余った食品のレスキューで、飲食店もユーザーもハッピーに。急成長する食品ロス削減プラットフォーム

余ってしまった食品を一般ユーザーがレスキューできるマッチングプラットフォームTABETEを運営する、川越一磨。飲食店勤務の経験から、食品ロスをなんとかしなければいけないという想いを持ち、起業を決意。リリースから3年で、アジアで最も業績のある食品ロス削減サービスに成長させた。ユーザーに継続利用してもらうための工夫や、サービスが急成長しているワケを聞いた。

【プロフィール】川越 一磨(かわごえ かずま)
株式会社コークッキング代表取締役。長年飲食店で勤務し、毎日多くの食品を廃棄しなければいけないことに葛藤した経験から、食品ロスの削減に携わることを決意し、2015年に起業。料理を使ったチームビルディング研修などを実施しながら、2018年にTABETEを正式リリース。慶應義塾大学総合政策学部出身。

余ってしまった食品を救う、マッチングプラットフォーム

—事業について詳しく教えてください。

TABETEとは、中食*・外食店で余ってしまった食品を一般ユーザーがレスキューできるマッチングプラットフォームです。アプリ上で、お店は余ってしまった食品を出品し、価格やいつ取りに来て欲しいか、などを提示します。ユーザーはレスキューに行きたいときに、アプリ上で商品を選び事前に決済を済ませてから、お店に取りに行くという仕組みです。現在は、250~680円の価格設定の範囲で出品していただき、1つ売れるごとに150円の手数料をいただいています。

*中食お惣菜やお弁当、持ち帰りのお寿司など家庭以外で調理された食品を家で食べること。ここではそのような食品を販売するお店を指す。

サービス提供から3年が経過し、登録ユーザーは36万5000人、掲載店舗数は1520店舗(2021年4月現在)になりました。最近では大手企業さんとの連携、実証実験に力を入れており、例えばエクセルシオール東京6店舗にてトライアル運用がスタートしていて、「本日の詰め合わせ」のような形で商品が出品され、出品されたほとんどの商品がレスキューされるなどの実績が出ています。また、全国16の自治体と連携し、TABETEの仕組みを自治体単位で広げながら、地域の課題解決にも携わっています。

 

TABETEの他に、レスキューデリ、レスキュー掲示板というサービスも行なっています。商業施設内で、営業時間終了後に余ってしまった食品を我々が買い取り、社員さん向けに割引価格で販売するという仕組みになっています。この事業を通して、どの店舗でどのくらい食品が余っているのかというデータが得られるため、このデータを営業の切り口にしたり、大手商業施設との連携を築く上でのフックにしたりと、TABETEの事業にも繋がっています。

レスキュー掲示板は、農家さんなど一次産業における食品ロスを取り扱うECのプラットフォームです。「TABETEさんは食品ロスだったらなんでも取り扱ってくれるんでしょ」というお問い合わせが生産者さんやメーカーさんから多く寄せられたことをきっかけに、この事業を始めました。「なぜこれが余ってしまったのか」というストーリーをしっかりと記載することで共感を生み、これまで、いちご農家さんが数百kgのいちごを売り切ったり、卵農家さんが10kgセットで販売したりしています。

 

—日本の食品ロスは、どのような現状があるのでしょうか?

食品ロスとは、「まだ安全に食べられるのに捨てられてしまうもの」と定義されています。日本では、年間612万トンが食品ロスとして捨てられていて、これは世界の食料援助量の1.5倍に相当します。世界的にも2030年までに食品ロスを半減させるという目標が立てられていて、人口が縮小し自給率の低い日本のような国では、食料の奪い合いの中で生き残っていくために、無駄の少ない食のエコシステムをしっかり構築していく必要があると考えています。我々が主にターゲットにしている中食業界は、年間3100億円相当の食品ロスが発生していて、非常にインパクトのある市場となっています。

 

楽しく美味しく社会貢献

—どのようなユーザーが利用されているのですか?

ユーザーの75%は女性で、30~40代がボリュームゾーンです。半数の方が、「食品ロスに貢献したい」という理由で、4割の方が「お得だから」という理由でTABETEを使ってくださています。食品ロスというキーワードでTABETEを知って利用してくださる方がほとんどなので、今のところ食品ロスの課題に関心の高いユーザーが集まっているのが特徴です。

現在は、SNSでレスキュー報告が多くつぶやかれるなど、クチコミを通してサービスを知る方が多くなってきたことで、毎月数千人のユーザーが増えていくというような状態が作れています。

 

—ユーザーに継続して利用してもらうために、工夫していることはありますか?

最近、ランク制度をリリースしました。ユーザーそれぞれがヒーローの卵からスタートして、サービスを利用すればするほどヒーローランクが上がり、最終的には世界のヒーローに成長していくという設定です。このように楽しく利用してもらう工夫に加え、自分がこれまで何食、何キロの食品をレスキューしたのかなどをマイページから見られるようにしています。使えば使うほど何か生み出していたり、世の中に貢献できていたりするということをユーザーが実感できるような工夫をこれからも増やしていきたいですね。

 

お店と一緒にロスを減らす努力を

—「商品が余っている店」というのは一見消費者にネガティブな印象を与える可能性もあるかと思いますが、飲食店への営業ではどのようなことを訴求されているのでしょうか?

売り切れによる販売の機会損失を避けるために商品が多めに作られるので、多くの場合ロスというのは出てしまうものなんです。そこで最近は「捨て続けている現状のままブランドイメージを守るのか」、「しっかりロスを減らす努力をしていることを世の中に発信することで、ブランドイメージを良くするのか」のどちらかだということを伝えています。消費者の目は結構厳しく、捨てていることはどうせバレていますよということをしっかり伝えた上で、より良いブランドを一緒に作っていきませんか?というような訴求をしています。

 

—TABETEを導入したお店からはどのような声が届いていますか?

食品ロスがなくなったからTABETEを使わなくてよくなったというお店があったことは、世の中を少しは良い方向に変えられたのかなと、とても嬉しかったですね。他にも、今まではロス率の目標を売り上げの3%くらいにしていたが、TABETEを導入して2.1%くらいまで落ち、売り上げ高はプラスになった、ということを言っていただくこともありました。また、従業員さんの心の苦しみが少し緩和されたという声もあって、何も努力せずに大量に廃棄するのと、ロスを減らす努力をしてそれでもロスが生まれてしまったという場合で、心への負担がかなり違うというお話もありましたね。

TABETEが伸びているワケ

—TABETEのサービスがここまで伸びている理由は何だと思いますか?

まず、先行者メリットがあると思います。今まで食品ロスブームのような流れが2回あって、第一次のブームは「もったいない」という言葉が世界で流行した時です。そして第二次のブームは2年前くらいから、恵方巻きの過剰廃棄などセンセーショナルな食品ロスの事例と共にあったのですが、我々のサービスはその波に最初から乗れていたと思いますね。もう一つ、ユーザー側のハードルを極めて低くしていることもあげられます。サブスクリプション型のサービスなどもいくつかありますが、我々は1品から持ち帰ることができるというところに最初からこだわっていて、それがユーザーの負担を減らし継続的に使ってもらうことに繋がったと思います。
これらに加えて、メディアへの露出も大きいですね。我々はプロダクトがない時から取材を受けたり、こういうことをやりますというプレスリリースを出しただけで大きなメディアに取り上げてもらったりしていました。世の中の雰囲気に乗っていくということもサービスの発展において重要だったと思います。

 

—事業を伸ばす上で、重視している数値はありますか?

ユーザー数や掲示店舗数はもちろんですが、飲食店がTABETEの導入によるロス削減でどのくらい収益が上がったのかは重視しています。例えばヨーロッパにも同じようなサービスがありますが、フードロス削減というメッセージだけで飲食店側から積極的に参画してくれる雰囲気があるようです。一方で、日本の中食・外食業界は金銭的なメリットがないと動かないという意識がまだまだ強いので、実際にいくらお店の収益が上がったのかを提示することで、tabeteへの登録を促したりお店のモチベーション維持に繋げたりしています。また、レスキュー依頼が出た商品の何割が実際にレスキューされたのかというマッチング率もとても重要視しています。現在は50%くらいなので、今後70~80%を目指し、TABETEに出品したら必ずレスキューされるという世界を作ることで、より多くのお店に使っていただきたいですね。

ただ、お店の立地はマッチング率に与える影響が大きく、人が集まるターミナル駅や乗降者数が多い駅は自然にマッチング率が高くなります。立地として不利になってしまうお店もあるので、初出品の際にサポートとして、周辺のユーザーに初出品のお知らせを流し、お気に入り登録を促しています。そうすることで、その後も出品する度にユーザーに通知がいくので、お店のマッチング率をあげることができるようになっています。

 

供給や分配の最適化で、食の未来を作る

—今後の事業展開について教えてください。

まずはTABETEを日本全国に広げていきたいですし、東南アジアなど海外展開も考えています。現在、アジア全体でもTABETEが一番実績のあるサービスなので、このまま海外展開を見据えながらアジアで最も食品ロスを削減している企業として成長していきたいですね。それに加え、今は中食・外食をメインに事業をしていますが、食のサプライチェーンにおいてより上流の一次産業や二次産業における食品ロスも非常に大きいです。こちらにも事業を展開させながら、食品ロスも含めて食の流通量をデータとして集め需要予測を行なうなど、食の供給や分配を最適化していくことが、食の未来も我々の未来も作っていくだろうと思います。

TABETEは食品ロスを削減することはもちろんですが、「消費行動の変革」が一番のメッセージだという想いで作っています。ストーリーに共感した消費、誰かが困っているから手を差し伸べる消費、環境に配慮した消費など、単なる購買ではなく、意義のある消費行動の実現を、TABETEを通して目指していきたいです。

 

TABETE HP https://tabete.me/
株式会社コークッキング HP https://www.cocooking.co.jp/

 

interviewer
細川ひかり

生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。

 

writer

堂前ひいな

幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。