介護業界の人手不足を解決する。スキルと施設がマッチングされるサービスとは

介護業界の人手不足解消を目指す鈴木亮平。当初はロボットで人材不足解決を試みたが、現場では必要とされてないと気づく。現在は「これまで介護領域に関わりたくても関わるきっかけがなかった人」と「施設」を繋ぐサービスを展開。一つ一つ施設に足を運び、現場の声を聞き続けた彼に、事業のこだわりや目指している社会を聞いた。

【プロフィール】鈴木亮平(すずきりょうへい)
1992年生まれ。仙台育英高校野球部出身。大学卒業後、アイティメディアで編集記者、メディアベンチャーで編集長などを歴任。 2017年に起業し株式会社プラスロボ代表取締役に就任。2018年に「スケッター」事業を立ち上げる。

一番根深い社会問題に挑戦する

ー鈴木さんが起業された経緯を教えてください。

「介護業界の人手不足を解消すること」を目指して起業しました。僕自身、自分で事業をやるなら一番根深い社会問題に挑戦したいというのがありました。自分で起業するとなると、自分の人生の99.9%ぐらいが仕事になるという感覚があったので、その事業があってもなくても困らない、というのはやりたくなかったんです。その中で、2025年には55万人の介護職員が不足し、これから先の10年でさらに深刻な状態になるといわれている介護の担い手不足が一番根深い社会問題だと考えました。介護の担い手が不足するということは、人が生きるか死ぬかに関わる話ですが、現状は解決策が少なく、そこに挑戦する起業家も物凄く少ないという理由で、この領域でやろうと決めました。

 

ー介護スキルシェアサービス「スケッター」はどのようなサービスですか?

スケッターは、すきま時間を活用して手伝いたい、スキルをシェアしたい、という方々と
人手を必要としている介護施設をマッチングするサービスです。

特徴は、助っ人が身体介助の仕事をやらないことです。実は介護施設って、配膳やお話し相手など介護業務以外にもたくさん仕事があり、施設の種類によりますが3〜4割程度は介助以外の業務です。そういった資格や現場経験を必要としない身体介助以外の仕事を、介護領域に興味がある人が誰でも経験できるようになっています。

「スケッターがスポットで仕事を手伝うことで、介護業界の人手不足が解決する」というだけではなく、「福祉に関心がある層」と「施設」を繋ぎ、将来的に転職や介護領域に携わる人口が増えれば良いなと思っています。

 

ー実際、どのような経緯で「スケッター」が誕生したんですか?

元々「ロボットで介護の人手不足を解決する」ことを目的に事業をスタートさせました。前職でテクノロジーを専門とした報道記者だったこともあり、ロボットの大きな可能性を感じていたんです。しかし、介護領域では自動化や効率化とあまり相性が良くなく、ホスピタリティーや、人と人との関わりが求められることが多くありました。直接現場に足を運ぶ中で、自分のできることを自分のできる時間で、より多くの人が介護の領域に参加し国民全体で支えていけるような仕組みを作りたいと思うようになり、このサービスが誕生しました。

そういった過去を踏まえて今でも必ず現場目線で「自分がこうやったほうがいいと思ってるが、それが現場ではどうなのか」というのを気にするようにしています。

 

雇う側と働く側のミスマッチを減らす

ー実際にどのような方々がスケッターを利用されているんですか?

現在は6割ぐらいの方が介護業界以外の業種の方で、まだ現場に関わったことがないけど関心がある人が登録されています。未経験の方々がどれだけ介護業界に入ってもらえるかが、大事な指標となっていますね。

今まで現場に行ったことのない方だと「介護業界結構大変そう」とか「3Kできつそう」というイメージがあると思うんですが、スケッターでは介護業務以外のライトな部分から関われます。実際にスケッターを利用されている方からも、施設の雰囲気や新しい気づきが得られ、「思っていたよりもこの業界好きかもしれない」「将来的に転職してこういったところで働いてもいいかな」と考え方が変わる方もいらっしゃいます。高校生の方であれば、スケッターの利用が将来の就職先の検討材料として感度が高まることに繋がったと聞いています。本当はもっと中学生などの若い世代や、「親子で助っ人体験」など、介護や福祉の現場を若いうちに身近になることが重要だなと思っています。

 

ー介護施設の方々は、なぜスケッターを取り入れているのでしょうか?

採用のミスマッチが起こらないことが一番のメリットだと思います。
介護業界は人手がとにかく足りないのですが、人の集め方も、求人を出したり人材紹介に頼るしかなかったんです。ただ、人材紹介を利用すると採用が決まったタイミングで高い紹介手数料を支払わなければいけないんですよね。そこでいざ就職しても、ミスマッチが起こり、すぐ辞めちゃうこともある。

ただスケッターの場合だと、スポットで働いてお互いの人となりが分かり、人間関係ができた上での転職ができるのでミスマッチが起こりにくいです。お互いを知るちょっとした機会に、スケッターは非常に良いと思います。月額利用料だけのサービスなので、そこから何人直雇用に繋がっても手数料もかかりません。雰囲気が良かったり、魅力的な施設がうまくスケッターを使いこなせば、結果的に採用コストはかなり削減できるのがメリットです。
雇う側だけでなく、働く側としてもスケッターがお試し期間となっています。介護施設は仕事の内容や給料であまり差はなく、「本当に職場が好きになれるのか」が重要視されています。その中でこれまで分からなかった介護施設の業務や雰囲気を知る良い機会になっているんです。

 

ー「スケッター」を展開していく上で困難だったことを教えてください。

「スケッター」という新しい概念をどうやって介護施設に理解してもらえるかが大変でした。今でこそ問い合わせが来るようになり導入施設も増えているのですが、初期の頃は全然理解されなかったですね。基本的に施設は即戦力がある人を求めているので、「1日単位で足を運んでもらって施設のファンを作りましょう」と話しても、「だからなんなの?」という声がたくさんありました。

今ではメディアに取り上げていただけるようになり、僕たちもFacebookやTwitterなどを通じて発信し続けているため、施設の方が以前と比べて安心して取り入れてくださるようになったと感じています。

 

創りたい社会を目指して

ー起業されてからこれまで、経営の意思決定で大事にしている軸はありますか?

一番は「どういう世界観を作りたかったのか」をすごく大事にしています。このサービスが儲かるよね、と思って始めたサービスではなく、今いるメンバーも皆スケッターがやりたくて集まっています。

そのため展開の仕方や機能一つにしても「介護業界に関わる人を増やす」という創りたい未来をイメージしています。会社をしっかりと運営していく上でも短期的にどうこうあまり左右されるより、メンバーがそれで本当にモチベーションが上がる選択なのか、などは重要視してますね。特にエンジニアのメンバーなどは、他にも高単価な仕事がある中でスケッターを手伝ってくれてるというのは、やはりこの壮大なビジョンやミッションにワクワクを感じてくれているからだと思います。「それをどう実現するのか」というところは日々の判断軸にしていますね。

 

ー今後目指していきたい社会や目標を教えてください。

昭和初期にあったような「醤油がなくなったときにお隣さんに醤油を借りにいく」とか「近所の人に子供を預ける」など、そういうちょっとした助け合いや地域のインフラが、効率化とか生産性を進める中でどんどん希薄化していると思います。しかし介護や福祉の領域はそんな中でも取り残され、色々と歪みが生まれているところだと思っています。なので令和において、昭和時代からの「手伝う」をシェアリングエコノミーという形で新しく再構築することを目指しています。

今後は、高齢化が進んでいるマンションに「病院の付き添い」や「買い物袋を持つ」などちょっとした生活の支援に助っ人が入ったりするような、介護施設だけじゃなく地域にスケッターがどんどん浸透しければと思っています。そういったアップデートされた令和の「助っ人文化」が新しく社会のインフラの形として、文化になるまでやりたいですね。

スケッターHP https://www.sketter.jp/

interviewer

細川ひかり

生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。

 

writer

河嶋可歩

インドネシアを愛する大学生。子ども全般無償の愛が湧きます。人生ポジティバーなので毎日何かしら幸せ。