プロダクトの背景にあるストーリーをさまざまな形で伝えたい。OYAOYA×daidai×rosa rugosa対談
対談

プロダクトの背景にあるストーリーをさまざまな形で伝えたい。OYAOYA×daidai×rosa rugosa対談

2022-08-29
#食 #野菜 #農業 #ローカル

2022年9月、丸井グループと当メディアを運営するtalikiが共創するインクルージョンフェス、『インクルージョン×将来世代を紡ぐ起業家feat.taliki~明日へつながる、やさしい暮らし~』が開催される。第4回目の今回は「食と暮らし」をテーマに、6社の社会起業家が有楽町マルイに集う。今回、農業に関連したプロダクトを展開する3社が、拠点を置く地域への想いやソーシャルビジネスの難しさ、フェスで伝えたいことなどについて対談した。

【プロフィール】
・小島怜(こじま れい)写真、中央下。
京都生まれ、京都育ち。大学で農業存続の研究後OYAOYA創業。規格外野菜のアップサイクルを通じて農業の存続を目指す。

 

・平戸裕馬(ひらと ゆうま)写真、左上
 株式会社WithFarmerCEO。果樹園地の事業承継のサポートと新規就農者の伴走支援、オランジェットブランド「daidai」の展開を行なっている。

 

・森健太(もり けんた)写真、右上
1994年三重県出身。大学卒業後、新卒で地域おこし協力隊制度を活用し、北海道十勝郡浦幌町に移住。2017年株式会社ciokay設立。2018年スキンケアブランド「rosa rugosa」販売開始。

「農家さんのこだわりや想いを伝えていきたい」

中村多伽(以下、タカ):本日はお集まりいただき、ありがとうございます。まずは、それぞれの事業や商品についてご紹介いただけますか?

 

平戸裕馬(以下、平戸)農業に特化した事業承継の支援をしている、WithFarmer代表取締役の平戸と申します。事業承継では、農業を辞める方から農地を譲り受けて、生産性の良い形にリノベーションをしてから、新規就農者に渡すという一連の事業を行なっています。ただマッチングをするだけでなく、独立するまで伴走支援をしているのが特徴です。

今回のPOPUPで出店するのは、オランジェット専門ブランドの「daidai」。新規就農者の支援をする中で課題に感じたのは、最初から質が良い果物を作ることができない、ということでした。弊社には1000種類のオランジェットを食べ歩き、チョコレートの専門知識を持つ社員がいます。「加工事業を立ち上げ、新規就農者を支えられる仕組みをつくろう」という社員の想いから、daidaiを新たにスタートさせました。ぜひ、食べにきてください。

オランジェット専門ブランド「daidai」

 

森健太(以下、森):ciokay(ちおかい)代表取締役の森健太です。私たちは、北海道の太平洋側にある浦幌(うらほろ)町に本社を置き、町の花である「ハマナス」を活用したオーガニックスキンケアブランド「rosa rugosa」を展開しています。化粧品ブランドですが農家に近いことをしていて、自分たちで収穫するところから蒸留までをやっています。

スキンケアブランドは国内外にさまざまありますが、私たちは地域を見つめる中で、「ハマナスという素材の良さをぜひ多くの人に体感してほしい」という想いから、事業を始めました。心と身体を包み込むように癒す優しい香りも、ぜひ当日楽しんでいただきたいです。

 

小島怜(以下、小島):アグリチャー代表取締役の小島怜と申します。「OYAOYA」という乾燥野菜のブランドと、農家さんのプロモーション支援を事業として行なっています。この事業を始めたのは、大学時代に農業の勉強をしたことがきっかけです。愛媛県の高齢化が進んだ地域で、いかに農業を存続させるかという研究をしたときに、「京都でも応用できそうだ」と思える事例を見つけ、OYAOYAという乾燥野菜のブランドとして始めました。

OYAOAでは京都の農家さんと提携して、規格外の野菜を活用して商品を作っています。規格外の野菜は形が悪かったり、完熟したりしていて市場に出せないのですが、味は美味しいんです。なので、乾燥させることで、美味しさをギュッと詰め込みました。乾燥野菜を通して、農家さんのこだわりや想いを伝えられたらなと思っています。

 

タカ:それぞれ「農業」や「食」と密接に関わる事業を展開されていますよね。どのような原体験があって、これらに興味を持ったのでしょうか。

 

小島:私が食に初めて興味を持ったのは、中学校のときの授業ですね。普段食べている食事に添加物がどれくらい入っているかを調べるもので、当時すごく印象に残っていました。

また、大学のときに祖母が糖尿病になって、食事制限をしている姿を見たのも、食への興味につながっていると思います。もし自分が病気になったら、食事を楽しめなくなるのは辛い。そう考えたとき、病気にならないようにするには「日常的に野菜を食べたほうがいい」と思ったのですが、どうしても一人暮らしだと生野菜を腐らせてしまうことが多かったんです。そんな問題意識を抱えていたときに乾燥野菜と出会い、OYAOYAを始めました。

乾燥野菜ブランド「OYAOYA」

 

平戸:私の場合、小学校のときにフィリピンに滞在した経験が大きかったと思います。ゴミの中で食べ物を拾い、笑いながら食べている様子が忘れられなかったんです。その後、トウモロコシの価格高騰に伴い、飢餓人口が10億人を超えたというニュースを見て、フィリピンで見た光景を思い出したのを機に、農学部への進学を決めました。

まずは日本の食を知ろうと思い、農家めぐりをして。結果的に、日本2周するほど農家にハマったわけですが(笑)、やはり一番印象的なのは現場で食べる野菜の美味しさです。今の時期だと、熟しすぎた赤ピーマンをミキサーに入れて、ロックにして飲むと最高に美味しいんですよね。全国で美味しい野菜と出会ううちに、「こんな美味しいものがあるのに、なぜみんな知らないんだ」と思い、起業をした以上、これを多くの人に伝えていきたいと思いました。

 

:私はもともと食や農業に興味があったかというと、そうではありません。拠点である浦幌町は移住してきた地域で、地域おこし協力隊としてのキャリアからスタートしました。

生まれ故郷が三重県亀山市なのですが、「世界の亀山モデル」と言われるように、シャープの液晶パネルで一世を風靡しました。ただ、私が就職活動するタイミングで収益が非常に悪くなってしまい、台湾企業に買収されて。高校を卒業してシャープに入社した友人が「ずっと安泰だ」と話していたのですが、そうではなくなっていく様子を間近で見たんです。

そこで「大企業に入ったからといって一生安定することはない」と思い、いろんな地域をめぐるうちに田舎で仕事をすることに挑戦しようと決意しました。地域おこし協力隊の2年目の任期中に、それまで取り組んでいたハマナスの商品を販売する会社を創業した後、今の事業展開に至っています。

 

地域で事業を展開するからこそ大切にしたいこと

タカ:話を聞いていると、お三方それぞれ拠点としている地域への想いも強く感じます。自分にとってその地域はどのような存在か、どんなことを意識しているか教えてください。

:私は地域おこし協力隊から起業した第1号だったので、浦幌町の方々には息子のように可愛がってもらっています。6年前に移住したのですが、人口が当時の5500人から今は4000人ほどに減少しました。つまり、年間250人いなくなっています。このままだと、数十年後に町が一つなくなってしまう。でも、未来を担う子どもたちは毎年生まれているんです。少しでも帰ってこれる環境を残したい、雇用の受け皿をつくりたい気持ちで起業しました。

rosa rugosaの商品イメージ

 

平戸:私自身も移住者として現在、熊本県の宇土市というところで、みかんを自社で3.5haつくっています。ちょうど(取材の)数日前にJAの部会があって、当日来るのが約50人くらいなのですが、40代より若い農家って地域に2人しかいないんですよね。60歳以上の農家が大半を占めている中で、事業承継に関する事業を行うのは非常に意義を感じています。

地域に入る中で大切にしているのは、「本気度」を見せること。移住した方が新たに就農するケースは増えているのですが、なかなか続かないことが多いです。要因はさまざまあると思うのですが、通い農業をされていて、地域の中に入り込んでいかないと、なかなかうまくいかないという現状があります。その点、私たちは中に入り込んで、「逃げない」という明確なスタンスをとってきました。例えば、毎回挨拶するとか、地域のイベントには全部参加するとか。それに加えて、これまで4農家から事業承継も実際に行なったので、今では「やる気のある若者が来たから、いろいろ任せようか」と言ってもらえるようになりましたね。

 

小島:OYAOYAは京都の若い農家さんと提携しているのですが、最初のころは2泊3日で泊まり込みのお手伝いを突撃して何回かさせてもらい、徐々に仲良くなりました(笑)。私の場合は地域との深いかかわりはないのですが、農家さんを訪問したときに感じる優しい、緩やかな空気感を大切にしていきたいという気持ちが強くあります。

 

タカ:地域にある食や農業で残したいこと、伝えていきたいことがある中で、今の資本主義で事業をゴリゴリまわしていこうとすると、ギャップを感じることもあるのではないでしょうか。それをハックしていくのがソーシャルビジネスの面白さでありつつ、大きな難しさでもあると思います。どのように乗り越えていこうと考えていますか?

 

小島:今ぶつかっている壁は生産量を増やし切れていないということです。最初はスモールスタートでいこうと思ったのですが、しっかりと量をつくり収益を立てられなければ、農家さんに貢献はできません。今まで加工は農家さんの機械を借りていたのですが、今は地元の福祉施設さんと連携しながら、生産量を増やしています。売り切るという覚悟を持つと同時に、いかに農家さんとの関係性を崩さないようにするかも大切にしていきたいです。

 

:私たちでいうと、残さなければいけないのは「浦幌町そのもの」。ソーシャルビジネスとしての葛藤は今もすごくぶつかっています。例えば、rosa rugosaは小売店の卸が中心なのですが、企業に説明するときは「この商品によって一つの地域を変えられる」と話すのですが、やっぱり「結局、商品力はどうなの?」と言われることが多かった。また、自社の商品を大きな会社に真似されてしまい、取引中止になるみたいなこともありました。

そのため、A面の商品力をまず高めながら、でも実はB面の裏側を知っていくと浦幌町のストーリーがあるんだよ、というバランスを大切にしながら今は事業展開を進めています。

 

平戸:私も森さんの言っていることに近く、社会貢献は当たり前で商品力が求められると考えています。ただ、同時に色んな形でみかんの楽しみ方やとっかかりを増やすことで、社会課題にアクセスするきっかけをつくるのも私たちの仕事かなと考えています。

例えば、オランジェットでいうと、甘いみかんではなく、酸味のあるものが合います。そのまま食べるときは甘いみかんのほうが美味しいとされますが、酸味があると加工もしやすく、オランジェットの可能性を最大限引き出すことができるんです。つまり、ある一面でデメリットに見えることであっても、とっかかりを増やすことで、いろんな楽しみ方が生まれるということ。こうしたデザインも、ソーシャルビジネスにおいて求められると思います。

 

商品の背景に興味を持ってもらえるストーリー設計を

タカ:今回のPOPUPを開催する有楽町マルイは、特に20〜30代の女性の方が多く来店されます。来店された方々に対して、どのようなメッセージを伝えたいですか?

 

平戸:伝えたいことはありすぎるのですが(笑)、顧客導線的に数秒しか商品を見てもらえないと思うので、まずは試食を通して食べてもらうのが一番かなと。美味しい食を実際に体感してもらい、目が覚めるような感動をしてもらった後、農家さんの想いや課題に興味を持ってもらえるようなストーリー設計を用意していきたいです。そのためにも、まずはWebサイトやInstagram、Twitterなど色んなところの情報を整備しておこうと思います。

 

小島:平戸さんと私も近くて、まずは乾燥野菜について興味を持ってもらい、裏側になる野菜について知ろうとするきっかけにしてもらいたいです。例えば、乾燥野菜に使っている玉ねぎだと、メロンくらいの糖度があります。こうした背景やこだわりを伝えたいのですが、最初から消費者に伝えようと思っても、なかなか興味を持ってもらえません。

そのため、まずは「乾燥野菜って何だろう」「パッケージが可愛い」とか何でもいいのでOYAOYAを知ってもらい、その後に生産者のストーリーを伝えていけたらと思います。

 

:一般的なPOPUPでも商品のストーリーを伝えますが、全ては伝えきれないので、継続的にブランドとつながってもらえるよう、LINEやメルマガの告知をします。来店してくれた方の1~2人でもいいので、自分が使うスキンケアブランドの背景にあるストーリーを知りたいとか、心になじむ商品を使いたいと思っている方と出会えると嬉しいです。

 

タカ:これまで商品やその背景などについてお話していただきました。最後に、お互いの商品に対するアイデアがあればぜひ教えてください。

 

平戸:OYAOYAのWebサイトを見たら、いろんな出汁スープのレシピが載っていて。無限にレシピが作れるので面白いですし、私たちのみかんともコラボできそうだと思いました。

 

小島:オランジェットは人生であまり食べた経験がないのですが、商品の画像を見てみて、「カットが大きくて、どんな味なんだろう」とシンプルに興味を持ちました。乾燥した梨を今つくっているので、そこにチョコをかけたらどうなるかも気になりますね。

あと、化粧品についてはこれまで何を買えばいいのか分からず適当に買っていたのですが、今回の対談をきっかけに美容に目覚めても面白そうだな。事業的な文脈でいくと、乾燥たまねぎをつくる際に、皮から色がでるのでリップクリームの試作をしたのですが、衛生的に難しかったんです。野菜の皮を使った化粧品をつくれると面白そうだなと思っています。

 

:食べ物って暮らしの身近にあるので、裏側を知ったときにそれをイメージしながら食べられるのが良いなと、今回の対談を通してあらためて感じました。自分自身は化粧品ブランドを展開していて、みかんの廃棄する皮とか、乾燥した野菜のエキスを抽出する技術を持っているので、お二人とコラボができたら化粧品の可能性も高まりそうです。

 

タカ:今回の「食と暮らし」というテーマの中でも、領域を超えた連携が生まれるのを楽しみにしております。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!

 

OYAOYA:https://oyaoya-kyoto.com/
daidai(Twitter):https://twitter.com/daidaiorangette
rosa rugosa:https://rosa-rugosa.jp/

 

【インクルージョン×将来世代を紡ぐ起業家feat.taliki ~明日へつながる、やさしい暮らし~】

場所:有楽町マルイ 1F カレンダリウム
期間:9月10日(土)~9月16日(金)
営業時間:11:00~20:00
※最終日のみ19:00閉店

 

さまざまな社会課題解決に取り組む企業6社が期間限定POPUPを開催いたします。起業家たちが紡ぐ「未来のスタンダード」を、商品を通してのぞいてみませんか?ぜひこの期間に、有楽町マルイへお立ち寄りください!

 

詳しくはこちら:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003012.000003860.html

 

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    writer

    庄司智昭

    編集者・ライター。用事があるとき以外は家に引きこもり、映画・読書・ゲームに時間を費やす。

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