夢を叶えるには、安心して帰れる家が必要。ありのままの自分を表現できる、アオイエのコミュニティとは

夢や目標を持つ若者が集うことで知られる、コミュニティハウス「アオイエ」。アオイエでコミュニティマネージャーを務める坂元裕星に、コミュニティに関わるきっかけとなったネパールでの経験や、アオイエが目指すコミュニティの在り方について話を聞いた。

【プロフィール】坂元裕星(さかもと ゆうせい)
株式会社アオイエ代表取締役。大学在学中にバックパッカーとしてネパールを訪れ、その後一年間現地で英語を教える活動を行う。帰国後アオイエに入居したことをきっかけに株式会社アオイエに入社し、東京を統括するコミュニティマネージャーを務める中で代表に就任。

※坂元さんは2021年に代表を交代されました。

 

ネパール人に教わった、心から笑顔でいることの大切さ

―ネパールに渡航したきっかけについて教えてください。

僕は元々福岡出身で、大学進学とともに上京しました。表参道にある飲食店で働いていたんですけど、20人ぐらいのネパール人が出稼ぎで働いていました。彼らは毎日のように働いていて当然疲れているはずなのに、いつ会っても笑顔で挨拶して、「元気?」って言ってくれるんですよね。同じように働いている日本人の社員さんよりもいつも楽しそうで、何かが違うなと思いました。

そこで「なんでそんなに楽しそうなの?」って聞いてみたんです。そうしたら、「そんなの説明してもわかんないから、国へ行ってみなさい」って言われて(笑)、大学2年生のときにバックパックでネパールへ行くことになりました。それが初めて渡航したきっかけです。

 

―現地では、どんな気づきがあったのでしょうか?

ネパールでは、現地の人と会って話すことを大切にしました。ネパールの人たちに、「東京では、日常の中でぱっと周りの人を見たら笑顔の人って全然いない。ネパールではふと周りを見たときに笑顔の人が多いしすごく楽しそう、心から笑顔でいるような気がした」と伝えたんです。すると、ネパール人の男性が「昔は心から笑顔で生きてきたけれど、国が少しずつ豊かになってお金を稼ぐことが人生で一番大事だという考えが増えてきた。人を騙すための笑顔や、営業スマイルが増えていることが悲しい。」と話してくれました。

僕は日本で出稼ぎの人を見てきて、彼らはお金があれば幸せになれるんじゃないかと思ってきたけど、お金よりもみんなが心から笑顔でいるっていう環境の方が大事だという考え方にびっくりしました。自分はお金のためにバイトするばかりで、心から笑ったのはいつだろうと考えたら全然思い出せなくて。このままじゃダメだなと思って、その数カ月後には再渡航してネパールで一年過ごすことを決めていました。

 

―ネパールでの経験が、今の坂元さんにどのような影響を与えているのでしょうか?

ネパールでは毎日1,500人の若者が海外へ出稼ぎに行って、一日に4人が遺体となって帰ってきます。ほとんどは過労死です。出稼ぎをする人は、みんなネパール語しか話せないんですよ。比較的裕福な子は、小学校3,4年生ぐらいで英語を話せるようになって海外へ留学することができる。語学力の差で将来が全然違うという事実を目の当たりにしました。

それがネパール国内の問題だと感じつつも、ネパールから学ぶことは多かったです。自分が彼らに提供できるのはスキルの部分でしかなくて、マインドの部分は全部彼らから教わっていると思うんです。そのスキルも、英語は英語を母語とする人が教えたほうがいいし、自分が日本人であるということを生かす方法が見つからなくて。そう考えると、今の自分には何もできないなと思いました。逆に、ネパールで学んだマインドを日本に落とし込むことは絶対やるべきだと思ったので、帰国して日本で活動することに決めました。

 

固定費を抑え、夢を追う人が自分を表現できる場に

―コミュニティハウス「アオイエ」との出会いについて教えてください。

帰国したときに家がなかったので、Facebookで「いい家知ってる人いませんか」と投稿した際に友人から紹介されました。他にもいろんなシェアハウスを紹介されたんですが、アオイエって名前がいいなと思って(笑)。話を聞いてみたらすごく丁寧だし、面白い人がいっぱいいるんだなと思って入居を決めました。

入居して1ヶ月ぐらい経ったときに、前の代表から「一緒にアオイエの運営をやらないか」と誘われたんです。今までやったことがないコミュニティ運営の未知の部分に惹かれて、そのとき4つぐらい掛け持ちしていた仕事を全てやめ、正式にアオイエに入社しました。

 

―他のシェアハウスと比べて、アオイエにはどんな特徴があるのでしょうか?

コミュニティの質と強さは負けてないです。他のシェアハウスも素敵なところがたくさんあるんですけど、物件で完結しているところが多いと思います。僕たちアオイエは東京、関西、沖縄で合計18拠点あって、他の物件の人も知っているし、歩いて行ける距離の物件もあるので遊びに行けちゃうんですよね。地域内だけでなくて、東京や大阪、沖縄にも仲間がいるので、地域も飛び越えてつながっていますね。
「同じコミュニティに所属していて、ただ別々の場所に住んでいる」という感覚が強いと思います。

 

―アオイエでは、どんな場を目指しているのでしょうか?

自分を変えたいとか、何かエネルギーを持っている人が入ってきます。夢や目標を持っている学生や若者にとって、都心の固定費ってやはり高いですよね。夢を持っているのに、家賃を払うためにバイトして時間を使ってほしくないんですよ。みんなで住んで固定費を抑えることによって、夢を追いかけるために時間を使ってほしいと思っています。

あと、そういうエネルギーを持っている人たちって、ありのままの自分を表現しにくいと思っている人が多いです。アオイエでは、背中を押してくれる人の存在や、家に帰ったときにほっと安心できる場所を提供したいと思っています。

 

―アオイエに入居する人には、どんなことを期待していますか?

1つ目は、ありのままの自分を知ってほしいと思っています。例えば、「なんでこいつすぐ皿洗わないんだろう」ってことありますよね。でも、すぐ洗わないことが当たり前の人もいる。自分は食べた後にすぐ皿を洗う家で育ったとしても、その子は次の日にまとめてお皿を洗う家かもしれない。自分の価値観で「これはダメだ」って言うのではなく、別の人の価値観からすればダメじゃないってことに気づいてほしいんです。人は違って当たり前だということ、その上で自分はこういうときに嫌だと感じるんだということに気づいて、自分自身を知ってもらいたいと思っています。

2つ目は、自分自身を知ったときに、本当の自分を周りに表現してほしいです。「自分はこういう人だ、自分はこう思っている」というのを周りにちゃんと言ってほしい。周りの人が、偽りの自分ではなく本当の自分を知っていると、守ってくれるようになるんですよ。「こいつなんで皿洗わないんだろう、直接言ってやろう」という人に対して、「こいつは次の日にまとめて洗うやつだから、言わなくていいよ」って守れるじゃないですか。本当の自分を知っているコミュニティになると、すごく安心できるんです。

こういう人もいて当たり前なんだなと、共感でなくてもいいけど理解をしてほしい。そうしたらコミュニティとしてもっといいものになるし、いい社会になっていくと思っています。それが、僕たちのコミュニティの本質ですね。

 

頑張る人をみんなで応援する、アオイエに根付く文化

―アオイエの入居者との印象的なエピソードがあれば教えてください。

ある日のイベントでゼロ高*の内藤社長に会ったときに、「うちの生徒で1人アオイエに住みたいと思っている子がいる」と18歳の男の子を紹介されました。その当時一番運営期間が長いアオイエに住んでもらって、そこはコミュニティとして素敵だなと僕も思っているような物件で。

その子は野球がすごく上手で、プロになれるレベルだったんですけど、右脚が動かなくなる怪我をしてしまったんですね。野球の夢を諦めざるえなくなった中、彼にはもう一つ「宇宙飛行士になる」という夢がありました。でも、周りの人からは「今まで野球漬けだったのに、なれるわけない」と否定され続けてきました。

でも、アオイエに入居したらみんなが応援してくれて、「君だったらできる」と勉強を教えてくれて。彼の中でもう一回頑張ってみようと思ったみたいです。その子から「初めて応援された、誰も馬鹿にしなかった。自分がこれでいいと思えたのはこのコミュニティで出会った人のおかげです。」と言われて感動しました。これがアオイエの文化であって、こういう価値観が広まっているなと。こうやって救える人がいるのなら、どんどん拡大していかなきゃいけないなと感じました。「住んでよかった」と言われるのが一番嬉しいですね。

*ゼロ高…ゼロ高等学校。高等学校を卒業していない人を対象とする、民間の通信制教育機関。堀江貴文氏の呼びかけで発足。

 

―入居者と関わる中で、坂元さん自身の変化を感じることはありましたか?

昔はけっこうトゲトゲしてたんですよ、何もしてないやつってどうなのとか、俺たちが頑張ってるのにこいつ頑張ってなくない?とか。コミュニティに入ってからは、そういう人がいて当たり前なんですよね。それはその人なりに頑張っているし、二十数年生きてきて頑張ってないやつなんていないと今は思うようになりました。

それぞれの苦しみや悲しみがあって、その中でも人のために何かやりたいと思って立ち上がってるわけじゃないですか。その人なりの考え方や行動指針があるはずなのに、それを聞かずに何か言うのはすごくナンセンスだと思っています。

 

ライフステージを問わず、関わり続けられるコミュニティを目指して

―今後、アオイエが取り組んでいきたいことについて教えてください。

1つ目は、ライフステージにおいて落ち着くタイミングでも住めるようなシェアハウスを提供したいです。結婚とか、仕事が落ち着いて安定したい時期とか。全部個室だけど、みんなと関わりたいときに過ごせる大きな共用スペースのある家を作りたいです。

2つ目は、地域をアオイエにしたいです。住んでる場所はバラバラでだけど、みんな同じコミュニティだよねという感覚です。みんなでBBQしたり、車をシェアしたり。そうしたら、子どもをみんなで育てて、おじいちゃんおばあちゃんも一緒に暮らすみたいな、助け合いのコミュニティが生まれると思います。

3つ目は完全に野望で、信頼があればそれで全て完結するようなコミュニティを作りたいです。生活する上で必要な、電気やガス、水道や通信をすべてアオイエが持っている状態ですね。最低限の生活を保障することで、外でもっと自由に表現できるようになるので、それができるコミュニティにしたいです。

 

今まではテクノロジーやITに社会のお金が使われてきたけど、心に対しては全然お金が使われてなかったと思うんですよね。今になってさかんにコミュニティマネージャーとかリーダーシップと言われていますが、昔はそもそも当たり前で要らなかったんだと思います。それを取り戻して、バランス良く社会に取り入れないといけないなと思います。

※坂元さんは2021年に代表を交代されました。

 

コミュニティハウスアオイエHP https://www.community-house.jp/

 

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interviewer
河嶋可歩

インドネシアを愛する大学生。子ども全般無償の愛が湧きます。人生ポジティバーなので毎日何かしら幸せ。


writer
田坂日菜子

島根を愛する大学生。幼い頃から書くことと読むことが好き。最近のマイテーマは愛されるコミュニティづくりです。

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