「竹炭インテリア」で日本の生態系を守りたい。「竹害」の認知度向上を
インタビュー

「竹炭インテリア」で日本の生態系を守りたい。「竹害」の認知度向上を

2020-08-22
#農林水産 #環境 #カルチャー #ものづくり

日本古来の文化である竹炭を使ったインテリアを販売し、竹が引き起こす「竹害」の解決を目指す株式会社TAKESUMIの小松裕介。竹炭とデザインを掛け合わせることで竹炭の新しい魅力を引き出す彼に、「竹炭インテリア」との出会いや、商品を開発する上でのこだわりを聞いた。

【プロフィール】小松 裕介(こまつ ゆうすけ)
伊豆シャボテン公園グループを運営する上場会社の代表取締役社長として同グループを7年ぶりの黒字化に導く。その後、2014年に独立して経営コンサルタント会社である株式会社スーツを起業し、代表取締役に就任。竹炭を使った作品づくりを行うデザイナーとの出会いがきっかけとなり、2016年1月に株式会社TAKESUMIを設立。竹炭を使ったインテリアや贈答用の商品を販売している。

「竹炭インテリア」を通して、竹害を知ってもらいたい

ー「竹炭インテリア」とはどういったものか教えてください。

竹炭とプリザーブド・フラワーやアーティフィシャル・フラワーを組み合わせた高級感のあるインテリアです。会社名と同じ「TAKESUMI」というブランド名で展開しています。商品の1つである「祝い竹炭」は竹炭を使った贈答品です。例えば、企業が引っ越しした時に胡蝶蘭を送る文化ってありますよね。胡蝶蘭のマーケット規模は年間で300億円くらいなのですが、胡蝶蘭に代わる商品として販売しています。こちらは主に企業の方に買っていただいています。

また、家庭用にもう少し小さいものを「飾り竹炭」として販売しています。こちらは一点もののシリーズや、苔や多肉植物と組み合わせたもの、ちりめんを取り入れたものなどを扱っています。トイレやテレビの上に飾っていただくイメージですね。プレゼントとしてご購入いただくことも多いです。

「竹炭インテリア」は水をやる必要がないこともポイントです。家庭に置いても会社に置いても手が掛からない上に、生花と違って枯れることもないので長い間楽しめます。

 

ーHPに、「TAKESUMIの商品で竹害を解決する」とありますが、「竹害」とはなんでしょうか?

「竹害」とは繁殖力の強い竹が他の生態系を侵食してしまうという問題です。「外来種」という言葉を聞いたことがある方は多いと思いますが、この場合、竹は「国内外来種」に当たります。もともと日本国内にはあるものだけど、その地域には他所から入ってきたという意味ですね。

カゴやザルなど、竹は日本人にとって身近な道具に利用されていますよね。しかし近年では、竹製品がプラスチック製品などで代替されるとともに、竹材や竹製品の輸入が増加し、国内における竹材の生産が衰退していきました。竹製品の生産者が高齢化してきたことも衰退を加速させています。そのため、人の手によって管理されない竹林が増えて、どんどん竹林自体が拡大しているんです。「破竹の勢い」という言葉からもわかるように、竹ってものすごく成長のスピードが早いんです。また、生態系の破壊だけでなく、竹の根の特性により森林の持っている土壌保持力が弱まり、洪水が起きやすくなるといった問題にも繋がります。

とはいえ正直な話をすると、「竹害」を解決するためにはインテリアや日用品として竹を使うよりも、バイオマス燃料やパルプとして大量に竹を使ったほうが現実的でしょう。もし、日本で各家庭に1つくらいのペースで「竹炭インテリア」が売れれば竹の成長より早く伐採できるかもしれませんが、さすがにその量を売るのは難しいでしょうからね(笑)。僕らの立ち位置としては、「竹炭インテリア」を通して「竹害」という問題の認知を広めるという役割が大きいですね。

竹炭×デザインで職人にもお金が入る仕組みづくりを

ーどのように「竹炭インテリア」というアイデアを思いついたのでしょうか?

現在TAKESUMIで副社長を務める南との出会いがきっかけです。南は竹炭インテリア・ブランド「TAKESUMI」のクリエイティブのトップで、竹炭クリエーターとして活躍しています。南とはTAKESUMIを創業する前から付き合いがあったのですが、あるとき彼女から「実は私、竹炭を使ったインテリアを作っていて、将来的にはそれで食べていきたいと思っているんです」と打ち明けられました。詳しく話を聞く中で、「竹炭インテリア」が「竹害」という問題解決につながると知りました。その後実際に作品を見せてもらったら、まさに芸術作品といえる素晴らしい出来だったんです。こんなにも素晴らしいモノがあるのであれば、経営をどう成り立たせるかに関しては自分が担当するので、一緒に社会的な価値のあることに取り組んでいこうという話になり、TAKESUMIの創業に至りました。

 

ー南さんのお話を聞いて、竹炭のどんなところにビジネスの可能性を感じたのですか?

これまで「竹害」の話をしてきましたが、竹炭には他にも面白い切り口がたくさんあるんです。炭や竹を使う文化は日本ならではですし、炭焼き職人さんは地方にいらっしゃるので地方の活性化にも繋がります。また、竹炭は消臭効果やマイナスイオン効果、調湿効果といった様々な効果が科学的に実証されています。これだけ切り口があるのであれば、あとは商品が魅力的かどうか、そしてそれをどうPRしていくかだな、と感じました。

 

ー竹にはいろいろな切り口がある一方で、これまで竹炭を使ったビジネスが少なかったのはどうしてでしょうか?

竹炭と聞くと、真っ先に思い浮かぶのは消臭のイメージではないでしょうか。実は竹炭の消臭効果というのは一度大きなブームになり、いろいろなところで使われていたんです。ただ、「竹炭=消臭」という単純なイメージがついたことが中長期的には逆効果になってしまいました。機能性だけをみると、科学的な薬品の方が効果が強いし、コストもかからないので代替されてしまったんです。竹炭を使うとなると竹を伐採して焼いてから利用することになるので、工数も人の手もかかってしまいます。例えば、100円ショップに粉砕炭が売っているのですが、あれは売上が100円ですよね。間に業者や職人がいることを考えると、エンドユーザーの価格がたったの100円ではやはり商売にはなりません。

そこで僕たちは、竹炭にデザインを掛け合わせることで商品の魅力を向上させて価格を上げています。竹炭単体だと商売にならないけれど、デザインを加えて「竹炭インテリア」にすることで、炭焼き職人さんや林業従事者にもきちんとお金を還元できる仕組みを作ることに成功しました。

お客様に愛されるブランドにするために

ー「竹炭インテリア」を商品化していく上で、何か苦労はありましたか?

一番苦労したのは竹炭が折れないようにすることですね。竹炭の強度の問題があって、輸送のときに「祝い竹炭」の竹炭が折れるんですよ。お祝い事で贈るのに、折れちゃうなんて絶対ダメじゃないですか。友達に送ってみて「どうだった?」「ダメだ、また折れてる」というやりとりを何回も繰り返しましたね。何度も実験を重ねて、ようやく竹炭が折れない梱包の方法を見つけました。また、各地の炭焼き職人さんにも工程や焼く温度を何度も調整してもらい、その強度から、現在は主に新潟の炭焼き職人さんから仕入れています。

基本的に竹炭は一点ものなので標準化には向きません。ただTAKESUMIとしては、「多くの人に竹害という問題を届けること」がやりたいことでありミッションなので、一点ものを高い金額で何点か作ってもしょうがないんですね。そこでなるべくシンプルだけどかっこよく、誰でも作れるように試行錯誤しました。デザインを担当する南とも何度も相談し、周りの人へのヒアリングやアンケートを重ねて商品化しました。

 

ー商品をインテリアとして打ち出していく上で、気をつけていることはありますか?

竹炭の社会性は前面に出さないようにしています。お客様がどういう時に竹炭インテリアを欲しいと思ってくださるのかを考えつつ、そのうえで社会性もありますよ、という打ち出し方をしています。なので、「飾り竹炭」のECサイトでも「誰よりもお祝いの気持ちを伝えたい方へ」というように、お客様の「誰かをお祝いしたい」という気持ちを一番大切にしています。

お客様の購買動機に、より本質的な部分で応えていくのがブランドを作っていくということだと思うので。それは「竹害」のことでも同様ですね。プレゼントで送られてきて「竹害」のメッセージが前面に出ていたら押しつけがましいじゃないですか。あくまでお客様に喜んでもらうのが最初にあって、プラスアルファで社会のためにもいい商品ですよ、というスタンスを意識しています。


ーこれまでTAKESUMIの事業をやってこられて、なにか転換期になった出来事はありましたか?

分かりやすく転換点があったわけではありません。ただ4年間やってきて、リピートしてくれるお客様が多くなりました。例えば、取引先の引越しや社員の昇級のたびにTAKESUMIの商品を選んでくださるお客様もいます。「竹炭インテリア」が広まってきたのは、地道に商品と向き合ってきた結果かなと思います。メディアは「竹炭インテリア」の持つ社会性に注目して取り上げてくれるところが多いですが、やはりお客様が買ってくれるかどうかは商品にかかっているので、結局は商品が愛されていることが大切ですね。

 

自らの経験が社会課題の解決に繋がるという喜び

ー4年間ずっと「竹炭インテリア」を続けてこられたのはどうしてですか?

社会的な課題を知ったとしても、自分ができることを見つけるのってなかなか難しいですよね。でもTAKESUMIでは、ブランディングやWebマーケティングなど僕の今までの知識や経験が生かせたんです。純粋にいいテーマに出会えたと思っていて、世のため人のためにビジネスを通じて貢献できるっていう機会をもらったことに感謝しています。

自分の能力が世の中の役に立つって嬉しいことだと思うんです。僕たちは、竹炭を通して世の中を前に進めることに取り組んでいると思っているので、この事業に出会えて良かったなと思っています。

 

ーTAKESUMIの経営をしていく上で譲れないことはありますか?

「竹害という問題を多くの人に提起する」というミッションがあるので、その軸はぶらさないように気をつけています。あとは商品を標準化することですね。アートのように一点もので世の中を変えていく分野もありますが、僕らは商品が数多く出ることによって僕らの伝えたいテーマが多くの人に伝わることを望んでいるので、その辺りは意識して意思決定しています。

 

ー最後に今後の展望を教えてください。

「竹炭インテリア」をどう海外の方に売っていくかが今後のテーマだと思っています。実は「竹害」の問題があるのはまだ日本くらいなんです。世界的にみると、外来種が侵食してきているという問題はまだまだ注目されていません。2020年になり世の中が進んでいくにつれて、「これまで地域にあったものを大事にしよう」という価値観は世界に広まっていくと思います。「竹炭インテリア」を売っていくことによって、今ある生態系を大事にしようというメッセージをグローバルに伝えられるようになるといいですね。

TAKESUMI ECサイト「祝い竹炭」 https://iwai-takesumi.com/
TAKESUMI ECサイト「飾り竹炭」 https://www.kazari-takesumi.com/

 

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    interviewer
    堂前ひいな

    幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。

     

    writer

    細川ひかり

    生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。

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