taliki×CAMPFIRE Angels。真に課題解決のための調達をサポートする

2021年7月7日、株式投資型クラウドファンディングCAMPFIRE Angelsを運営する株式会社CAMPFIRE Startupsと、社会起業家への投資ファンド(通称:talikiファンド)を運営する株式会社talikiがパートナーシップを提携した。今回の提携を記念し、社会課題解決ベンチャー企業に向けて、事業成長と課題解決を加速させるエクイティファイナンスについて語るウェビナーイベントが開催された。登壇したのは株式会社CAMPFIRE Startups取締役・田中駆と、株式会社taliki代表取締役・中村多伽だ。投資や支援を行う2人の立場から、社会課題解決ベンチャーだからこその資金調達の難しさや、今回のパートナーシップ締結によるメリットなどについて話した。

【プロフィール】

田中 駆 (たなか かける)

株式会社CAMPFIRE Startups取締役/プロダクトマネジメント本部長。2018年に株式会社TOMOSHIBIを創業し、代表取締役CEOに就任。プロジェクト単位の人材マッチングプラットフォーム「TOMOSHIBI」を運営してきた。2019年4月に株式会社CAMPFIREに事業譲渡しジョイン、同事業部長に就任。2020年7月より株式投資型クラウドファンディン グ「CAMPFIRE Angels」立ち上げに参画。2020年12月からは取締役に就任し、経営企画・事業戦略・プロダクト・マーケティング領域を統括。

 

中村 多伽(なかむら たか)

2017年に京都で起業家を支援する仕組みを作るため、talikiを立ち上げる。創業当時から実施している、U30の社会課題を解決する事業の立ち上げ支援を行うプログラム提供に止まらず、現在は上場企業のオープンイノベーション案件や、地域の金融機関やベンチャーキャピタルと連携して起業家に対する出資のサポートも行なっている。

 

株式会社taliki代表取締役・中村のインタビュー記事はこちら:

経済的成功はgiveの精神から【前編】

 

talikiファンドについてはこちら:

【工藤柊×中村多伽】(前編)talikiファンド設立。資金調達で事業と社会課題解決を加速させる

まず、”株式投資型クラウドファンディング”とは

お二方の対談に入る前に、『CAMPFIRE Angels』で採用している、”株式投資型クラウドファンディング”についてお聞きしましょう。

(1)株式投資型クラウドファンディングとは?

田中駆(以下、田中):まず前提としてCAMPFIREグループは、購入型、株式投資型、融資型、寄付型等といった色々なモデルのクラウドファンディングを展開しています。世の中で一般的に認知されているのは購入型のクラウドファンディングだと思いますが、そこから派生して色々な形のクラウドファンディングを提供しています。

その中で株式投資型クラウドファンディングは、インターネットを通じて投資できる仕組みです。通常のクラウドファンディングでは、お金を出してもらった人にはリターンとしてモノや体験を提供しますが、株式投資型クラウドファンディングではその代わりに、株式をリターンとして提供するというのが違いになります。現在約8000人以上の個人投資家が「CAMPFIRE Angels」に登録しており、8000人以上に向けてピッチをして、共感や期待を持った個人投資家に出資してもらうということができます。プロジェクトを発表する前段階からキャピタリストというファイナンスのプロとプランナーというクラウドファンディングのプロがついて、資本戦略や事業計画からプロジェクトページ作成全般をサポートをさせて頂いています。

 

(2)株式投資型クラウドファンディングを使うメリットは?

田中特徴として、ベンチャーキャピタル(以下、VC)の出資より早く、個人投資家の出資より大きな金額を集めることができるとことです。まず早さに関しては、資金調達を行うと決めてから一次審査通過後で、最短1ヶ月で募集の開始が可能です。募集期間を2週間ほど設けて、出資が成立すれば、最短で2週間後には着金まで到達できるようになっています。そのため、最も早いケースでは資金調達を決めてから2ヶ月で着金まで完了することができるというスピード感になっています。また金額に関しては、年間1億円未満のエクイティ調達で使用することができます。逆に言えば、株式投資型クラウドファンディングでは1億円を超える調達ができないのですが、シード・アーリー期における資金調達は数千万円のケースが多いため、十分な金額を集めることができると思います。

また、事業に共感して応援してくれる、”応援株主”が大きく増えることで、副次的なメリットも生まれます。まず全業種に共通したメリットとして、”応援株主”はSNSや口コミの発信源になってくれることが多いです。別に株主にならなくても発信源になってくれるんじゃないか、と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、私は株主だからこそ意味があると思っています。その会社の事業成長によって、自分がキャピタルゲインを得られるかもしれないという経済的インセンティブは大きいのではないでしょうか。それに、”応援株主”はコアユーザーになってくれます。BtoCの事業であれば、投資先の商品が出ればまず買いますよね。それに社会課題解決型の事業やBtoBの事業であっても、課題当事者の方や共感者の方が株主として参画してくれることで、ユーザーヒアリングやインタビューに協力してくれる協力な母体になると思います。

 

(3)スタートアップにおける、株式投資型クラウドファンディングの活用方法は?

田中:スタートアップのラウンドによって、どのクラウドファンディングを使ったらいいのかということをお話ししたいと思います。ポイントになるのがプロダクトやサービスの状態です。例えばエンジェルラウンドやシードラウンドの前半では、まだアイデアの段階だったり、α版やβ版を出したところといった状態のことが多いですよね。この段階では試験販売や知名度向上といった目的と、初めての資金調達をしたいという目的があると思います。そのため、一般消費者向けの購入型クラウドファンディングを使っていただくのがベストですね。その後プロダクトがβ版から正式版に変わって、いよいよ広告宣伝費やエンジニアリソースに資金を投入しようと考えるようになるのがシードラウンドの後半だと思います。このタイミングで活用いただけるのが、株式投資型クラウドファンディングです。さらにラウンドが進み、プロダクトやサービスが市場で受け入れられていく段階になれば、融資型のクラウドファンディングをご案内するという流れになります。

 

もちろんプロダクトやサービスの性質などによっては、今お話しした限りではありません。ですから、CAMPFIRE Startupsでは資本政策や事業計画といった本当に細かい数値の部分まで一緒に見てサポートをしています。会社の一番深い情報までプラットフォームとして触れることで、「この状態だったら先に購入型を使った方がいい」「こういった事業でこういった売上目標を立てているのであれば、株式投資型と購入型を同時に使った方がいい」といった柔軟な提案を行うようにしているんです。

 

社会起業であることによる、資金調達の困難

ーここからは、ウェビナー視聴者からの質問を元に進めていきます。社会課題解決ベンチャーの支援に取り組まれてきた中村さんから見て、社会起業であることによる資金調達の困難についてお聞かせください。

中村多伽(以下、中村)まず社会起業家が投資家から一番言われるのが、「それってマーケットあるの?」ということだと思います。社会課題分野ではまだマーケットが開拓されていなかったり、事業の受益者になるユーザーの購買能力が高くなかったりするので、マーケットがない領域になりがちなんですよね。でも「マーケットがないから課題解決やめました」って言うような会社に投資する訳ではないですし、talikiにとっては不毛な問いだと思ってます。それから、テックを前面に出して欲しいと言われるケースもあります。上場を目指すにあたって、投資家は時価総額が上がりやすい事業内容であって欲しいので ”AIを活用して”等のワードで市場の期待値を上げようとするんですね。これもリターンを出すというところでは大事かもしれないですが、テクノロジーも手段に過ぎないと考えています。あとは「社会課題解決を目指しています」というだけで、ビジネスではないというイメージを持たれてしまって、ちゃんと話を聞いてもらえなくなるということもよく聞きますね。”社会課題解決=儲からない”イメージは払拭しないといけないと思っています。

田中:「テックを前面に出して欲しい」と言われるのは確かにあると思います。投資家目線で考えれば時価総額を上げて自分の利益を大きくしたいと思うのは自然なことなんですよね。一方で時価総額は置いておいて、今やろうとしていることとそれによって課題が解決されるということ自体にベットしてくれる投資家に出会える場所が増えれば、課題解決ベンチャーの課題解決と事業成長が加速するだろうなと思います。中村さんは投資家の立場で起業家に対面する時、例に出していただいたような質問をしない代わりに、どんな質問をするようにしてますか?

中村:本当にユーザーの課題を解決するような事業内容になっているのかどうかは聞くようにしています。逆に起業家から「テック要素ないんですが大丈夫ですか」みたいな質問を受けることもありますが、”テクノロジーがないと困る課題当事者がどれくらいいるのか”というような目線でお答えするようにしています。あとは将来的な競合優位性を考えた時、参入障壁を築くために、新しい素材開発やオペレーションの効率化などの技術が必要になることが見えている場合はあります。その場合はどのようにして技術を導入していくのか、一緒に考えるということはあり得ますね。

talikiの社会起業家育成プログラム「COM[坤]-PJ」の様子

 

個人の力を集めて、大きな力にする

ー次の質問です。資金調達にクラウドファンディングを使うことは、通常のエクイティ調達と比べてどのようなメリットがあるのでしょうか?

田中:まずは最初にお伝えしたように、入ってくるお金に付随して、事業を応援してくれる人も増えることが非常に大きなファクターになると思います。加えて先ほどの投資家目線の話とも絡めると、例えば社会課題解決型の事業で、投資家が市場の小ささやテック要素の薄さから投資を躊躇するような場合に、クラウドファンディングであれば資金を集めることができるかもしれません。クラウドファンディングのいいところはお金の集め方がいくつかあるところで、株式投資型で数十万円を出してもらうこともできるし、購入型で少額の支援から集めることもできます。例えば、私自身も個人で数十万円を出すとなると躊躇しますが、最初は3,000円から購入型で支援するくらいならできる。それで本当にいい商品だなと感じて、株式投資型の方でも支援をしようと思うようになる、みたいなパターンもあるかもしれません。このように複数のお金の集め方を駆使することで、多くの人を巻き込むことができるのも、資金調達にクラウドファンディングを使うメリットの1つだと思います。

 

中村:私からも投資家目線の話をすると、ファンドを運用している中で、個人的な感情としては投資したいけど投資できない状況があるんですよね。せめて個人としては応援しようと思っても、1人で出せるような額なんて会社には何の足しにもならなかったりして。プラットフォームに個人の力を一定数集めて、大きな力に変えることができるというのは、クラウドファンディング以外にはできない構造だと思います。

田中:今中村さんが言ってくださったのはいい例で、実際にCAMPFIRE Angelsに個人として登録してくれている投資家の中にも、VCでキャピタリストをやっている人がいたりします。会社としてではなく、いいと思った企業に自分の意思で投資したいということで登録してくれている人は結構多いです。

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