雇用を生み、利益率を上げる。地方創生の未来とは

事業を作り、地域の課題解決と雇用創出を実現したい。そんな思いで、出身地である京都府与謝野町で起業した濱田祐太。自らが動き事業を作り上げ「地域の旗振り役」を体現している彼に、理想の持続可能なまちづくりや事業のこだわりをきいた。

濱田 祐太(はまだ ゆうた)

1996年生まれ。京都府与謝野町出身。関西学院大学卒業。高校生のときから「地方創生」に関心を持ち、大学時代には、全国の先進事例の視察や丹後地域で事業立ち上げなどを行う。地元である与謝野町から、持続可能なまちづくりを促進するべく、2019年7月に株式会社ローカルフラッグを設立。

 

新卒で地元で起業したワケとは

ー地元である京都府与謝野町で起業された背景を教えてください。

「地元をなんとかしたい」から全て始まっています。就活もしましたが、面接やOB訪問の度に「そんなにまちづくりに熱意あるなら自分でやったらいいんじゃないの?」と言われ会社をやる方向に向きました。再度自分は何を成し遂げたいか考えた時に、自分の故郷をなんとかすることに本気で取り組みたいと思ったんです。

色々な資源や事業のタネはあるけれどまだまだ活かされていないというのが地域の現状です。持続可能なまちづくりを目指し、町に事業が生まれることで地域の課題解決と雇用の創出をしていきたいです。でも、起業でしか自分がしたいまちづくりができなかったというのがあって、自分が就活生で今のローカルフラッグがあったら入社してると思います(笑)。

 

ー地方創生に興味があっても、まずは東京で働いてから戻るという人が多いと思います。濱田さんは最初から地元で起業することを選んだのはなぜですか?

東京に行ってから戻ってくるよりも、与謝野町にいながら、たまに東京に行く方がいい繋がりができると明確に思っています。なぜかというと、東京でも友達はできると思うのですが、なぜかというと、「東京に住んでます」というと、相手にとっては、「後々地元に帰って事業をやりたいという若者」としてしか映らないからです。でも東京の人からすれば「地方で起業している20代の若者です」の方が覚えてもらいやすいし、実際に地域を担ってその場にいるため、相手と対等に話せます。そういう関わり方のほうがいいと、自信を持って言えます。

そのため地域でやりたい人は、地域でやってから東京に行くのも遅くないと感じています。

地元に貢献したいと思う若者が増えていても、事業をしたいと思っている人はあんまりいないと思います。田舎暮らしをする人だけではなんにもならないというか、自分たちが住む町の未来は自分たちで作らないと。将来自分の町が残っているかは分かりません。それでも、自分でチャレンジして色々と仕掛けて行く人が増えたら嬉しいです。

 

地域課題解決×雇用創出


ー実際にローカルフラッグではどういった事業に取り組まれていますか?

現在は2つの事業に取り組んでいます。1つは”まちの人事部”のような仕事をしています。地域の企業の事業促進や人材課題解決に向けて、地域の企業と都会で働いている人を繋げる兼業の人材紹介や、社員研修のようなものを行っています。もう1つは「飲めば飲むほど海が綺麗になる」をコンセプトに、クラフトビールを作る事業をこれからやります。天橋立という観光地に牡蠣が自然に大量繁殖していて、景観の悪化と悪臭に繋がり苦情がきていることから、その牡蠣を事業として使用したいと考えました。与謝野町は5年前からホップの栽培を行っていることもあり、このホップを原料として地域内で6次産業化を進めていきたいと思っています。

 

ー地域でお金を回していくための仕組みづくりはどのようにされていますか?

我々はちゃんと事業として成り立たせるというところは大事にしています。しっかりと稼げるよう営業をし、きちんと売れるところに売れるような商品や注目してもらいやすい商品を作ることが大事だと思っています。今は安いから買う、便利だから買う、という時代ではなく、ストーリーがあり、なおかつ作り手とのコミュニケーションが取れる商品が求められています。

世の中を見ると、東京の企業が地方の工場に外注をして、製造したものをブランド化して高く売るのはよくありますが、そのブランド化する力が地元側にあれば自分たちで利益率を高められる。そういった力を地域内で自力でつけていき、地域にお金を残せるようになることを意識しています。

 

作り手と買い手の境目を無くす

ー実際にそういったストーリーがある商品開発はされていますか?

クラフトビールの事業はそのようなやり方で進めていきたいと思っていて、力を入れていきたいことが2つあります。1つは地域の課題や社会性のあるストーリーを描いていくことでです。牡蠣の貝殻の活用や、与謝野町で出来たホップをうまく使用できればと思っています。2つ目はただビールを売るのではなく、ビールを通じたどんな体験を売るのかを考えています。最初の段階として「醸造所をみんなで建てる」という体験も商品に付帯させて売っていこうと思っています。ビールは月会員制の商品にし、毎月ビールが送られるだけではなく醸造所を建てる過程に参加してもらえるような工夫をします。実際に飲んでもらったビール缶についているQRコードから感想を書いてもらって次の商品開発に生かしていく、醸造所の計画書を会員限定で公開、他県でのイベントに一緒に手伝いに来てもらうなど、作り手と買い手の境目をなくして皆でクラフトビールづくりを進めていきたいです。

 

ー新型コロナウイルスが流行していますが、オンラインで何か事業をされていますか?

オンライン企業説明会のプラットフォームをリリースする予定です。新型コロナウイルスによる地域企業の課題として顕著なのは、これまで説明会の開催により学生と接点を持っていた企業が接点を持てなくなったことです。僕は地域に根付いた企業は、社会課題の最前線で戦っている会社だと思っています。そういった会社から社会課題のリアルな現状や課題を直接聞く機会として、「学びながら企業を知れるオンライン説明会」を、地域企業を中心に提供していきたいです。


 

ー今後、濱田さんが中長期的に挑戦したいことを教えてください。

僕は日本にある有数の資源を各地で活かしながら、事業を作っていこうとチャレンジする若者が増えれば日本の未来は明るいと思っています。その中でも、与謝野町が地方創生の先進地だと思ってもらえるような事例を作っていきたいです。今のクラフトビールの事業や、他の事業構想を1つずつ形あるものにしていければと思っています。自分たちがチャレンジすることで、与謝野町や周辺地域で事業を始める人が増えたり、他の地域でも挑戦したいという若者が増えればいいなと思います。そして、東京よりも地方の方がビジネスを始めるチャンスがあることを伝えて行く立場になっていきたいです。

 

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interviewer
田坂日菜子

島根を愛する大学生。幼い頃から書くことと読むことが好き。最近のマイテーマは愛されるコミュニティづくりです。

 

writer
河嶋可歩

インドネシアを愛する大学生。子ども全般無償の愛が湧きます。人生ポジティバーなので毎日何かしら幸せ。

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