廃ガラス×お花のプロダクトを制作。ニッチトップを目指すブランド戦略とは

おしゃれな雑貨・インテリアとして人気を集めるハコミドリのプロダクト。制作しているのは、滋賀県にUターンし起業した周防苑子だ。琵琶湖湖岸に構える店舗も地域内外の人から人気を集めている。競合とは違う人をターゲットにしたというマーケティングの工夫や、メディアに取り上げられるための戦略について伺った。

【プロフィール】周防 苑子(すおう そのこ)
生花市や山々で採取した草花と廃ガラスを掛けあわせたプロダクトを制作・販売するハコミドリの代表兼プロデューサー。学生時代を京都、会社員時代を東京で過ごし、2014年に地元である滋賀県に帰郷した。同年11月にハコミドリを設立。2016年春からは同県彦根湖畔にアトリエ『VOID A PART』を構え、現在はカフェと併設してプロダクトの販売などを行っている。

草花の魅力と廃ガラス活用を組み合わせたプロダクト

ー周防さんが手がけているプロダクトはどんなものですか?

建具から取り外したガラスや、規格に合わなかったガラスとお花を組み合わせた雑貨のような、インテリアのようなものを作っています。最近は”廃ガラスの活用”という文脈に賛同してくださった業者の方が、カラーガラスを寄付してくださるようにもなりました。

三角形のものがベーシックな形で、サイズ展開もしています。値段はサイズが大きくなるにつれて高くなっていく設定です。地震などで倒れるのが心配だというお客様のお声もあり、最近は少し太さのあるものも作っています。あとはカラーガラスを使い押し花を貼って絵のように楽しんでもらえるものや、一輪挿しのものなど、壁にかけるタイプのものもあります。私自身が実用的なものを作りたいという想いが強いので、一部がミラーになっていて壁かけのコンパクトのようなイメージでお使いいただけるものや、照明器具として楽しんでいただけるものも制作しています。結婚式のお写真とブーケのお花を使ったオーダーメイドのご注文を受けるなど、作品の種類は多岐に渡ります。あとは作家の方とコラボして一緒に作品を作ったり、ホテルの客室にアートピースを納品したり、映画の小道具を制作したりしています。

 

ー店舗についても教えてください。

滋賀県彦根市の琵琶湖沿いに『VOID A PART』という店舗を構えています。今年の2月から『きみと珈琲』さんというカフェの事業者さんが新たに入ってくれており、カフェと販売スペース、そしてアトリエを併設した形になっています。お店自体は5年目で、もともとあった本棚のコーナーやソファ席に加えて、コーヒー豆の焙煎機や丸卓テーブルが新たに設置されました。今月号の『SAVVY』という雑誌でも、うちが表紙を飾らせていただいています。

 

そして、こっち側が私のギャラリースペースと作業場です。カフェスペースとの区切りになる建具を置いています。ここに作品を並べていて、こちら側にはドライフラワーを天井から吊ってあったり、奥に廃ガラスを置いてあったりします。

カフェ側

 

ーどのような経緯でハコミドリを始められたのでしょうか?

私、実家が生花店を営んでいるんです。でも全然おしゃれで斬新とかではなくて、仏花などがメインの田舎のお花屋さんというような感じのお店です。なので学生時代はお花が好きどころか、どちらかといえば嫌いでした。親の職業に反発する時期ってあるじゃないですか。そんな感じで(笑)。でも、「私は絶対に田舎の花屋なんかにならないから」と反発したまま出て行った先の東京で、お花の魅力を感じることになったんです。当時PRのお仕事をしていたのですが、撮影でお花を使用したり、新進気鋭のフラワーアーティストさんに出会ったりして、それまでの自分の価値観が大きく覆ったんです。これまで気づかなかったけれど、花びらや葉っぱに宿る造形美に惹かれるようになりました。

それと同じころ、ステンドグラスの教室に通う機会がありました。実はハコミドリのガラスの溶接は、ステンドグラスの技法を活用しているんです。ステンドグラスって教会の窓のような美しくて壮大なものをイメージする方が多いと思うのですが、その教室ではステンドグラスの概念を覆すようなコンテンポラリーな作品を作っていました。滋賀には別の理由で戻ってきたのですが、「何か作りたいな」となったときにお花とステンドグラスを組み合わせれば、他にないニッチトップを目指せるプロダクトになるんじゃないかなと思ったのがきっかけでした。

 

ーそこから廃ガラスに出会ったのですね。

遠い親戚がガラス工場を営んでいて、久しぶりに遊びに行ったときに廃ガラスに出会いました。2トンも入るものすごく大きなごみ箱の中に、まだ使えそうな綺麗なガラスがたくさん捨てられていて。でも話を聞くと、規格に合わないもので毎日大量に発生するし、処理をするのにもお金がかかっていると言うんです。であれば、捨てられてしまうガラスを使えないかということで、作品に使用するようになりました。

アトリエ側

 

 

ニッチトップを目指したターゲティング

ーお客さんにはどんな方が多いですか?

プロダクトは、全国の本当にいろいろな方が買ってくださいます。オンラインでは都市部の方がやや多いかなという印象はありますが、ありがたいことに性別や年齢に関係なくいろんな方が見てくれています。直接私から購入したいということで、わざわざ県外から店舗まで足を運んでくださる方もいますね。店舗には、地元の方が来てくださることが多いです。土日は県外からのお客様もいらっしゃいますが、平日はほとんど滋賀ナンバーの車が停まっていますね。というのも今年から店舗に入居してくださった『きみと珈琲』さんが、地元でチラシを配ってみたり、仕事がある方のために夜までお店を開けてくれたりしているので、その効果が大きいと思います。コロナ禍で、県外からのお客様は減っていますが、地元の方と県外の方がいい感じのグラデーションというか、いろんなお客様に楽しんでいただける場所になっているかなと思います。

 

ーブランドのコンセプトはどのように作っていったのでしょう?

ハコミドリでは一貫してペルソナを男性に置いてきました。大手の企業さんにはどうしても勝てないだろうなと思ったときに、だったらニッチトップを獲るしかないと思ったんです。大手のお花屋さんって、女性をターゲットにしているところがほとんどなんですね。じゃあ私は男性を狙っていこうとなりました。というのも、情報感度の高い男性に話題にしてもらえれば、その彼女さんや友人を通じて自ずと女性にも広がっていくだろうという想定があったんです。なので、プロダクトデザインだけでなく、サイトやブランドカードも白黒で無骨さやシャビー感を出すことを徹底しました。それが上手くハマったという印象です。私のお客さんは他のブランドさんと比べると男性の方が多くて、先日渋谷ヒカリエで行った催事でも、会場のスタッフさんにびっくりされました(笑)。と同時に、男性を集めるブランドさんが多くないので、「普段のうちの客層と違う」と言って催事会場さんにも喜ばれるんです。こうしてどんどん次に繋がるようになっています。自分自身も刈り上げショートに古着などボーイッシュなスタイリングやライフスタイルを好んで生きてきたので、メンズライクなブランディングが無理なくできて、それが好評なのはすごくラッキーだったなとは思いますね。

渋谷ヒカリエでの催事の様子

 

男性ってインフルエンサーがSNSにアップしてくれたりすると、そのファンの子がどんどん取り入れてくれるという印象があります。たまたま『MEN’S NON-NO』に出ている美容師の方がハコミドリのプロダクトをinstagramに上げてくれたことがあったんです。催事に来てくれていた男の子に「どうやってうちのことを知ってくれたんですか?」と聞くと、その美容師さんの名前を出してくれる子が本当に多くて!私自身、インフルサーマーケティングというと女性向けのコスメやアパレルというイメージが強かったですが、実は男性の方が相性がいいんじゃないかと思うようになりました。

 

ーこういったアート性の高いプロダクトを扱われていると、”作りたいもの”と”売りたいもの”にギャップが生まれることはないのかなと思ったのですが、いかがですか?

それほどないですね。私、あまりアーティスト気質ではなく、商売人気質なんです。だからお客様が欲しがっているものを作る方が嬉しいんですよね。反響があるものだとか、実用的だと喜ばれるものだとか、そういうものを作る方が幸せを感じます。
このような趣旨の発言もよくしますし、ライブ配信でも「どんなの欲しいですか?」とお客様に直接聞いたりしてきているので、アーティスティックなイメージを持たれていた方にはよく驚かれます。

 

ーお客様の声はどのようにして拾われているのでしょうか?

店舗や催事の際にお声がけすることもありますし、instagramのストーリーズやTwitterでアンケートを取ることもあります。あとは、結構お手紙やメールが届くんですけど、その中に「こういう商品が欲しいです」ってご要望が書いてあるようなものもあります。そうやって集めた意見を、作品づくりの参考にしています。

 

ー制作体制や販売方法についても教えてください。

現在は基本的に私1人で制作を行っています。ぶっちゃけた話をすると1人では現場は回っていなくてお問い合わせが捌ききれず、お待ちいただいている状態です。そういった背景もあり、今月求人を出すことになりました。販売は基本的に彦根の店舗とオンラインストアで行っていますが、一部雑貨屋さんなどに卸すこともしています。

ハコミドリのプロジェクトを始めた時から止まることなくご注文をいただいているので、立ち止まる暇もなく気づいたら7年目になっていました。お待ちいただいているみなさんに早く届けるためにたくさん作りたいという想いはあるのですが、大量生産になってしまうとブランドの根幹が変わってしまうなという危惧もあります。自分の作れる範囲でやっていくのか、制作量を増やしていくのかはまさに迷っているところです。
ただ、私としては事業をもっと大きくしていきたいと思っています。というのも、30代の未婚女性で地方で会社の代表をやってるって、日本全体で見るとまだまだマイノリティじゃないですか。今でこそSDGsなどが浸透してきましたけど、事業を始めたころは、廃材を使っているという理由で百貨店への出展を断られるなど、大変な経験もしてきました。今まさにこういう経験をされている方もいるんじゃないでしょうか。私が事業を大きくしていくことで、同じように活動されている方のモデルケースになれるかもしれないし、社会全体に面白い人を増やしていくきっかけにもなるかもしれないと思っています。商工会議所さんをはじめ、多くの方が応援してくださっているので、「ハコミドリのプロダクトが欲しい」と言ってくださっている方にはしっかりとお届けできる仕組みを作り上げていきたいです。

ガラス工場での1枚

 

 

メディアの人の目に付くような発信

ー最近、メディア露出が増えていると伺いました。何かきっかけがあったのでしょうか?

実は私、芸術大学のメディア系の学部を卒業していて、4年間雑誌や学内サイトをつくったりメディアリテラシーを学んだりしていたんです。前職もPR会社勤務だったので、業界のルールもなんとなく染み付いているというか。それもあって、こういうことを発信していれば取材してもらえるようになるだろうなと踏んでいたところがあります。お金をかけて宣伝しなくても、メディアの方から来てくれるだろうという見込みが当たった形ですね。あとはSNSを手を抜かずに更新したり、ブランディングをしっかり行うというような、当たり前のことをちゃんとやり続けることですね。メディアの人も、何を取り上げようかと困っているので、そこに刺さる活動をしていれば、自ずと話がやってきます。1つ取材を受けると、ディレクターさんが他の方に紹介してくれたようで、他の制作会社から取材の申し込みがあるというケースもありました。ものを作る作家で、前に出て喋りたがる子が多くないこともあり、私みたいなタイプは珍しいようで有り難がってくださることも結構ありますね(笑)。

 

ーメディアの方に刺さるキーワードとして、具体的に狙っていたものはありますか?

滋賀に帰ってきた当時は、Uターンや地方創生みたいな文脈が多かったです。最近はSDGsの波がうまくハマっているのかなと思います。廃ガラスを使っていることはプロジェクトを始めた時からずっと言い続けてきました。これは自分が作品を作る上で”免罪符”っぽいところがあったからです。私は材料を買ってアート作品をつくることにちょっと抵抗があって。世界にはご飯や水がなくて、消えてしまう命があるのに、一方でアートにめちゃくちゃお金を使っているという現実が、本当の意味では腹落ちしきっていないんです。”ものづくり”を生業にするにあたって何か”免罪符”が欲しいなと思ったときに出会ったのが廃ガラスでした。

 

ー他の作家さんとのコラボについて詳しく聞かせてください。

ヒカリエの催事でも出品した器のプロダクトは、陶芸家の友人とのコラボ商品です。陶器なんですけどガラスを焼き付けて、ガラス釉薬っていう技法でここに色付けをしている器です。他にも画家の方にガラスの中に絵を描いてもらったものなどを作ったことがあります。私がすごく商売人気質だから、コラボレーションでは作家さんのアーティスティックな要素を分けていただいているような感じがあります。画家さんは私の発想の及ばないような図柄を上げてきてくれるし、陶芸家の子も高校から大学院までずっと陶芸畑でやってきた子で私にない感覚を持っています。なので一緒に作っていて新鮮だし、制作の中で彼らの感覚を分けてもらえるのが楽しいんですよ。「そんなこと考えてやってるのか」みたいな発見が多いから、新鮮な気持ちを保つためにもコラボも積極的にやっています。

コラボ商品『キルンナウト』

 

地域を盛り上げ、世界にも展開

ー今後の展望を教えてください。

彦根の店舗『VOID A PART』が地域を盛り上げていける場所になればいいなと思っています。コロナ禍になる前は、ワークショップや展示をする場としていろいろな方に場所を貸し出すような取り組みも盛んに行っていました。今は難しい状況ですが、コロナが明けたらここでフェスをしようというようなお話も出ています。都会も田舎も関係なく、みんな何か楽しいことを探しているんだなという実感が私の中にあって。場所を持つって、繋がりや空気感、人間味を感じてもらえるってことだと思うんです。コロナ禍を経てそういったものの価値はさらに重視されるようになったと思いますし、ここを起点に地域が盛り上がると嬉しいです。

また、2025年に大阪万博がありますよね。完全に元の世界に戻るかどうかは分かりませんが、その頃にはコロナウイルスも落ち着いて、アフターコロナのイベントとして盛り上がるのではないかと注目しています。ハコミドリとしてはそのころ、つまり4年後までにいくつかの国で海外展開の基盤を固めて、万博のときには逆輸入という形で旗をあげたいです。今その目標に向かって毎日ミーティングや面談を重ねているところです。

ハコミドリ http://hacomidori.com/

 

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interviewer

掛川悠矢

メディア好きの大学生。新聞を3紙購読している。サウナにハマっていて、将来は自宅にサウナを置きたいと思っている。

 

writer

細川ひかり

生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。