【前編】起業家の役割は、社会問題を早く世の中からなくすこと。フードロスの原因解決へ
大学時代からフードロスの問題に取り組み、サプライチェーンの仕組みを変えるべく挑戦を続ける金子隆耶。前編では、社内設置型スナックのサービスを始めた経緯や、出社が当たり前でなくなった今の社会への対応について考えを聞いた。
【プロフィール】金子隆耶(かねこ りゅうや)
株式会社テオーリアにて社内設置型ヘルシースナックスタンド「snaccuru(スナックル)」の事業責任者を務める傍ら、株式会社フードロスホールディングスの代表を務め、新規事業にも力を入れる。大学時代に農業を経験したことをきっかけに、フードロスの問題をビジネスで解決するために活動を続けている。
もくじ
サプライチェーンの仕組みを変えることで、フードロスを減らす
―フードロスの問題に対して大学時代から活動を続けている金子さんですが、現在は事業を通じてどのようにアプローチしているのでしょうか?
フードロスの解決方法には、発生抑制と原因解決という2つの方法があると思っています。
発生抑制に関しては、フードロスとして発生してしまったものをどう解決するか考える方法です。snaccuru(スナックル)のサービスは、まだ食べられるのにメーカーで余剰に発生したお菓子を消費者に届けることで、フードロスの発生を抑えています。
原因解決については、フードロスが発生するメカニズムを分析し根本から解決することを目指します。フードロスホールディングスでは、飲食店向けのゴミ箱を作っていて、AIによる画像認識でゴミのデータを取ってゴミの内容を分析し、飲食店のフードロスを減らす方法に取り組んでいます。
―snaccuru(スナックル)のサービスを始めた経緯を教えてください。
まず、フードロスの問題に取り組もうと思ったのは、大学時代に農業に取り組んでいたことがきっかけです。自分たちで作った野菜を大量に廃棄したことがあったんです。食べ物そのものに問題があるというよりも、サプライチェーン側のルールや規制によって「食べられない」「規格外品」と定義されて捨てられるものが圧倒的に多いと気づきました。となると、作るモノにこだわるよりも、サプライチェーン側のルールや規制、習慣に則って、どうビジネスとして解決できるかを考えることが必要だなと。
オーガニック系の食品メーカーで働いたこともあったので、一次産業の現場からメーカーとして販売するまで一気通貫してどのようなサプライチェーンでフードロスが生まれているのか見えてきました。そうした経験を利用して、何かを生み出せないかと取り組んだのがsnaccuru(スナックル)のサービスが生まれたきっかけです。
営業の手腕を活かして六本木を走り回り、ユーザーとの距離を縮める
―実際にオフィスに設置されてみて、サービスの難しさを感じた点もあったのでしょうか?
苦労したところで言うと、snaccuru(スナックル)を提供する僕らと設置する企業の間で、フードロスに対する認識のずれがありましたね。フードロスの問題に取り組んでいる以上は、僕らとしても賞味期限ギリギリまで売りたいんですよね、食品のルールとしては間違っていないので。でも、賞味期限が1日過ぎたものがオフィスの箱の中に残っていることによって、それを食べて病気が発生したり食中毒が起きたりしたらどうするんだということを言われることも多かったです。
snaccuru(スナックル)はフードロスに対する取り組みだという共通認識の上でサービスを導入していたのですが、どうしても企業の理解を得るのが難しいところはありましたね。
また、こういう福利厚生のサービスは社内で承認が下りにくいという問題もありました。特に大手の企業になると、半年後や一年後というのもザラにあります。予算の問題なので、それぞれの企業の決算時期によって事業をスタートする時期はかなり変わってきます。僕らにできるのは、常に接触回数を担保すること。お客さんである担当者の方といかにコミュニケーションを取るかというところは意識していました。毎月ただ訪問してもうっとうしいと思うので、サンプルを社内で配れるように小分けにして持っていったり、こんな商品が欲しいという要望を聞いたりしていました。
あとは、競合でなければ福利厚生の別のサービスを紹介することもしましたね。きちんと他社比較をした上で、「このサービスいいな」と思って決定してもらうことが強みになってくると思います。
―snaccuru(スナックル)のユーザーとのコミュニケーションを取る上で、どんな工夫をされていましたか?
1つ目は、僕が納品まで行くことです。六本木のオフィス街でめっちゃ大きいダンボール運んでる人がいたら、多分僕だと思うんですけど(笑)。そうやって納品するタイミングで、何がどれぐらい売れているのか、陳列はもっとこうしたらいいんじゃないかというような意見を聞いていました。僕から声をかけることもあるし、担当者やユーザーである社員の方から声をかけてもらうこともありましたね。
他にも、担当者に対してアンケートを回答してもらったり、LINE@でユーザーと交流型のコミュニケーションを図ったりしていました。
社会の情勢を見極め、今できることを続ける
―新型コロナウイルス感染防止の観点からオフィスに出勤する人が少なくなった今、snaccuru(スナックル)のサービスに与える影響は大きいと思います。そんな中、SNS等で前向きな発信を続ける理由はなぜでしょうか?
情報発信によって認知を広げるという点は意識しています。snaccuru(スナックル)のような福利厚生型のサービスは、導入に至るまでの情報認知がすごく重要なんです。単にプレスリリースを出すだけではなくて、「snaccuru(スナックル)って聞いたことあるよね」というぐらいに社員に認知が広がっていれば、社内の担当者も導入に向けて動きやすくなります。いい情報発信を続けることで、最終的にサービスに少しでもつながっていったらいいなと考えています。
―今後のsnaccuru(スナックル)のサービスについては、どのように考えていますか?
企業における福利厚生の考え方が変わってきている今、snaccuru(スナックル)も社会の変化に合わせていかなければならないと感じています。オフィスに出社することが当たり前でなくなったことで、福利厚生のあり方は今後変わってくると思います。
一つの事業として、社会情勢や社会における必要性を見極めていくことが大切なので、そこは現実と照らし合わせながらよく考えていきたいですね。
※取材後、2020年6月30日をもってsnaccuruのサービスが終了することが決定しました。
snaccuru Facebookページ 【snaccuruサービス提供終了のお知らせ】
後編では、「気づいた者には気づいたなりの責任がある」と、満を持してフードロスの原因解決に踏み切った経緯、新事業に込める思いを聞きました。
interviewer
河嶋可歩
インドネシアを愛する大学生。子ども全般無償の愛が湧きます。人生ポジティバーなので毎日何かしら幸せ。
writer
田坂日菜子
島根を愛する大学生。幼い頃から書くことと読むことが好き。最近のマイテーマは愛されるコミュニティづくりです。
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