”ともにつくる”で人と人の繋がりを豊かに。DIT(Do it together)空間づくりワークショップ

みんなで一緒に空間をつくることで関係性を繋ぎたい。そんな想いで『空間づくりワークショップ』を実施しているのが、KUMIKI PROJECT株式会社だ。2018年にはワークショップのインストラクターを育成するために一般社団法人KILTAを立ち上げ、日本全国にワークショップを展開している。代表のくわばらゆうきに、ワークショップのこだわりや今後の展望、社会課題解決への想いを聞いた。

【プロフィール】くわばら ゆうき
KUMIKI PROJECT株式会社 代表取締役。一般社団法人KILTA代表理事。東日本大震災をきっかけに、岩手県陸前高田市で起業。現在は、全国各地で『DIT』(Do it together)をコンセプトに、個人宅・オフィス・お店などをみんなでつくる「空間づくりワークショップ」を実施している。国産材を主な素材に家具・内装キットを開発するほか、2018年1月には一般財団法人KILTAを設立。だれでも空き時間を活かして働けるようワークショップのインストラクター育成講座と拠点づくりを推進している。

東北で見た、「ともにつくる」で繋がる関係性

—現在の事業概要を教えてください。

KUMIKI PROJECT株式会社は、『DIT』(Do it together)をコンセプトに、参加型リノベーションワークショップを全国各地で企画・運営している会社です。僕たちの特徴として、依頼者の方ご自身に手を動かしてリノベーションをしてもらうことがあげられます。その際、その空間にまつわる人たちにも空間づくりに参加してもらうことで、依頼者の方と参加者の方の関係性を繋ぐサポートをしています。

 

—どのような経緯で起業されたのですか?

起業する前は、ソーシャルビジネスの開発やソーシャルマーケティングを行うコンサルティング会社に勤務していました。その時に2011年の東北大震災があったんですね。ソーシャルビジネスに取り組む会社としても、今一番向き合うべき社会課題は東北の復興だということで、東北に行ってソーシャルビジネスを立ち上げることで復興支援をすることが決まりました。それで僕が岩手県陸前高田市で新たに生まれたまちづくり会社に出向になったんです。そのまま陸前高田市にて、2013年にKUMIKI PROJECTを設立しました。

2013年当時、陸前高田市では町の集会所が津波で流されてしまっていました。そこで、集会所を町のみんなで一緒につくったら、町の復興が一歩前に進んだと思えるのではないかと考えて、集会所をつくるワークショップを開催したんです。この活動が今の事業のきっかけとなりました。その後、紆余曲折を経て、2016年より本格的に『空間づくりワークショップ』事業を開始しました。

 

—2015年にETIC.が主催する『社会起業家塾』に参加されたと伺いました。どのような経緯があったのでしょうか?

2013年に陸前高田市で集会所を1棟つくった後に、2014年に宮城県石巻市で2棟目をつくりました。しかし、その頃には行政の機能がだいぶ回復して、集会所やコミュニティセンターは行政が再建していけるようになっていました。それで、自分たちはこれからなんのために、何をやっていくんだろう、ということがわからなくなってしまって。さらに、集会所をつくるのは利益をたくさん取るような事業ではないので、当時はほぼ補助金に依存している状態でした。改めて自分たちの存在意義や目指したい理想を見つめ直す必要があると思い、社会起業家塾に参加しました。社会起業家塾では、メンターの方に「なんのためにやるのか?」をひたすら問い続けてもらいましたね。僕は最初、「日本の森を守りたい」とか、「製材所を元気にしたい」とか言ってたんですけど、メンターの方に「言っていることが嘘くさい」と言われてしまって(笑)。悩む中で思い出したのが、東北で集会所をつくった時に、”ともにつくる”という作業を通して、地域の中の人と外の人が繋がっていったり、変わらない町の中でストレスを感じてぶつかりあっていた人たちが仲良くなっていったり、”ともにつくる”ことで人と人が繋がっていく光景でした。この光景がとても印象的で、日本全国で同じような光景を見たいということは、唯一自分の本心から言えたんです。この想いは今でも変わらずに持ち続けています。

陸前高田市での集会所づくりの様子

 

共感で集まる、空間づくりワークショップ

—空間づくりワークショップの流れを教えてください。

まず、依頼者の方と空間デザインをしていきます。私たちが最初に依頼者の方に聞くのが、「この空間ができた時に、誰がどんなふうに過ごしていたら幸せですか?」ということです。依頼者の方の描く理想の空間の在り方をもとに、空間コンセプト、レイアウト、空間トーン、使用する素材や商品、どこをプロに任せどこをワークショップでやるか、などを決めていきます。次に、進行管理です。依頼者の方の想いを取材して、どんな空間を誰とつくりたいのか、なぜみんなでつくりたいのかなどを、募集原稿に落とし込みます。募集原稿はKUMIKI PROJECTのHPで見ていただけます。そして、一緒に作ってくれる人を集めて、ワークショップを実施するという流れです。

 

—具体的に、どのような空間を誰と一緒につくっているのでしょうか?

いくつかプロジェクトの例をお話します。

1つ目は、箱根町とのプロジェクトです。箱根町は、移住したい人が一定期間地域に住むことができる、お試し移住プログラムを実施しています。このプログラムの一環で、すでに箱根町に移住した人とこれから移住したい人が一緒に古い空き家を改修するというワークショップを実施しました。このワークショップを通して、先輩移住者とこれから移住したい人の繋がりをつくることができました。

2つ目は、京都の亀岡にあるらくだ薬局さんのプロジェクトです。薬局は病院のそばにあるのが一般的ですが、おじいちゃんおばあちゃんにとっては、そこまで時間をかけて行って待合室で待って薬をもらって帰ってくる、というのは一苦労ですよね。そう思った依頼者の廣瀬さんは、商店街の空いているスペースに薬局をつくりたいと考えたんです。それで、将来この薬局に来てほしい地域の方たちに声をかけて、みんなで一緒にらくだ薬局をつくりました。

3つ目は、非営利型株式株式会社Polaris(ポラリス)さんとのプロジェクトです。ポラリスさんは、会員制のシェアードワークプレイス「co-ba CHOFU」というコワーキングスペースの運営をされています。このサービスはスタッフや会員さんとの関係が大切になります。なので、会員さんと一緒に改修することで、関係性を繋ぎ合わせることを目指しました。

DITワークショップの様子

 

—依頼者の方の想いを実現するだけではなく、そもそもの空間のあり方から一緒に考えていくというケースもあるのでしょうか?

個人の依頼者の方は自分がつくりたい空間が決まっていて依頼してくださることが多いですが、自治体からの依頼は目的から一緒に決めていくことも多いです。空いている家や空いている施設があるから活用したいが、どう活用するかは決まっていないというような依頼ですね。このような依頼に対して僕らがよく使うのは、『ロジックモデル』という手法です。まずはその空間を通じて誰がどうなったら幸せなのかをみんなで考え、そのためには空間がどうなったらいいのか、空間以外がどうなったらいいのかなどを思い描き、具体的な空間コンセプトに落とし込んでいきます。目指す成果から手段を設計していくイメージです。例えば、行政の方に「この町で一体どんな光景が生まれたら、プロジェクトをやってよかったと思えますか?」というような問いかけをします。「町の人みんなが笑顔になってほしい」というような大きな願いが出てきたとしたら、「じゃあ町の人みんなが笑顔になるために、その手前で実現しないといけないことは何ですか?」と問いかける。このように理想の成果から手段までの道筋を順番に整理していきます。対話の過程で空間づくりではない手段をとる必要が出てきたら、僕たちではなく他の団体と連携してもらうこともありますね。

 

—ワークショップに参加される方とのコミュニケーションで意識されていることはありますか?

まず、依頼者の方の想いを参加者の方に丁寧に伝えることを、募集段階から意識しています。依頼者の想いに共感した方に集まっていただきたいので、依頼者と参加者の共感の接点をどうつくるかを意識して募集原稿を書いていますね。あとは、ワークショップの中で依頼者の方が自分の想いを話す時間、参加者の方がどうして手伝おうと思ったのかなど、お互いの想いを話す時間をしっかりと入れることを意識しています。

実はこのDITワークショップ、職人さんにお願いしたり工事ががっつり入ったりするわけではないので、依頼者の方にとって経済的なメリットも少しあるんですよね。だけど、依頼者の方が参加してくれる方を自分の夢のための労働力だと思った瞬間に、関係を繋ぐということは非常に難しくなります。「DIYだから安くできる」、「集まった人に作業を体験させてあげる」という、人を手段として活用する目線になってしまっては元も子もない。だから僕らは、なぜやりたいのか、なぜ僕らに相談をくれたのかを依頼者の方と話して、みんなとつくることで愛される場所にしたいという目的が明確にある方とだけお仕事をするようにしています。この想いが伝わって、多くの方が、「何か一緒にやれたらいいなと思います」とか、「自分が役に立てることありませんか?」というように、ワークショップ終了後もその空間に関わり続けたいと思ってくださっているようです。

 

—ワークショップ終了後にも、KUMIKI PROJECTができあがった空間と関係性を持つことはあるのでしょうか?

現状、ワークショップ終了後にも関係性を持つことはありません。正直そこまで考えられていなかったんですよね。だけど、僕たちのワークショップでつくったお店がいくつかコロナ禍で潰れてしまったんです。それで、僕らはともにつくることで関係性を豊かにしたいと思ってワークショップをやっているのに、簡単に潰れてしまうのであれば、コミュニティに対してなにかしらのアプローチがもっと必要なんじゃないかと議論になりました今後どのように介入していくことができるか、現在検討しているところです。

DITワークショップの様子

 

日本全国により早くより大きく広げるために

—2018年に一般社団法人KILTAを設立されたんですよね。KILTAの事業についても教えてください。

一般社団法人KILTAは、KUMIKI PROJECTがやっているワークショップのノウハウを全国各地の想いを共有できる事業者にお伝えしたり、ワークショップで活躍するインストラクターを育てるための財団です。現在は全国10拠点で、シェア工房の運営やインストラクターの育成を実施しています。各KILTA拠点は独立採算制になっていて、それぞれKILTAやKUMIKI PROJECTと別の運営会社が運営を担っています。例えば、不動産運営の会社や、地方創生の会社、建設会社などです。そして、ワークショップのノウハウやインストラクター育成プログラムを拠点に無償でパスする形で、拠点を支援するのが財団本部になります。

 

—どのような経緯でKILTAを設立されたのですか?

KUMIKI PROJECTをやる中で、どうやったらより早く、より大きなインパクトを出せるかを考えたんです。それで、KUMIKI PROJECTという会社が大きくなって社員をどんどん増やしていくよりも、もともと全国各地でリノベーションや建築の仕事をやっている人にKUMIKI PROJECTが積み上げてきたノウハウをパスして、そのネットワークを全国に広げていく方が、より早くインパクトを最大化できると思いました。実際に全国各地には、例えば地域材を地域で広げるためにKUMIKI PROJECTのようなワークショップをやりたい、と思っている木材会社さんや建築会社さんなどがいるんですね。でも自分たちだけではどうしたらいいかわからないという悩みを持っていらっしゃるので、KILTAの拠点を立ち上げてネットワークに参加してもらう。そうすると、こちらからのノウハウ共有に加え拠点同士でノウハウ共有などもできて、全国で空間づくりワークショップができる人が増えていくという仕組みです。また、拠点から加盟料は取っていません。KILTAのネットワークが広がるとDIYできる人が増えるじゃないですか。それが事業にプラスに働くような企業、例えば塗料メーカーさんなどから協賛をいただいています。その協賛金を使ってプログラムを開発して、拠点には無償でパスする、という形で事業が回っています。

KUMIKI PROJECTはノウハウを各KILTA拠点に引き継ぐことで、インパクトを最大化しながらも消滅の方向に向かっている組織なんです。

 

—拠点同士はどのような関わりを持っているんですか?

全国の拠点は2種類に分かれています。まずは運営の基盤をつくっていくフェーズの拠点と、すでに最低限の人数のインストラクターはいて案件を少しずつ獲得し始めている、成長支援のフェーズに入っている拠点です。月1回それぞれのフェーズごとに拠点同士の会議を実施しています。同じフェーズだからこそ、「これをやったらこんな結果が出たよ」というのを共有したり、「ここは課題だよね」という共通の課題を見つけてアプローチ方法をみんなで考えたり。拠点同士でも成長を促進しあえるようなコミュニケーションの場を設計しています。

 

—ノウハウを各拠点に伝える中で、難しいことはどのようなことでしょうか?また、どのように乗り越えられていますか?

1番難しいのは人材育成です。DITワークショップを実施するためには、空間デザインを考え、ワークショップとして大人数で進めるプランニングを練る力や、それらを伝えるライティングやSNSを活用した発信力、知識や技術のインストラクションなど、求められるスキルは多岐にわたります。1人でこのスキルを全て持っているというケースはほぼないですよね。よって、僕たちはまず、最小のチームを作ることで、これらの幅広く求められるスキルをチームでカバーすることを目指します。全体をプロデュースする人、空間のプランニングをする人、ライティングや発信をする人、ワークショップで当日にインストラクションをする人。1つ1つのスキルを持っていて、かつ想いに共感してくれる人を最初に集めます。その後は、DITインストラクション講座やDITプランニング講座といった、KUMIKIがやってきた仕事を分解し、標準化し、誰でもできるようにノウハウを整理して共有するオンラインを中心とした講座を受講いただきます。そして、講座を受講いただいた後、いきなり実案件を仕切るのはハードルが高いため、『共創学舎』というプログラムを用意しています。このプログラムは、空間を改装したい依頼者とインストラクターが一緒に、その改装事態を講座化し、DIYに関心のある一般生活者に安価に受講いただけるというものです。依頼者は仕事を発注する人ではなく、講座を一緒につくる仲間となるので、DITインストラクターにとっても安心してワークショップのデビューができるわけです。

KILTA横浜

 

ソーシャルインパクトを可視化する

—今後の事業展開を教えてください。

新しく力を入れているのは、monosashi(モノサシ)という新規事業です。これまでわたしたちの事業を表す際に語ってきた、”ともにつくる”ことで人と人が繋がるということは言葉としては綺麗なのですが、人と人が繋がったら何がどう良いのかが可視化できていないことが課題だと感じてきました。だからこそ、社会的な価値をちゃんと見えるようにしたいという想いでつくり始めたのが、このmonosashi(モノサシ)という事業です。今年、別法人を設立予定です。

社会的な価値を追求している組織は、自分たちの事業によってどれだけ社会的価値が増えたのかを可視化したり発信したりする必要があると思っています。例えば、貧困を解決したいというビジョンがあったとして、ビジョン達成のためにはどのような打ち手が効果的かを考えます。その打ち手を実行して結果を測定します。その結果、貧困の解決に寄与できていないとしたら打ち手を変えますよね。このようなマネジメントサイクルをぐるぐる回していくことで、本当にビジョンを達成に近づいていかないと組織の真の成果は果たせないと思うんです。しかし現状、このサイクルを回すために、一般的なビジネスの世界では売り上げを可視化、管理するツールはたくさんありますが、社会的価値を可視化して管理するツールはほとんどありません。これを可能にするソーシャルインパクトのマネジメントツールが現在開発中のmonosashi(モノサシ)です。

5月にはプロトタイプができるので、いくつかの団体に使ってもらおうと思っています。基本的には、ソーシャルな活動をしている団体に使っていただきたいのですが、最終的には自治体にも使ってもらいたいと考えています。日本の自治体は、税金は減っているのに社会保障費は増えていて、さらに社会課題は複雑化・多様化しているというような状況の中で、政策を考えることを求められています。より効果的な政策が生まれるためには、どこにどのようなアプローチをしたらどんな効果が出るのかという、成果と手段の設計図がもっと必要だと思うんです。だから、monosashi(モノサシ)をより多くのソーシャルな活動をしている団体に使ってもらって、試行錯誤した設計図が溜まっていくことで、行政の方はそれを参考に政策を実行したり、どの団体を支援すると課題解決が進むかを判断したりということが可能になるわけです。

monosashi(モノサシ)が広がることでより多くの社会課題がより早くより効果的に解決されることを目指しながら、まずは、自社で関係性を豊かにするということを測定し、発信していきたいと思っています。

 

KUMIKI PROJECT株式会社 https://kumiki.in/
一般社団法人KILTA https://kilta.jp/

 

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interviewer

梅田郁美

和を以って貴しと爲し忤ふこと無きを宗と爲す。
猫になりたい。

 

writer

堂前ひいな

幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。