LGBT当事者が安心して出会える場を。イベント設計に込められた細かな気配り

夜の街やお酒のイメージが強い、LGBT当事者の出会いの場。マイユニの代表を務める江藤天音は、そうしたLGBTの出会いにまつわるイメージを払拭し、ストレート層と同じような出会い方を提供している。参加者が安心できるイベント設計の工夫や、自身のSNSで発信を続ける理由を聞いた。

【プロフィール】江藤 天音
株式会社マイユニ代表取締役。近畿大学2年生。LGBT当事者として悩んできた経験から2020年にマイユニを設立。当事者向けの交流イベントや企業への講演会を行なっている。

 

LGBT当事者に安心して出会える場を

—事業について具体的に教えてください。

主にゲイ・バイセクシュアル向けの「GB」というイベントを行なっています。LGBTの当事者の出会いの場所というと、二丁目(※新宿二丁目。LGBTフレンドリーなバーやクラブなどが多く並び、世界的にもLGBTタウンとして知られている)のイメージが強いじゃないですか。でも二丁目っていうのはお酒のある大人向けの出会いがほとんどで。ゲイの方が出会う場所もゲイバーやアプリが多いんです。そのような出会いは体目的など危険を伴うこともあって、ただ友達がほしいだけなのにそれを叶えてくれる場があまりないんです。そこで私たちはLGBT当事者の方が「安心して出会える場」として交流パーティーを開催しています。

 

—どのような経緯でこの事業をやることになったのですか?

私はLGBTのTに当たるトランスジェンダーなのですが、高校生のときにセクシュアリティに関してすごく悩む時期がありました。その当時から色々とネットで調べてみても正しい情報が少ないことに課題意識を持っていました。
大学に入り、自分にできることはないか模索していたときに参加した、近畿大学主催の起業家育成セミナーにてゲイの友達に出会ったことがきっかけとなり、マイユニを始めました。

自分はそれまでトランスジェンダーとしての悩みしか知らなかったのですが、ゲイ、レズビアンなど他のセクシュアリティの人たちと出会う中で、その人たち特有の悩みがあることも知り、もっと大きな規模でLGBTの課題に取り組んでいきたいと思うようになりました。
ちょうど近畿大学主催のビジコンに参加し優秀賞を取ったこともあって周りの大人からサポートを受け、マイユニを会社にすることを決意し、今に至ります。

 

—イベントについて具体的に教えてください。

「安心して交流できる場」にするため、イベントの大きな特徴はお酒がでないことと、昼間に開催していることです。イベントでは、最初にアイスブレイクとしてゲーム方式で緊張をほぐしてもらい、その次に回転寿司方式で回転しながら全員と話してもらいます。最後はフリートークの時間を設け、気の合った人同士で仲を深められるようにしています。

参加者は10~20代の方で、学生も社会人も含め特に22~25歳の方が多いです。去年の6月に第1回を開催して、計6回イベントを開催してきました。累計300人くらいの方、1回のイベントで多い時は60人くらいの方が参加してくれます。1回のイベントにつき、2割程度の方がリピートで残りの方は新規に参加してくれる方です。

ゲイの人たちの中には「ツイドル」(Twitterのアイドル)というマイクロインフルエンサーとして活動している人が多くいて、共同創業した友人もその一人なんです。ツイドルのみなさんに協力してもらってイベントの認知を広げています。

 

—「安心して出会える場所」にするために気をつけていることはありますか?

当事者だということがばれてしまうのが怖いという方もいらっしゃるので、写真撮影の配慮は徹底しています。また、参加者同士の会話では当事者だからこそ共感できる話題も多いので、イベントの開催場所は外に開かれていない空間を選んでいます。
さらに、同じLGBT当事者がスタッフとして参加し、参加者のみなさんの交流をサポートしています。

 

—最近はオンラインでイベントを開催されているんですよね。

はい。オンラインのイベントでは普段のイベントと違い、連絡先交換の時間を設けています。また、メインのルームとブレイクアウトルームの両方を使い、2人で話したい場合はブレイクアウトルームにてゆっくり話ができるように設計しています。普段のイベントではイベント中に2人で消えていくとなんだか怪しまれたりするんですが、ブレイクアウトルームだとそれが割と自然にできるので、オンラインイベントならではの面白さだなと思っています。

 

ストレート層と同じような出会い方がしたい

—参加者のみなさんはどのような思いで参加されているのですか?

最初から恋人を作る目的で参加するというより、友達を作るために参加される人が多いです。LGBT当事者の方からは「ストレート層と同じ出会い方をしたい」という声をよく聞きます。ストレートの友人を好きになったときに、相手からは「友人だと思っていたのにそういう目で見られていたと知ってショックだった」と言われてしまった経験がある人がすごく多くて。私自身もそのような経験があるのですが、ストレートの方を好きになると傷ついてしまうんじゃないか、変だと思われるんじゃないかという恐怖がいまだにあります。だからこそ、友人から始めて恋愛に発展してもいいという安心感のある当事者ならではの交流会は求められていると思います。

実際にイベントに参加し、その後お付き合いされたというカップルがいて、それを知った時はすごく嬉しかったです。また、イベント終了後のお見送りの際に「こんなに素敵なイベントを開催してくださってありがとうございます!」と言われたときは、思わず泣きそうになってしまうほど嬉しかったですね。
Twitterでも、#GB交流パーティー などのハッシュタグを付けて感想をツイートしてくれる方を見かけることがあります。

 

当事者と非当事者。両方の視点から

—マイユニにはどのようなメンバーが集まっているのですか?

現在は5名で活動しています。全員が大学生でLGBTの当事者と「アライ」と呼ばれるLGBTを応援する立場の人がいます。メンバーそれぞれが自分のセクシュアリティにあったところでやりたいことを進めています。

当事者と非当事者が両方参画しているところが特徴で、アライのメンバーは「自分らしく生きられない」というモヤモヤを抱えていることへの苦しさに共感して参画してくれました。チームとしてうまくまとまるために、常にオープンマインドでお互い考えていることをなるべく伝えるということを意識しています。

 

LGBTの当事者は身近にいると知ってほしい

—現在江藤さんはほぼ毎日ライブ配信をされていますよね。どのような思いで発信を続けられているのですか?

今まで自分がクローズドにしてきた高校生時代の友人とかが反応をくれることが多くて。LGBT当事者って身近にいないって思われがちだと思うんですが、自分が友人に向けて発信をすることで当事者は当たり前に存在するということを知ってもらえたらと思っています。

高校生時代の話とかもライブ配信でよく話すんですが、高校の合唱の練習で声が低かったので男性パートを歌っていて。ライブを見ていた友人がそのことを覚えていて、「男性パートに入っていたのもそういう理由からだったの?」とコメントをくれたんです。
当時はトランスジェンダーという意識はなかったんですが、以前から意識していなくても当事者として行動していたことがあったんだなと気づかされました。発信することは自分にとって新しい気づきの発見にもなりますし、友人が昔のことを覚えてくれていたのは嬉しかったですね。

 

—今後の展望について教えてください。

LGBTコミュニティを作ること、心が安心できる場所を作ることは必要だと思うので、今後も引き続き交流イベントは開催していきます。それに加え、非当事者の方にアプローチしていくことも重要だと思っているので、非当事者も巻き込んだようなイベントを開催し、マイユニの認知を広げていきたいです。

また、自分が高校生時代にLGBTに関する情報を知れず悩んでいたことが原体験なので、今後は教育機関や企業にLGBT研修という形でアプローチをしていきます。そしてその先には「LGBTコンサルティング」として、企業がLGBTフレンドリーになるための取り組みを導入したり、LGBTマーケティングを行なったりしていきたいと思っています。

 

現状、LGBT当事者を取り巻く問題はたくさんあります。同性婚ができないこと、男女で別れた制服、親へのカミングアウト、就職活動への影響、、、。あげたらきりがないくらいの問題に悩まされています。LGBTは当たり前に世の中に存在しているということをより多くの人に知ってもらえるように活動を続けていきたいと思います。

 

マイユニTwitter @MYUNI_LGBTQ

 

interviewer
田坂日菜子

島根を愛する大学生。幼い頃から書くことと読むことが好き。最近のマイテーマは愛されるコミュニティづくりです。

 

writer
堂前ひいな

幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。