安心して挑戦できる繋がりを。お客さんも巻き込むゲストハウス作りとは

みんなが安心して挑戦できる環境を作るべく、ゲストハウスを営む張本舜奎。スタッフとお客さんの壁を感じさせず、お客さんをも巻き込んで様々なイベントを企画している。「人とつながる、世界が広がる」のコンセプトに込めた想いや、安心を担保する仕組みについて聞いた。

※LINDA HOSTEL106は2021年8月いっぱいで閉業しています。

【プロフィール】張本 舜奎(はりもと しゅんけい)
LINDA HOSTEL106共同経営者。新卒で入ったベンチャー企業を退職後、コミュニティ運営のサポートをする中で共同創業者の水口氏と出会い、2019年6月にLINDA HOSTELを創業。「人とつながる、世界が広がる」をコンセプトに、カフェ・バー、ホステル、イベント、アクティビティのある多機能型宿泊施設を運営している。

 

ホステルを通して関係性の連鎖が生まれる

—LINDA HOSTELにはどんなお客さんが訪れるのですか?

何度も来てくれる方は、自分で何か事業を起こしていたり、好きなことに突き抜けている方が多く、核となる価値観が似ている友人がほしいとか、成長のきっかけとなるような人と出会いたい、何かを発信したいという思いを持って来てくれているのだと思います。単発で来てくれる方はイベント参加やカフェ利用の方が多いですね。宿泊のお客さんは様々で外国人と日本人が4:6くらいの割合です。

 

—今まではどのようなイベントを開催されてきたのでしょか?

国際交流系のイベントをよく開催しています。台湾の価値観や文化を体感できる「台湾ナイト」というイベントは、台湾人の友達やお客さんと一緒に企画しました。他には「シゴト酒場」という様々な職業に触れるためのイベントであったり、素敵なライフスタイルを送っていると感じる方にディーラーになっていただいて、ボードゲームを楽しむボードゲームパーティーなど。

たくさんのイベントを開催してきましたが、特に印象に残っているのは「LINDAフェス」です。Twitterで募ったお客さんたちと一緒に企画をし、LINDA HOSTELを貸し切って縁日を開催しました。スーパーボールすくいや射的、テレビゲームなど色々なコンテンツを用意し、当日は135人のお客さんがきてくれました。イベントを開催する中で思うのは、自分たちだけでやるよりもお客さんと一緒にやった方が楽しいということ。一緒にイベントを作るとすごく深い関係を築けるし、継続的にLINDA HOSTELに関わってくれる人が増えるなと思います。例えば、LINDAフェスにきてくれたお客さんが新型コロナウイルス流行以前は毎週カレーを出してくれていて、そこにまた新たな人たちが来てくれる。普段あまり関わりがないような、世代の違う人たちや関心の違う人たちがLINDA HOSTELを通して仲良くなり、関係性が連鎖していくのが面白いなと思います。

 

安心が担保された関係性の中では何度も挑戦できる

—どのような経緯で「人と繋がる、世界が広がる」というコンセプトを掲げられたのですか?

2018年の7月頃から相方の水口と開業準備をしていたんですが、このコンセプトが決まったのは冬くらいでした。その間ずっとなんとなく提供したい価値はあるけど、うまく言語化できずにいたんです。というのもホステルがまだできあがっていないためにイメージするしかなくて。そこで、小さなバーを間借りして実際にやってみたときに自分たちがどう感じるかを実験してみることにしました。実際にバーを運営する中で、2人の間で共通していた想いが「人と繋がる、世界が広がる」でした。ゲストハウスの開業準備を始めていた水口に声をかけたことがきっかけで共同創業することになったのですが、彼とつながっていたことで今、自分の実現したいことを追求できています。このことが実体験としてあるので、ゲストハウスを通して挑戦につながるような出会いや、生活が楽しくなるような出会いがあって、その結果世界が広がるということを目指しています。

 

—「安心して挑戦できる環境を作る」ということを思うようになったきっかけはありますか?

新卒で入った会社での経験が大きいですね。僕は自己肯定感が低いので、結果を残し続けないと自分の存在価値が認められないと思ってしまったり、周りに頼れなかったりしたんです。それで、「これ言っていいのかな」とか、「発言しない方がいいかもしれない」と思うようになっちゃって。そんなときに、ある団体のイベントに参加して、イベントの中で他の人とコミュニケーションをとったり一緒にアウトプットを出したりしたのですが、そこでは自分がすごくイキイキとできて、安心して話せるなということに気づきました。価値観が似ている人との繋がりや「この人たちなら大丈夫だ」と思えるような関係性に安心すると、発言もしやすくなる。そしてその安心できる関係性の中では、結果としてうまくいかなかったとしても何度でも挑戦することができると思うんです。だからLINDA HOSTELでは、安心を担保するということを一番にやってきました。何かに挑戦したいと思ったとき、「成功するか」とか「一緒にやる仲間がいるか」とか色々な不安が湧いてくると思うんですが、やってみたら案外そうでもなかったり。だから、「何か一緒にやりませんか!」と声をかけながらカタチにすることを楽しんで挑戦できる環境をつくりたいと思っています。

 

「お客さん」から「作る人」へ

—イベント以外にもLINDA HOSTELの人の繋がりから生まれたプロジェクトなどはありますか?

お客さんからスタッフになるということはよくありますね。印象的だったのは、バーによく来てくれていたお客さんの1人が、LINDA HOSTELに住みながら働くのを手伝ってくれていること。彼はLINDA HOSTELでコーヒーを提供しながらもっとこだわりたいと思うようになり、それから近所のコーヒー屋さんに習いに行くなどして、今ではそこのコーヒー屋さんの生豆を仕入れ、彼が焙煎をしてカフェで出すようになりました。さらに業務を標準化してくれて、スタッフ全員が美味しいコーヒーを作れるまでになっています。

 

—「お客さんを巻き込んで運営する」ために意識していることはありますか?

あまりお客さんとして接しすぎないことですね。完璧な言葉で完璧な接し方をしすぎないことを意識しています。イベントの後片付けを手伝ってもらったり、営業終わりに一緒にご飯に行ったりすることもあります。そういうところから仲良くなっていきますね。甘えさせていただいています。

そして、やりたいことがありそうだったら「一緒になんかしません?」という声かけは意識的にしていますね。そこからイベントなど場が生まれてきました。

 

あったかい世界の実現に向けて

—新型コロナウイルスの影響を受けて「ホステルの持つ価値」は変化したと思いますか?

「オンライン宿泊*」を開催したことで、ホステル宿泊の価値というのは「新たな人との出会いやその土地ならではの魅力を発見することだ」というところに行き着きました。でもそれって別にLINDA HOSTELのベッドに泊まらなくてもできることですが、逆に長く泊まれば泊まるほど体験できることでもあるなと思っていて。だから、宿泊の有無に関わらずホステルを利用するお客さんにはその2つの価値を感じてほしいです。訪れた人がその土地の魅力を感じられるように地域の商品を増やすことや、滞在時間が長いほど「人と繋がる、世界が広がる」の価値も大きくなると思うので、今後中長期の滞在受け入れにも力を入れていきたいですね。

*オンライン宿泊…おうちにいながらゲストハウスをオンラインビデオツールで訪れ、その町にしかないお店の人の話を聞き、偶然出会う人たちと交流する。
おうちで旅しよう!新企画「オンライン宿泊」始めます。| note

 

—今後挑戦していきたいこと、そしてどのような未来を作っていきたいか教えてください。

「人と繋がる、世界が広がる」の先に、「あったかい世界」を作りたいです。例えば、「働くのが面白くないから、日々の生活楽しくない」という人がたくさんいるのはあったかくないよねとか、「自分と人が違うことによって、他人の目を気にして自分を押し込める」のはあったかくないよねとか。自分たちが「あったかくない」と思うところを周りを巻き込んで一緒に解決に向かえたらいいなと思っています。でも、作りたい世界やビジョンを具体的に言語化しすぎると取りこぼしてしまうことも多くある気がしていて、僕たちとしてはそれよりも「今、目の前の人達にいかに楽しんでもらうか」というプロセスを一番大事にしていきます。だから今後も「人と繋がる、世界が広がる」を作り続けるということは確かです。社会にある課題を解決するというより、僕たちが出会った人それぞれが抱えている課題を解決する、その数を増やすことと質を高めることをし続けていきたいと思います。

LINDA HOSTEL106 instagram @lindahostel106
※LINDA HOSTEL106は2021年8月いっぱいで閉業しています。

 

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    interviewer
    田坂日菜子

    島根を愛する大学生。幼い頃から書くことと読むことが好き。最近のマイテーマは愛されるコミュニティづくりです。

     

    writer
    堂前ひいな

    幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。

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