カップル・夫婦の絆を深めるサービス。良好なパートナーシップが生み出す力とは
カップルや夫婦の関係性に着目し、事業を展開するあつたゆか。事業を進めるうちに、良好なパートナーシップが様々な社会問題の解決に繋がるのではないかと感じるようになる。パートナーシップを探究している彼女に、その重要性や社会的なインパクトを聞いた。
【プロフィール】あつた ゆか
株式会社すきだよ代表取締役。「誰もが好きな人とずっと幸せでいられる社会をつくる」をビジョンに事業を行う。2018年11月にパートナーを大切にしたい人同士のコミュニティの運営を開始。現在はパートナーと価値観を確認できるサービス「ふたり会議」や、パートナーシップを探究するコミュニティ「すきだよラボ」を運営している。趣味は夫。
もくじ
お互いの価値観を可視化し、話し合いにつなげる
ー事業を始められたきっかけを教えてください。
結婚してから夫婦円満のコツをツイートしていたのですが、2018年の投稿が13万いいねされるくらいバズったんです。
夫は細かいことにうるさくて私は超おおざっぱなタイプなのですが、分かり合えないときは時はお互いを「おおざっぱ王国の民よ」「神経質な国の住人よ」と呼び合うことで平和に暮らせるようになりました
違う国から来た人だと思えば、相手を変えようなんてこれっぽっちも思わなくなる不思議
— あつたゆか | ふたり会議 (@yuka_atsuta) August 8, 2018
「わたしも同じような状況にあって、すごく参考になりました」という声もたくさんいただきました。確かに、惚気ツイートはよく見るけれど、円満のコツってあんまり発信している人がいないんです。円満なカップルや夫婦のロールモデルが見える化されていないことと、円満のノウハウがブラックボックス化していることに気付きました。そこでそういったノウハウを共有するサービスがあればいいなと思ってコミュニティ運営を始めました。
日本では今、夫婦の3組に1組が離婚していて、一番多い原因は価値観の違い、人生観の違いなんです。夫婦に限らず、価値観が全く同じ人っていないじゃないですか。でも価値観の違いが離婚原因に挙がってくる。これって価値観の壁を乗り越える術を持っていないからなんじゃないかなと思ったんです。自分と価値観が違う人がいても、話し合いをきちんとすれば乗り越えられるだろうと感じたことも、ふたり会議のサービスに繋がっています。
ー「ふたり会議」はどういったサービスですか?
カップル・夫婦の価値観を可視化し、絆を深めるサービスです。「お互いの収入をオープンにしたい?」「結婚したら名字は変えたい?」といった質問に答えるだけでお互いの価値観を知ることができ、話し合いに繋がります。家事やお金、育休といったテンプレートを、同棲や結婚などライフステージに応じて用意しています。LINEの友達追加から利用していただくことができます。サービスを始めた当初のweb版と現在のLINE版で合わせて6万5千人を超える方々に使っていただいています。
「出会い」だけでなく「関係の継続」にもスポットを
ーこれまでパートナーシップをテーマにしたwebサービスは、あまりありませんでしたよね。
恋活や婚活のアプリはたくさんあるし、みんなそこにお金を出すのに、その後をサポートするサービスはほとんどないんですよね。夫婦カウンセリングなどはあるのですが、そちらは離婚や別居を主なテーマとして扱っています。でも、不倫されたり暴力をふるわれたりした時点で、関係の修復は難しいのではないかなと思っています。例えば、企業における社員の退職も同じです。退職寸前に引き留めても手遅れで、会社に不満がある時からそれをオープンにして解決していける仕組みが必要ですよね。パートナーシップにおいても同じことが言えると思っていて、小さな問題が起きた時に、なんでも話し合える関係性であること、そして都度話し合いで解決していく習慣があることが必要なのかなと思いますね。
育児や介護など、大変な時期に話し合える関係性を維持するためには、パートナーシップの初期段階からのケアが必要です。結婚前や結婚初期からちょっともモヤモヤしたことを相手に伝える習慣、例えば、「実は苗字を変えたくない」とか、「本当は結婚式をしたくない」とか、そういう価値観を相手に確認することが大切だと感じています。だからこそ、20代、30代の方にサービスを届けていきたいです。
ー大きな問題が起きる前から良好な関係性を作っておくことが、社会課題の解決にも繋がるのでしょうか。
今、産後うつで自殺されてしまう方がすごく多いんです。出産で交通事故にあったような状態の体なのに、約3時間おきに授乳する生活になる。そんな中、旦那さんが仕事から帰ってきて「お前はずっと家にいて育児しかしていないのに、なんでこんなに散らかってるんだ」なんて言われたら、追い込まれてしまいますよね。こうならないためには、奥さんが旦那さんに相談できる、「手伝って」って言える関係性が必要だと思います。おそらくDVや虐待も同じような原因があって、夫婦間に上下関係があるから暴力が生まれたり、旦那さんに何も言えないから虐待が見過ごされるという状況があるのだと思います。
また、出産や育児によって多くの女性がキャリアダウンしてしまうという課題もありますよね。これは私が夫と過ごしていて感じることなのですが、家事分担についてきちんと話し合っていればそういった悩みが発生することも少ないのかなと思います。実際、夫は家事をほとんどしてくれるので、私はキャリアで悩んだことはないですね。
家庭は社会を構成する最小単位だと思います。そして夫婦やパートナーは、家庭の共同経営者です。なので、ひとつひとつの家庭が健全に意思決定できる、つまり夫婦やパートナーが対等に話し合い、健全な意思決定をできる仕組みを作ることが、産後うつや暴力、女性のキャリアダウンといった様々な社会課題の解決に繋がると思っています。
パートナーシップのあり方は百人百様
ー今秋リニューアルされると伺ったのですが、どういった内容になるのでしょう。
ユーザーの方から、質問を追加して欲しいというリクエストをいただくことが多いので、有料版に質問を200問以上追加する予定です。不妊治療をどこまでやるか、産後の働き方をどうするか、親が要介護になったらどうするか、というトピックの質問をこれまでより詳しく聞けるようになります。
また、こちらはもう少し先になるかもしれないのですが、夫婦が話し合いをするときに、同じ知識の土台がないと話し合いが難しいことがあると感じたので、知識のギャップを埋める学習コンテンツを作りたいと思っています。不妊治療をどこまでやるか話し合おうと思っても、実際治療にかかる費用や体への負担を知らないと、「あんまり分からないね」という感じで曖昧に話が終わってしまうことってありますよね。2人の知識のギャップを埋めることと、価値観を擦り合わせることの2軸に注目し、月額のサービスを考えています。妊活についての動画を見た後に2人でふたり会議の妊活編をやってみるとか、ふたり会議のお金編をやった後に、人生の三大出費に関する動画を一緒に見るように、知識と実践がセットになったサービスをイメージしています。
ーユーザーの反応や意見はどういったものがありますか?
ユーザーの声を大切にしているので、サービスの中に、感想を求める動線をたくさん作っています。同棲前や結婚前に話し合うべき項目が揃っていてありがたいという声をいただくことが多いです。あとは、家事やセックス、子どもなど、普段話しづらいこと気軽に話せて良かったと言われることもあります。意外だったのが、「有料でもいいからもっといろんなバージョンが欲しいです」っていう声が多いことですかね。このあたりはアップデートで追加する内容の参考にしています。
また、アンケートだけではなく、ユーザーヒアリングもたくさんしています。ヒアリングさせていただく方々の馴れ初めなど、結構深いことも聞いた上で、実際ふたり会議を使って何を解決されたかを定性的に測っています。
ー利用者の方の声を聞いて、印象的だったことはありますか?
ユーザーヒアリングをしていると、それぞれの方にふたり会議が刺さっている理由が違うことが見えてきました。「前の彼氏には結婚の話をしすぎて、プレッシャーに感じられて振られちゃったけど、今の彼氏とはふたり会議を使ってそれとなく彼の結婚観を知れたので良かった」という方もいれば、「お互い不器用で結婚の話を出すのも恥ずかしかったけど、ふたり会議をやってみて、覚悟が決まりました」という方もいらっしゃいます。「自分は子どもを産む機能に不安があったけど、彼が子どもはどっちでもいいと答えていたのを見て、子どもを産まない選択もありなんだというのが知れてよかった」という声もありました。ユーザーヒアリングで話を深く聞いていくと、ストーリーは百者百様で、パートナーシップのあり方もそれぞれにあり、ひとつの正解があるわけでじゃないんだなあというのを実感しました。
価値観が違っても、他の選択肢を見つけられる
ーふたり会議を使われている方に、こうなって欲しいという想いは何かありますか?
一番は心理的安全性を確保して話し合える関係になって欲しい、自分の思っていることはありのままに話し合って、たとえ価値観が違っても話し合いで乗り越えられるんだということを知って欲しいです。たまに「ふたり会議って、価値観の合わない人との関係を早々と切れていいよね」と言われることがあるのですが、私としては、価値観が違うから別れましょうというコミュニケーションではなく、対話を通して二人の最適解を見つけて欲しいなと思っています。結婚式をしたい人としたくない人がいたときに、あなたはどうして結婚式をするのが嫌なの?と聞くことで原因が見えてきますよね。大人数の集まりが嫌いだからという理由なら、家族だけを呼ぶ小規模なものにするのはどうかとか、チャペルが苦手だからという理由であれば、海辺でやるのはどうかなといった提案ができるようになりますよね。AかBかで対立するのではなく、Cという答えを一緒に見つけていくお手伝いをふたり会議でできればいいですね。価値観の違いを恐れないで、自分のありのままの価値観をパートナーに伝える。パートナーと意見と違ったとしても、それってどうやって解決すればいいんだろうと2人で話し合う習慣をつけていただいて、ずっと円満でいてほしいんです。同棲や結婚、妊活に介護までいろいろなトピックの質問があるのですが、ユーザーのパートナーシップを長期的に支えられるようなサービスになれればいいなって思ってます。
ー最後に、あつたさんが目指す社会を教えてください。
今って、出会いに何万も払うし、結婚式も何百万かけてバーンとやるけど、パートナーシップを継続するためにはお金をかける習慣がないんですね 。毎年奥さんにプレゼント買ってますっていう人は多くないと思うし、パートナーと円満な関係を築くために何かを学ぶ人もすごく少ないと思います。そうではなくて、パートナーシップの継続というところにも皆さんにもっと興味を持っていただいて、月に数百円でもいいからパートナーと良好な関係を築くところに投資したり、向上心を持って何か学んだりしてもらえるような社会になればいいなって思っています。
パートナーと上手くいっていると、仕事も頑張れたりするじゃないですか。自分の夢を身近で応援してくれて、家事や育児も一緒にやっていける。安定したパートナーシップの土台があればとても心強いですよね。ふたり会議での良好なパートナーシップの構築を通じて、皆さんの夢の実現や社会課題の前進をサポートできればなと思っています。
ふたり会議HP https://futari-kaigi.com/
すきだよラボ https://community.camp-fire.jp/projects/view/224147
interviewer
田坂日菜子
島根を愛する大学生。幼い頃から書くことと読むことが好き。最近のマイテーマは愛されるコミュニティづくりです。
writer
細川ひかり
生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。
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