志を持って社会に価値を提供したい。学生としてのソーシャルビジネス挑戦と葛藤

起業以外でソーシャルビジネスに関わるヒントをお届けする2人目社員インタビュー。今回は、学生でありながら社会課題とビジネスの両立に関心を持ち、さまざまな活動を行っている山本祐己。「自分の志を見つけたい」という想いから社会課題への挑戦を始めた。これまでの活動の裏にあった想いや、学生のソーシャルビジネスへの関わりなどについて聞いた。

【プロフィール】山本 祐己(やまもと ゆうき)

1998年生まれ、大阪在住のソフトウェアエンジニア。大学時代にNPO法人アイセック・ジャパンへの入会をきっかけに社会課題に興味を持ち、セクシュアリティ分析サービス『anone,』やヴィーガンのためのレシピサイト『ブイクック』でリードエンジニアを担当。同団体脱退後、株式会社LITALICOでのインターンシップや、発達障害のあるクリエイターを集めたWeb制作事業を行う。現在はAI会社で機械学習エンジニアとして働きながら、再びブイクックでエンジニアを担当している。

 

志を見つけるために入ったNPO

ーもともとはNPO法人アイセック・ジャパン(以下アイセック)にいらしたんですよね。入会したきっかけを教えてください。

アイセックとは、カナダに本部を置く海外インターンシップや海外ボランティアの運営を主幹事業とする世界最大級の学生団体です。新歓にある社会人の方が講演に来ていて、「人生志が大切だ」という熱い内容に衝撃を受けたのが入会のきっかけでした。僕も志を持って社会に価値を提供する人生を送りたいと思ったのですが、当時は志がなかったので見つけるためにアイセックに入りました。

 

ーどのような経緯で社会課題に関心を持つようになったのですか?

当時はアイセックが掲げていた世界平和という理念に沿って活動していました。主な活動内容である海外ボランティアなどを行ううちに関心が強まっていったと思います。

また、アイセックで参加したソーシャルビジネスプロジェクトの影響も大きかったですね。プロジェクトの中で、利益を上げながら社会貢献するというCSVの考え方を知って、非常に感銘を受けました。ビジネスと社会課題の両立に興味を持つようになったきっかけにもなりました。

 

ーアイセックで社会起業に挑戦する人はいましたか?

同期だけでも2人いました。1人は昆虫食の会社をやっていて、もう1人は元タリプロ生(talikiが運営する社会起業家支援プログラムの参加者)でNPO向けのコミュニティを作っていました。2人とも社会課題に対してちゃんと行動していて、とても尊敬しています。

あと社会課題ではないですが、自分の志を起業という形で体現している先輩を見て、起業やスタートアップに対して憧れを持つようになりました。

 

ー経営学部に所属されていますが、プログラミングに取り組むようになった理由を教えてください。

アイセックでWebマーケティングに携わって、自分でランディングページを作ったのがきっかけです。HTMLやCSSにも触れるようになり、楽しかったので独学で勉強を続けていました。

あと、起業したいとずっと思っていたので、起業家コミュニティやスタートアップのイベントによく参加していました。当時はブロックチェーンや暗号通貨が盛り上がっていた時期で、エンジニアとして活躍されている起業家の方と出会うことが多く、その方々に近づくために継続して学んでいました。

 

力を発揮したいと思った、発達障害という領域

ー発達障害のあるクリエイターを集めたデザイン事務所凸凹ギルドを立ち上げた経緯を教えてください。

僕自身、発達障害を持つ親族がいますが、そこまで発達障害に強い関心はありませんでした。しかし、友人に紹介されて参加した『ハッタツソン』という発達障害をテーマにしたプログラムがきっかけで関心を持つようになりました。

ハッタツソンには発達障害を持つ方も多く参加されていて、親族以外の当事者のお話をたくさん聞けました。発達障害でもいろいろな特性の人がいるんだという学びを得られてとても面白かったです。障害というとできないことが多い印象を持っていましたが、自分の得意を活かして活躍されている方もいて、ただ得意不得意の差が大きいだけなんだという印象に変わりました。

自分がエンジニアとして力を発揮して、発達障害がある方の感性を引き出したいと思い、2020年に凸凹ギルドを立ち上げました。

 

ー凸凹ギルドでは具体的にどのようなお仕事を受けていたのですか?

ブイクックの記事で使うサムネイルや、知り合いの会社のホームページやランディングページなどを作っていました。あと、talikiの名刺も凸凹ギルドで作りました。主に紹介で仕事をもらうことが多かったですね。

talikiの名刺

 

ー発達障害の方は集中力が高い人も多いイメージですが、そういった特性をお持ちの方もいたのでしょうか?

集中力が高い人、テキストコミュニケーションがいい人、納期は絶対遅れない人などいろいろな人がいましたが、マネジメントの仕方さえ気をつければその人の強みを最大限引き出せると思ってやっていました。とにかく障害というイメージで一括りにするのはやめて、1人1人と一緒に仕事をすることを大事にしていましたね。

現在は、凸凹ギルドは解散していますが、今でも交流がある人もいます。今は逆に、彼らが取ってきた仕事に誘ってもらうこともあり、いい関係を続けられています。

 

ただ受注するのではなく、プロダクトの上位部分も理解する

ー 2018年に、talikiファンドの投資先であるブイクックでも活動されていましたね。当初は代表の工藤さんからどんなところに期待されていたと思いますか?

工藤くんはアイセックで知り合った後輩で、彼が『ブイクック』というヴィーガンレシピサイトのアイディアを持っている時にたまたま再会したんです。僕の社会貢献がしたいという想いに共感してくれて、サイト開発を頼まれました。勉強中ではありましたが、プログラミングの実践機会としてやってみようと思い引き受けました。

期待されていたところは、僕も起業を考えていてビジネスサイドにも理解があるので、やりたいことのすり合わせが上手いところですかね。例えば、作りたいものをディテールまで一緒に決めていくとそれだけで時間がかかってしまいます。一方、ブイクックではある程度ふわっとしたオーダーでも自分なりにこういうことかなと咀嚼して作っていたので、そういうのが喜ばれたと思います。

具体的には、「実装する上で、あらゆるページや機能の中でどこが特に重要なのかを考え、優先度の高いところにリソースを配分できる」であったり、「UIデザインの仕様通りだと実装工数がかかりすぎる場合に、UIデザインの背景にある目的を考え、それを満たすような代替案を提案できる」といったことです。

ただの発注・受注関係ではなく、そういったプロダクトの上位部分も話した上で作れていたのは良かったです。

 

ー工藤さんの想いを形にしていくために、コミュニケーションで工夫していたことはありますか?

開発に本腰を入れたくて、工藤くんが当時住んでいたシェアハウスに1ヶ月居候させてもらったことがあります。一部の機能ができたら見せて、「レスポンスが遅い」などのフィードバックを都度もらっていました。逆に工藤くんが作った資料や記事を僕に見せてくれることもあり、お互い成果物を見せ合いっこしていました。その時期は1日中コミュニケーションを取っていましたね。

あと、コミュニケーション面ではありませんが、当時はプログラミングスキルが充分ではなかったので、工藤くんの想いを形にできるように勉強したり調べたりしながら開発していました。

 

ーブイクックから1度離れて、現在は再びジョインされていますね。今後はどのようなことを実現していきたいですか?

僕のエンジニアスキルはブイクックとともに成長したと思っていますが、当時は自分の至らなさを痛感することが多かったです。だから当時よりも力がついた今の自分で、開発初期にやり残したことや、新しい開発にも取り組んでいきたいです。

 

ー『ブイクック』の他にもセクシュアリティ分析サービス『anone,』の開発にも携わられていましたが、仕事を受ける際に大事にしていることを教えてください。

サービス立ち上げ段階では、先ほどお伝えした上位理解の部分を大事にしています。あとは、ITリテラシーが高くない人にも寄り添うことであったり、理念について伺うことも大事にしています。理念については、仕事と直接関係はなくても、自分の理念と共感ができたり、クライアントの理念と近い人を紹介して縁を作れるのが大きいと思います。

工藤さんと

 

学生としての社会課題への関わり

ー学生としてソーシャルビジネスに関わってよかったこと、大変だったことを教えてください。

学生のうちは良くも悪くも現実をあまり知らないところもあるので、ある意味どこまでも理想を高く掲げられると思うんですよね。例えば、今やっている活動で食べていけなくても学生のうちであれば続けられるじゃないですか。いきなりソーシャルビジネスで食べていこうとすると選択肢が限られてしまうので、学生のうちに自分の世界観や関心を突き詰められたのはとても良かったです。

大変だったことは、憧れだけで大義名分を掲げた結果、等身大の自分とかけ離れて苦しくなってしまったことです。学生で視野が狭く経験値もなかったので、憧れの人になろうとしていた時期がありました。でも社会課題は難易度も高いですし、誰かを傷つけてしまわないように広い視野、いろいろな視点で活動しなければいけません。ただでさえ難しいのに、誰かへの憧れだけでは等身大の自分から乖離していって、「なんでこんな苦しい思いしてやってるんだろう」と思うようになりました。

 

ーソーシャルビジネスに関心があるけど、何から始めればいいか迷っている学生の読者に向けて、最初の一歩を踏み出すためのアドバイスをお願いします。

すでに活動している人に接触したり、その活動に参加したりするのがいいと思います。自分で社会課題を探すところから始めようと思うとけっこう難しいですよね。すでにある活動に入っていろいろな人やものに触れて、そこで感じたことを言語化しながらより自分が関心ある領域を探したり、自分でやってみたりすればいいと思います

 

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interviewer

掛川悠矢

記事を書いて社会起業家を応援したい大学生。サウナにハマっていて、将来は自宅にサウナを置きたいと思っている。

 

writer

張沙英

餃子と抹茶大好き人間。気づけばけっこうな音量で歌ってる。3人の甥っ子をこよなく愛する叔母ばか。