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ゼロから分かる!カタルーニャ独立問題②

石田 匡秀 2017年12月24日
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石田匡秀

京都大学4年、情報工学専攻。talikiのCTO。NPO法人Mielka(旧ivote関西)にてクリエイターとして2年弱活動。今年4月に代表・中村の勧誘を受けてtalikiに加入。プログラミングとテラスハウスとブランデーが大好き。

12月21日、カタルーニャ州議会選挙が行われ、独立賛成派(の政党が連合を結成して)多数派となる見通しとなった。この選挙は10月に独立宣言がなされた結果、スペイン中央政府が強制的に州議会を解散したことで行われた。この選挙で再び独立賛成派が過半数を獲得したことで、独立への動きが活発化するものとみられる。しかしながら単独で最も議席を獲得したのは独立反対派の政党であり、あくまでも反対の姿勢を貫くとみられていることから、カタルーニャをめぐるスペインの混乱はまだまだ続いていくものと思われる。

前回、2010年にカタルーニャ自治州の新自治憲章が違憲判決を下されたところまでお伝えしたので、今回は独立支持派が急増する原因となるラホイ政権の誕生と、財政問題についてお話する。

国民党ラホイ政権の誕生と再中央集権化への政策実施

スペイン首相 Mariano Rajoy Brey 氏 (出典:ラホイ氏公式Twitterアカウント)

2011年11月、スペイン中央政府ではラホイ政権が誕生した。ラホイ政権は再中央集権化を推し進め、結果カタルーニャは様々な規制をかけられることになる。

再中央集権化とは、スペイン内に17ある自治州に移譲された権限を中央政府に戻す動きのことで、弱体化したスペインを再び強い国家にするという目的で実施された。

 

行政分野での再中央集権化

まず、経済危機を背景にラホイ政権は再中央集権化を進める。各自治州が中央政府との交渉を経て獲得した様々な権限が、国家と自治州との間で様々な「行政の重複」を発生させ、スペインを弱体化させた、と考えたラホイ政権は、中央政府に権限を集めればスペイン経済が再び強くなれる(有効な経済危機対策になる)と主張した。この主張は、カタルーニャやバスクなど歴史的な背景のある自治州を除いて、人々から一定の支持を得ていたという意味で、そこまで変なものではなかった。

削減される行政の重複の対象となった諸機関・諸制度は、700頁に及ぶ報告書にまとめられており、その中には、世論調査研究所(独立の賛成反対などのデータはだいたいここが調査している)や、カタルーニャテレビ(カタルーニャで最も高い視聴率を取る)が含まれていた。

 

財政面での規制

日本では次のような言説がよく聞かれる。

「カタルーニャはスペインのGDPの20%を占めている、経済力のある豊かな地域だが、経済危機によって貧しい地域に自分たちの税金が使われることを負担に思うようになってきていて、このようなエゴイスティックともいえる経済的理由よって独立の機運が高まっている

事実、カタルーニャは一人当たりGDPがスペインで第4位の比較的豊かな自治州であり、そういう意味では、比較的貧しい地域への拠出は当然と言え、それが負担だというのは幾分エゴイスティックに聞こえる。しかし、そのやり方ないし実情を知れば、そこまでエゴイスティックとは思えない、むしろ妥当な主張であろうと思えるということを示すために、ここでは財政の仕組みについて触れたい。

 

スペイン国家の税の徴収方法には、歴史的自治州(1930年代、フランコの独裁体制が始まるまでの間に自治憲章が採択されていた自治州)であるバスクとナバーラにだけ認められている「特別法制度」とそれ以外の自治州に適用される「一般制度」とがある。

バスクとナバーラは、徴税について自主権が認められており、自治州が徴税を行い一定額の分担金(バスクは年間予算の6.24%、ナバーラは1.6%)を中央政府に収めることになっている。これは1704年に始まったスペイン継承戦争においてバスクとナバーラが勝利陣営に与していたことが理由である。

一方でその他の自治州は、90%の税が国によって徴収された後、分配金として各自治州に返ってくる。このとき徴収された金額と返ってきた金額との差額が財政収支と呼ばれ、マイナスなら財政赤字、プラスなら財政黒字となる。

結論から申し上げると、カタルーニャは毎年8%前後の財政赤字であり、2009年の財政赤字額は164億ユーロでした。参考までに、ドイツが2007-11年にEUに拠出した金額は年平均104億ユーロ(ドイツGDPの0.4%)である。

さらに、財政赤字率が高い自治州は上から順にバレアルス諸島、カタルーニャ、バレンシアですが、この3つの自治州はもともとスペイン継承戦争で敗戦した側についていた国がルーツとなっている。また、1人当たりGDPがスペイン平均を上回るにも拘らず財政黒字となっている自治州もある。

以上のことから、一般制度による徴税は、カタルーニャでは誰もが納得できる合理的な理由に基づいて運営されているとはみなされていない。スウェーデン並みの高い税金を払いながらも、スペイン平均以下の社会サービスしか受けられず、カタルーニャがエゴを主張しているかのようにスペインでスケープ・ゴートにされている現状に、カタルーニャの多くの人々が疲れ果てている。

(出典:https://www.pexels.com/)

教育分野での再中央集権化

スペインでは中等義務教育を終了せずにドロップアウトする生徒の割合が30%を超えていた。これを教育の危機として利用し(実際危機だとは思うが)、教育の質を高めるという名目で実施された。ここで承認された通称「ベルト法」が、カタルーニャの人々にとって、カタルーニャの言語や文化に対する攻撃であると受け止められているのである。

ベルト法の中身

ベルト法は、教育大臣ベルトによって提出された法案だったためその名がついたが、以下に示す内容から、ベルトが教育大臣に就任した2011年12月以来現在に至るまで大きな波紋を巻き起こしている。

・カリキュラムについて、中央政府が規定する分量を10%増やすとした。

・授業科目を基幹科目(最低でも授業時間の50%以上を占めないといけない)、特殊科目(最大でも授業時間の50%しか占めることはできない)、自由選択科目(必修時間の定めがない)の3種類に分け、カタルーニャ語の授業とカタルーニャ語で行われる授業を自由選択科目にした。

特に2点目は、カタルーニャ語を教育言語として行われてきた今までのカタルーニャの教育制度を全面的に否定するもので、極めて大きな衝撃をカタルーニャ社会に与えた。

この法律に関連して、カタルーニャでは、

・クラスの中で一人でもカスティーリャ語(私たちが想像するところのいわゆるスペイン語)での授業を求めたら、そのクラスはカスティーリャ語で授業を行わなければならない

・授業の25%がカスティーリャ語で行わなければならない

・生徒や父兄がカスティーリャ語での授業を望んでいるにも拘らず公立学校でカスティーリャ語での授業が行われない場合、そのような授業を提供している私立学校に通わせるための授業料と公立学校との差額を自治政府が払わないといけない

とする判決が出されている。

ラホイ政権による再中央集権化の動きは、カタルーニャの人々にとって、その歴史や伝統、文化を否定されたように感じられるものだった。そのため、新自治憲章の違憲判決とも重なって、これではカタルーニャのことをカタルーニャで決められない(自決権がない)として、独立を志向する人々が増えた。

まとめ

カタルーニャでは、

・言語や文化への攻撃と思われるような中央政府からの規制を受けていること。

・経済的には確かに豊かであるものの、財政面で厳しすぎると思われる扱いを受けていること。

・新自治憲章の違憲判決で、ほとんど何も自治州だけでは決定できないようになってしまったこと。

以上のことを理由に、独立を支持する人々が増加したと考えられる。

2017年10月27日になされた独立宣言の根拠となった住民投票では、スペイン憲法裁判所が住民投票を違法と判断し、国家警察が投票所で投票を妨害するなどしたものの、多数の有権者が投票を行いました。とはいえ投票率が50%を下回っていた。

中央政府のラホイ首相はこれを受け、カタルーニャ州の自治を停止させ直接統治を開始しました。そして今回の州議会選挙を実施した。結果は独立賛成派多数だった。

スペインにもカタルーニャにもいつの日か平和が訪れるといいのですが

今回は投票率が80%を超え、それでもなお独立賛成派が多数派となったことから、今後も独立運動は続いていくものと思われる。国家警察が投票を妨害する様子は恐ろしく、今後はこのようなことなく穏やかに独立への議論が深まることを祈りながら、今後もカタルーニャに意識を向けたい。

 

WRITER

石田 匡秀

京都大学総合人間学部

talikiのCTO。NPO法人Mielka(旧ivote関西)にてクリエイターとして2年弱活動。今年4月に代表・中村の勧誘を受けてtalikiに加入。プログラミングとテラスハウスとブランデーが大好き。

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