圧倒的なストロー愛から生まれた、食べられるストローブランド

ストローの素朴さと素材による使用感の違いに触れて以降、さまざまなストローを研究してきた野村優妃。ストローの魅力発信や、新たな商品の開発を行っている。そんな彼女に、ブランドのこだわりや今後の事業の展開について聞いた。

【プロフィール】野村 優妃(のむら ゆうひ)
1997年生まれ。愛知県名古屋市出身。高校卒業後、フィリピンと台湾を中心に語学勉強に勤しむ。ストローの魅力を発信するストローマエストロの活動をする傍ら、食べられるストローを開発。相当なストローマニア。

ストローそのものの魅力に注目

ー現在の事業について教えてください。

ストローに特化したサービスを作っていて、先日「DLINK STRAW(ド・リンクストロー)」というブランドを立ち上げました。環境問題などでストローが注目されている中、エコの観点からではなく、素材に注目してストローそのものの魅力を発信し、全国にストローマエストロを増やしていく活動をここ1年くらい行っています。もともとはカフェに関する事業をしようと準備を進めてきたのですが、コロナもありリアルでのビジネスを進めていくことが難しかったのでこの形になりました。2021年前半に、株式会社リベラベルとして登記を予定しています。

 

ーストローマエストロとはどんな方ですか?

「ストローの魅力を発信しドリンクごとにそれを選ぶ人」と定義付けました。ストローってプラスチックや紙に限らず、シリコンや竹などさまざまな素材のものがあるし、素材によって特徴があるものもあるんです。例えば、さとうきびストローはほんのり黒糖の香りがします。口当たりもまろやかなので、わたしはタピオカを飲む時には必ずサトウキビストローを使っています。こんな風にドリンクに合わせてストローを選ぶ人が増えるといいなと思い、「試しに吸う式」と書いて「試吸式(しきゅうしき)」というイベントを全国で開催しています。様々な種類のストローを試してもらう「利きストロー」や、ストローの語源でもある麦わらからストローを作ってみるワークショップなどを行い、参加してくださった方をストローマエストロとして認定しています。現在は全国に80名程度のストローマエストロがいます。

 

ー野村さんご自身がストローマニアだと伺いました。

フィリピンに1年ほど住んでいた時期があるのですが、その時に出会った竹ストローがきっかけでストローに興味を持つようになりました。これまで何気なく使っていたけれど、素材が違うだけで無意識の中に意識が生まれた瞬間の経験が面白いなと思って。そこからストローについて調べるようになって、今では8か国の20素材を超える1,000本以上のストローをコレクションしています。

野村さんのコレクションの一部

 

食べられるストローでストローを主役に

ーDLINK STRAWはどういったブランドですか?

「ド・リンクストロー」はドリンク(Drink)とリンク(Link)するストロー(Straw)から名付けられ、ストローをくわえて、吸い上げ、味を感じ、飲み込むまでを丁寧にデザインする世界初の次世代ストローブランドです。ストローの魅力を伝える活動をしてきて1年という節目で振り返った時に、私はストローを通じて、見えない選択肢を提案していきたいんだなと感じて。ストロー1つを取っても、プラスチックや紙だけでなく世の中にはたくさんの選択肢があります。固定観念によって選択が狭まっている現状を変えていきたいと思ったんです。さらに言えば、既存のものの魅力を発信してきたけれど、ストローの価値そのものを最大限に追求していくという考え方もあるなと思いました。ストローが無くてもいいやって思う人がいるなら、吸ってみたいって思わせたいとか、食べられるストローなら面白いと思って貰えるんじゃないかとか、ストローがないと完成しないドリンクを作ればいいんじゃないかという想いから、ブランドを立ち上げました。

 

クラウドファンディングではキャンディーストローが登場していました。

食べられるストローのアイディアストックはたくさんあったのですが、たまたま飴細工師の方と関わる機会があり、実現したのがキャンディーストローでした。スローカロリーシュガーと呼ばれ、体内にゆっくり吸収されることで血糖値の上昇を抑えたり、肥満予防に繋がったりするとして注目されているパラチニットという素材を使っています。試作してみると、透明度が高く、美しいストローになることがわかりました。甘さも控えめで、通常の砂糖の1/3の甘さだと言われています。これまでも海外では食べられるストローがいくつかあったのですが、パスタや海藻から作られており、決しておいしいと言えるものではありませんでした。その点、パラチニットのキャンディーストローはドリンクを飲み終えた後にボリボリおいしく食べていただけるようになっています。

 

 

ー実際にキャンディーストローを試された方からはどういった反響がありましたか?

クラウドファンデイングを実施する前に、ストローマエストロ20名ほどに試してもらったのですが、「思っていたよりも甘くなく飲みやすい」という感想はうれしかったですね。みんな飲み終わった後に、食べている動画を撮って送ってくれるなど、とっても楽しかったです。

一方で、新たな発見もありました。沖縄の方に送った時はまだ暑い時期だったのですが、暑さでストローが曇ってしまったんです。せっかくガラスのような透明度があってきれいなものなので、輸送の際に気をつけないといけないポイントだなと気づかされました。

 

ー開発する上で大変だったことはありますか?

たくさんあります。まずはストローそのものの長さや細さです。最初は直径1cmくらいの細さから始めたのですが、5分くらいすると溶けてきちゃって。試行錯誤を重ねて、ちょうど良い大きさを探しました。他には、ストローマエストロの意見にもあった梱包・輸送の課題ですね。湿気で溶けてきちゃったり、曇ってきちゃったり、割れちゃったりするんですよ。なので、どうすれば美しい状態を保って皆さんの元にお届けできるのか、環境に優しい梱包で実現するにはどうすればいいのか毎日考えてます。いいアイディアをお持ちの方がいれば、ぜひ教えてください(笑)。

 

ーどんなユーザーが想定されるのでしょうか?

キャンディーストローでは、3つのシチュエーションを想定しています。
1つ目が、特別な乾杯を演出するアイテムとしての提案です。みんながシャンパンで乾杯している中、お酒を飲めない人や未成年はジンジャエールで乾杯するようなことってありますよね。ちょっと寂しさが生まれるような。そんな状況に、キャンディーストローを加えることで、お酒を飲めない人も一緒に乾杯を楽しめるようになればいいなと思います。お祝いの席や高級レストラン、バーに卸していきたいですね。

2つ目は、エシカル志向の若い方ですね。プレゼントや自分へのご褒美として購入いただけるんじゃないかと考えています。ストローにそれなりの金額を払うニーズがどのくらいあるか未知数ではありますが、ポップアップで需要も見ながらやっていきたいです。

最後が、お子さん向けです。ストローって口に直接触れるものだし、食育との相性がとてもいいと思うんです。実際に小学校の先生から講演の依頼があったり、試吸式に親子で参加してくださる方がいたりしました。お子さんがストローを使った後に食べる体験を提供するという文脈で、幼稚園やイベントで使うストローとして提案していこうかなと考えています。

 

面白さや驚きを感じてもらうために

ーキャンディーストローも含め、DLINK STRAWの魅せ方でこだわっていることはありますか?

一言で言うと「ワクワク」です。いかに使ってみたいと思ってもらえるような提案ができるかですね。私は元々エシカル志向が強くて、環境問題にも関心があったので、事業を始めた初期は、「ストローを環境問題を考えるきっかけに」という風に打ち出していたんです。でもストローのことを毎日考えてみて、環境問題を本当に考えると、一番いいのは使わないことだよなと。そこに行き着いた時に、環境問題の視点でストローを語るのやめようと思って、じゃあ手に取ってもらうにはどうしたらいいか考え、面白さや驚きを感じてもらえるような入り口を設計しました。

クラウドファンディングも合計で約140名に応援していただいたのですが、60%超える方がはじめましての方で、キャンディーストローへの純粋な興味から支援してくださったのがすごく嬉しかったです。

 

ーデザインもおしゃれですよね。

ドリンクとリンクするデザインにするために、色合いや形を工夫しています。例えばバタフライピー*は、酸と反応させると青色から紫色に変化するんです。なので、ストローに酸を含む素材を使うと、ストローを通して色の変化が起こる体験をすることができます。キャンディーストローというベースがあって、そこにハーブを混ぜて香りを付けることができたり、ストライブやドットの柄を付けることができたりするんですけど、今後はアレンジのバリエーションをもっと増やしていきたいです。

*ハーブティーの一種

 

ーストローをビジネス化するにあたり、何か課題はありますか?

今まさに直面しているのですが、価格設定やその価値をどう伝えていくかが難しいポイントです。というのも、消費者からするとストローは基本的に無料で付いてくるものだという意識が強いですよね。現在カフェやレストランで使われているストローは1本の単価が1円とか2円なんです。そんな中、私たちは数百円でやりとりしようとしているので、いかに付加価値を付けてそれをどうお店側に伝えられるかが重要だと思っています。幸い、ストローが社会的にも注目されている時期ではあるので、メディアから取材のお話をいただいたり、大手のレストランから興味を持っていただいたりもするのですが、比較できる商品があまりないので、価格感などはチームで模索している段階です。

 

ストローやカフェの価値を高める

ー作ってみたいストローはありますか?

最終的にはマイストローの最終型を作りたいと思っています。環境に配慮してマイストローを持ち歩いている方は一定数いると思っていて、選択としてすごく素敵だなと思うし、ストローから始めるエシカル志向もあると思うんですけど、それじゃ超えられない枠もあると思っていて。環境やエシカルに興味のない方でも、マイストローをライフスタイルに浸透させていけるようにしたいです。あとは食べられるストローだと、チョコレートストローやハーブの香り付いてるハーバルストローなどやりたいことはいろいろありますが、まずはキャンディーストローをベースに進めていきたいです。

 

ー今後の事業展開や、目指している社会を教えてください。

DLINK STRAWの認知度を高めつつ、オンラインでは目的に合ったカフェの検索サービスの開発を進めたいです。私が竹ストローにハッとした体験のように、カフェの中って、何かに気づくきっかけが多発している場所だなと思うんです。新しいものとの出会いの場として、カフェの価値をもっと高めていきたいです。ストローからドリンク、ドリンクからカフェ、そしてカフェとオンラインを繋げられればいいですね。私にとってストローは本当にはじめの一歩だなと思っていて、「カフェの人」になるよりも「ストローの人」になった方が注目されるし覚えてもらえるんです(笑)。会社のビジョンに「個々を尊重する溢れる社会」を置いているので、そういう部分では、カフェが次世代のサードプレイスになれるようになれたら、そしてカフェの中からどんどん社会をエンパワメントしていけたらなと思います。

オンライン試吸式(しきゅうしき)の様子

 

野村さん handshake https://www.handshakee.com/yu_cafe_hi

 

interviewer
堂前ひいな

幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。

 

writer

細川ひかり

生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。