若すぎる起業家の「これだけは知っておきたかった」 【前編】

この記事を書いた人:中村多伽
株式会社taliki代表取締役。社会起業家の事業立ち上げ伴走、ベンチャーキャピタル運営、上場企業の事業開発支援などを行う。好きなものはハイボール、嫌いなものは寝不足。

 

0:はじめに

私自身学生起業をして、若者の社会課題解決の事業の立ち上げに携わってきたので、若手起業家の卵から相談を受けます。数えたことはないですがおそらく1000件以上のご相談はお聞きしたかと思います。
ビジネスプランの壁打ちや資金調達、リーダーシップとは、などジャンル自体は多岐に渡るのですが、起業前〜直後にかけての相談内容をまとめると、多くの場合が
「色んなことが足りないのは分かるけど何から手をつけていいかわからない」
に集約されるように思います。

実際起業してみると、まあ足りないことしかないです。創業時に完璧に要素が揃っていることなどあり得ません。そして、事業内容や創業者の人間性、ビジネストレンド、時代背景など、あまりにも多くの変数に囲まれているため、一概に「これがあれば大丈夫」とは言えないのが現状です。
それにこれを言い始めると元も子もないのですが、どんなに多くのビジネス書を読んでも、どんなに多くの先輩の話を聞いて「知ること」は出来ても、「実際にやる」とは大きく乖離があり、やりながら気付き、学ぶしかないことが大半です。

なので本記事では、「知識があるだけで少し違って見えるもの」のほんの一部について言及します。そして、「自分は何を知らないのか」にちょっとだけ気付き、これから学ぶ時の優先順位づけの一助となることを目標としています。また、起業家の先輩方から「起業前に知っておきたかったこと」を意見として集め、多い順にトピックを絞っています。

余談ですが、この世の中の情報は、「知らない」「知ってる」「ハンドリングできる」の3つに分けられると考えています。「情報をハンドリングできる」というのは、その情報を自らの知見として活用できるようになることで、これは実践や経験無しには出来ません。なので、この記事を読んだら実践して実際に情報をハンドリングできるようになっていただけると嬉しいです。では早速いってみましょう。

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1:取引・契約価格の相場が分からない

実は、起業家の先輩から集めた声の中で最も多かった声がこれでした。
大きく分けると、起業したてで、特に社会人経験の乏しい人がぶつかる「相場感」には以下の3つがあります。

①仕事の依頼やバックオフィスにいくらかけるか分からないケース

会社登記の手続きに必要な依頼から始まり、外部のエンジニアやデザイナーに外注する相場、オフィス賃料の相場など、始めたばっかりの段階で「え、いくら払うのが妥当なの」となります。
大前提「無料で出来るツールはこの世に溢れているのでそれを活用する」ことと「固定費は必要最低限にとどめる」ということが何よりも大事です。
・登記に必要な定款作成などは無料のオンラインツールで行う
・会社HPは一から構築する必要がなければページビルダーやwordpressなどで無料で作成する(プログラミングの知識がなくても出来ます)
・オフィス賃料は自宅兼で月々の固定費を抑える
などがよくある手法です。

その上で、必要経費に関して先輩からまず話を聞くこと。私の場合、登記は無料のツールを活用し、社会保険の加入や税務処理などは社労士さんと税理士さんにお任せしています。社労士、税理士などは普段の業務や雇用に必要な上に、専門知識が必要で、自分でやろうとすると煩雑すぎて経営に集中できなくなるからです。
会社規模にもよりますが、スタート段階では顧問料や依頼料は月1-3万が妥当だと思います。
公式HPやサービスのプロトタイプではno codeツールなどを使っており、バックエンドの処理が複雑なものだけ内製しています。開発に関することなどはプロダクトを内製してる会社の人の話を参考にすると良いでしょう。

②価格設定が分からず安売りするケース

C向けサービスなどは価格が明示されていますが、B向けだと適正な価格帯の相場が分からず、若者の金銭感覚から安売りしてしまうケースをよく見ます。
もちろん高付加価値で高単価になる事を目標にするのが良いとは思いますが、まずは似たようなビジネスに関わったことのある人、発注したことがある人の話を複数聞いて値段感を把握するのが良いかと思います。
余談ですが社会起業家あるあるとして、お金を出来るだけ取らないようにしがちです。対象にもよりますが、多くの場合それは優しさではなくマーケット感覚の欠如であり、自己犠牲です。購買能力の高い人にはちゃんと良いものを提供しながらしっかり対価をもらいましょう。
価格の決め方には
・コストベース
・競合ベース
・価値ベース
など、相場感と合わせた軸もいくつかあるので参考にしましょう。
また、法人相手のサービスを行う人は社内決裁のフローを知っておくのが大事という意見も。
私も学生起業なのでここは今でも無知で、つまずくことがあります。決裁権のない人、予算権限のない人にいくら提案しても通らないとか、りん議を通すために必要な要素(サービス内容としてさほど重要じゃないことも多い)が揃ってないとか。あと大企業相手だと決裁のスピード感もかなり乖離があります。
始めたばかりの頃は決裁権のある人と繋がるのも難しいかと思いますが、飛び込みより人からの紹介の方が圧倒的に成約確度は高いです。

③いくらぐらいで資金調達すべきか見当がつかないケース

これは次の記事でも詳しく触れるのですが、初期に資金調達をする際の出資の相場や融資の相場は絶対に知っておいた方がいいです。なぜならこれは一度契約を結ぶと、どんなにそれが理不尽だと後から気付いても覆すのがとても難しいからです。

スタートアップ企業が投資家から調達する際、創業直前直後のいわゆるエンジェルラウンドだと企業価値(バリュエーション、時価総額とか呼ばれます)が数千万〜1億で、出資額は数百万円〜2000万未満が多いと思います。シェアとしては数%〜15%未満がほとんどです。数百万でも個人としては大金ですが、その金額で30%以上のシェアを渡してしまう若手起業家をたくさん見てきました。(議決権を1/3以上保持している株主は一部の意思決定を拒否することができます。)

合意が取れていれば問題ないので、なぜその金額で、なぜその割合かというのは上の相場に照らし合わせて議論してください。
ちなみに、プレゼン一枚や顧客のいないプロダクトに企業価値5000万円以上つくというのは会計的にはあり得ないぐらい高価格です。
ただ会計上には可視化されない、チームや将来性のような価値の違いがあったり、開発など色んな都合を考えた時の慣習的なもの(まさに相場ですね)だったりするので、「そういうもんか」と思っておいたら良いと思います。地方で起業するとそういうのに慣れてる会計士さん・税理士さんが少ないのでびっくりされます。

公庫や金融機関から調達する際、特に職歴のない学生はまず断られるケースが多いです。
メガバンクは基本的に無理だと思った方が良いです。理由は様々ですが、金融機関は投資家と違い「確実に着実に返す」が原則です。なので若くて実績がない人がどうやってお金を返せるのかあんまり分かりません。そしてビジネス経験のない人が書いた事業計画書は本人が思っている以上にガバガバです。これは両者仕方ないと思います。

そういう時は、公庫を含め多くの金融機関がサポートデスクのようなものを設けていますので、窓口から正面突破せず、まずサポートデスクのようなところで見てもらってどこを修正すべきかコメントをもらうと門前払いされずに済みます。
それでも無理なら、地域の信用金庫に行ってみてください。顧問の税理士さんがいる場合は、その方に紹介をお願いすると通りやすくなることが多いです。(税理士さんや会計士さんは、金融機関にとってお客さんを紹介してくれるキーパーソンなので、金融機関としては紹介先を無下にできないんですよね)

若手起業家は借りられるとしても実績がないうちは数百万円〜1000万代前半くらいです。最初に全部借りるのではなく、少し借りてちゃんと完済するとそれが信用になり、もっと大きな額を借りられるようになるので焦らずいきましょう。

2:チームメンバーとの関係性が分からない

若者の起業となると、仲良しこよしで起業することが多いと思います。ここから学んだ起業家の先輩方からのメッセージは以下の2つです。

①創業時の株の割合はシビアにすべし

経験上、学生起業で創業メンバーが抜けなかったケースはほとんど見たことありません。多くの場合が創業後一年以内に重要メンバーがいなくなります。しかも、「絶対に一生一緒にやっていく」と言っていて、側から見てもナイスコンビと言えるようなところが、です。
しかし、これは仕方のないことです。仲間として価値観が合うことは本当に大事ですが、その上で役割や専門性、やりきる力など同じくらい必要な要素が事業推進にはあるのです。そしてそれは創業前に把握できなかったりします。
なので、株の割合という、創業者が抜けた後に一番トラブルになりやすいことはしっかり決めておくことが大事です。どんなに仲良くて信頼し合っていても、代表が必ず多く持つこと、そして抜けた際にどのような抜け方であってもトラブルにならない契約を結んでおくことが大事です。
仲間内で契約なんて、とか自分たちだけは大丈夫、と思う人ほど、万が一の時の痛みが大きくなります。創業後は、新しく増える仲間には雇用契約を、新しく増える株主には投資契約や株主間契約を、など、会社の未来に想いやお金を託す人たちと色んな契約を交わします。その一歩めとして、必ずやってください。

②仲間が多すぎるのはNG

想いに共感してくれたから、仲良いから、と事業がないのにチームに5人以上いたり、事業規模や必要なスキルセットに合わない人が増えると、コミュニケーションやマネジメントに必要以上に労力がかかり、成長や推進スピードはかなり鈍化します。良いサービスが大人数で運営されているとは限りません。
あと、よく分からない大人をたくさん迎え入れているケースもかなり見ました。必要なナレッジを持っているのか、本当に事業推進に寄与する存在なのか、株式をやたら必要としないか、秘匿性の高い会社情報の開示を求めすぎていないか注意してください。ビッグネームを出して紹介するよと言ってるケースも多いです。特に女性の若手起業家には必ずと言っていいほど、初期に口出しおじさんが出没しがちです。
大体の場合、本当に応援してくれる人であれば会社のメンバーにしたり顧問契約を結んだりせずとも、1ヶ月に一回お茶してアドバイス貰えば済む話ですし、契約がないと月1のお茶さえ対応してくれない人はそもそも組織に入れない方が良いです。

ファイナンスの基礎、ビジネス領域

後編では、お金について勉強するには?資金調達ってどうやるの?創業時の株は何株?というファイナンスの話から、ビジネスになる領域って決まってるよね、という話やマインドセットの話などをしたいと思います。(後編はこちら)

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期間:6/13(土)〜7/4(土)、毎週土曜日13:00-15:00、オンラインにて参加者同士でセッションを行います)

内容:
1週目 オープニング&仮説検証(ユーザーヒアリング、MVP)
2週目 ディスカッション①:お金のめぐり(資金調達、財務戦略)
3週目 ディスカッション②:より多くのお客さんに知ってもらう(マーケティング)
4週目 ディスカッション③:事業の拡大、さらなる展開へ(PMF、アライアンス、横展開)

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たくさんの同志にお会いできるのを楽しみにしております^^

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