竹を使ったトイレットペーパーから消費者とともに一歩ずつ環境問題の解決に挑む

アメリカ・ポートランドへの移住から環境の問題に興味を持つようになった、おかえり株式会社の松原佳代。消費者と同じ目線に立ち、温暖化という地球規模の問題解決を目指す彼女の思いを聞いた。

【プロフィール】松原 佳代(まつばら かよ)
鎌倉からアメリカ・ポートランドに移住。現地と日本の環境に対する考え方への違いにカルチャーショックを受け、環境問題に関心を抱く。大塚雅和や増村江利子と共におかえり株式会社を創立。元カヤックLiving代表取締役で、移住促進の「SMOUT」にも関わる。おかえり株式会社以外に、PRコンサルを行う株式会社も経営

世界的トレンドである竹を用いたトイレットペーパー

—今の事業を立ち上げたきっかけを教えてください。

もともと私だけではなく、おかえり株式会社共同創立者の大塚、増村共に環境問題に関心がありました。また3人とも育児をしていて、自分の子どもたちが住み続けられる環境を残したいという思いから、環境サステナビリティに関する事業を行おうと決めました。

BambooRollを立ち上げた背景としては、私と増村は以前から、住まいやライフスタイルを考える事業に携わっていて、「ただ消費する暮らしよりも、作り手になる暮らしをする方が環境に優しい社会になるのでは」と感じていました。というのも、東京などの大都市は、人同士の繋がりや人と社会の繋がりを感じづらく、分断されていても暮らしていける環境です。しかも自然を感じる機会も多くはないので、自然と生活の調和というところに意識が向きにくくなる。自分自身がただ消費するのではなくて、社会や環境との繋がりを意識していくということが持続可能な生活に繋がると思います。このような持続可能な生活に近づくために、消費者の方が手に取りやすい商品にしたいと考えた末に生まれたのが、竹を使ったトイレットペーパーであるBambooRollでした。

 

—「BambooRoll」は、どのようにして着想されたのでしょう?

アメリカのポートランドに移住してから、竹がプラスチックの代替となっている商品を多く目にしていました。日本では滅多に見られませんが、海外には竹で作られた家具や食器、ティッシュペーパーやトイレットペーパーなど様々な商品があります。竹というものは、現在環境保全の面で注目されている素材となっています。日本は昔から竹の箸や籠を使用しているなど、竹に対して馴染みがありますよね。それで、人々の暮らしに身近なトイレットペーパーを作ろうと決めました。

 

—どんな方に届けたいですか?また、ユーザーからはどんな意見がありますか?

まずは環境問題に少しでも興味のある人に届けたいと思っています。今ある生活を急に変化させるのって難しいですよね。だから、ちょっとずつ身近なところから広げていくということを大切にしてます。

現在は、サブスクリプションの形態をとっています。注文していただくと、トイレットペーパーが玄関先に定期的に届く仕組みですね。サービスを始めて一ヶ月たちますが、多くのユーザーからは、「このような環境に配慮した商品を待っていた」というようなありがたい言葉をいただいています。

 

世界第4位のトイレットペーパー消費国、日本

—松原さん自身が環境問題に関心を持つようになったきっかけはありますか?

1つは、やはりポートランドに移住したことです。向こうに住んで生活の中から、ペットボトルとスーパーの袋が消えたんです。ポートランドには、日本のようにレジ袋の販売をおこなっていません。マイボトルやエコバックを使うことが習慣化するにつれて、他の環境問題にも敏感になっていきましたね。

もう1つは、去年の9月にポートランドで山火事が起こったことですね。その時は、空気が汚れて、私はその辛さを五感で感じたんです。。この山火事が温暖化と乾燥によるものだと知った時は、地球温暖化に残されている時間はそんなにないところまで進行しているのだと思いました。これもひとつのきっかけです。

 

—今の日本の環境についてどう思われますか?

今の日本は、トイレットペーパーのひとりあたりの消費量が全世界で第4位だそうです。レジ袋も禁止ではなく、自動販売機をみてもペットボトルが並んでいます。空港のセキュリティチェックの時に、ペットボトルを捨てますが待合所の中にはまた自動販売機があります。ポートランドの空港には、今はコロナでわからないけど、セキュリティチェックの後のロビーにウォーターサーバーが置いてありました。設備面での環境問題への対策も必要でしょうが、まずは、ほんの小さな変化から環境改善を促す動きを作りたいと思っています。確かに、環境問題について考える人が急速に増えていくことは理想的ですが、消費者を置いてけぼりにするのではなく、解決に向けてともに一歩一歩、一緒に行動してきたいと思っています。

共同事業者の増村さん

 

3ヵ国にわたる、リモートでの共同作業について

—松原さんを含め、共同創業者は3人とも別々の国に住んでおられると伺いました。

私はアメリカ、大塚はエストニア、増村は日本という3ヵ国で協働しています。時差があって時間を調整するのが難しいこともありましたが、なんとかBambooRollのリリースに至ることができました。

事業の分担については、それぞれのバックグラウンドを活かして行っています。例えば、大塚はエンジニアで、商品開発の経験があります。ですので、新規事業の立ち上げに関しては、彼を信頼しています。また、増村は自身がミニマムな生活を行っていて、今の自然に対してどう生きるのかということをストイックに日常的に考えています。彼女の生き方は、尊敬するところがあり今回の事業にも活かす部分が多くあります。

 

—松原さん自身、他の会社の代表を勤められたり、また私生活においても育児などを行っていられますが、どのように両立されているのでしょうか?

正直、いっぱいいっぱいです(笑)。学校がオンライン学習になって、子どもの勉強もみないといけないなど、流石にこのコロナ渦中は楽ではありません。でも、どうにかして、時間をやりくりしています。

やらない理由ってたくさん挙げられると思うんです。そして、私を含めて多くの人は、新しいことを始めたり変化を起こそうとしたりする際にやる理由より、できない理由を見つけることの方がきっと簡単なんです。だからできない理由があっても、「やる」っていうことを決めて、他のことを調節することが重要だと考えています。

 

—リモートでの作業をする上でよかった点は、ありますか?

時差があることですね。先ほどは、時間の調整が難しいという悪い面を話しましたが、逆に時差があることで、育児も仕事も両立できました。ポートランドは、日本と昼夜がほぼ逆転しています。だから昼は、子育てをして、夜は日本の時刻と合わせて仕事や依頼にお答えすることができるんです。もし時差がなかったら、この事業を立ち上げるのは難しかったかもしれません。他の2人も時間の使い方は工夫していると思います。

共同創設者の大塚さん

 

環境問題を考えるきっかけを作る

—今後の事業展開を教えてください。

まずは、BambooRollで日本の消費者と向き合っていきたいと思います。先ほども言いましたが、急速に暮らしを変化することは難しいと思います。だからこそ、私たちは消費者目線を大事にし、気軽に始められるところから、プロダクトを提供していきたいと思います。環境問題は様々な問題が累積しています。子供たちの未来のためにという点では一致していますが、3人の描く情景は細部ではそれぞれ異なっているのだろうなと思っています。地球をよくしたいという思いさえ一致していればいいと思うんですね。だから、私たちが描く情景を押し付けるのではなく、環境問題についてそれぞれができる範囲で一つ一つ解決していくことが重要だと思います。

今までこのように環境問題について話してきましたが、私自身、3年ほど前まで日常でペットボトルを買っていたし、レジ袋をもらっていました。しかし、そんな私でも今このように少し環境に対する意識を持ち、解決に向けて行動することができました。このようなきっかけを事業を通して他の人にも届けていきたいです。

 

おかえり株式会社 https://okaeri.company/

bambooRoll https://bambooroll.jp

 

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interviewer
細川ひかり

生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。

 

writer

馬場健

アートが好きな九州男児です。人の心に寄り添った取材をこころざし、日々勉強中。

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