世の中のロスをゼロに。誰もが笑顔になれるエシカル消費とは

日本の食品ロスは年間600万トン(平成30年度時点)。この数字は、日本国民1人ひとりがお茶碗1杯のご飯を毎日捨てていることと同じである。家庭や外食レストランといった消費の現場だけでなく、製造加工の現場や流通過程でも食品ロスは発生している。その内訳は、家庭が約45%、食品関連事業者が約55%である。そのような中、ロスゼロは、世界にあふれる「もったいない」に光をあて、つくる人も食べる人もみんなが笑顔になれるエシカルな消費スタイルを創造している。

【プロフィール】文 美月(ぶん みつき)
1970年奈良市出身。同志社大学経済学部を卒業後、日本生命に同志社大学第一号の総合職として入社、融資に関わる。留学・結婚・出産を経て2001年に自宅のPC1台でヘアアクセサリーECサイトを開始、DtoCで450万点超を販売。2010年よりヘアアアクセのリユースで10か国に4万点を寄贈販売し、職業支援を行う。もったいないものを活かす経験から食品廃棄問題に着目。2018年食品ロス削減事業『ロスゼロ』開始。ECでのシェアリング、未利用材料のアップサイクルDtoC、大手企業や自治体との連携を進める。2020年農林水産省後援「食品産業もったいない大賞」特別賞を受賞。著書『悩みと向き合える女性は、うまくいく』(KADOKAWA

ロスゼロの立ち上げについて

現在の事業について教えてください。

事業の主軸はインターネット通販サイト、ロスゼロです。食品製造・加工メーカーから余剰品や企画外品を引き取って販売しています。買い取る場合もあれば、メーカーからお客様に直送してもらってプラットフォーム手数料をいただく場合もあります。これまでメーカーは廃棄するにもコストを払っていたのですが、私たちが関わることで、想いを込めて作った商品を消費者に食べてもらえるだけでなく、余分な費用を削減できるようになりました。また、未利用のまま残ってしまった材料で、新しい価値をつけた食品をDtoCで消費者にお届けしています。
ロスゼロは環境への負荷を減らすことを目指し、さらには収益の一部で社会課題解決への寄付や食品の寄贈も行っています。

 

ー売り上げの一部を寄付しているのですか?

日本だけでなく、世界に貢献できる事業活動を行いたいという想いから、ロスゼロの売り上げの一部をカンボジアの子供たちへの教育支援や自立支援のために寄付しています(2020年からはストップし、国内の子ども食堂支援に切り替えています)。なぜカンボジアに送っているかというと、これはロスゼロが始まったきっかけにも関係してるんです。以前、私は発展途上国の子どもたちに支援をする活動をしていました。そのような中で、以前からお付き合いのあったチョコレート会社の社長さんから、何か活動を支援できないかと声をかけていただきました。ちょうどカンボジアの学校にトイレを作るためのクラウドファンディングをする予定だったので、寄付してくれた人へのお礼に、チョコレートの規格外品を使わせていただくことにしました。結果、このクラウドファンディングが大成功で、カンボジアの支援ができたばかりか、本来なら捨てられるはずだった食品が誰かにおいしく食べてもらうことができたのです。そのようなことがあり、このモデルをビジネス化すれば食品メーカーにもユーザーにも自社にも無理のない、社会貢献にもなると思ったんです。

 

食品メーカーなどが抱えている食ロスの課題について教えてください。

日本には独特の3分の1ルール*というものがあり、製造・卸・小売にそれぞれ納品期限を設けているために各段階で在庫を抱えやすく、販路を失ったまま賞味期限が近づいたものがそのまま食品ロスに直結しています。また消費者は規格が揃っているもの・美しいものを選ぶ傾向にあるため、多少のキズ、型崩れ、割れた食材などは規格外となってしまうのです。加えて、食品事業者は「納品数が足りないという理由で商機を逃したくない」「陳列棚に食品が足りないより、たくさん積まれたほうが見栄えがいい」と考える傾向があり、需要予測にズレが出ないように季節などの不確定要素を鑑みつつ各事業者は努力しているものの、やはり多少のズレはなくなりません。

*3分の1ルール・・・お菓子などの加工食品は、賞味期限までの期間の3分の1が過ぎる前に、小売店に納品しなければならないというもの。 例えば、賞味期限が6か月先なら、2か月以内に納品できなかったものは、全てごみとして廃棄されることになります。

 

みんなを笑顔にするロスゼロ食品

どのような商品があるのですか?

例えば、ロスゼロのオリジナルチョコレート『Re:You』があります。日本国内にはチョコレートになれずに廃棄されてしまう原材料が多くあるんです。ナッツやドライフルーツなど、多種多様な具材もロスになってしまっています。そこで私たちは、商社やメーカーなど未利用の製菓材料を買い取り、コンセプトから何度も試作品を繰り返してこのオリジナル商品を開発しました。いわゆるアップサイクル(新しい付加価値をつけて生まれ変わらせた)食品です。

高品質なチョコレートのみを使用し、余った具材が毎回変わってもいいようなデザインに仕上げています。複数のチョコレートブランドの会社さんにご協力いただき、「低価格でありながら美味しい」を実現しました。地元関西の大学生も商品開発や情報発信に加わっており、積極的に意見を出してくれます。Z世代である彼らが、食品ロスや環境に対して高い関心を持っていると感じます。Re:Youチョコレートは新しいメディア露出や大手企業とのコラボの機会をもたらしました。現在は異なる価格帯の商品開発や販売チャネルの開拓を進めています。

オリジナルチョコレート『Re:You』

 

ーユーザーの声はどのようなものがありますか?

「美味しいものを食べたい」「ブランド食品をお得に楽しんでみたい」という顧客ニーズに、ロスゼロは価格面・品質面で応えています。また、ロスゼロではしっかりと生産者の思いやストーリーを共有しているので、その点がユーザーからも選ばれている秘訣なのではないかと思います。また、ロスゼロの食品を買うことは社会貢献にも繋がるので、美味しく食べられるのだけではないのが最も評価を得ているところです。リピーター率は77%と非常に高く、共感してくださるお客様が多いと感じています。

2020年に入ってからは新型コロナウイルス感染症拡大の影響でメーカーからの問い合わせが増え、観光客に人気の京都のお菓子や、高級ホテルや大使館で使われるはずだったソーセージなどコロナ禍で行き場をなくした商品がサイトに並びました。新型コロナの影響による食品ロスがテレビなどで報道され、この問題に対する関心が高まったこともあり、ユーザー数も増えています。取扱量は前年度比9倍になりました。

 

起業してから一度も自社でロスを出したことがない

ー『ロスゼロ』で売れ残ったものはどうしているのでしょうか?

ロスゼロでロスが出たら本末転倒です。事業開始から3年経ちましたが廃棄は1つもしていないです。売れ残りアラートが出たらまずは包括提携協定先の自治体と協力し、子ども食堂などに提供してもらいます。自分たちで直接寄贈すると、公平性が保てなくなるのであえて自治体を通しています。また、ロスゼロでは時々お得な「ロスゼロボックス」をお客様に販売しています。賞味期限の近いものを集めるのですが何が入っているか分からないので、お客さんのなかにはそれが楽しみだと言われる方もいます。ロスをポジティブに捉える販売方法です。

 

同じような食ロスECもいくつか出てきたと思いますが、ロスゼロならではの強みはありますか?

提供する菓子については、ロスゼロのサイトで作り手の思いやなぜロス予備軍になったのかということを記載し、買ってもらう方にもしっかりと理解してもらうことを大切にしています。

“既製品のたたき売り”といったような、メーカーのブランドイメージを損なう心配もありません。ロスゼロでは割引き率の高さを売りにするのではなく、もったいないものに新しい価値を見出して食べ手につなぐところに重きをおいています。私は20年近くECに関わってきましたが、安売り合戦の激化は何も生み出さない他社の競争をよく目にしてきました。ロスゼロではしっかりと商品と向き合い仕入れ先企業のブランドを下げないようにしています。だからこそ企業からの信用が厚く、ECサイトでは販売しない企業さんでも「ロスゼロさんなら信頼できる」と言っていただき提供いただいています。また、ロスゼロの商品を買ってくださったお客さんにアレンジレシピをお聞きして、それを私たちのサイトで紹介しています。お客さんに売ったら終わりではなくて、しっかりと美味しく食べてもらうようにこのような工夫も行っており、たくさんの「美味しかった」の声をいただいてます。

 

今後の展望と目指す社会について

ー最後に、目指す社会について教えてください。

食べ物は人を笑顔にするものなので、「廃棄されるから食べてください」って強制はしたくありません。みんなが笑顔で美味しく食べ物を食べ切る習慣がつけば社会は良くなっていくので、そのサイクルを作っていきたいと思っています。食品ロス削減は一社で解決できるものではなく、NPO、大学、自治体や企業を巻き込み、解決へと共に目指していくことが大事です。

そして今すぐではありませんが将来的には社会のいろいろなロスをゼロにしていきたいと思っています。事業名をフードロスゼロとしなかったのも、例えばアパレルだったり、いろいろなものへと拡張性を持たせたいという思いがあるからです。そして、私自身が子どもを育てながら働いてきたので、女性やマイノリティーと呼ばれる人の能力が十分に発揮されていない現状をよく知っています。女性の能力も日本では非常にもったいない。ある意味ロスがあると思っています。女性の活躍推進にも積極的に関わりたいと思います。

 

ロスゼロ https://www.losszero.jp
株式会社ビューティフルスマイル https://beautifulsmile.co.jp/

 

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interviewer

堂前ひいな

幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。

 

writer

馬場健

アートが好きな九州男児です。人の心に寄り添った取材をこころざし、日々勉強中。