をするところが心地よかったり、マクロ視点や包括的視野を持ち、ブレない信念で活動しているところが素晴らしいなと思っています。

 

ーtalikiに入社した理由をお聞かせください。

2020年1月末に世界一周から帰ってきたのですが、世界を周ったことで点で見えいてたものがだんだん線や面で見えてくるようになった感覚がありました。例えば最後に訪れた南極では環境破壊や気候変動が及ぼす影響などを実際に肌で感じて、初めて「世界」というマクロ視点で物事を見るようになりました。自分視点だけではなく、人類や地球規模で物事を考えるのもなかなか面白いと思い始めていたのが背景にあります。

 

また、前職の経験が活かせる、グローバル企業の経営企画や経営管理の職務要件を見ても、仕事のイメージがついてしまい、どうも再放送のビデオを見ているような既視感があることに気づいたんですね。そんな中で、たかちゃんからはずっとSNSで「おとめさん、talikiはいつでも待ってます」みたいなラブコールをもらっていて。正直talikiについては、ソーシャルグッドなことはやっていそうだけど事業はよく知らないという状態だったんです。でもそういう会社に飛び込むのも面白いなと思い、たかちゃんに連絡して実際に京都のオフィスで構想も聞きました。大学時代以来の「京都生活」という選択肢に惹かれていたのもあり、そこそこtalikiの存在が大きくなっていました。

結果的には、0からファンドを作る経験ができる点、スタートアップへの投資によっていろいろなビジネスの側面が見られる点が面白そうだったので入社しました。

 

ー起業や他の社会課題解決の会社は選択肢にはなかったのでしょうか?

ずっとバックオフィスやミドルオフィスの仕事をしてきたので、自分ならではのビジネスアイディアが特になく、さらにどちらかと言えば参謀タイプなので、適性的に後方支援のほうが向いていると思い起業は選びませんでした。

また、南極での体験が頭の裏にありつつも、ソーシャルセクターに行っても自分にできる仕事はないと思っていたんです。だから他の社会課題解決型の会社は見ていませんでした。結果としてtalikiファンドが自分の力を発揮できそうなソーシャルビジネスだったという感じです。

 

大企業からスタートアップへの転職

ーリクルート(大企業)とtaliki(スタートアップ)で違いを感じることはありますか?

3点あります。1点目は仕組み化のレベルです。スタートアップはやはりどうしても仕組みが整っていない部分があります。具体的には、入社時には日報という概念がなかったり、祝日にも会議が入ったりすることもありました。今となっては祝日は会社の休日になりましたが、僕は祝日は休みという価値観しかなかったので当時は新鮮な驚きがありました。そもそも、コア業務に集中できるほどリソースもないので雑務もたくさんあります。

2点目はブランド力です。リクルートだと国内シェアNo.1を取っているようなブランドやプロダクトばかりで、認知度があります。集客する時も広告予算を張れますし、インバウンドもたくさんありました。対してtalikiのようなスタートアップは、認知度や実績がないと人も集まらない上、広告予算も限られています。集客でも、自分の名前を出してコネのある人を誘うなど、人海戦術の部分も大きいのが特徴だと思います。ブランド力の違いを感じて、いかに前職ではブランド力に自分が頼っていたかを思い知らされましたね。

3点目は将来の見えなさです。結果的にファンドは当初の予算通り、スケジュール通りに作れましたが、過程では常に薄氷の上を歩いている感覚がありました。特にリクルートは目標は必達、かつ売上も利益も予算通りに管理する会社だったので、将来の見えなさは違いを感じましたね。ただ、予算管理ができない世界を知れたのはある意味面白かったです。

 

ー既存の価値観をアンラーニングしたことや、カルチャーフィットするために気をつけたことを教えてください。

前職で培った分析や戦略策定、計数管理などのスキルは、現職で活かせるとは思っていないためアンラーニング前提で過ごしているかもしれないです。例えばシード企業は、そもそも仕事がなかったり、 KPI 管理できなかったり、 PMF*をしていなかったりするので、その場合データも無くて分析もできないんですね。talikiはそういったシード企業に投資しているので、僕が持っている計数管理スキルなどはまったく活かせないのです。

*PMF(Product Market Fit)…顧客のニーズに合った最適なサービスやプロダクトを最適なマーケットに提供できている状態

また前職では経営会議に出ていたので、会議などのお作法は気になることがありましたが、小さな組織で細かい部分を言って関係性を悪くしたくないので、割と見守る姿勢でいます。そして自分自身もあまり型にはまらず好きにやらせてもらっています。

カルチャーフィットに関しては、組織の規模的にカルチャーメイクのフェーズだと思っているので、フィットするために心がけていることはそんなにないです。あるとすれば、カルチャーは代表の哲学が表れたほうがいいと思っているので、たかちゃんのやりたいことを否定しないなどは意識しています。

 

ースタートアップへの入社で、お金の不安はなかったのでしょうか?

世界一周していたとき、収入は0でしたが時間はたくさんありました。その中で、お金よりも10倍ぐらい時間が大事だと考えるようになって。過ごす時間や住む場所を自分で決めたかったので、収入面は就職の軸になっていませんでした。とはいえ生活も大事なので、個人事業主活動で安定した収入が望めるようになったタイミングでtalikiに入りました。

 

talikiでの今までとこれから

ーtalikiでどういった役割を担っているのか教えてください。

talikiにはインキュベーション事業、ファンド事業、メディア事業と大きく分けて3つの事業があるのですが、僕はファンド事業の責任者を担っています。ファンド事業は、社会起業家によってある程度生み出された事業を、さらに資金や経営支援などの援助で大きくする1→10事業です。

仕事内容としては、1つがお金を出してくれる人たちに対するお金集め及びレポーティング。もう1つが、投資先のコニュニケーション(投資先探し、投資実行、モニタリングなど)です。それらの業務をたかちゃんと2人で行っています。

 

ー今までの経験が活きたと感じる瞬間はありますか?

ビジネススキルでいうと、想像力は前職ですごく磨かれました。相手が必要とするものを考えて必要十分な情報をちゃんと届けることを意識しています。そういった想像力は、仕事のどんな場面でも活きているのではと思います。

具体的には論点整理、構造化、相手が気になることを先に資料化しておく、会議の生産性向上を目的に事前連絡をしておく、などです。基本動作かもしれないですが、そういう点で顧客に対してスムーズに信頼獲得できてるんじゃないかなと思っています。

 

ーtalikiに入社後、特に嬉しかったことを教えてください。

0からファンドを作ったことです。先ほど少しお伝えしましたが、本当にファンドを作るのには苦労しました。大きな金額でお金を募集していたのですが、そもそもファンドを作った実績のない会社がお金を集められるのか、僕もたかちゃんもまったく見えなかったんですね。でも熱意とフォーメーションで企業にプレゼンをして、予定通りの時期と金額で作ることができました。今までの経営管理みたいに何かを動かすだけではなく、実際に0からファンドを作ったのは感慨深かったですし、やってきて良かったなと思いましたね。 

 

ーおとめさんが入社したことでtalikiにとってプラスになったことはありますか?

たかちゃんが学生起業をしており、かつ年齢がまだ若いため、「情熱を持ったリーダー」というふうに見られがちです。僕は公認会計士試験に合格していたりリクルートの経営企画だったりと、割とキャリアキラキラおじさん(笑)なので、その点で社外に安心感を与えられる存在なのかなと思っています。結果、チームとしてバランス良く補完できた点はtalikiにとってプラスになったと思います。

 

ー今後どんな起業家に投資していきたいですか?

3点あります。 1点目は誠実であること。投資家も1回投資してしまえば起業家と同じ船に乗ることになります。そのため、誠実でないとこちらも信用できないので、最低限として嘘をつかず誠実であることが挙げられます。

2点目が想像力があること。先ほどのビジネススキルの話とも近いのですが、こちらが気になる情報を先に開示してくれるぐらい想像力があるような人は、恐らく PDCA が回せて、時間が経ってもどんどん成長し続けられると思っているので、想像力があるかどうかは重視していきたいです。

3点目は諦めないこと。起業すると、「キャッシュが底を尽きる」「メンバーが辞めてしまった」など、どうしても辛い場面は訪れてしまいます。そういった逆境でも、解決したい課題に対して向き合って、諦めずにやっていける起業家を応援したいです。

 

面白い意思決定をしていきたい

ー今後どんなキャリアを歩んでいきたいですか?

選択肢が多くかつ意図的ではないキャリアを歩んでいけたらいいかなと思っています。いろいろなものにチャレンジをしていって、気づいたら後ろに道ができている状態ですね。

キャリアって元々「轍(わだち)」という意味なんですけど、「山を登って行って振り返ってみたら轍ができている」というのが僕のキャリア観です。登っている山の途中で、運や縁で繋がって思いがけないタイミングで「えいや!」って船に乗れるような、そういうチャレンジをできるキャリアを歩みたいです。その前提として、気軽に意思決定できたり、チャレンジする機会に出会えたりするような実力をつけていたいです。

 

ー今後ソーシャルビジネスに飛び込もうと思っている人にメッセージやアドバイスをお願いします。

特定のソーシャルビジネスをしたくても、スキル不足で不採用になることも十分にありえます。加えて、組織の場合は意図しないポジションになる可能性もありますよね。だから、まずそこで活躍できるスキルセットと、どんな仕事でも楽しもうとするマインドセットを磨いておくことが大事だと思います。

もう1つ、元々ソーシャルビジネスを志向していなかった立場としてのアドバイスです。僕は昔から人と違う選択をすることが好きでした。そのほうが結果的に面白い機会を与えられたり、周りから面白いと見られたりすることに繋がってくるからです。

転職は大きい転機ですし、ソーシャルビジネスやスタートアップというと収入面など短期的に気になることはあると思います。でも、中長期的に見るとその逆張りの選択を面白がってくれる人はたくさんいます。実際、僕のtalikiへの転職も「その意思決定、面白いよ」と言ってくれる人がたくさんいました。今はソーシャルビジネスを考えていないという人には、そのような意思決定もあることを伝えたいです。

 

株式会社taliki https://www.taliki.co.jp/

talikiファンド https://taliki.vc/

 

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interviewer

掛川悠矢

記事を書いて社会起業家を応援したい大学生。サウナにハマっていて、将来は自宅にサウナを置きたいと思っている。

 

writer

張沙英

餃子と抹茶大好き人間。気づけばけっこうな音量で歌ってる。3人の甥っ子をこよなく愛する叔母ばか。