丸井グループが本気でSDGsやサステナブルに取り組むワケ。ビジョン策定や共創投資などその取り組みに迫る

これまで株式会社talikiは、社会起業家を応援することで社会課題の解決に取り組んできた。しかし、ベンチャー・スタートアップだけでなく、大企業とも手を取り合うことが必要だとCEOの中村多伽は考える。近年、サステナブルやSDGsなどに関するアクションを取る大企業が増えてきた。しかし、その舵切りには大きな組織ゆえの大変さがあったに違いない。今回はtalikiファンドのパートナー企業でもある丸井グループの青木正久さんをお招きし、ビジョン策定の経緯や投資事業の展開について伺った。

【プロフィール】
・青木 正久(あおき まさひさ)
株式会社丸井グループ 執行役員 tsumiki証券株式会社CEO(前・共創投資部長)
1992年に株式会社ムービング入社。株式会社丸井 新宿マルイ アネックス店長、株式会社丸井グループ アニメ事業部長、新規事業推進部長などを経て、2017年より執行役員に就任。2019年 取締役上席執行役員兼株式会社丸井 代表取締役社長。2020年7月より、「未来投資」を推進する『共創投資部』部長。2021年10月より、グループ新規事業である『tsumiki証券株式会社CEO』に就任。

 

・中村 多伽(なかむら たか)
株式会社taliki代表取締役CEO
2017年に京都で起業家を支援する仕組みを作るため、talikiを立ち上げる。創業当時から実施している、U30の社会課題を解決する事業の立ち上げ支援を行うプログラム提供に止まらず、現在は上場企業のオープンイノベーション案件や、地域の金融機関やベンチャーキャピタルと連携して起業家に対する出資のサポートも行なっている。

お客様や社会に貢献しつつ、儲ける方法を考える

ー丸井グループでは、2050年に向けて「ビジネスを通じてあらゆる二項対立を乗り越える世界を創る」というビジョン、「すべての人が『しあわせ』を感じられるインクルーシブで豊かな社会を共に創る」というミッションを2019年から掲げられています。これらを策定した経緯を教えてください。

青木正久(以下、青木):2019年にビジョンブック2050というものを作りました。その中でビジョン・ミッションについて言及しています。それまでは、2005年にCSR推進部、2017年にサステナビリティ部を設置して取り組みを広げてきていました。実は丸井グループは、リーマンショックや利息返還グレーゾーン金利によって経営危機に陥ったことがあるんです。それが2010年前後の話で、当時は創業80年くらいだったのですが、企業としての存在意義を見直そう、短期的な収益だけでなく中長期的なパーパスを考えていこうと立ち止まった歴史があります。

サステナビリティ部ができてからは、企業としての存在意義について対話を深めました。そしてビジョン・ミッションという形で、我々の考えを整理し言葉にしようという話が出たのが2019年でした。私たち経営陣も当然会社の将来を真剣に考えていましたが、「2050年に会社や社会で中枢にいる若手社員に話を聞こう」という発信が社長の青井からありました。弊社は5000人規模の会社ですが、350人の若手社員が自ら手を挙げて、その中から50名が選ばれ、彼らの声を参考にビジョン・ミッションを作っていきました。

 

ー中村さんは大企業の事業開発にも関わってきたと思いますが、大企業の中で障壁をクリアしながら新たな取り組みを実施することに難しさを感じますか?

中村多伽(以下、中村):今でこそSDGsが当たり前に言われているので珍しくないと思いますが、2019年時点では中長期的なビジョンを作ろうとなったとしても、それがサステナビリティになること自体が結構珍しいんじゃないかと思っています。というのも、人類を幸せにするといった大きな目標を掲げつつも、情報革命や医療機器を通じてという風に自社のビジネス領域をピックアップすることが多くなると思うんです。仮にサステナビリティやSDGsというアジェンダが出てきたとしても、「それを目標に置いてどうやって儲けるの?」という議論がなされるという話はよく聞きますし、「上層部を説得できない」と悩まれている担当者のお話も聞いたことがあります。丸井グループさんでは、どのように社内での意思決定を進めていったのか、サステナビリティの他に候補はあったのかという部分をお伺いしたいです。

 

青木:丸井グループは家具の月賦商*として創業しました。創業の精神としてお客さまのお役に立つという想いがずっとあるのですが、より良い商品を安く売ってお客さまの生活を豊かにするだけでは商売にならない。そこで月賦で分割払いしていただくことで商品の粗利+金利の収入によって、永続的に事業活動をしようとしてきたという企業としての発端があります。
*月賦商(げっぷしょう):商品の代金を一括ではなく月ごとに分割してで支払ってもらう商売のこと。

お客さまのお役に立つこと、社会にとって良いことをやる。だけれども財閥のように財務基盤が潤沢ではないので儲からないと続かない。であれば毎月利益も上げていかなければいけないという意識がDNAとしてあって、サステナビリティやSDGsをどのように本業に繋げていくのかという部分が論点になりました。先ほど2005年にCSR 推進部ができたとお話ししましたが、当時から「社会に良いことをしつつ、本業の小売やフィンテックの儲けになることを探せ」と言われていました。ちょうど私が担当しており、 循環型ファッション事業プロジェクトを立ち上げたんです。世間で洋服の廃棄問題が注目されるようになっており、マルイも洋服を売っていたので、ただ売りっぱなしではなく、回収などを行う義務があるのではないかと。しかし、ただ回収してリサイクルするだけでは慈善事業になってしまうので、回収したものの中から再度売れるものを見つけて、それを売って利益を出すというプロジェクトでした。こういった風に、社会貢献をしつつも、それだけではダメだという文化が元々あったので、「社会に良いことは儲からないよね」という議論とはスタート地点が違うと認識しています。

 

中村:なるほど。「社会に良いことは当然やるけど、どうやって儲ける?」という議論に慣れていたんですね。

 

社会変化に合わせて変わることで生き残る

ー新たなビジョンを掲げてそれを浸透させていくためには、トップダウンとボトムアップ両方の形があると思うのですが、実際どうだったのでしょうか?

青木:両方のバランスが上手く取れていたと思います。まずトップの青井から世の中の流れやニーズ、そして会社が置かれている環境についてどう思うかという発信がありました。そこからのアイデア出しや対話は若手社員50名と行い、最後に全体で対話をするというボトムアップの形になりました。

この十数年、手挙げの文化を推進していて、議論やプロジェクトに参加したい人を会社側が募集し、一般社員が自らの意思で参画する機会を得られるようになっています。そういう意味ではボトムアップの土壌があったので、サステナビリティやSDGsといっった概念が入ってきたときにも、より良いものにするためにはどうしたらいいかという議論が自然に普及していきました。

 

中村:企業の新規事業開発の方やSDGs推進室の方とお話ししていると、社員が提案する制度もあって、若手がやる気を持って提案しているんだけど、上層部がアイデアを潰してしまうという話が出ることがあります。もちろんそのアイデアの質にもよると思いますが、上層部が意見を潰さない努力などはされましたか?

 

青木:ゼロではないですが、そういう状況は相当減っています。以前は割とおじさん文化だったんですよ。夜中までおじさんだけで議論して、若手が手を挙げると「それ前やってたんだよね」と言って終わりみたいな。でもこれではダメだということで、若手や女性を議論に入れて、おじさんは彼らの意見をサポートする側に回ろうということになりました。もちろんまだ若くて青いような意見などにはアドバイスしていきますが、まずは次世代や女性の意見を尊重しながら聞くようにしています。

 

中村:上層部やおじさんの中で「積極的に若手の意見を取り入れよう」と合意形成をすることで受け入れ体制を作っていったんですね。

 

青木:逆に、一部おじさんの中では「おじさんの時代をもう一度」「若けりゃいいってもんじゃないんだよ」みたいな意見もあります(笑)。そういったおじさんを元気付けるような、橋渡し的な役割も担っていきたいですね。

 

ービジョン・ミッションを明文化するに当たって、具体的にどういう会議を経たのでしょうか?

青木:350人から選抜された50人が1年間かけて30年後の社会、そして丸井グループのあるべき姿について対話していきました。当然そこにはサステナビリティ部や経営企画部といったメンバーも参加はしていますが、基本は彼ら50人に意見を出してもらいました。そしてその意見を経営陣に対して発表してもらって、役員が合宿でブラッシュアップをし完成しました。上から与えられた経営理念だと当事者意識が芽生えず、自分のものにならないので、みんなで作っていくのは非常に良い文化かなと思います。

 

中村青井さん、青木さん始め、丸井グループの方々とお会いしてお話しさせていただいて、「みなさんフェアだな」という印象があって。まだ経験も社歴も浅い私に対してもいち起業家、いち経営者として接してくださいますし、何がしたいのか、どういう未来を目指しているのかを丁寧に聞いてくださいます。そしてそれをジャッジするのではなく対等に理解する努力をして、協業の方法などを生産的に考えてくださったんです。みなさん個人の人間性からこういう文化が醸成されたのか、こういう文化があるから人間性に繋がっているのかはわかりませんが、一緒にお仕事をしていて、とても嬉しい点の1つです。

 

青木:社長の青井は、相手がどういう立場や年齢の人でも自分が上に立たないというか、必ず相手を尊重して考えを聞くので、身内ながらにすごいなと感じています。そこは個人の考えもあるんでしょうけど、企業としての特徴もあるかなと思います。丸井グループは、例えば阪急さんや三越さんのように巨大で伝統ある企業かといえばそういうわけでもないですし、金融サービスを提供していると言っても銀行や証券のように巨大なインフラを持ってるわけでもありません。中途半端と言えば中途半端、ニッチと言えばニッチなんです。だからこそ常にいろんな方の考えを聞きながら、時代の変化に取り残されないように自分たちが変化していかないと生き残っていけない。そういった点が企業としてのDNAでもあるし、私たち個人のDNAでもあります。若手に意見を聞くっていうのは立派そうに聞こえますが、そこから商売に結びつけないと生き残っていけないという意識があるのかなと思います。

 

中村:業界のド王道ではないからこそ、変化への毛嫌いのなさ、柔軟性みたいなものが現れるんですね。

 

本業への貢献を重視した投資事業

ー続いて、投資事業についてお伺いしていこうと思います。talikiファンドにも出資していただいていますが、投資事業はすぐに結果が出るわけではないですよね。どういったKPIを置いて投資判断・評価をしているのかお聞きしたいです。

青木:私は共創投資部長だったのですが(2021年8月インタビュー時)、投資するだけではダメで、必ず取引先さまや投資先さまと一緒に価値を作るようにしています。逆に言うと本業である小売やフィンテックに価値をもたらさない投資はしませんというのが原理原則としてあります。絶対にIPOするだろう、投資すれば儲かるだろうという企業であっても、本業にあまり関係のない会社さまには投資しないことを決めています。なぜかというと、ファイナンシャルリターンだけで儲けていく投資会社になろうとは決して思っていないからです。あくまで小売やフィンテックを通じて社会に貢献しようと思っているので、投資先がIPOしたとしても基本的にはそのエクイティを手放して短期的に儲けようとは思っていません。ではどういったKPIを掲げてるかというと、本業にどれだけ貢献してるのかを金額で表すよう言われています。

例えば1億円投資したら、当然ファイナンシャルリターンでIRR*が何%で数年後にどれくらいの額を見込めるかという試算も出します。それに加えて小売やフィンテックに対してどれだけ貢献するかというKPIを必ず掲げます。小売に貢献するというのは、例えば投資先のブランドさんがマルイの店舗内でイベントを何回開催するか、常設ショップの展開が見込めるかということです。イベント開催やショップ展開によって丸井グループには家賃収入という本業へのプラスの収入が生まれることになります。フィンテックのクレジットカード事業ですと、今まで投資しなければお付き合いができなかったような若くて元気のいいスタートアップ企業さまと知り合うことで、これまで全くマルイをご利用いただけなかったようなお客さまに来店いただけるようになり、それをきっかけにクレジットカードを作っていただくことができます。イベント開催や常設ショップの展開によってどのくらい新たなお客さまが店舗に足を運んでくださるのか、来ていただいた方のうち何人ぐらいがクレジットカードを新しく作ってくださるのかなど、どのくらいフィンテック事業に貢献があるかも金額ベースで試算します。投資した1億円がファイナンスリターンでいくら、本業貢献でいくらになるので、十二分に元取れますよねというロジックで投資をしています。

*IRR:Internal Rate of Returnの略。日本語では内部収益率。投資に対する将来のキャッシュフローの現在価値の累計額と、投資額の現在価値の累計額が等しくなる場合の割引率(=利率)のこと。

 

ーtalikiもインクルージョンフェス*に出店させていただいていますね。

中村:丸井グループさんに投資いただく際に、社会起業家に投資することで例えばマルイ店舗でのブランドの展開もできます、というお話をさせていただいていたので、その流れで店舗でイベントをやりましょうと取り決めをしていました。インクルージョンフェスのコンセプトはtalikiの社会課題解決というミッションに合いますし、応援している起業家にもビジネスを成長させる絶好の機会になりそうだということで出店が決まりました。

*インクルージョンフェス:有楽町マルイで実施されたイベント。さまざまな体験ブースや特別展示などを通じてより良いライフスタイルを実現するための選択肢を発見、体感していただくことを目指す。2021年3月9月の過去2回、株式会社talikiも合同ポップアップを出店した。

社会起業家に限らずですけど、ものを作っていたり一般消費者向けのサービスを展開していたりするZ世代の起業家って基本的にECがメインなんですよね。ECだと拡散性は高いんですけど、ロイヤリティを高くするのがブランド単体だとすごく難しい。時間がかかったり情報量を増やさなきゃいけなかったりするんです。でも「この商品素敵だな、コンセプト素敵だな」と思って起業家にリアルで会うだけで、いきなりロイヤリティが高まるんですよね。D2C領域では実店舗でお客様と会うとLTV*が3倍になるみたいなデータもあるらしくて。社会起業家は普段マルイさんにいらっしゃらないようなお客様を相手にしていて、丸井グループさんは実店舗という強みも持っていらっしゃる。それを上手く掛け合わせたら、社会起業家にとっては事業推進になるし、起業家の事業推進はtalikiにとってもメリットになるし、丸井グループさんも投資するメリットに繋がっていく。そういう部分で事業シナジーが大きいなと感じています。

*LTV:Lifetime Valueの略で、日本語では顧客生涯価値。1人の顧客がある起業やブランドに生涯でもたらす金銭的価値を評価したもの。

 

青木talikiさんとはカルチャーフィットも色濃くあると思っています。私たちはお客さまのお役に立つという言葉を使っていますが、中村さんたちの姿を見ていると社会起業家、若手起業家の役に立とうという能動的な熱量をすごく感じるんです。talikiさんのファンドの特性上そうだと思いますが、儲けるためだけじゃないんだろうなというのを強く感じています。それがtalikiさんに出資させていただく大きなきっかけになりました。私たちとしても、若手の社会起業家と出会う場っていうのがなかなかないんですよ。自前でピッチコンテストをやったり、発信をして待ったりということもありますが、効率が悪いというかあまり経済的ではない部分もあり、一度talikiファンドのみなさんがスクリーニングいただいた非常に優秀な若手起業家に会えるというのは、同じ精神文化を持ったチームとして動くことで経済合理性があると感じています。

 

ー投資先や共創相手を選ぶ上でも、自社の儲けだけではなく社会への貢献というところを重視されているんでしょうか?

青木:そうですね。ファイナンシャルリターンと本業貢献の他に、一緒に仕事ができるかどうか、価値を作れるかどうかというところを重視しています。投資事業は、丸井グループとして株主さまから預かった大切なお金を投資するわけですから、投資先は兄弟になるくらいの位置付けで考えています。最終的に投資を決める際には投資金額に関わらず、代表の青井が直に先方のCEOに会いにいきます。一緒に社会貢献を目指していく仲間になれるかというのをお会いして判断するというのは良い判断基準かなと思いますね。

 

ー投資先に直に会いにいくというのは珍しいんでしょうか?

青木:他のCVC*は事業部のトップや中間層で判断したり、投資金額で変わったりするところが多いのかなと思います。我々は投資事業を始めて4~5年なので日が浅いというのもあるとは思いますが、理念を共有できるかどうかを重視しているので、このやり方は当分変わらないのではないかと思っています。

*CVC:コーポレート・ベンチャー・キャピタル。事業会社が自己資金でファンドを組成し、主に未上場の新興企業(ベンチャー企業)に出資や支援を行う活動組織のこと。 

 

 

インクルージョンフェスの様子

 

事業部を超えた共創で投資先をサポート

ー社内での投資事業部の立ち位置をお聞きしたいんですけれども、社内でどういう見られ方をしている、またはこういう風に見られるようにブランディングしていくという意識があれば教えて下さい。

青木:5年前に共創投資部ができたときは、今の名前ではなく調査部という名前でした。そのあと投資調査部という名前になり、最終的に共創投資部になったのですが、初期の頃は調査だけをしているので「人件費をかけてあいつら何かやってるな」みたいな認識だったと思います。当時は私も部の外にいたので「何か新しい部署が始まって、何か色々調べものをして楽しそうでいいな」くらいの感覚でした。「経費だけかかっているな」というのは経営層としても思ったりもしていたんですけど、短期の利益ではなく中長期で物事を考えようというDNAがあったので「この先10年20年30年後のために色々調べているんだろうな」「小売とフィンテックに続く投資という第三の柱を作りたいんだろうな」という理解ではありました。調査部は、サステナブルだったりシェアリングだったり投資領域をどこに置くかという研究を重ねてきました。現在の共創投資部は、BASEさんなど非常に良いお取引さまに初期に投資させていただいたお陰で、含み益的にはそこそこの金額を持っており、「割とやるじゃん、丸井グループの投資事業」みたいな感じになっています。

投資なので必ずしもそういった良い状況が今後も続くかどうかはわからないんですが、小売に対して、投資の案件をイベント開催や常設ショップの定期借家契約に結びつけているという実績はかなり積み上がっています。直近だと年間5億円以上が小売とフィンテックに結びついています。5年後には55億円以上にしたいと考えていますが、「投資をきっかけにしてつながった仕事が役に立っているよね」「投資というのは水物だけど、本業に貢献しているね」というブランディングになっているかと思います。投資だけはどんなに頑張っても相手先の状況や市況などに影響されるので、協業共創の状況について部内で月に1度は担当者が発表し、投資以外の面でも会社に貢献しようという活動をしています。

 

ー中村さんも企業の新規開発などに携わる上で、同じような社内ブランディングの難しさは感じられましたか?

中村:新規事業開発と投資は未来をつくる仕事という意味で似ていると思っています。その前提のもと、新規事業開発も含めて話すと、大企業は株主がいるし決算報告が毎クオーターあって、株価に日々の動きがあってという中で、短期的な結果を求めてしまうことが多いのかなと。本当は未来のことを考えているのに、短期的な結果を求められてしまって未来をつくる仕事が上手くいかないケースが出てくるのかなと感じます。そういった意味で丸井グループさんは、投資事業ができた初期の段階で事業シナジーや本業貢献を前提として、かつビジョンもマッチする会社に投資する形を作られていたからこそ、結果的に成功しているんだろうなと思いました。

 

ー本業貢献ということで、他事業部との連携はどう作っていったのでしょうか?またどのように各部署・店舗に浸透させ、一人一人が主体的に動くような仕掛けを作っているんでしょうか?

青木:大きくは2つあります。まずは事業部間の密な連携です。小売事業、フィンテック事業とは役員間のコミュニケーションもそうですし、それぞれに共創する担当のチームを作って連携を図っています。共創チームとは必ず月1回以上の情報交換と状況の確認をしています。ここまでだったらどこの会社でもあったりしますが、もう1つ、共創チームを投資先ごとにも作っているんです。例えば株式会社CAMPFIREさん担当の共創チーム、株式会社バルクオムさん担当の共創チームというように、現在は24の共創チームがあります。各チームに必ずリーダーとして執行役員が入っていて、その下に5人から10人ほどの部長・課長・一般のメンバーが入り、投資先をいかに大きくするか、どうやってお役に立つか、価値を上げていくかという議論をしています。

投資先ごとの共創チームは部署横断になっていて、複数の部署を巻き込まないといけない作りになっている。なおかつチームの進捗を3ヶ月おきに役員に報告しないといけない仕組みになっています。執行役員は自分の立場がかかっているので真剣に本業貢献と成果の出し方を日々考えています(笑)。チームが空中分解することもなく、メンバーみんなが3ヶ月後の報告に向けて成果を出しながら働いています。

 

中村:共創チームは報告以外の時間はどんなことをやっているんですか?

 

青木:メンバーは実務についているので、実務の中で「イベントをこういう風にやろうと思っています」とか、「常設のショップの提案を先方にしています」といった感じです。共創チームは2週間に1回、チーム内での情報共有ミーティングもやっていて、情報共有をしながら議論し、出た意見を各自が部署に持ち帰り、再度自部署の中で提案するみたいなことを行っています。

 

中村:投資先と一緒に何ができるのか、どんどん提案していかないといけない環境なんですね。

talikiファンド組成会見の際の写真 左、青木さん 中左、中村

 

手を取り合うことで社会構造の変革を

ー最後に、サステナブルやSDGsに取り組む企業として、それぞれの立場からの考えを教えてください。

青木:繰り返しになりますが、丸井グループは一部上場グループと言いながら歴史は90年ほどですし、大企業という意識はありません。社会の変化に合わせてお客さまのニーズをマイニングしながら、自分たちが変わっていかないと生き残ることができないという自覚があります。そんな中で我々にしかできないこと、例えばリアル店舗を持っている強みや、クレジットカードという基盤を持っている強みを活かしながら社会貢献をしていかなければいけないという責務を強く感じていてます。自社の利益だけを求めていては成長できない。そこでtalikiさんのような次世代の方たちと一緒に新しい未来を作っていかないといけないと思っています。多少なりとも規模感のある会社というところで、丸井グループの店舗やネームバリューを上手く使っていただいて、若手起業家さんや社会起業家さんと手を携えていきたいです。彼らが20年30年後に「あのころ丸井グループさんとtalikiさんにお金を出してもらったりイベントをやらせてもらったりしたからこそ今があるんですよね」「お世話になりました」みたいなことを言われたいなと思っています。振り返ったときに丸井グループがいたから社会構造変わったよねみたいな結果が生まれたらいいな思います。

 

中村:次のスタンダードを作っていく人をボトムアップで応援していても、大きな流れに逆らえないような瞬間があって理不尽さを味わうこともありました。悔しいな、もっと大きく社会構造を変えるには私だけ、talikiだけじゃできないんだと感じることがあって。一方で、スタートアップから始めて一部上場したような経営者の方とお話ししてると「大企業なんて気にしなくていいよ、彼らは変化しないから」という意見をいただくこともあります。ベンチャーと大企業が手を取り合うことさえ非生産的な活動であるみたいな見方する人もいて、どうすればいいんだろうと悩むこともあるんです。でも丸井グループさんとご一緒させていただく中で、未来のために何が作れるのか、それがどんな大きなうねりになっていくのかということを真剣に、そしてフェアに考えてくださる大企業もいるんだなと知りました。手を取り合っていくことが、お互いにとっても社会にとっても良いと感じられるのは本当にありがたい機会だと思っています。今回の青木さんのお話を読んでいただくことで、全く同じ形とはいかなくても、少しでも取り組みやすさなどが改善されて、大企業vsスタートアップではなくて、丸井グループとtalikiのように手を取り合ってお互いの強みを生かしながらインパクトを残すというのが当たり前になるといいなと思っています。

 

株式会社丸井グループ https://www.0101maruigroup.co.jp/
株式会社taliki https://www.taliki.co.jp/

 

 

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interviewer

掛川悠矢

記事を書いて社会起業家を応援したい大学生。サウナにハマっていて、将来は自宅にサウナを置きたいと思っている。

 

writer

細川ひかり

生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。