【後編】経済的成功はgiveの精神から

京都で起業家支援のエコシステムを作るために奮闘するtalikiの中村多伽。彼女のこだわりに迫るインタビュー後編。地域にも起業家にも愛されている背景には、創業から変わらない一貫した思いがあった。

【プロフィール】中村多伽(なかむら たか)

大学4年の時に周りの起業家志望の友人が京都では起業できないと言っているのを聞き、それではもったいないという思いから、2017年に京都にも起業家を支援する仕組みを作るため、talikiを立ち上げる。創業当時から実施している、U30の社会課題を解決する事業の立ち上げ支援を行うプログラム提供に止まらず、現在は上場企業のオープンイノベーション案件や、地域の金融機関やベンチャーキャピタルと連携して起業家に対する出資のサポートも行なっている。

前編記事はこちら 経済的成功はgiveの精神から【前編】

 

全員にwin-winな関係を作れるから、人が集まる

—地域コミュニティとの関係性をつくることは、どのようにtaikiを通してtalikiに関わる社会起業家にポジティブな影響を与えているのでしょうか?

基本的に私たちが行政や他の企業の方々と関係性を構築するのは、彼らと若手の社会起業家にとって win-winになる関係性を結ぶためです例えば、インキュベーションプログラムに参加していた起業家がやっていることを宣伝しまくって、新しく作るレストランでそのアイデアを採用してもらえないか勝手に進めて繋げたり、行政の方が「こういう起業家の話を公開したい」と言っていたら、どのくらいの宣伝効果があるのかを先に交渉した上で、起業家を紹介したり。とても属人的な作業ですが、それができる場所だからこそ起業家が集まるし、行政や金融機関など他のセクターも関わってくださるのだと思っています。そして、talikiが育てた起業家だったら絶対いい、みたいなことができてくると、私たちのプラットフォームとしての価値がより醸成されていくんでしょうね。

 

—そもそもtalikiの周りに素敵な起業家の方が集まっている要因はなんだと思いますか?

ちょうど1年前くらいに経済的に成功する起業家の素質って何なんだろうと思って、起業家の人間性のデータベースのようなものを作っていたことがあります。3000項目くらいに人間性を分類して、どれくらい経済的成功と結びつくかを測ったものです。その際に、売り上げや調達額のような財務指標と確からしい相関があった人間性の1つが、「人にgiveできるかどうか」だったんですよ。よく考えてみたら当たり前なのですが、giveしてくれる人にはお返ししなきゃって思うじゃないですか。社会課題のど真ん中で戦っている人って基本的にgiveの精神が強い。人の痛みに寄り添う力が高く、人を傷つけないし、何も奪わない。そういう人間性の人が最初から集まるようなコンセプトや仕組みなんだろうなと思います。あと、talikiの周りにいる起業家は特に、自分が痛みを感じた当事者だからこそ絶対に譲れないものや守りたいものがあって、それがtaliki独特の雰囲気を作っている気がします。

 

「社会に良いことをする」という一貫性

—これまで話してくださった関係構築の中で、中村さんだからこそ大事にしてきた思いや、ぶれない軸はありますか?

創業して2年半が経ちましたが、そもそも自分たちが何のために存在しているのかという一貫性は大事にしてきたと思います。会社って、ある目的の為に人が集っているというだけなので、事業内容でも理念でも「儲ける」でもなんでもいいから、その目的をぶらさないことが大切です。私たちがずっとぶらさずに持ち続けてきた思いは、社会に良いことをして、悲しい人を減らすということです。例えば「社会に良いことは増えないけど、こっちの方が儲かりそう」といった経営判断は一度もしていないんですよね。だから、この会社に任せたら社会にとって良いことが増えるだろうし、そうならないことはまずありえないと、きっと周りの人が時間をかけて分かってくれたんだろうなっていうのはありますね。社会にいいことして儲かるのが一番ですけどね(笑)。

 

—中村さんにとって社会に良いことというのは、どのようなことでしょうか?

私も会社もそうですが、死ぬより辛い人とか命を落としてしまう人の絶対数が減ることが何よりも大事です。私の大切な人が社会によって悲しんだり傷ついたりするのは嫌だという思いが強くあるし、私だけじゃなくてたぶん全人類そうだと思うんですよね。だから、社会によって悲しんだり傷ついたり命を落としたり、死ぬより辛い思いをする人が減るような活動が、社会にとって良いことの定義です。

 

世の中は変わっても人々が求めるものは変わらない

—最後に、最近の新型コロナウイルスの影響も含め、未来の変化が不透明になっていく中で、良い社会を作るために、talikiが今育んでいきたいことはなんですか?

確かに今の状況とかは、今まで経験したことのないレベルのものではありますが、変わらないんですよね、あんまり。もちろん、とるべき方法や手段は変わるけれど、目的は変わらないと思います。でも、人間って余裕がなくなると人を傷つけたり、何か物を奪ったりを当たり前にしてしまうようになるんです。だからこそtalikiのバリューでもあるのですが、その相手の背景まで愛することや、それを今やることが本当に意義があるのかどうかということをより強く意識していきたいし、私たちに関わる人もそういうメッセージが発信できたらいいなと思いますね。

 

株式会社taliki https://www.taliki.co.jp/

撮影:原田透

 

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interviewer

河嶋可歩

インドネシアを愛する大学生。子ども全般無償の愛が湧きます。人生ポジティバーなので毎日何かしら幸せ。

 

writer

堂前ひいな

幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。

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