最強のイノベーターコンビ、のび太君とドラえもん
コラム

最強のイノベーターコンビ、のび太君とドラえもん

2020-07-15
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本稿では学生あるいは若手社会人向けに、のび太君とドラえもんが最強のイノベーターコンビであることを紹介します。
「マーケットイン」「プロダクトアウト」の考え方も学びながら、イノベーションについて一緒に考えてみましょう。

原体験と課題の言語化の鬼、のび太

ドラえもんだけが存在していては本やアニメに出てくるようなイノベーティブなプロダクトは生まれていません。のび太君に悩みがあってこそ、道具が作られるためです。ここで、のび太君の一連の行動を見てみると、実はのび太君は大変優秀な分析者であることが見て取れます。

ドラえもんの世界では、勉強もスポーツも何をやってもうまくいかないのび太の失敗から話が始まります。そこに、権力者ジャイアンと既得権益のスネ夫による(時に理不尽な)いじめが加わり、のび太君の心はさらに傷つきます。ここまでがのび太君が受ける原体験です。

次にのび太君は葛藤をします。

「僕がジャイアンとスネ夫から受けた嫌な感情(=解決したい課題)は何だろう?彼らの理不尽さだろうか?彼らの理不尽さでないならば僕の課題?僕は何かを解決したいのか、あるいは解決したくないのか。」

「その何かを解決したい場合、一時的な課題を解決するのか(例:ジャイアンに仕返しを加えたい、テストの点数を親に見られないようにする)、根本的な課題の真因を解決したいのか(例:自分の能力を高める)。その手段として道具に頼るのか、あるいはそれ以外の方法を採択するのか。」

「道具に頼る場合はドラえもんに相談しよう。意図を汲んで欲しいから、背景を説明したうえで、〇〇が欲しい、〇〇があったらいい、まで言語化しておこう」

そこまで熟考をしたうえで(おそらく)、〇〇が欲しい、〇〇があったらいい、等とドラえもんに伝えます。

のび太君のいる世界だけではその実現は難しいですが、ドラえもんの世界にアクセスできる限りにおいては、のび太君の需要を満たすプロダクトのオファーができてしまいます。
のび太君は極めて適切な相手に対して、しっかり言語化をしてドラえもんの四次元ポケットからプロダクトを取り出させます。決してドラえもんがのび太君の意を汲んで商品開発をしているわけではありません。

オファーの鬼、ドラえもん

ドラえもんの四次元ポケットからは、のび太君のニーズに合った様々なプロダクトが登場します。空を飛びたいならばタケコプター、瞬間移動はどこでもドア、時空の移動はタイムマシン、サイズを変えるならばスモールライト、異国を旅する時には翻訳こんにゃく、、等。

ドラえもんは毎回のび太君の悩み(ニーズ)に完璧に即したプロダクトを提供します。四次元ポケットの構造が僕には良く分かっていませんが、のび太君が具体的なお悩みを毎回ドラえもんに対して言語化すると、のび太君の悩みに即したプロダクトがその瞬間に四次元ポケットの中に現れ、ドラえもんが瞬時に取り出すため、ニーズに即していない訳がありません。

マーケティング用語でいうと、市場や顧客のニーズに即したプロダクトを届けることを目的とする考え方をマーケットイン的な考え方と呼びます。他方、ドラえもんのいる22世紀ではテクノロジーが発展してあらゆる物を作る事が出来る世の中になっているため、彼が出すプロダクトはイノベーティブで洗練されており”プロダクトアウト的な”製品であるとも言えます。

「マーケットイン」と「プロダクトアウト」

高度経済成長期には生活必需品をはじめ多くの製品群が需要のピークを迎えました。その際、企業はその需要量に応えることが正義であったため、商品開発や生産を行う上で、細かい市場のニーズよりも大量生産に耐えうる作り手の理論や計画を優先させる方法(=プロダクトアウト的な思考)が取られました。
その結果、1980年代の高度経済成長期が終焉を迎えようとしていた日本では、大量生産技術が高度化し、製品の供給量が需要量を上回り、市場が飽和するようになりました。

生き残りを図る多くの経営者は「消費者がより必要とするモノを提供する」という事業方針へ舵を切りました。このような考え方が後にマーケットインと呼ばれるようになり、プロダクトアウトという呼び方自体はマーケットインに対比するものとして生まれました。

1990年代から2000年代初頭の日本では「売れたものが良いもの」と言う考えが急速に拡がり、企業が新たな価値を創出すると言った考えは軽んじられる傾向が生じましたが、2000年代後半に入ると市場のニーズから始まる新たな価値を創出できていない日本企業のやり方を振り返りました。今では、マーケットインかプロダクトアウトか、という二元論的な考え方自体が否定されるようになり、企業は顧客ニーズを把握することは大前提に置き、新たなプロダクトの価値を磨き続けていかねばならないことを再認識しました。

【まとめ】
プロダクトアウトとは
会社の持つ技術や価値を活用し、作りたいものを作る
プロダクトを作ってから、販売方法を検討

マーケットインとは
顧客のニーズを把握して、それを満たす製品やサービスを作る
顧客満足度をいかに高められるかを重視

のび太君の卓越した原体験と体験を通じた悩みとニーズの言語化、そしてドラえもんの卓越した技術とアイデアによる悩みの解決方法の提供、両社があいまってドラえもんの大量のイノベーティブな道具が生まれました。
ドラえもんを見たり読んだりされる際には、人間関係もさることながらのび太君の言語化力や、2人のイノベーションに着目をしてみてはいかがでしょうか。

 

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    書き手:辺境


    大手IT企業で海外事業の経営企画・経営管理を8年勤めたのち、マーケティング系スタートアップにてバックオフィス全般を担当し、その後talikiにジョイン。世界一過酷なレースと呼ばれるサハラマラソン完走したほか、キリマンジャロ山登頂、ソマリランド訪問や南極訪問をしてきたアウトドア派。に見せかけて実はインドア。ドゴン族、読書、料理が好き。

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