コロナ禍でも迅速に店舗を応援。挑戦者に必要なサービスの拡大を狙う。

Daft創業者の的場慎一は4月上旬、神戸市の飲食店を応援するために店舗店前払いサービスをリリースした。自身の会社が危機的状況の中で、いち早くこのような判断ができたのはなぜか?彼の経営のこだわりと他者にgiveし続けることができる理由を聞いた。

【プロフィール】的場 慎一(まとば しんいち)
株式会社Daft代表。学生時代から東京のスタートアップでインターンを行い、その後2019年2月にDaftを設立。飲食店などの様々な店舗の空きスペースを広告枠として活用し、広告主をマッチングするプラットフォームサービスTelladを運営。また現在は、新型コロナウイルスの影響を受け、飲食店前払いサービスハロトコを運営している。

 

常に自然体の関係性作り

—事業を神戸で展開されているのはなぜですか?

理由は2つあります。1つ目は、固定費のような無駄な資金が地方だとがっつり削減できることです。2つ目は、東京で事業をやると他の都市と比べていい数値が出やすいんですよね。前職でも色々な地域でテストマーケティングしていたのですが、その傾向はやっぱり顕著でした。だから東京で事業を始めると、それを他の都市に横展開するのがしんどいんです。だったら地方からやってみようということで神戸で起業しました。

 

—多くの神戸の店舗経営者と関わりを持つ中で感じることはありますか?

あらためて東京の店舗との違いを感じることは多いですね。東京の経営者は引き出しが多く、幅広い選択肢を持っているなと感じます。飲食店だと今はオンラインショップを利用して色々なマネタイズポイントを作っている方もいますが、それはやっぱり東京が多いですね。神戸や他の地方にはもっとそのような幅広い選択肢が必要だと思います。

 

—現地の店舗経営者と関係性を築く中で意識していることはありますか?

特に意識していることはなくて、自然体でいるようにしています。だから、好かれる人には好かれるし、嫌われる人には嫌われるって感じでけっこう両極端です(笑)。お店に行くとご飯やお酒を出してくれるような、良くしてくださる方もたくさんいます。

 

コロナ禍での素早い判断

—Telladのサービスを通じたコロナ支援をされていると伺いました。店舗内での広告サービスという、Tellad自体がコロナの影響を受けやすいサービスで大変な状況の中、どのような判断で行ったのですか?

現在Telladでは、コロナ支援プログラムとして、通常は30%いただいている広告主と店舗側のマッチング手数料をなくして、両方へ還元しています。これは、どっちみち利益が上がりづらい状況だったのでどうせならゼロにしちゃえということでドカンと打ち出しました。

頭の中で簡単にPL(損益計算書。会社の収支を計算する表)をはじいてみて、1ヶ月くらいこのプログラムを実施しても特に売り上げとしては変わらないなということがわかったので、迷いはなかったです。

 

—新型コロナウイルスの影響について色々な店舗経営者の声を聞く機会があると思いますが、的場さん自身に心境の変化はありますか?

フラットに見るようには心がけています。必要なものやほしいものって言語化できていない人が多い。その言語化できていない部分を見つけ出すのが起業家で、うまくいってるサービスはそれができているから伸びているんだと思います。だからユーザーの声にちゃんと耳は傾けているけれど、鵜呑みにしないようにしています。

 

飲食店に寄り添ったサービス設計

—コロナの影響を受けて、飲食店前払いサービスの「ハロトコ」も運営されていますよね。ハロトコのサービスリリースに至った経緯を教えてください。

飲食店ってお店にきてもらって初めてマネタイズができるという仕組みなんですよね。だから、このコロナ禍でお店にお客さんが集まらない状況では、一旦そこに前払いでもお金を流さないとまずいと思いました。飲食店を経営している友達も多かったので、とりあえず始めてみようと思い、リリースしました。

現在は、登録店舗が80~90店舗で、700~800人くらいの方に使ってもらっています。もともとTelladを利用してくれていた店舗でハロトコも使ってくださる方は多いです。

 

—店舗経営者の方からはどのような反響がありましたか?

多くの店舗経営者の方が、ハロトコの5%という導入しやすい手数料設定に魅力を感じて、活用してくださっているようです。また、仕組みがシンプルで店舗側の負担が軽いことや、チケット設定の自由度が高いことなども評価してもらっています。

また、ハロトコでは、ユーザーが前払いチケットを購入する際に応援メッセージを記入できるようにしてあります。これまで多くのユーザーから、「早く開けられるように祈っています!」「子供の頃から大好物です。」「少しでもお力添えができると嬉しいです。どうか踏ん張ってくださいね。」など、飲食店に向けた温かいメッセージがたくさん寄せられていて、店舗経営者の方はとても喜んでくださっています。

登録店舗の中には、一晩で40万円くらい売り上げているお店もあります。これは2ヶ月分くらいの売り上げになる店舗もあるので、すごいことですよね。営業自粛ムードだし、営業していると嫌がらせを受けるお店もあるようです。でも、お店はただ閉めているだけではつぶれるしかないんです。お店の方々から「ありがとう」と言ってもらえることが一番嬉しいし、このサービスをやってよかったなと思いますね。

今後は神戸市や神戸商工会議所との連携により、飲食店にとってさらに使いやすいサービスを目指していきます。

 

情報格差による搾取は絶対にしない

—経営の意思決定をする上でこだわっていることはありますか?

搾取はしたくないですね。情報リテラシーの格差を狙って弱い人からお金を取るようなことはしないと決めています。例えば飲食店がwebページを作ろうとしたときに、店の規模にそぐわず不必要に高い金額を請求する会社もあります。それはお金を稼ぐという点では正しいことをやっているのかもしれないけれど、その飲食店にとっては絶対に必要ないんですよね。サービスを作る側とお金を払う側の両方にとっていい形になるようなサービスを作っていきたいです。

 

—「起業家の成功率を上げたい」という思いで創業されたと伺ったのですが、それを思うようになったきっかけや出来事はありますか?

世界中には、生まれや育った環境がボトルネックとなっていて、その逆境を乗り越えるには起業するしかないという人も多くいます。うちの母親も経営者なのですが、そのような環境で起業という選択肢を選んだ1人です。

そんなふうに起業した人がもっとうまくいくようになればいいなと思っていて、それを応援するツールの1つが広告でした。前職でウェブマーケティングに携わっていたこともあり、好きなものと起業家を応援する方法がうまく重なったのが広告だったんです。

Telladをリリースしたのが今年の2月なのですが、いい感じに伸びてきていたところで新型コロナウイルスが流行しました。そこからメインの事業をハロトコに移行したばかりなので、「起業家の成功率を上げた」と実感するようなことはまだ全然ないです。

 

より多くの人にgiveし続けるために

—今後はどのような事業展開を考えられていますか?

Telladは先行きが見えていない状態です。新型コロナウイルスの影響を受けて、今後お店の営業スタイルが変わってくると思います。そこでお店の人たちがしっかり利益を上げることができるような仕組みを、ハロトコを通して提供するということにしばらくは注力していきます。

 

—Daftや的場さんにとって、理想の未来はどのようなものでしょうか?

事業をしている人がみんなうまくいけばいいなと思っています。自己実現や何かしらの目的を達成するために起業している人たちがもっとうまくいって、そのような状況が続けば良いサイクルが生まれると思います。そこに貢献できる企業になりたいです。

あとはどうせやるなら会社を大きくしたいという思いもあります。やっぱりアウトプットが大きいほど喜ぶ人も増えるし、関わってくれている人みんなにgiveできるようになるので、そこは最大限コミットしていきたいです。

 

—最後に、的場さんがそこまで周りの人のことを想うことができるのはどうしてなんでしょうか?

でも嫌いな人は嫌いですよ、口もきかないんで(笑)。やっぱり好きな人たちと一緒にやっている時が一番楽しいんでやっていますね。深い理由はあんまりないです。社員もみんな信じて付いてきてくれているし、良くやってくれてるんで、社長が一番がんばらないとって思いますよね。

 

株式会社Daft  https://www.daft.co.jp/
Tellad http://tellad.jp/
ハロトコ  https://www.harotoko.com/

 

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interviewer
河嶋可歩

インドネシアを愛する大学生。子ども全般無償の愛が湧きます。人生ポジティバーなので毎日何かしら幸せ。

 

writer
堂前ひいな

幸せになりたくて心理学を勉強する大学生。好きなものは音楽とタイ料理と少年漫画。実は創業時からtalikiにいる。

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