世界一フェアに資金調達の方法を整理してみた

こんにちは、2020年4月にtalikiに入社をした辺境です。

 

今まで50人以上の起業家とお会いし、色んなお悩みやブレイクスルーを身近に見てきました。その中で見えてきた事について記事にしました。

 

今回は、自己資金⇔他人からの調達(出資・融資)での調達に関するコラムを書きました。

 

想定ターゲットは、起業を考えている、しかしお金周りの事とか良く分からない、という方に呼んで欲しい記事です。また、実際に起業されている方でも、プロダクトに興味や熱意はあるが、お金のことは分からない・あるいは他の起業家がどうやってお金周りの判断をしているのか分からない、という人も読んで頂けたら参考になるかもしれません。

 

自己資金?外部からの調達?

あなたは会社を始めるとします。自己資金でおこないますか?他人から調達をしますか?

 

この質問に明確に答えられる人はそこまでいないでしょうから、どのような思考のプロセスを踏めば、上記の問いに対する結論が出るのか、について書いていきます。

 

結論からいえば、①自己資金の量②ビジネスモデル③施策実行時期④メリット・デメリットを踏まえて考えます。その思考のプロセスを説明します。

 

①自己資金の量

開業前に別の仕事で貯金をできていた場合や、そもそも開業に向けて貯金をしてきた場合は、自己資本はそれなりにあるでしょう。ご自身の金融資産のうち、どれくらいを会社に入れられるかを決めて、自己資金の量を考えましょう。

 

②ビジネスモデル

初期投資が必要な事業と、そうでない事業に分けてみましょう。

例えば、アパレルをやりたい!とか飲食店をやりたい!と思った際に、どこまで自分たちがやるのかを考えます。

例えば、企画する→作る→売る、という、バリューチェーン上の3つの機能があります。

「作る」を自社工場作ってやるのか、工場を持たずにOEM先に外注するのか?

「売る」をオフラインにするかオンラインにするのか?

自分が何をやりたいかでビジネスモデルを決めればいいと思いますが、前者を選べば、当然ながら初期に大量のキャッシュが必要となります。

 

③施策実行時期

ビジネスモデルが決まったら、事業の構想およびそれを数値計画に落としたPL(損益計算書)を書きます。その際、必要な機能(営業、マーケティング、開発等)を外注するか/内製(採用)するかの論点が出てきます。ビジネスモデルを定義した中で、具体的な施策の実行時期によって、いつ、いくら必要になるのかが明らかになります。

 

④メリット・デメリット

①②③で、変数が大変多い事についてご理解いただけたかと思います。さて、その上で、自己資金と他人からの調達のメリットとデメリットを知った上で、どちらを選ぶかを判断しましょう。

 

方法 具体例 メリット デメリット
自己資金 手持ち現金での開業 所有と経営が一致し、他人の口出しを受けずに経営できる 手持ち現金ではやりたい事が出来ない場合がある
他人からの調達 新株割当、借入、補助金、クラファン 調達したお金を別の事業リソースに変換し、拡大できる 説明責任、返済義務、個人保証、出口戦略が付く場合がある

 

これらを踏まえて調達するかどうかの判断ができたでしょうか。

 

他人からの場合どこから?

次の質問です。

他人から調達をする際に、どのような資金調達方法があるでしょうか?

経済的・心理的メリット、デメリットって何かあるのでしょうか?

 

実はこれがミソで、ひとえに「他人からの調達」をするといえど、お金を集める方法によっては経済的だけではなく、精神的なメリットやデメリットも生じるのです。

<経済面>

計上箇所 具体例 経済的メリット 経済的デメリット
自己資本 新株割当 ・返済義務がない

・株主によるアドバイス、販路拡大や専門家接続など

・IPO・MA実現時のキャピタルゲイン減少
負債 金融機関からの借入 ・リターン期待値が金利のみ ・利息の支払い
収益 補助金 ・返済義務がない

・クラファンの場合、事業計画を必ずしも必要としない

クラファン ・手数料・リターン設計

・着金が遅い

<精神面>

計上箇所 具体例 精神的メリット 精神的デメリット
自己資本 新株割当 ・株主のバックアップによる安心感 ・収益性や拡大性がないと出資者が見つからない(将来重視)

・所有と経営の分離

・株主への説明責任

・IPO/MAなどの出口戦略を求められることが多い

負債 金融機関からの借入 ・ビジネスマッチングなどの支援手法が整っている ・若く実績がないと取引できない(過去重視)

・元本返済や利息支払いが資金繰りに影響

・個人保証

収益 補助金 ・他の調達手段に比べて説明責任や返済義務などの縛りが薄い ・申告書・報告書作成の手間
クラファン ・フォーム作成の手間

・ファンディングの難易度

・リターンの遂行

 

 

事業別の具体例

 

ここで、実際にあった数名の起業家の調達の例をを出して、イメージを深めて頂ければと思います。

具体例①高齢者の就業支援をする事業をやりたい起業家

とある就業支援にまつわる事業をしたいと考えた際に、彼らの課題をヒアリングした結果、月数万円程度の副次的な収入が必要だという事が分かりました。
そこで彼らを「雇用」という形ではなく業務委託契約の範疇で勤務時間を緩く設定し、ランニングコスト(月々の運営費)を柔軟に調整できるよう設定しました。
事業開始の際は、既にある加工工場や場所を使う事により、初期費用を抑えられる見通しがつきました。
それまでに長い経験を積んできたために貯金もある程度溜まっていました。

そこで、外部からの調達をせずに自己資金で運営をする事を決めました。

【ポイント】
他人からの調達をしないケース。自己資金とビジネスモデルを精査した結果、他人からの調達が不要だと判断しました。

 

具体例②プラットフォームを構築したSaaSビジネスをやりたい起業家

事業者通しのマッチングプラットフォームを考えました。リサーチしてみるとそのジャンルのプラットフォームが現在存在せず、そのプラットフォームの勝ち筋が技術勝負であり、かつ、彼の経営チームには優秀な技術者が揃っていました
プロダクト開発&PRに関しては大規模なお金が必要でしたが、そのビジネスアイデアが優れており、市場規模から出口(IPO)戦略も明確であると投資家が判断したため、彼の投資家からの調達は上手くいきました。

【ポイント】
投資家からの株主による調達をしたケース。ビジネスアイデアだけではなく経営チームとしての実現可能性の高さ、出口戦略が認められたケース。

 

具体例③とある食品の製造・販売事業をやりたい起業家

食品製造・販売事業を味で勝負しようと考え、差別化する味を作り出すには自社工場が必要だと思い立ちました。
しかしそれらを全て一から自分たちで作ろうとすると、かなりの金額が必要になります。
金融機関からの借り入れをするにしてもいきなりの大金は難しく、地域に根付いた末長い事業を想定しているため、出口戦略を求める投資家からの調達も合わないと判断しました。
そこで、最初は自分たちがメーカーになるのではなくOEM(委託生産)を行い、そこで成果を出したうえで金融機関などからの資金調達を行い、工場の建設を目論むことにしました。

【ポイント】
施策実行時期をずらしたケース。工場設立をするとどうしても数億単位の大規模な資金が必要になるため、実績のない初期段階ではその信用を得ることが難しいと判断しました。

 

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このように、やりたいビジネスの特性やチーム、指向性、タイミングなどによって、誰からどのように資金を集めるかは変わります。資金調達方法(資本政策含め)は、慎重に考えましょう。各調達方法のメリット・デメリットをしっかり把握したうえで、自分たちの事業はどの調達方法が適切なのか、を考えてみて、後悔のない調達方法をしていきましょう。

 

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    書き手:辺境


    大手IT企業で海外事業の経営企画・経営管理を8年勤めたのち、マーケティング系スタートアップにてバックオフィス全般を担当し、その後talikiにジョイン。世界一過酷なレースと呼ばれるサハラマラソン完走したほか、キリマンジャロ山登頂、ソマリランド訪問や南極訪問をしてきたアウトドア派。に見せかけて実はインドア。ドゴン族、読書、料理が好き。

     

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