工場の町・燕三条発。ものづくりから始まるまちづくりとは

ものづくりの町・新潟県燕三条(つばめさんじょう)で、ものづくりにとってより良い環境づくりに取り組むMGNETの福田恭子。新卒で飛び込んだものづくりの世界で直面した専門知識の難しさによる壁を解決すべく、MGNETが蓄積してきた実績を生かしながら専門知識がない人でもものを作れるプラットフォームサービスをリリースした。リリースに込めた思いや、新卒で新潟に帰る決断の理由を聞く。

【プロフィール】福田恭子(ふくだ きょうこ)
新潟県出身。慶應義塾大学在学中に、まちづくりや地方創生の活動を行い、MGNETの代表に出会ったことをきっかけに、新卒で新潟県燕三条のMGNETに就職する。MGNETでは、「燕三条 工場の祭典」事務総括や、オンラインものづくりプラットフォーム「Crowdcraft」を担当する。

 

ものづくりの魅力と技術を広める、MGNETの仕事

―福田さんが勤める会社、MGNET(マグネット)について教えてください。

ものづくりの魅力や楽しさを、より多くの人に伝えていく会社です。元々は、「武田金型製作所」という町工場の広報部署から始まりました。製造業では当たり前の知識として知られる金型ですが、一般の人にはなかなかイメージが湧きません。身近なもので言うと、たい焼き器のように上下で何かを挟んで形をつくるための道具ですね。製造業などの大量生産において欠かせない金型を一般の人にも知ってもらうために、武田金型製作所の広報部署が立ち上がりました。その武田金型製作所の息子が、今のMGNETの武田修美代表です。

金型を一般の人にどう伝えるか考え続けた結果、上のような動画が生まれました。(10年以上前から制作し、Youtubeに投稿していましたが)これを社員がTwitterに上げたらバズったんです。これだと金型のことを知らない人でも「なんかすごい」と思ってもらえますよね。これだけ精度の高い技術を使ってものを作っているということを、感覚的に伝えるツールになりました。

 

MGNETでは、「ものづくり・ことづくり・まちづくり」に取り組んでいます。ゼロからものを作る「ものづくり」、すでにあるものをどう魅力的に伝えていくかという「ことづくり」、あとはものづくりの環境をずっと継続させていくための地域社会をつくっていく「まちづくり」に取り組んでいます。製品をつくる仕事もあれば、中高生のプロジェクト支援や拠点の運営、動画制作など業務内容は様々ですが、目指しているのは「ものづくりにとってよりよい環境をつくること」です。様々な事業に取り組んだ結果として、燕三条やものづくり全般にとってよりよい環境づくりになったらいいなと思っています。

 

―MGNETがある燕三条は、どんな町なのでしょうか。

燕三条には、3,300社の町工場があると言われています。つまり3,300人経営者がいるということなんです。ふと立ち寄ったお店や飲食店でも、隣のテーブルから「俺らの会社は…」「これからはアジアだ」みたいな会話が普通に聞こえるんですよ(笑)。何かやろうとするパワーを持っている人が多い町だと思います。

昔から培ってきた歴史の上に今があって、それを引き継ごうとする人たちが活躍しているという意味で、昔からの繋がりが強い町だと感じます。「こういうことを相談したい」「こんなものを作りたい」と言うと、「あの工場の方がいいよ」とか「あの社長に相談してみます」というように、声をかけたらどんどん工場が繋がっていきます。そういうネットワークの強さは、他の町にはないものだなと思います。

 

専門用語が必須の、ものづくりの世界

―ものづくりの職人さんとやりとりする中で、どんな苦労がありましたか?

職人さんはものを作るプロなので業界の知識にはすごく詳しい一方、業界の言葉がないと話が通じないことがあって最初は苦労しました。職人さんは、製品を見ただけで「これはプレスして溶接して…原価はこれぐらいだな」とパッと思いつくんです。なので、適切な職人さんに話を持っていくことができれば、ものを作るというのは結構やりやすいです。
そのときに業界の言葉を知っていることが大切で、加工の知識がないと会話ができないんですよね。「もっとかっこよくてスタイリッシュなかんじで」と言っても、「つまりはコンマ何ミリなんだ」「仕上げは何なんだ」と職人さんから返されてしまいます。ものは作れるけど、実際ものを作るまでの難しさがあると実感しました。

これはMGNETの設立当初からある課題意識で、ものを作りたい人と職人さんの意思疎通を通訳する仕事として、MGNETでは製造コーディネートを行っています。ものを作りたい人と実際にものを作る職人さんの間に入り、企画から製作までサポートする仕事です。企画段階では、ものを作りたい人の「こんなものを作りたい」というアイデアを受けて、意匠や仕様といったデザインに落とし込み、職人さんにとってもイメージが湧きやすいものにします。その後、図面の作成や工程・段取りを組む作業を経て、見積もり作成、発注となります。
ものを作りたい人と職人さんが直接やりとりするとなると、図面データの作成や詳細な工程を組む作業など、勝手がわからなくてストレスが溜まる場面も起こりがちです。現場の気持ちもわかるし使い手の気持ちもわかる、という間を取り持っている人がいることが大事な気がします。

製作物の事例はこちら。WORKS|MGNET

―4月にリリースしたサービス「Crawdcraft」では、どんなことを目指しているのでしょうか?

Crawdcraftは、オンラインのものづくりプラットフォームです。いつでも誰でもどこでもものづくりができるプラットフォームで、オンライン上で制作チームを組むことができます。
今までも、地域外の方から「こういうものが作りたい」と依頼をいただき、それをもとに製品を作る製造コーディネーターの仕事をMGNETで行っていました。Crawdcraftは、今までオフラインでやっていた製造コーディネートを、そのままオンラインで実現させたサービスです。今、新型コロナウイルスの状況下でなかなか移動ができなくなっている中、あらためて場所を問わずにものづくりができるようにしたいと、サービスをリリースしました。

何かものを作りたいと思ったときに、作りたいと思った人に寄り添ったサービスづくりをしたいと思っています。全く製造業に関わりがない人、知識やネットワークがない人でもものを作れるという未来を実現するためのサービスだと思います。MGNETの中で私が担当しているのですが、燕三条に引っ越して3年経った今でもまだ「ものづくりの世界は難しいな」と思うことがあるんです。そういう感覚の私がリーダーをすることで、ユーザーに寄り添ったサービスになったらいいなと思っています。

 

東京で修行するのではなく、新卒から新潟で挑戦する選択

―大学時代からまちづくりに関わっていたそうですが、なにかきっかけがあったのでしょうか?

両親が建築関係の仕事をしているので、小さい頃から町とか建物を知らないうちに意識していたように思います。父は、その町で暮らす人たちに「この町に住んでいてよかった」とか「町を誇りに思う」ということを目指していた人なので、そこは受け継いでいると思います。

大学では東日本大震災のボランティア活動をしていて、建物が全部なくなったところから、もう一度町を作り上げようとするおじいちゃんやおばあちゃんに出会ったときに、その町をつくるということ自体に興味を持つようになりました。それ以来、建物よりも町そのものに興味が強くなりましたが、根本にある想いは幼い頃から変わっていないと思います。

 

―新卒でMGNETに就職することを選んだ理由を教えてください。

代表の武田と一緒に働きたい、という想いが一番の理由です。とはいえ、かなり迷いましたね。大学時代には、「新潟を盛り上げたい」といろいろな活動をしていて、卒業後は事業化して会社をつくることも考えていました。でも、具体的に自分はどんなことができるのか見出せずに悩んでいたときに、武田に出会いました。

おもしろい人だなと思ったんですよ。ものづくりを全然知らない私でも興味を持ってしまうような話し方をする人で。決め手になったのは、「会社の事業は、スタッフの数だけ可能性が広がる。あなたがやりたいことが、MGNETでやるべきことになる」と言われたことです。自分一人でやるよりも武田代表と一緒にやったほうが、私がまだ知らない世界を見られるだろうと思って、入社を決めました。

それまでは、東京で一度修行してから新潟に戻った方が役に立てるんじゃないかと思っていたんですけど、新潟に戻ってきた段階でゼロからのスタートになるのは確かでした。私はすでに新潟で何かをしたいという思いが強かったので、それなら遠回りせずにストレートに挑戦してみようと思って、新卒で新潟に帰る覚悟を決めましたね。

 

―新潟と東京をつなぐコミュニティも始めたと伺いましたが、同世代に対する思いを聞かせてください。

5月に立ち上がった、新潟と東京をつなぐコミュニティ「Flags Niigata」に運営として参加しています。私自身、東京に残るか迷った一番の理由は、東京の方が刺激的だというのがあって。でも、Flags Niigataのコミュニティをはじめ、新潟出身のおもしろい人たちってたくさんいるんです。新潟を、そういう人たちと一緒に仕事ができる土壌にしたいですね。

「新潟にはこんな可能性がある」と発信し続けることは、新卒でこっちに戻ってきた私だからこそできると思っています。今は新潟を離れている人でも、「いずれは新潟で働きたい、活躍したい」と思えるような新潟であり続けられるように、私たちも新潟で頑張るという意識はありますね。人生のどこかのタイミングで、「新潟に何か関わりたい」と思ったときに、同世代として一番の相談窓口のような存在でありたいと思っています。

 

クリエイティブなものづくりの魅力を、若い世代に伝えたい

―最後に、今後ものづくりのどんな未来を描いているか教えてください。

新潟や燕三条に限らず、自分の仕事を楽しむ人が増えればいいなと思っています。ものづくりの町だと、仕事がお金を稼ぐための手段のように捉えられがちですが、本来工場で働いている人たちは「ものを作るのが楽しい」とか「ものづくりが向いている」と思って入ってきた人が多いです。ものづくりで働く人たちが、ものを作るという本来の仕事に集中できて、その他の誰でもできる部分はAIなどで効率化させていくように、本当にやりたいこと・わくわくできることに集中できる環境を作りたいです。

そして、ものづくりっておもしろいと思う人も増えてほしいですね。今までだと3K的な産業だというイメージもあるかと思うのですが、今まで世界になかったものを新しく作るってすごくクリエイティブな仕事だと思います。そこに憧れる人たちが増えていってほしいです。

 

あとは、今まで自分が挑戦する機会を作ってもらったので、これからはプレイヤーを育成する側にまわりたいです。自分より下の世代が何かしたいと声を上げたときに、次世代がワクワクできる社会や地域をつくりたいです。「ここで働きたい」とか「新潟を盛り上げたい」という気持ちの連鎖を作っていくことが、個人的な目標ですね。

MGNET HP https://mgnet-office.com 

 

interviewer
堂前ひいな

幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。


writer
田坂日菜子

島根を愛する大学生。幼い頃から書くことと読むことが好き。最近のマイテーマは愛されるコミュニティづくりです。

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