自然とのつながりを感じられる健康茶。環境・経済・幸せの循環する社会を目指して
インタビュー

自然とのつながりを感じられる健康茶。環境・経済・幸せの循環する社会を目指して

2022-05-17
#地域・まちづくり #食 #環境 #カルチャー #ものづくり #エコシステム

「地球からのおすそわけ」をコンセプトに、健康茶の製造・販売を手がける株式会社Perma Future。健康茶ブランド『EARTH MIND』のお茶は全て、エコビレッジと呼ばれる、暮らしの中の「農」を追求するコミュニティで生産されたものである。代表取締役の池田航介は農業の課題について考える中でエコビレッジに出会い、エコビレッジの考え方や価値観を広めようとこのプロジェクトを立ち上げた。生産やブランディングにおけるこだわり、事業を通じて実現したいエコフードシステムなどについて聞いた。

【プロフィール】池田 航介(いけだ こうすけ)
株式会社Perma Future代表取締役。明治大学在学中に起業し、現在は北海道大学環境科学院に在学中。子ども食堂の運営や、全国の農家・エコビレッジを巡る旅を通じて、農や環境分野の知見を高めてきた。2021年から、現在の健康茶事業に取り組む。

 

健康茶を通して、エコビレッジの価値観やライフスタイルを広める

—株式会社Perma Futureの、現在の事業について教えてください。

健康茶ブランド「EARTH MIND」で、健康茶というプロダクトの製造と販売を通じて、エコビレッジのライフスタイルを広めようと取り組んでいます。2020年の6月に、法人化する前のPerma Futureが立ち上がったのですが、きっかけは僕が農学部で農業について学びたいと考え、色々な農家さんとやりとりをする中で、自然と共生した暮らしを基盤においた共同体、エコビレッジに出会ったことでした。

エコビレッジというのは、生業として売り上げを立てて利益を得るためではなく、自分たちの食べる分・使う分を自給自足するように地域での暮らしの手段として農業を追求しているコミュニティのことです。エコビレッジのことを知ってその魅力に惹かれて、初めは4泊5日の教育プログラムを始めました。学生をエコビレッジに連れて行って濃密な時間を過ごせる『地球散歩』というオフラインプログラムと、オンラインでエコビレッジの暮らしについて学ぶ『バーチャルエコビレッジ』の2つを軸に、エコビレッジの暮らしについて広めていこうと考えていました。プログラム内容には自信があったのですが、半年で10人前後にしか届かないことに気づきました。そこで2021年の4月くらいからは、もっと広くエコビレッジの価値観やライフスタイルについて広められるよう、健康茶のプロジェクトを立ち上げて取り組んできました。

 

EARTH MINDはどんなブランドですか?

「地球からのおすそわけ」をコンセプトにした健康茶ブランドで、生産から発送までエコビレッジで完結しているのが特徴です。一般的な健康茶は海外から多くの葉を輸入して作られるものが多いですが、EARTH MINDは使用している7種類の葉は全てエコビレッジの土地に根付いたものを使用しており、また使用しているティーバッグもコンポストに捨てることが可能です。加えて、農薬や化学肥料は一切使っておらず、人間の身体や自然にできる限り負担をかけないように生産されているところも特徴です。そのようにして作られたお茶を飲んでもらうことで、少しでも地球視点を持ってもらったり、地球との身近なつながりを感じてもらったりできるようにブランドを作っています。

また環境や健康にも配慮する一方で、美味しさにもこだわっていて、何度も試飲を重ねて改良することで飲みやすい健康茶になるように仕上げています。一般的な健康茶には苦いイメージがあって、実際に癖の強いものも多いんですよね。それが好きな人もいるんですが、EARTH MINDの健康茶は飲みやすいものになるようにしています。

 

現在の商品展開を教えてください。

『福み茶』と『女神茶』の2種類を作って販売しています。『福み茶』はほうじ茶ベースで飲みやすく、万人受けもしやすい健康茶です。クワの葉やクマザサ、ビタミン豊富なシモンの葉っぱなどをブレンドしています。ちょっと疲れた時などに飲んで、疲れを癒してほしいお茶です。『女神茶』はローゼルの葉っぱを使っていて、これは杉の約7倍の二酸化炭素を吸収する、地球に優しい葉っぱと言われているものです。また他にもビワの葉っぱやハスの葉っぱが入っていて、ビタミン以外にも色々な栄養が豊富な、美容や美肌に気を使っている人に飲んでほしいお茶です。

 

開発や生産の過程でも、環境にいいものにこだわりたい

エコビレッジで全て完結するように商品を作られているとのことですが、エコビレッジに住んでいる方と、Perma Futureのメンバーとの役割分担はどのようになっていますか?

基本的に生産は全てPerma Futureを手伝ってくれているエコビレッジの住民の方にお任せして、僕たちメンバーがそれを広げるという形です。先ほどお話しした通り、発送もエコビレッジから行います。エコビレッジから別のどこかに送って、パッケージして発送するというような形にすると、二度手間ですし、輸送する際に排気ガスなどで環境負荷を生み出すことになってしまいますよね。

 

品開発や生産において、今後の課題はどんなところでしょうか?

こだわりきれていないところとしては、まだパッケージの中にプラスチックを使っているところですね。本当は環境にいいものを使いたいんですが、今のロット数では難しいんです。ティーバックに関してはマイクロプラスチックが出ないようなティーバックになっており、今後販売を増やしていく際には、こういった細かいところにもこだわっていきたいと思っています。

 

お茶を通じて、人や自然との「つながり」を感じてもらえるように

ここまでお聞きしてきたような、会社としての根底の思いを消費者の方に伝えていくために、ブランドコミュニケーション全体で工夫されている点を教えてください。

先日EC販売をスタートしたところで、まさにこれから販売をしていくところではあるのですが、商品を作っている人や自然との「つながり」を感じてもらえるようにというところは意識しています。消費者がどんな時につながりを感じるかと考えると、手づくり感や温もりが伝わったり、ちょっとしたメッセージが入っているのを見たりした時なんじゃないかと思うんです。なので、クラウドファンディングのリターンをお送りするときは、エコビレッジの人たちの思いをメッセージで伝えるようにして、ちょっとしたつながりが感じられるように意識しました。

またパッケージのデザインからも、自然を感じてもらえるようにこだわっています。女神茶は朝焼け、福み茶は夕焼けをイメージしたデザインにしました。色味をグラデーションにしたのは、常に移り変わって、ずっと同じものはないという自然の性質を表しています。また自然のものって角が立っていなくて、丸みを帯びているイメージがあるので、丸みを帯びた筒型のパッケージで販売しています。

 

実際にクラウドファンディングなどで商品を購入された方からは、どんな声がありますか?

クラウドファンディングでは、元々20代後半から30代くらいの健康意識が高い方をターゲットにしていたのですが、実際は僕個人を応援しているので支援した、という方が多かったですね。元のターゲットにどれくらいアプローチできているのかは、今後検証していく必要があると思っています。

クラウドファンディング以外では、今までにポップアップを2回開催しました。1回は渋谷スクランブルスクエアの15階にあるSHIBUYA QWS(渋谷キューズ)という場所で1週間、もう1回は渋谷のヴィーガン弁当店の前で5日間の開催でした。クラウドファンディングでは僕の思いやメッセージを見て支援してくれた方が多かったのに対して、対面の販売ではデザインの可愛さや味がより重要ということが分かりました。「対面で飲んでみて美味しかったからクラウドファンディングで支援した」という人もいらっしゃいましたね。

 

今後はECメインで販売されていくのでしょうか?

色々なチャネルを試してみようとは思っていますが、最初はECで販売をしつつ、卸売の提携先を増やしていこうと思っています。ヴィーガンカフェやエシカル系のお店に卸していくイメージですね。当面はECと卸の2方向がメインになっていくと思います。

 

実家の家業とのドッキングで、フードシステム全般を変える

ホームページにも掲げられている、「環境・経済・幸せが循環する社会の実現」という目標について、込められている想いを教えてください。

エコビレッジに初めて行った時に僕が感じたのが、「この人たちは何故こんなにも幸せそうなんだろう」ということだったんです。社会的にはそんなにお金があるわけではないけれど、自給自足をして色々な人たちとのつながりを持ちながら、幸せそうに暮らしているのはとてもいい空間だなと思いました。

 

一方で、この空間を現代社会に応用していくにはどうしたらいいのかというのが、僕にとっての課題になりました。エコビレッジだけでは経済は回りません。経済合理性という要素もちゃんと追求した上で、エコビレッジの要素を社会に応用していくことが、僕のやりたいことだと思ったんです。それで環境と経済、幸せという3つの要素を追求することになりました。

事業における具体的な話をすると、会社として成長するためにはある程度ロット数を増やして、売り切れないくらいの量を生産する必要が出てきますよね。でも従来のような大量生産・大量消費のやり方を僕たちがやってしまっては本末転倒です。どこまで会社として成長を目指すのかを考えないといけないと思っていますし、ゆくゆくは社会全体の消費に対する考え方自体を変えていく必要もあると思っています。

 

事業を通じてこの目標を達成していくために、どのようなロードマップを描いていますか?

僕たちは食の分野でこの目標にアプローチしていこうと思っています。僕たちの10年後のビジョンとして、「エコフードシステムを作る」というものを掲げています。食の生産、供給システムをより環境に良いものにしていきたい。そのためにまず、直近2〜3年はEARTH MINDで環境にいい食品ブランドの展開を広げていきます。5年くらい後に、僕の父親がやっている食品の卸売会社とドッキングすることで、フードシステム上流から下流の一連の流れを押さえたいと思っています。生産者は、より環境に良いものを想いが伝わる形で社会に広げることができて、消費者は生産者や自然とのつながりを感じた上で購入できるように、フードシステム全般を変えていければと考えています。

 

家業と自身の会社をドッキングさせるというアイデアが生まれた経緯を教えてください。

僕は元々実家の会社の8代目として生まれて、父親も始めから僕が会社を継ぐものだと思っていたんです。初めのうちは「なんで継がないといけないんだ」と反発していました。でも母親が早くに亡くなって、父親が僕のことをすごく心配して気をかけてくれたことで考えが変わってきました。父親に対して恩返しがしたいという気持ちが生まれたんです。それで会社を継ごうという考えから、大学で農業を学ぼうと思って、明治大学の農学部に入りました。

いざ農業を学んでみると、環境に悪いところも多く、課題だらけだということが分かってきました。僕が会社を継いだら、これからの農業をどういう業界にしていったらいいのか、あれこれ考えているうちにエコビレッジに出会ったんです。それでPerma Futureが生まれました。

 

健康茶から、人や自然とのつながりを感じられる空間を広げていく

今後の商品展開や、事業の展望について教えてください。

直近2〜3年は、先ほどお話ししたエコフードシステムを作るためや、家業を継ぐための準備期間だと思っています。まずはEARTH MINDを横展開していきます。健康茶の次の商品については試行錯誤中で、健康茶シリーズも商品数を増やしていきたいですね。マーケティングにも力を入れていきます。具体的には、エシカルやヴィーガンがコンセプトのカフェや小売店を対象に卸の営業をかけていこうと考えています。やはり一度飲んでもらうという体験を持ってもらうことが大事で、カフェなどで出していただき、その美味しさを味わってもらったうえで店頭でもサイトでも購入していただけたらと考えています。

またこれから僕自身は大学院に進学して、エコフードシステムについて研究するつもりです。実践寄りの研究ができる大学院で、研究室の人たちも僕の活動を応援してくれています。家業とのドッキングでエコフードシステムを作りたいという構想はあるものの、具体的に今のフードシステムのどの部分がどれくらい環境に負担をかけているのかという定量化や、それをどう解決していくかという方策についてはまだまだ詰められていないと思っています。なので、EARTH MINDに接続できるような研究をやっていけたらと考えています。それで今後の方針を固めたり、環境系のブランディングにも繋げられたらいいですね。

 

最後に、事業を通して実現したい社会について教えてください。

Perma Futureでは「環境・経済・幸せが循環する社会の実現」を引き続き目指していきます。またEARTH MINDとしては、人や自然とのつながりを身近に感じられる空間を広げていきたいです。お茶の美味しさから入ってもらって、エコビレッジの人や身近な自然とのつながりを感じてもらいたい。健康茶だけではまだまだ足りないですが、まずは種を蒔く期間だと思って少しずつ広げていきたいです。

株式会社Perma Future https://permafuture2050.wixsite.com/official

EARTH MIND 公式ECサイト https://earthmindofficial.com/

 

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    interviewer

    細川ひかり

    生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。

     

    writer

    掛川悠矢

    記事を書いて社会起業家を応援したい大学生。サウナにハマっていて、将来は自宅にサウナを置きたいと思っている。

     

     

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