社会起業家を育てることで、社会課題が生まれても解決される仕組みを作る。

2017年に創業してから、多くの社会起業家に伴走してきた株式会社taliki。より多くの社会起業家を支援、その事業成長にコミットするために、ともに働く仲間を探している。代表の中村多伽に、社会起業家を育てるとはどういうことなのか、これから目指したいこと、チームの魅力などについて聞いた。

【プロフィール】中村 多伽(なかむら たか)
2017年に京都で起業家を支援する仕組みを作るため、talikiを立ち上げる。創業当時から実施している、U30の社会課題を解決する事業の立ち上げ支援を行うプログラム提供にとどまらず、現在は上場企業のオープンイノベーション案件や、地域の金融機関やベンチャーキャピタルと連携して起業家に対する出資のサポートも行なっている。

社会起業家を育てるということ

—現在の事業概要について教えてください。

「命を落とす人、死ぬより辛い人の絶対数を減らす仕組みを作る」というビジョンのもと、社会課題を解決する人の数を増やしたり応援したりする事業を行なっています。

社会課題というものは、人の営みの中で生まれるものなので、人がいる限りなくなることはありません。しかし現状、社会課題によって困っている人が辛い状況から抜け出せなかったり、もっと辛い状況に追い込まれていたりという状況があります。このように社会の理不尽によって辛い状況にある人をできるだけ減らしたいと思っていて、そのためには、社会課題を解決する事業が増えて社会にナレッジが溜まり、社会課題が生まれても解決される仕組みが必要です。社会課題を解決する事業と言っても、行政サービスや非営利団体の活動などさまざまですが、私たちは特にビジネスでの社会課題解決を支援したいと思っています。なぜなら、ビジネスで課題解決に取り組むことによって、いろんな人やお金など、より多くのリソースを巻き込むことができるからです。例えば途上国の開発援助では、非営利的な活動でのお金の流れが年間2,000億円なのに対し、ビジネス領域での活動は3.7兆円にものぼるという話もあります*。したがって、社会課題解決にいかにビジネスという看板を付けられるようにするか、ということが私たちが挑戦していくべき課題だと考えています。

*「The business benefits of doing good」Wendy Woods, TED https://www.ted.com/talks/wendy_woods_the_business_benefits_of_doing_good

 

—ビジネスでの社会課題解決をどのように支援しているのですか?

主に4つの事業があり、フェーズによってさまざまな支援を提供しています。

まず、事業の立ち上げ段階において起業家さんに伴走するインキュベーション事業があります。ビジネスで社会課題解決をしたい方と一緒に、課題の整理、解決策の検討、顧客検証を通じたビジネスモデルやマネタイズ方法の検討などをしていきます。基本的に私たちだけでなく先輩起業家、投資家、専門家の方からアドバイスをもらう機会も設けている他、起業家同士の集合知や家族のようなコミュニティが形成されることが特徴です。2017年の創業時からこれまでに、190事業以上の立ち上げに伴走してきました。例えば、セクシュアリティ診断サービスのanone,は、アルファ版の構想から正式版のリリースまで携わり、十数万人に利用されるサービスになりました。また、2019年のプロジェクト参加者である工藤くんが立ち上げたブイクックはファンドの1号出資案件になりました。このように泥臭く数ヶ月間、起業家さんと一緒に事業の立ち上げを進めるのがインキュベーション事業です。

次に、事業がある程度大きくなってきた起業家さんの、グロースのサポートとして、大手企業との連携を進めるオープンイノベーション事業や、投資を行なうファンド事業があります。大手企業との連携では、これまでに、丸井グループさんの店舗をお借りしてサステナブルなブランドの方にポップアップをしていただいたり、島津製作所さんに社会起業家さんをおつなぎして新規事業開発のサポートをしたりしました。また、神姫バスというバス会社さんのCVC運営サポートや、新規事業開発のための人材育成のサポートも行なっています。そして、ファンド事業では、主にシード期の起業家さんに対して投資を行ない、資金の提供に加えてナレッジやコネクションを提供しています。2021年3月からこれまでに、11社の投資が完了しています。現在の出資先の事業領域は、食、気候変動、障害福祉、途上国、地域などです。

最後に、メディア事業では、事業のフェーズを限定せず、さまざまな事業領域の起業家の方に取材をしています。これまで150人ほどの起業家さんに取材してきました。メディア事業を通して、起業家さんの販路拡大・認知度向上に貢献すること、talikiが支援できる起業家さんにより多く出会うことを目指しています。また、社会課題解決と経済合理性の両立や事業の持続可能性の担保などに関するナレッジはまだまだ未開拓な領域です。そこで、取材を通して起業家の方々にお話を伺い、社内にナレッジを蓄積して、次の起業家の育成に活用させていただいたり、取材した方々同士のナレッジシェア、業務提携にも活用させていただいています。

 

—4つの事業のシナジーはどのように生まれているのでしょうか?

例えば、丸井グループさんとのポップアップにはメディアで取材した起業家さんに出店していただきました。取材した起業家さんがtalikiのインキュベーションプログラムなどにゲスト講師やメンターとして来てくださることもあります。他にも、インキュベーションプログラムの参加者がファンドの投資対象になった例や、ファンドで出資している起業家さんがインキュベーションプログラムで起業家の卵にナレッジを提供してくださる例もあります。具体的なシナジーの例はたくさんありますが、起業家さんとtalikiの間で、お金のやりとりを介さない相互のリソース交換がたくさん起きていることが印象的だなと思います。

私たちの事業の特徴は、事業の立ち上げに伴走する、育てるということだと思います。実際、社会課題解決を目的とせず売り上げ利益のみを追求するならば、ファンドのみを運営し、一定成長してきた起業家だけに賭けるのが、成功する確率も利益率も高くなります。その背景には、「たくさんのプレイヤーに投資して1社でも成功したら良い」というような多産多死の考え方があり、一般的な投資家の中では基本的な考え方です。しかし、日本は少子高齢化でマーケットサイズやプレイヤー候補の絶対数が縮小していくこと、経済成長によって解決されない社会課題が増えていることを考えると、プレイヤー全員が生き残って課題解決に取り組み続けられる状態を作る方が、長期的な目線で見ると合理的なのではないでしょうか。だから私たちは、まずプレイヤーの絶対数を増やす、そして成長確度にコミットするということをやっているわけです。これを仕組み化する上で、talikiが持っているリソースだけで頭打ちにならないようにいろんなプレイヤーを巻き込んでいく必要があり、そのためにメディア、ファンド、オープンイノベーションと組み合わせてインキュベーション事業をやっていくことが重要だと考えています。

 

—起業家を育てる上で意識していることはありますか?

前提として、起業家本人の社会課題に対する深い知識にはtalikiが敵うことはないし、頑張れる、人を集められる、などのような人間性も起業家の方が元から持っているものなので、私たちがそこに対して何かしているわけではないです。ただ、起業するって本当に暗中模索、五里霧中なので、先輩起業家が直近で経験して得た生きた知恵を、これから挑戦する起業家さんに渡したいと思っています。その知恵がなかったがゆえに必要以上に傷ついたりリソースを消費したりすることがないようにする、ということが育てる上での私たちの役割です。

もう1つ、育てることは成長のサポートですが、成長とセットで存在肯定が必要だと思っています。例えば、売り上げが伸びていて成長している間は順調なのに、売り上げが下がった瞬間に口座からお金がなくなって事業がなくなってしまう、創業者の給料をゼロにして自分の生活も成り立たなくなってしまうなど、多くの起業家は成長の停滞にぶつかることがあると思います。もし「成長しなければ終わり」というような考えを持っていたら、そのような状況に陥ったとき、バッターボックスに立ちたいという気持ちはあっても立てなかったり、立ちたいという気持ちさえ失われてしまったりします。私自身も起業家であり、成功も失敗も経験したからこそ、起業家のためのセーフティーネットを作りたいと思うんです。起業家自身の存在価値や事業をやりたいという想いを肯定しつつ、彼らが本当に落ち込んだときにサポートできるような存在になりたいです。

COM-PJ(起業家支援プログラム)参加者

 

—業界全体として育てることにコミットしているプレイヤーが少ないと伺いました。起業家を育てることの難しさはどんなところにあると思いますか?

最もわかりやすいのは、儲からないということですね。社会課題も起業家自身も多種多様なために型に当てはめられるものがほぼなく、本当に成長にコミットしようとすれば、個別最適になり、労働集約型にならざるを得ません。そして、丁寧に寄り添うためにはサポートする側の社会課題や起業への解像度が高くないといけないので、適切なサポートを提供するのも難しい。あと、結果がすぐには出ないということも難しいポイントです。例えばtalikiファンド出資第1号のブイクックは、代表の工藤くんがプログラムに参加してくれてから出資するまでに1年半ほど経過しています。ここから投資案件として成功するのに10年弱かかるとすると、あしかけ12年ほどのプロジェクトになるわけです。一般的な会社の意思決定であれば、そこまで予算を使って待てないというのが当然だと思います。

 

—上記のような難しさがある中で、talikiが育てることをやり続けるために工夫していることはありますか?

まず基盤として、事業ポートフォリオを複数持つことです。インキュベーションに加えて、メディア、ファンドなども運営することで、talikiへのお金の入り口が複数になります。加えて、事業シナジーが生まれることで各事業の単体の機能よりも価値が上がります。

その上で工夫しているのは、育てることの価値を理解してもらうということです。一般的に育てる際に目標とされるのは、育った後にいくらになるのか?というファイナンシャルリターンです。そうではなくて、例えば、社内事業開発で大きな事業を作るというところよりも、社内でアントレプレナーシップを持った社員が増えるところに重きを置く。起業家支援では何人の起業家を輩出したかよりも、社会課題に取り組む若者がこの場所に集まってくること自体がブランド力を高めるということを説明する。育てることそのものには、将来的なファイナンシャルリターン以外に、関係資本が築けるという価値があることを理解してもらうように工夫しています。

 

所属関係なく、目指したい世界

—これまでtalikiをやってきて印象的だったことはありますか?

本当にいろんな関係者の方と素敵な関係を築かせていただいているなと感じる瞬間がたくさんあります。例えば、投資検討で来てくださる起業家さんが「まずはtalikiさんに入ってほしい」と言ってくださったり、投資先の起業家さんも近所のお兄ちゃん、お姉ちゃんのような感覚で接してくれたりします。起業家さん以外にもいろんなセクターの方々と関わるのですが、よく思い出すのが2018年に開催したtalikiの1周年パーティーです。talikiのメンバーでも直接的なお客さんでもない人たちがたくさんtalikiの1周年をお祝いしに来てくれて、「talikiが集めた人っていうだけですごく心地がよかった」と言ってもらえたのが嬉しかったです。他にも、毎年開催しているBEYOND*という大規模イベントでは、起業家、行政、民間企業、一般消費者などtalikiが関わる全ての人たちが一同に介します。BEYONDに来た方全員が、「安心した」、「勇気をもらえた」、「明日から頑張ろうと思った」の3つを言ってくれるんです。BEYONDは、「みんなも社会を良くしたいと思っていて、それぞれの場所で頑張っているんだ」という安心感と、「周りの人たちに負けないように、明日からまた頑張らないと」という勇気の両方をもらうことができる場になっています。

このように所属関係なく多様な方と素敵な関係を築かせていただいているのは、talikiが目指している世界がいろんな人にとっても同じように目指したい世界だからだと思うんです。私たちの想いが、直接的なステークホルダーだけでなく、社会に少しずつ広がっていって、応援したいとか実現されてほしいと思う人が健全な形で集っているのは素敵なことだなと感じます。

*BEYOND:社会課題解決に取り組むプレイヤーを支援する株式会社taliki主催のソーシャルイベント。これまで過去4回開催し、のべ1000人以上を動員。今回は「SDGs」をテーマに、多様なバックグラウンドの人と集まり、次の未来についてともに考えて行く場として京都リサーチパークにて開催。

2021年開催 BEYOND

 

—今後の事業展開として考えていることを教えてください。

まだまだリーチできていない社会起業家がたくさんいるので、直線的な成長は必要です。ファンド規模、インキュベーションで育てる人数、メディアで出会う起業家の数など、全部の数字を伸ばしていく必要があるというのが直近の課題になります。

もっと規模を拡大していくことを考えると、今とは違う戦い方をする必要が出てくるとも思っています。例えば、ファンドのお金の出し手に対しての説明責任として、実際の成果を詳細に研究するような研究機関であったり、起業家の事業を成功させるために行政ともしっかり連携したりということが必要になってきます。

加えて、社会課題を解決したいとすでに思っている人だけではなく、一般消費者や民間企業の内部で働いている人、行政職員などをどう巻き込むかもちゃんと考えたいんですよね。社会課題解決関連の専門家ではない方々との接点を増やすためにも、一般消費者向けのサービスも展開したいと思っています。

 

上記のイシューに一緒に取り組みたい方はこちら→https://fifth-cycle-64e.notion.site/taliki-d86df965a87d4418a9069f1287d22c8e

 

talikiで働く人たち

—現在はどのようなメンバーがいますか?

2022年5月の時点で、社員が4人、取締役が私1人、インターンが4人います。ファンドは社員が2人、インキュベーションは社員とインターンが2人ずつ、メディアは社員1人、インターン2人で運営しています。

メンバーはみんな、考えることを諦めない人たちだなと思います。仕事の課題も社会の課題も、みんな繊細だから1つ1つの課題に傷つきやすいんだけど、そこで距離を置いてしまうのではなく、どうしてそうなったんだろう、もっと良くするにはどうしたらいいんだろうということを考え続けられるんですよね。また、みんな本質的で、表層的な名声などには興味がない人たちだなとも思います。だからこそ、接する全てのステークホルダーの方に対してリスペクトがあるし、肩書きよりも自分が本当にできることは何かということにすごく向き合っている人たちです。総じて、みんななんだかんだ人が好きで、目の前の人の幸せを願えるのも特徴です。

あと、みんなシュールでシニカルな面白さを持っています(笑)。毎日Slackではみんなで楽しく雑談しています(以下、一例)。

 

—チームとしては、どんな特徴があると思いますか?

知的生産性と心理的安全性が同時に満たせるようなチームだと思います。具体的な取り組みとしては、毎月good&moreとして、良いところ改善すべきところの両方をメンバー同士でフィードバックしあっています。また、毎週の全社ミーティングの中で、みんなが最近組織について課題に感じていることを問題提起したり、うまくいった取り組みを事業部間でシェアしたり、ビジネスや社会課題に対する解像度を上げるためのナレッジシェアをしたりもしています。他にも、事業部ごとに、毎週各メンバーが領域を1つ決めてリサーチして発表したり、インキュベーションをどうやったら仕組み化できるのかを研究したりしています。

全社ミーティングの様子(なぜか海から参加する社員)

 

—今後、チームとしてどのように成長していきたいですか?

全員が帰ってこれる場所でありつつ、それぞれが別の強みを持ってお互いを補完・強化して成長できるような組織を目指して、これからもっと加速していきたいです。メンバー全員が何かしらのプロフェッショナルである、もしくはなれる場所にしたいなと思っていて。ゼロからでもtalikiにきたらある領域の専門家になれるとか、どこでも戦える武器を身につけられる場所を目指したいし、なりつつあると感じます。

 

—どんな人と一緒に働きたいですか?

talikiが社会起業家を応援する姿勢って、“推し活”に似ていると思うんです。この起業家に勝ってほしい、この人が成功した世界が見たいという想いで、起業家さんを応援しています。だから、”推し”のために頑張れるみたいな人は向いているし、ぜひ一緒に働きたいなと思いますね。

あと、ビジネスが得意という人にぜひ来てほしいなと思います。社会課題解決と資本主義の土俵は戦い方が非常に異なるので、資本主義の土俵におけるビジネスが得意な人ほど、社会課題解決領域では成功体験を得づらいと思います。でも、だからこそ挑戦してほしいんです。

その理由としてはまず、社会課題解決は業界として、がっつりビジネスセクターの人が入ってくる事例がまだまだ少ないのでもっと増えていくべきだということ。そして、talikiとしては応援している起業家の方を資本主義の土俵で勝たせるというのもミッションです。彼らなら社会的インパクトは絶対に生むと信じているので、同時にそれを資本主義の土俵で証明することにより、多くのリソースを巻き込むことができます。だから、応援している起業家さんたちを勝たせるためにも、資本主義の土俵で強い人にぜひ来ていただきたいです。

 

talikiで一緒に働きたい方はこちら
https://fifth-cycle-64e.notion.site/taliki-d86df965a87d4418a9069f1287d22c8e

 

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interviewer & writer

堂前ひいな

心理学を勉強する大学院生。好きなものは音楽とタイ料理と犬。実は創業時からtalikiにいる。