【COM-PJ卒業生対談】(前編)寄り添いが生まれるtaliki起業家支援の魅力
2020年より開催してきた、京都リサーチパーク株式会社と株式会社talikiが共同で行った社会起業支援プログラム「COM[坤]-PJ(以下COM-PJ)」。今年度も7月から3ヶ月に渡るプログラムの開催が決定した。そこで今回は昨年のプログラム参加者に集まってもらい、COM-PJでの学びや経験について話を聞いた。第1部では参加者たちがCOM-PJで価値を感じたところや、コミュニティとしての魅力に迫る。
【プロフィール】
澤 海渡(さわ かいと)
早稲田大学教育学部4年(休学中)。COM-PJ参加前はボードゲームのサブスクリプションサービスをを検討していたが、現在はイマーシブノベルゲーム*という没入型のコンテンツを製作中。
*くわしくは澤さんのnoteをご覧ください: https://note.com/alterna_qreator/n/n1c07b00745a2
土井 仁吾(どい じんご)
神戸大学経営学部4年(休学中)。現在は子どもを対象とした食育ワークショップを行うなど、もともと関心のあった食の分野で活動している。
近藤 大翔(こんどう たいしょう)
京都大学大学院修士2年。COM-PJでは働く人がいきいきと働ける社会を目指して、アルバイト採用サービスを構想した。
原田 岳(はらだ がく)
株式会社talikiインキュベーションチーム。COM-PJには運営として参加している。本対談ではファシリテーションを務める。
【COM-PJとは?】
社会課題の解決を目指し起業したい25才以下の方(創業1年未満、起業準備中など)を対象とした、支援プログラムです。仲間たちとの毎週の進捗報告会の他、経営者やVCなどの豪華メンターからのフィードバック、講演会などが毎月開催されます。
もくじ
COM-PJの価値を感じた点
原田:みんな久しぶり、COM-PJお疲れさまでした。さっそくではあるんだけど、COM-PJどうだった?みんなが一番価値を感じたのはどういう部分だった?
澤:めっちゃ寄り添ってくれたことだと僕は思っています。まず最初からすごく驚きで、参加者3人ぐらいグループに対して、運営やメンターが3-4人付いて毎回フィードバックしてくれるっていう。さらに人数に加えて、プログラムの正規外のところでも定期的にメンタリングをしてくれたりコミュニケーションを取ってくれたりして。僕は、プログラムの中で何度か事業を変えて、次どうしようかと困っていたこともあったんですけど、頑張れってすごく応援してくれて心強かったです。
土井:僕は、自分が大事にしている価値観や目指したい世界観の言語化のお手伝いをして頂けたのがすごく嬉しかったですね。マンツーマンもしくは僕1人に対して2人ぐらいメンターさんが付いてくださって、「土井くんは何を大事にしてるの?」って問われるからそれに答えるみたいな。そのやり取りで辛かった部分もありましたけど、今の自分の軸にもなったと思っています。
原田:今の自分の軸になったって、どういうこと?
土井:解決したい課題やこういう世界を目指したいというビジョンがプログラム前からあったんですけど、COM-PJに入ってメンターや運営の方々と話していく中で、それがより具体的に洗練されました。自分の判断基準にも繋がっていると思います。
近藤:僕も澤くんと同じで、寄り添い感が一番良かったなと思っているんですけど、それ以外でいうとこれまで出会わなかったような人と出会う機会になったことかと思います。いろんな課題に対して取り組んでいきたい人がいることを感じました。例えば、ニュースだったり食育だったり。起業のモチベーションも多様で、自分の原体験を元に課題解決を目指している人もいれば、単純にお金儲けをしたいという人もいたし、逆にマネタイズできなくてもいいからとにかくこの課題に取り組みたいという人もいました。参加する前は、起業や起業家に対して富と名声を掻き集めるイメージが強かったんですけど、参加後は起業の捉え方が柔軟になった気がします。
運営・参加者の枠を超えて寄り添いが生まれる
原田:”寄り添う”というワードがたくさん出てきたのでここについて詳しく聞いてみようかな。”寄り添う”って何だろうね?
澤:他の起業家支援のプログラムと比較することになるんですけど、他のところだと「今こういうことに悩んでいて、事業はこうしようと思ってるんですけど…」みたいな話をすると、「それはスケールするの?」「ロジックはどうなってるの?」みたいなフィードバックが来ることが多いんですね。それって僕の気持ちやビジョンに関しては全く見てもらえていないよなと。
でもCOM-PJは、「あなたはどう思ってるの?」とか「あなたは何を目指しているの?」という部分を考えた上で、「でもちゃんと事業にも繋げていこうね」という寄り添い方をしてくれたなと思っています。感性や感情の話も聞いてくれるし、ロジカルに事業のアドバイスもしてくれる。この両方のバランスを参加者ごとにカスタマイズして提供してくれたと感じています。
原田:すげえ分析されてる(笑)
近藤:”寄り添う”がなぜ起きたか考えてみると、運営やメンターのみなさんの共通認識として、最も重視するものは参加者の自発性だという価値観が根付いているからかなと思います。進捗を細かく管理して「ここできていないよね。」とか「3ヶ月で終わるの?」みたいなことを言われたこともなくて。もちろん「頑張れ」という言葉は掛けられたけど、参加者のお尻を叩いて”事業を作らせる”みたいなことはなかったです。
土井:COM-PJは上下関係がないというか、運営やメンターの方も自己開示をしてくれるんです。印象に残っているのが、頑張ったことを報告したらみんなが褒めてくれるSlackの”よしよしチャンネル”です。運営の人からも「こんなことがあって今大変なんです」って書き込みがあって。自分たちと同じように悩んでいるんだということを知れただけでも、距離が近くなるし、そこは他のアクセラレーションプログラムとの大きな違いであり、良かった点だなと思います。
原田:参加者同士の関係から見た”寄り添い”についてはどうだった?これは運営はあんまり把握してない部分だし、ぜひ聞いてみたい(笑)
土井:朝活と夜活が印象に残っています。
一同:(大きくうなずく)
澤:あれは懐かしいな。オンライン上で参加者が主体的にやっていたものなんですけど、たまに運営の方もふらっと現れて、みんなで黙々と作業してました。不思議なんですよね。みんな密にコミュニケーションを取っている訳ではなくて、「入りました」って報告したら後はミュートにしてそれぞれ作業してるっていう(笑)
原田:朝活、夜活も含めてCOM-PJのコミュニティは独特の空気感だよね。密ではないけど安心できるみたいな。
土井:朝活・夜活の流れで、僕が苦手な部分を他の参加者が手伝ってくれる場面もありました。みんなお互いにgiveし合っていて、すごくあたたかいコミュニティだったなと思います。
近藤:僕は正直、もっと密に繋がりたかったなと思っています。でも直接的な関わりが薄かった人でもその人の”ひととなり”を理解できている気がするのは、毎週の発表でその人のやりたいことを聞いているからだろうなと思います。参加者が発表した時に、運営の方だけじゃなくて他の参加者からもフィードバックを出すというルールがあったじゃないですか。それも他の参加者のことを考える機会になっていたなと思います。
プロジェクトを通じて見つけたこと
原田:COM-PJで何を得ましたか?参加前と参加後で変化したことがあれば、それも教えてほしい。
近藤:変化したところはプロダクトづくりの考え方かなと思っていて、具体的にはユーザーヒアリングが最重要だということに気付いたことです。僕はこれまでプログラミングですでに決まっているものを作り出すことが多かったので、ゼロから何かを作るときの視点があまり無かったんです。結果的に45人程度にヒアリングを実施したんですけど、どういう人にどういうものを届けるのか考えるためには、生の意見を聞きまくるしかないんだということを体感しました。
原田:ヒアリングの重要性に気付いたきっかけは何かあったの?
近藤:頭で考えていたアイデアが全く刺さらなかったんです。というのも、ネットでの記事やデータを見て、外国人労働者に注目したアルバイトサービスをプレゼンしたのですが、現場の人に話してみると感触が良くなくて。しかもコロナ禍で、ネットの情報と状況が大きく変化している場合もあって、実際に話を聞かないと何とも言えないなと感じましたね。
澤:僕は自分なりの事業の作り方を見つけられました。COM-PJが始まるタイミングは、自分のやりたいことと事業を作る上での型とがうまく噛み合わず、葛藤していた時期でした。これまで他の起業支援プログラムなどでユーザーの課題に向き合うことが重要だと言われ続けてきたけど、納得感を持てていなかったんです。でも、COM-PJのみなさんは僕がしたいことを聞いてくれたし、それを尊重してくれたから自分なりの表現方法にたどり着けたと思います。
原田:「澤くんが好きなことやりなよ〜」ってみんな言ってたもんね。
澤:事業づくりの型からすると僕は真逆の方向に進んでいるので、他のプログラムだったらお叱りを受ける部分だと思うんですけど、COM-PJではプログラムの正規ルートから外れたとしても応援してくれる環境がありました。
土井:僕も自己実現型(自分のしたいことを事業にするタイプ)と課題解決型(ある課題を解決するための手段として事業を考えるタイプ)の間で葛藤していました。最初の発表で「自分の解決したい課題と、目指したい世界観に矛盾があるんじゃない?」とフィードバックされたことで気付いたんです。でもヒアリングを通じて、自分がエゴだと思ってたものを実際に目の前の人が求めていることに気付きました。そこから少しずつ葛藤が和らいでいったというか、自信がつきましたね。
あなたにとってCOM-PJはどんな場所?
原田:では前半最後の質問です。COM-PJはあなたにとってどんな場所でしたか?
近藤:「事業づくりのためのベースキャンプ的な位置付け。」
原田:その心は。
近藤:作業は1人でやるんですけど、毎週それを報告する場所があって、次回までに何をしたらいいのかというのを整理してもらうことができるからです。Slackのよしよしチャンネルでは傷ついた心を癒してもらうこともあったし、そういうところも含めていろんな支援とをしていただけたなと思っています。
土井:「その人の優しさを形作る応援隊」ですかね。
僕も自分なりの優しさを持って参加したんですけど、その優しさの部分を言語化してくれるところから伴走してくれました。自分が大事にしてるものを形作って、最終的にそれを顧客に届けるところまで一貫して寄り添ってくれたなという印象です。
澤:僕は「のびのびと表現できた場所」だったと思います。
自分がやってることに対して「いいじゃん。次どうする?」っていうコミュニケーションを取ってくれた。アクセラレーションプログラムとして事業づくりの型に基づいて支援を受けることももちろんできるけど、僕のやりたいことを軸に自由にやらせてくれた。事業を作るにあたって、ゆとりを持つことができた場所だったんじゃないかと思います。
第1部ではCOM-PJ卒業生がプログラムで価値を感じたところや、コミュニティとしての魅力を伺いました。第2部では、プログラムへの参加のを決めた理由や、実際に取り組んだ事業の内容、大変だったことにフォーカスを当ててお届けします。
【6/17(金)最終締切】起業家支援プログラム「COM-PJ」第3期参加者募集中! ※募集は終了しました。
【COM-PJとは?】
社会課題の解決を目指し起業したい全国の25才以下の方(創業1年未満、起業準備中など)を対象とした、支援プログラムです。
仲間たちとの毎週の進捗報告会の他、経営者やVCなどの豪華メンターからのフィードバック、講演会などが開催されます。
参加費は無料です。詳細はこちら→https://talikikrp.work
個別相談も承っておりますので、ご興味ある方はHPよりご応募ください。
writer
細川ひかり
生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。