笑いで世直し!笑いを取り入れた教育で、政治や社会問題をもっと身近に
インタビュー

笑いで世直し!笑いを取り入れた教育で、政治や社会問題をもっと身近に

2020-10-29
#教育 #政治

大学時代からの同志で、お笑いジャーナリスト/時事YouTuberのたかまつななと共に、笑下村塾を経営する相川美菜子。政治や社会問題を楽しく学んでもらおうと、笑い取り入れた授業を全国に届けている。受講者に、難しいテーマをもっと身近に考えてもらうための工夫や、今後の事業の展望を聞いた。

【プロフィール】相川 美菜子(あいかわ みなこ)
株式会社笑下村塾 代表取締役。大学時代に内閣官房のプロジェクトに参加したことをきっかけに、政治や社会問題を伝えることに関心を持ち、若者の政治に対する声を伝えるメディア「政治美人」を創設、代表を務めた。卒業後はリクルート住まいカンパニーにて雑誌編集やウェブサイト企画を経験。2019年6月にリクルートを退職するまでは”副業社長”として働いていた。

笑いを取り入れた教育事業

ー現在の事業について教えてください。

お笑い芸人が先生となって、全国の学校や自治体、企業に対してSDGsや政治を伝える出張授業を行っています。「笑いで世直し」というのを会社の理念に掲げていて、社会問題や政治といった、少し距離を置いてしまいがちなことを楽しく学べるようにしています。これまで5万人以上に実施してきたのですが、「今までの政治の話とは違って面白いと思えた」とか「自分ごととして考えることができて、選挙に行かなきゃと強く感じた」といった感想をいただいています。

 

ー授業に笑いを取り入れたのはどうしてですか?

笑下村塾の創設者であり、取締役のたかまつなながもともとお笑い芸人をやっているのですが、彼女が芸人になったきっかけが、笑いで社会問題を伝えるためだったんです。彼女が中学で英語のスピーチコンテストのときに漫才をやったら、スピーチ以上にみんな爆笑して話を聞いてくれたという経験があって。この経験が理念である「笑いで世直し」につながっています。

 

ー具体的にはどのような授業をされているんですか?

政治の授業の場合は、若者が選挙に行かないことで損をすることを強く押しています。若者の投票率が1%下がると、一人あたり年間で13.5万円の損をするというデータ*を紹介したり、若者はそもそも人口が少ないので、そこからさらに投票率が下がるとますます政治への影響力が低くなってしまうというのを実際に計算してもらったりしています。ただ、不安を煽るわけではなくって、あくまでも楽しく考えながら学べるというのをコンセプトにしています。
SDGsババ抜きという教材も開発していて、ゲームを用いてSDGsを学べる設計になっています。カードにはSDGsの番号が書かれていて、ババ抜き同様、同じ数字のカードが揃えば手札から捨てられるのですが、捨てるときにカードに書いてあるSDGsに紐づくアクションをする必要があります。授業のなかにもカードゲームやグループワークを取り入れて、自分で考えたり意見を発表したりできる時間を作るようにしています。

*「若者の1%投票棄権→13万5千円損 東北大院教授試算」朝日新聞デジタル
http://www.asahi.com/senkyo/senkyo2013/news/TKY201307200009.html

 

ー学校や企業からは、どういった経緯で依頼が来るのですか?

有難いことに、たかまつや私の発信を見てくださった方や、笑下村塾がメディアで取り上げられたのを見てくださった方からお声がけいただくことが多いです。また、私が企業に対して営業もしています。なので、企業との調整や会社の経営のことは私が担当し、たかまつには発信や取材をメインで担当してもらっています。お互いの得意なことを生かして、役割分担できているのが良いかなと思います。

 

若者にとって政治が身近になるように

ー若者が、政治や社会問題にあまり関心を持てないのはどうしてでしょう。

若者が政治や社会問題に距離を置いてしまいがちな理由はいくつかあると思います。まず1つ目は、若者に身近な政策がないからです。自分たちの教育に関わることや、就活やインターネットのように、若者が自分ごととして考えられるようなことが政策としてあれば、「自分の意見を政治に反映させたい」と投票に行く若者が増えるんじゃないかと思います。

2つ目は、政治に対する堅苦しいイメージがあるからだと思います。若者からみると、自分とは歳の離れた年齢層の高い政治家が、ああだこうだと難しいことを言っている印象が強いのかもしれません。そうすると、やっぱり自分ごととして捉えにくいというか、若者は共感しにくいのではないでしょうか。政治に対するイメージが向上すれば、政治家になりたい若者も増え、政治家の年齢層が下がれば、若者に向けた発信や政策も増えていき若者の興味も政治に向くという好循環が起きると思っています。

 

ー4年間事業をされてきて、印象に残っていることはありますか?

すごく楽しく学んでくれているなと思うこともあれば、やっぱり難しいなと思うこともあります。その中でも、すごくやってよかったなと感じたのは、ある学校で政治の授業を行ったときのことです。普通の高校だったのですが、授業後に行われた選挙の投票率が、そのクラスでは84%だったんです。社会全体で見た投票率ってまだまだ低いですし、若者の投票率はさらに低いですよね。そんな中、授業を受けてくれた子たちの投票率が8割を超えてきたというのは、とても嬉しかったです。

また、昨年の参院選のときに「若者よ、選挙に行くな」という動画を作ったのですが、それがバズってTwitterで400回以上再生され、テレビなどの取材もたくさん来ました。それに伴って、「動画をきっかけに選挙に行こうと思いました」というようなコメントがたくさん寄せられて、そのときはすごくやりがいを感じました。ただ、いざ蓋を開けてみると、投票結果としては別に若者の投票率が上がっていたわけではなかったので、そういう面では力不足だなって感じました。私たちの情報発信をチェックしてくれている人たちはそもそも政治に興味があって、選挙にもきちんと行くような方々なんですね。なので、自分たちの周りだけを見ているとすごく盛り上がっている気がして感覚が麻痺しちゃうんですけど、自分たちが見えていないところにはまだまだ届いていないんだなと感じたので、もっと大きなムーブメントを作っていきたいと思っています。

 

今後はオンラインも活用して事業を展開

ーコロナウイルスの影響もあり、オンラインに力を入れていると伺いました。

そうですね。3月から6月ごろに入っていた授業やイベントはほぼ中止になってしまいました。なので、4月ぐらいからオンラインでの事業に注力しています。1つ目はオンラインでの授業・研修です。政治やSDGs、プレゼン講座など、これまで出張授業でやっていたことを、今は遠隔でやっている状況です。オンラインでも、双方向的なコミュニケーションを取れるように心がけていて、たくさん質問したり、クイズを出してその答えをチャットで送ってもらうなどの工夫をしています。

2つ目はYouTubeでのコンテンツ作成です。以前から配信はしていたのですが、動画制作に時間が使えることもあって、これまでよりさらに力を入れていこうと思っています。社会問題を楽しく学べる番組をYouTubeで作るために、先日までクラウドファンディングも行っていました。

 

ークラウドファンディングでは600万円を達成されたそうですね。

このコロナ禍でみんなが大変なご時世で「YouTubeで番組作ります!」というプロジェクトに共感してくれる人って少ないんじゃないかと心配もしていたのですが、600名を超える方にご支援いただき、本当に感謝しかありません。

最近、特に若い子だと、何かを調べる時にYouTubeで一番最初に検索することがあるそうです。私はもっぱら検索エンジンを使うのでびっくりしたのですが(笑)。でも、YouTubeで政治や社会問題を検索しても、ちゃんとした動画ってほとんど出てこないんです。政治だとすごく意見が偏っている主張が出てきたり、社会問題についての動画も「その情報ほんとに正しいの?」みたいな。YouTubeだと、誰でも発信できて便利な反面、情報の質もバラバラなので、きちんとしたコンテンツを発信していく意義があると感じています。クラウドファンディングでも、そういうところに共感してくださる方が多かったのかなと思いますね。これからは、もっといろんな人と対談をして社会問題を語ったりとか、実際に現場に行って取材をしたりして、若い人に伝わるような動画を発信をしていきたいです。

オンラインでの講座の様子

 

社会問題が自分ごとになる世の中へ

ー目標にしていることはありますか?

今でも事業に関わってくれている芸人さんがたくさんいますが、100人の芸人さんが全国各地で出張授業をするようになることが目標です。でも100人いると、どうしても知識やスキルのばらつきが出てしまうので、台本やスライド資料を作り込むことで、基本的な授業のクオリティに差が出ないようにしています。あとは、それぞれの芸人さんの芸や個性を生かして楽しい授業を届けられるといいですね。

 

ー事業を通して、目指したい社会について教えてください。

もっと社会問題が身近で、自分ごととして考えられることが当たり前の世の中にしていきたいです。今は政治やSDGsに特化して、教育事業を行っていますが、社会問題って本当にたくさんあるので、いろいろな課題について楽しく学べる教材やコンテンツを作れる会社になっていけたらと思っています。それらを発信する立場になることで、特に若者が簡単に世の中のことを学べて、アクションしていけるような環境を作っていきたいです。あとは、年金や税金の話など、学校では詳しく学ばないけれど、生きていく上では絶対に学んでおいた方がいいことも、笑下村塾の授業を受ければ楽しく学ぶことができるようになればいいですね。

 

笑下村塾HP https://www.shoukasonjuku.com/

 

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    interviewer
    河嶋可歩

    インドネシアを愛する大学生。子ども全般無償の愛が湧きます。人生ポジティバーなので毎日何かしら幸せ。

     

    writer

    細川ひかり

    生粋の香川県民。ついにうどんを打てるようになった。大学では持続可能な地域経営について勉強しています。

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