’’ミューラルアート’’で人とアートを繋ぐきっかけを。壁画を通して、まちを彩る

WALL SHAREは、空き壁を有効利用したミューラルアート*を通して、企業や行政のプロモーションを行っている。アーティストに対しては活動の場を提供することができる。壁画は海外では広く受け入れられているが、日本では落書きと混同され、まだまだネガティブなイメージもある。そんな中、WALL SHAREはアートに触れるきっかけを提供し、人とアートを繋ぐことを目指している。
*ミューラルアートとは「MURAL = 壁画」から来ており、壁に描くアートのことです。

【プロフィール】川添 孝信(かわぞえ たかのぶ)

株式会社WALL SHARE代表取締役。10代の頃から日本語のラップが好きになったことをきっかけに、ヒップホップカルチャーであるストリートアートに興味を抱く。アーティストへのリスペクトとカルチャーを探求し、社会とアートが繋がるきっかけを創出しようとWALL SHAREを設立。前職では、フォルクスワーゲンにて営業職を担当。全国セールス販売賞を3度受賞。

世界のアート市場のわずか数%に止まる、日本のアート市場

ー現在の事業について教えてください。

WALL SHAREでは、空いている壁を持つ壁主、プロモーションを行いたい企業や行政、そして壁画を描くアーティストの三者をつなげる事業しています。壁主には、壁画という空き壁の有効活用を提案しています。壁がプロモーションに利用された場合、賃料が支払われます。そのため壁主は新たな収入源を獲得でき、売り上げの向上やそれに伴うテナントへの相乗効果が期待されています。プロモーションを行いたい企業や行政にとっては、従来のプロモーションではなく、より人々の心に届く作品を提供しています。従来の屋外広告でありがちな企業からユーザーへの一方的な発信ではなく、”楽しめる広告”を創り『アートと思っていたら広告だった』というような広告がパブリックアートとしても機能しており、まちの雰囲気づくりの一役を担い企業や行政とともにまちを彩っています。アーティストに対しては、ミューラルを描く活躍の場の提供をさせていただいています。壁画というものに対してネガティブな意見もある日本で、WALL SHAREが企業として市場を開拓し、アーティストにスキルを存分に発揮していただきます。多数のアーティストと繋がりがあり、プロジェクトに応じて最良なディレクションを目指しております。

 

ー事業の着想はどこから得られたのでしょうか。

私自身、10代の頃からHIPHOPのカルチャーを趣味として楽しんでいました。そこからグラフィティにも興味を持っていましたが、周りに一緒に楽しめる友達は少なかったです。しかし社会人になった時、友達が海外旅行に行くと壁画の写真をSNSにあげる姿が多く見られました。日本でも壁画がもっと増えれば海外と同じように楽しめる場所や人が増えるんじゃないかと漠然と思いました。ただ日本は美術への関心が低く、7兆6千億円あると言われている世界のアート市場に比べて、日本のアート市場はシェアを数%に留め、市場が小さいです。多くの先進国がアートに対してお金を使う中、日本では美術品を買う人はまだまだ少ない状況です。そんな中でまずは日本人がアートに触れるきっかけを作りたいと思いました。いきなり美術品を買いましょうとは言いませんが、我々の提供する壁画でアートに関心をもち、それをきっかけに美術館にいくなど積極的にアートに触れる人を増やしたいと考えています。

神戸市役所2号館のミューラル art by TITI FREAK

 

実際の作品紹介と込められた思い

ー実際にはどのような作品があるのでしょうか。

1つ目は、大阪市淀川区で行った淀川ウォールプロジェクトです。第一弾では、淀川区をベースにワールドワイドな活躍をしているアーティスト『BAKIBAKI』氏が発起人となり、淀川沿いの壁にナイチンゲールの絵が大きく描かれました。ナイチンゲールは医療の発展のために自身の生涯をかけた人物であり、この壁画にはコロナ禍で懸命に闘う医療従事者の方への敬意と応援の想いが込められています。

 

制作中は地域住民の方から温かい声援をいただきました。毎日声をかけてくださる通勤途中の会社員の方や、子供連れのお母さんなど、本当にたくさんの方から支えていただきました。実際に完成してからもたくさんの方が足を止めて作品を見てくれていて、このように大きな反響もあり、今後も淀川プロジェクトは継続的に行っていこうと考えています。

(淀川プロジェクト art by BAKIBAKI)

 

2つ目は、渋谷の道玄坂にて実施した合同会社Endian社さんとのコラボレーションプロジェクトです。Endian社さんは、「地球と人からストレスをなくす」をビジョンに掲げ、人のリラックスを促すドリンク「CHILL OUT」を販売しています。素敵なビジョンの発信とコロナで落ち込みがちな地域の活性化の両方を目的とし、今回の作品を作成しました。

 

私たちは単なるプロモーションではなく、アートを作ることを重視しています。だからこそ、会社のビジョンや思想がアートにより再現されることを目指しています。実はこの作品は、シャッターの凹凸が激しい上からスプレーで描いているのですが、その凹凸がわからないくらい真っ直ぐな線が引かれています。このようにアーティストの高い技術力によって、アートとしての完成度が高いことも特徴です。

(渋谷プロジェクト art by PHIL,FATE)

 

デザインではなく、ミューラルアートと表す理由

ー企業や行政の伝えたいメッセージとアーティストの方のスタイルや思想をフィットさせるために工夫されていることはありますか。

前提として私たちは、顧客の課題やを全て反映させるスタンスではありません。私たちが提供するものは、アーティストが描くアートであり、いつもリスペクトの気持ちを怠らないようにしています。とはいえ、企業や行政の方の満足が得られなければ無責任だと思っています。だから顧客がユーザーに伝えたいメッセージや世界観などのテーマをディスカッションのうえ設定し、それらをアーティストが解釈をして描く、コラボレーション作品を目指します。

アーティストの経験やスタイルが折り混ざることで、一番カッコいい作品がまちに描かれると考えます。私たちの働きかけによっては作品の出来が変わってくるので、企業や行政とアーティストそれぞれが100%満足する着地点を探すことにこだわっています。

プロモーションを含むアートは、アートではないという意見も一部ではあると思います。しかし、私たちは寄付金や支援を待ち何も行動しないのではなく、広告費というお金の動きを活用しつつ、関わる方々と共に、日本に増えていく行く流れを創りたいと思っています。分かりやすい目標の一つとしては、大阪道頓堀のグリコサインです。グリコのロゴを大きく掲載したものなんですが、あれを広告という人は少ないですよね。逆にまちのシンボルとして、多くの観光客が訪れる場所となっています。いつか自分たちの作ったアートも道頓堀のグリコサインのように多くの興味をひくものになることを目指しています。

 

まちを彩り、心を豊かにするアート

ー今後の事業展開について教えてください。

まずは会社としてIPOに向けて頑張っていきたいと思っています。私たちの活動はすでに様々な企業や行政の方から興味を持っていただいています。

壁主にとっては、空き壁を有効活用するためのプラットフォームの構築を目指していきたいです。まずは、空き壁という未活用の媒体を狙い、収益化に力を入れてきたいと思っています。

最終的な目標は、世界中にアートを届け続けることです。まちにミューラルを増やし、一人でも多くの人にアートに触れるきっかけを提供し、アートが生活の中で当たり前であると思えるような世界を作っていきたいです。今の日本では、アートの必要性を感じている人は多くはないのかもしれません。しかし、神戸市で140人を対象に行ったアンケートでは8割以上の方がミューラルがまちに増えていくことに肯定的でした。このことからもわかるように市場規模では現れていませんが、日本人もアートへの興味はあるのだと思います。日本では日常生活で芸術に触れる機会が少ないですが、きっかけさえ作れば足を止めカメラを向ける人は多くいると考えています。無機質な壁に素敵なアートを描くことでまちの情景を彩り、これからも人々に影響を与えていきたいと考えています。そしてその中でも強い想いとして”子供たちの世代にとってアートを身近にする”というものがあります。子どもの頃からアートが身近にあれば、大人になった時のアートへの考え方はきっとポジティブではないでしょうか。そんな世界を目指して引き続き取り組んでいきます。

(子どもたちにとってアートを身近にart by KAC ONE

 

WALL SHARE HP https://www.wallshare-inc.com

川添さんのTwitter https://twitter.com/tk_wallshare

 

読者アンケートご協力のお願い
いつもtaliki.orgをご愛読くださりありがとうございます。
taliki.orgは、2020年5月のリニューアルから1年を迎えました。
サービスの向上に向けて読者の皆さまへのアンケートを行っております。

3分程度でご回答いただける内容となっております。ご協力よろしくお願いいたします。

 

アンケート回答はこちら

 

interviewer

掛川悠矢

メディア好きの大学生。新聞を3紙購読している。サウナにハマっていて、将来は自宅にサウナを置きたいと思っている。

 

writer

馬場健

アートが好きな九州男児です。人の心に寄り添った取材をこころざし、日々勉強中。