ファッションで社会課題を解決する。次世代のファッションブランドの在り方とは

自身がファッションに支えられてきた経験から、今度は恩返しがしたいという想いで、NPOとファッションブランドを経営する西側愛弓。ファッションブランド「coxco」に込めた彼女の「ファッションで社会を良くする」というぶれない想いについて聞いた。

【プロフィール】西側 愛弓(にしがわ あゆみ)
1995年生まれ。兵庫県出身。神戸女学院大学を卒業後、IT企業で2年間勤務。その後NPO法人DEAR MEを立ち上げ、フィリピンで貧困地区の子どもたちにランウェイを歩いてもらうファッションショーの運営などを行なっている。また、株式会社coxco(ココ)ではファッションブランド事業も行なっている。

 

ファッションで恩返しがしたい

—なぜファッションに注目されたのでしょうか?

私自身昔からファッションが大好きで、自分の人生を振り返ってみるとすごくファッションに背中を押されてきたと感じます。大学時代、アルバイトでお金を貯めては海外を周り、ストリートファッションを撮影していました。そこからクラウドファンディングで資金を集め、世界中のストリートファッションを載せた雑誌を作るプロジェクトに4年間取り組んでいました。このプロジェクトがきっかけで何かに挑戦する楽しさを知り、とても活動的になれたんです。こうしてファッションを通した挑戦で自分の人生は良い方向に大きく変化したと思っています。だから次は自分がファッションに対して何か返していきたいと思い、ファッションを選びました。

 

—NPO法人DEAR MEを設立したきっかけは何ですか?

やはりストリートファッションを撮影する旅が大きなきっかけとなりました。どの国、どんな華やかな街に行っても少し路地に入れば服を着ていない子どもたちやボロボロの服を着ている人と遭遇したんです。そのとき、自分がファッションを好きになれたことって当たり前じゃなかったんだということに気づきました。そこで、ファッションを楽しめない環境にいる人たちに対して何か背中を押せるようなことをしたいという想いで、団体を立ち上げました。

DEAR MEでは、主にフィリピンにて貧困地区で暮らす子どもたちがモデルとなり、ランウェイの上を歩いてもらうファッションショーを毎年行なっています。子どもたちの輝くような表情を見るとやめられないなと思ってかれこれ5、6年続けています。

 

おしゃれでサステイナブルなブランド「coxco」

—西側さんは昨年の12月に株式会社coxcoを立ち上げられ、今年の5月22日はブランドをローンチされました。NPOの活動に加えて、株式会社を設立されたのはなぜですか?

NPOの活動を何年間かする中で、社会課題の解決のために私がやりたいことはNPOの活動だけでは収まりきらないと気づいたんです。だから事業性も考慮しながら社会課題の解決のためにもっと前進するために、会社も立ち上げました。

coxcoは服のかたちをした、社会課題と向き合うメディアをテーマにしています。私たちは毎回、ある課題にフォーカスし、ファッションを通してその問題解決に挑戦していきます。

今後coxcoとDEAR MEは連携し、coxcoの売り上げの一部をNPOの活動に回していく予定です。

 

—どのような商品を取り扱っているのでしょうか?

現時点では靴下とグレーのパーカー、そして黒いドレスを予約販売という形で販売しています。ブランドをローンチしたときは、Tシャツを数量限定で販売していたのですが、すぐに完売してしまいました。TシャツにはQRコードが付いていて、これを読み取るとスマホの壁紙やzoomの壁紙として使える画像をダウンロードできる仕組みになっています。自宅で過ごす時間が多いからこそ、楽しめるファッションを提供したいという想いで作りました。

今回のローンチにあたって買ってくださった方々は、ビジョンに共感してくださった方もいますが、商品そのものがすごく可愛いから買ったという方が多くいました。ブランドとしてはサステイナブルだからとか、社会性があるからというより、商品単体として良いと思って買ってもらえると嬉しいです。

 

—今回の「vol.0」ではどのような社会課題を扱っているんですか?

廃棄衣料問題です。vol.0の商品は再生素材からできているんです。再生素材っていうのは、古着や服を作る時に出てしまう余った布を回収して、新しく生地にしたものです。多くの人がたくさん服を買うと同時にたくさんの服を捨てていると思います。coxcoの服を通し、その問題に対して何か感じてほしいと思っています。

 

—全シリーズを通して変わらない部分はありますか?

どのシリーズでも絶対に社会性という軸があります。さらに必ず洗練されたデザイン、おしゃれなものを作りたいです。社会課題への徹底した配慮と透明性はぶらさずにいきたいと思っています。

 

—今後どのような社会課題を扱っていく予定なのでしょうか?

ファッション産業って実は石油産業の次に環境を破壊している産業だと言われていて、まずは廃棄衣料問題をはじめとした地球環境問題に取り組みたいと思っています。そしてファッション産業に関わりの深い労働問題、そして労働問題から出てくる貧困問題。この3つに注力していきます。

 

「おしゃれ」と「社会性」の両立

—取り扱っている社会課題について、どのように購入者に伝えられているのですか?

SNSが基本です。インスタグラムのストーリーで「年間の服の廃棄料はどれくらいですか?」というような質問を投げかけるなどしています。ただ独りよがりな発信ではなく、coxcoの服を買うことで社会課題の解決に取り組んでいるという体感を持ってもらい、一緒に解決に向けて進んでいきたいと思います。

 

—商品として洗練されていることと社会性のバランスの取り方で、意識されていることはありますか?

洗練されていて、かつ社会的なことに感度が高いデザイナーさんにチームに加わってもらうことが大事かなと思います。今回vol.0をデザインしてくれたのが高山杏奈さんというデザイナーで、彼女は昨年ロンドンでコレクションを開催したり、VOGUEという雑誌に取り上げられたりと若手デザイナーとしてとても注目されている方です。彼女のような洗練されたデザイナーで、サステイナブルに関心の高い人を今後も巻き込んでいく予定です。

 

ブレない想いで挑戦し続けてきた

—今まで事業をやられてきた中で特に大変だったことは何ですか?

いっぱいあるんですが、一番大変だったのはNPOの活動で1年前に準備していたフィリピンでのファッションショーを、現地の連携していたモデル事務所に乗っ取られそうになったことですね(笑)。その事務所にファッションショーのアレンジをしてもらっていたのですが、ショー開催の1週間前に蓋を開けてみたら、私が集めた貧困地区の子どもたちの出演はほぼゼロでそのモデル事務所の抱えているモデルの単なるファッションショーになっていたんですよね。そのときは現地にいたのが私1人だったので、わからないことだらけの中もがいてなんとか自分たちだけでファッションショーは開催することができましたが、かなりメンタルにきました(笑)。

ただ、ファッションと周りの人たちに助けてもらってきた人生なので、次はそこへの恩返しをするということを人生のテーマとして掲げています。だから大変なことがあっても諦めずに続けることができました。

 

—周りに想いを伝え、多くの方から共感を得るために意識していることはありますか?

良くも悪くも計算していないことですかね。私は別に有名になりたいとかお金持ちになりたいとかではなく、本当に「ファッションで社会を良くしたいんだ」っていう気持ち一本なので、そのどストレートな気持ちが伝わって応援して頂けているのかなと思います。昔は応援して頂けなかった人も「まだやってんの?懲りないね(笑)」みたいな感じで応援してくれることもあります。

 

—事業をする上でここだけは譲れないということはありますか?

「ファッションで社会と人に貢献する」というところはまず第一にありますが、ビジネスとしてしっかり勝って行くということを大事にしています。ビジネスとしてしっかりと回せないと持続可能ではないですし、会社がダメになってしまったらNPOの活動もできなくなってしまいます。なので、社会的なことは第一に考えるけど、事業性も意識しながら意思決定をしています。

 

社会課題に向き合うことをおしゃれに

—これから挑戦していきたいことはありますか?

現在、フィリピンでファッションスクールcoxco Labを作っています。無償で通えるファッションスクールで、ネイルやマツエクなども含む美容関係の技術を教える予定です。学校に通えない女の子たちやお母さん、性別は問わず生徒を受け入れたいと思っています。そしてそこで学んだ生徒たちがしっかりと就職できるように、色々な企業と連携することによって雇用を生んでいきます。いつかはcoxco Labで育成するデザイナーさんたちにcoxcoの服を作ってもらいたいとも思っています。生まれ育った環境に縛られず、自分のやりたいことを実現できるような環境を作っていきたいです。

coxcoのブランドを通して一番やりたいことは、社会課題に向き合うことがクールで当たり前というカルチャーを作ることです。社会課題ってどうしても難しくてとっつきにくいし、ちゃんと理解していないと口に出しづらい雰囲気があると思うんです。でもそこで社会課題に向き合うハードルが高いと何も解決できなくて。だからもっとおしゃれをするように社会課題に向き合う人が、coxcoを通して増えたらいいなと思います。

 

coxco https://coxco-official.com/
NPO法人DEAR ME https://npodearme.studio.design/

 

interviewer
河嶋可歩

インドネシアを愛する大学生。子ども全般無償の愛が湧きます。人生ポジティバーなので毎日何かしら幸せ。

 

writer
堂前ひいな

幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。